HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Troy Pierce


Richie Hawtin のレーベル Minus より ‘Run’をはじめ数々の良作をリリースしてきたベルリン在住の Troy Pierce が、西麻布の Colors Studio で行われた Moments に出演するため待望の来日を果たした。

同じ Minus クルーである Magda、 Marc Houle とのユニット Run Stop Restore や自身の別名義 Slacknoise などでも良質なトラックを次々とリリースし、多くのファンより絶大な支持を集めるミニマル系アーティストとして君臨している Troy Piece。そんなミニマル・シーンの今後を担う存在の彼に HigherFrequency がインタビューを決行、 先日行われたばかりだという Minus のヨーロッパ・バス・ツアーでの出来事 や Run Stop Restore が立ち上げたニュー・レーベルについてなど大いに語ってくれた。

> Interview : Mark Oxley _ Translation by Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction by Masanori Matsuo (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : Minus のヨーロッパ・バス・ツアーから戻られたばかりですが、いかがでしたか?さすがにレーベル・メイトにも飽き飽きしてしまったのでは?

Troy Pierce : いいや、面白かったよ。6月に初めてアメリカでバス・ツアーをした時は、「同じ人たちと2週間も一緒に過ごしたら、鬱陶しく感じたり、誰かが誰かと喧嘩することになるだろう」って思ってたけど、全然そんな感じじゃなかったよ。全然平気だった。僕らはみんな本当に仲が良くてね。だから今回のツアーもかなり快適だったよ。距離は遠かったけどね。会場と会場の間が。フランクフルトからリュブリャナっていうチェコ共和国の都市に移動して、ドイツのライプツィヒって具合に移動したんだ。

HRFQ : 移動に使ったのは、ベッドやシャワーが付いた大きなバスだったんですか?

Troy Pierce : まるでロック・スターが乗るようなやつさ!ただ、各会場への移動時間は10時間から14時間もあってね。ライプツィヒからスイスのローザンヌ、パリ、パリからマドリッドって具合にすごく遠かったんだ。でもその移動時間中に寝てしまえば、全く問題ナシって感じだったけどね。朝6時にイベントが終わって、ホテルに戻る代わりにバスに乗る。そうして6〜8時間寝ると、次の場所に着いているってわけさ。フライトより全然快適だったよ。

HRFQ : 昨年 Richie Hawtin が “DE9 Transitions” を、そして今年は Magda が” She’s A Dancing machine”をリリースしましたね。今後、あなたもこのように Abelton Live を使用し、数百曲をフィーチャーするかたちのミックスCD をリリースする予定はありますか?

Troy Pierce : うん、まさに今作ってるところだよ。Minus の音源のみを使ったミックスなんだけど、当初は、Minus の歴史をたどるような感じで、レーベルの初期の音源から最近の音源までなるべくたくさんの楽曲を使ったミックスにしたいと思ってたんだ。

HRFQ : 最終的に何曲ぐらい楽曲を使われることになったのでしょうか?

Troy Pierce : それが、途中でアイデアを変えてしまってね。というのも、これから2年後の’09年に Minus は10周年を迎えるんだ。だからその時に集大成的なミックスをやることになったのさ。今回のミックスには Run Stop Restore や今の Minus を代表するようなトラックを入れていくことになると思う。その後に、果たして僕がやるか Richie がやるかは分からないけど、10周年のミックスをリリースする。これはかなり大きなプロジェクトになると思うよ。ただ、今回のミックスだって大きなプロジェクトなんだ。60曲以上も入るからね。

HRFQ : そういったプロジェクトにはどのくらいの時間がかかるんですか?

Troy Pierce : かなり長い時間がかかるよ。DJ ミックスだって、ただミックスをすれば良いって訳じゃない。準備をして、コンセプトに対するアプローチの仕方を考えて、それを実行する…要は、どうやってすべてを合体させるかなんだ。ミックスCD って、形も分からない大きなパズルみたいなものでね。だから自分でそのパズルがどんな形をしているかを決めて、その形に近付けるように努力しなきゃならないのさ。

Troy Pierce

HRFQ : Run Stop Restore のニュー・レーベル Items & Things のコンセプトを教えてください。Items & Things のリリース作品と、あなたたちがMinus からリリースするアイテムとは、どこが違うのですか?

Troy Pierce : 僕たちが興味を持った作品で、Minus とは違ったスタイルの作品をリリースする場所を作るためさ。僕や Magda が DJ する時だって、Minus っぽい音の典型的なレコードばかりプレイしているわけじゃない。もっと幅の広い音をプレイしてるんだ。個人的に大好きなアーティスト / 楽曲だけど、Minus からリリースするにはカラーが違いすぎるって場合もあるからね。

だから Marc Houle と Konrad Black、Magda と僕で初めてレーベルからリリースした4つのトラックも、通常みんなが予想するような僕らの音とは全然違うんだ。それがこのレーベルのコンセプトさ。どんなスタイルでもいいから、クールな音をリリースする。奇妙なエレクトロだっていいし、スペーシーなディスコでもいい。面白くて、Minus っぽくない音というのがキーなんだ。すでにいい感じのデモもたくさん集まってるんだけど、それが Minus っぽい音か、そうでないかで決めるようにしてるんだ。

HRFQ : なぜ他のレーベルからリリースせずに、自分たちで別のレーベルを作ることにしたのですか?

Troy Pierce : Richie に頼まれたからさ。彼は僕たちが他のレーベルから出した作品を聞いて、レーベルを作るチャンスを与えてくれたんだ。だから僕たちの役割は A&R で、オフィスは Minus にある。ディストリビューションもセールスもプレスも面倒なことは全部彼らがやってくれるから、僕らにとってはかなり魅力的なんだ。ハードワークは一切ナシの面白い仕事ってわけさ。

HRFQ : ‘04年にウェブ上のレーベル Textone からフリーの楽曲をリリースされましたね。その他にもこのレーベルからは (Ricardo) Villalobos や Matt John のトラックがリリースされていますが、この Textone について少しお話していただけますか?

Troy Pierce : このレーベルは Jay Haze が運営しているものなんだけど、クールなプロジェクトだと思うよ。作品はすべてフリーだし、プロモーションにもなるしね。今彼らがどのくらいコンスタントに作品をリリースしてるかは分からないけど、レーベル自体はまだ存在してると思うよ。過去の作品もすべてダウンロードできるし、本当にいい音楽ばかりなんだ。彼が受け取ったデモの中で、クールだけどアナログとしてリリースするには及ばないような作品をアップしているのかもしれないし、彼が目にかけているアーティストのプロモーション・ツールとして使っているのかもしれない。とにかくいい作品の発表の場なんだ。

HRFQ : ‘02年にベルリンに移り住んでいなかったら、あなたの人生はどのように異なっていたと思いますか?

Troy Pierce : ベルリンに移住しなかったら、今頃まだニューヨークにいて、何もせずに暮らしてただろうね。特に何をすることもなく、バカ高い家賃を払いながら…。

HRFQ : 何もしないとはどういうことなんでしょうか?

Troy Pierce : ニューヨークはものすごくゴチャゴチャした場所だっていうことさ。毎日忙しく過ごしているように感じるのは簡単でも、実際にはなにも達成出来ていない。それに良いベニューがないしね。僕がベルリンでやっているようなことをニューヨークでやっても、生活していけないんだ。もしかしたら出来るかもしれない。でも簡単には出来ないよ。僕が実際に作ったりプレイしているような音楽をサポートしてくれるようなベニューが存在しないんだから。それが一番の問題だね。

HRFQ : ニューヨークのクラブ・シーンについては、「どこそこのクラブがクローズした」とか、「どこそこのクラブでダンスが禁止された」などというニュースが毎週のように入ってきますが、政府の介入によってシーンが受けた影響はやはり大きかったのでしょうか?

Troy Pierce : ただ単に、そういった手入れによってヒップ・ホップやロックだけをサポートする環境が作られるというだけさ。当時のニューヨークでは、何かクールなことをクールで音のいいスペースでやることがすごく難しかったんだ。人が集まらなかったからね。ニューヨークでパーティーをやろうとしても、プレイすることで逆にコストがかかってしまうか、もしくは全くギャラが出ないような状態だったんだ。みんなが想像するような“ニューヨークの素晴らしいパーティー”とはかけ離れたものだったよ。ただ、今はだんだん状況も変わってきてるみたいだけどね。

HRFQ : ツアーやデビュー・アルバムのリリース、“Get Lost” や“Min2Max”といったミックスCD への楽曲提供など、‘06年はあなたにとって非常に実りのある年でしたね。’07年のプランを教えていただけますか?

Troy Pierce : 1月には LA に行って、ヴォーカリストと一緒に Louderbach のプロジェクトを進めるつもりだよ。他にも Richie から依頼される仕事が山ほどあるだろうしね。彼の命令通りに、あっちこっちに行かなくちゃならないんだ(笑)。まぁ楽しいけどね。

HRFQ : 悪いボスという訳ではなさそうですが?

Troy Pierce : いいや、彼は本当に素晴らしいよ。

End of the interview

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