HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Steve Porter

今年初めに Chris Fortier のレーベル Fade Records からリリースされた オリジナル / ミックス・アルバム “Homegrown” をリリースし、プロデューサーそしてDJとして類まれない才能を披露した Steve Porter。ファンキーかつグルーヴィー、そして独特のメロディ・センスを持つ彼の音楽スタイルは、今後のアメリカのプログレッシヴ・ハウス・シーンを牽引していく存在になると、多方面から高い評価を受けた。

3月にマイアミで行われた Winter Music Conference では、HigherFrequency とのショート・インタビューに応えてくれた Steve だが、それから6ヶ月後、WOMB で行われているプログレッシブ・パーティー Epsilon に出演するために、来日を果たすこととなった。日本初という記念すべき公演を前に、HigherFrequency は再び Steve と接触、ビデオ・インタビューを行った。

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> Interview : Matt Cotterill (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : こんにちは Steve 、調子はどうですか?

Steve Poter : すごくいいよ。また日本に来れて嬉しいよ。これで2回目なんだ。

HRFQ : 1回目は家族と来られたということでしたよね?

Steve Poter : そう、家族と来たんだ。僕の父は科学者で、彼の仕事の関係でここに来て、いろいろ見て回ったよ。僕はゴルフの練習場に何回か行ったんだけど、楽しかったよ。それに、2回くらいカラオケに行ったりもしたな。

HRFQ : カラオケで何を歌ったんですか?

Steve Poter : Bon Jovi の "Living on a Prayer" だよ。あれって結構難しいんだよね。ハハ!

HRFQ : 了解です!ところで、あなたはマイアミの Winter Music Conference には頻繁に参加されていますよね。

Steve Poter : もう6年目になるね。

HRFQ : 1月にアルバム "Homegrown" をリリースされて、マイアミでプレイされて、それから数ヶ月経ちましたが、反響はいかがですか?

Steve Poter : そうだね。今年のマイアミはニュー・イングランドの仲間と僕にとって、初めて自分たちのパーティーを主宰するという面で、大きな前進だったんだ。Porterhouse Party というパーティーをやったんだけど、これは僕と仲間が共同でつくったパーティーであり、アルバムのリリースを祝うためのパーティーでもあったんだ。だから今回のマイアミでのパーティーは、僕たちにとっての大きな進歩であり、飛躍だった。そういう部分で今年のマイアミは今までとは違ったんだけど、毎年何かしら違った進歩があるような気がするね。マイアミには、常にブレイクしてくる新しいアーティストがいて、素晴らしいと思うよ。ただ、今年は特別にエキサイティングだったね。

HRFQ : Porterhouse Party はすでに来年の開催も決定しているようですね。

Steve Poter : そうだよ。金曜日の夜にね。今年のパーティーと同じようなスタイルでやりたいと思ってるんだ。今年のパーティーはフリー・パーティーだったんだけど、それはパーティーが大成功した一つの理由だと思うしね。みんなマイアミではたくさんお金を使うからね。

HRFQ : ツアーをたくさんやられていますが、前回のインタビューでは、オーストラリアのシーンが一番面白いと話されていましたね。

Steve Poter : うん、そうだね。

HRFQ : 今でも同じように感じていらっしゃいますか?

Steve Poter : オーストラリアでは昨年初めてプレイしたんだ。メルボルンと、シドニーでね。今年は、ニュージーランドも加えて、同じようにツアーして回ったんだけど、やっぱりすごいエネルギーを感じたね。同じ顔も、新しい顔も、来なかったお客さんもいたけど、未だにものすごいエネルギーがあったよ。しかも、今年のギグは昨年よりも、もっとエキサイティングだった。昨年のギグが今年に繋がったってことが感じられて、すごく嬉しかったよ。昨年感じた興奮やエナジーも今年は倍増していたしね。オーストラリアはすごくいい感じだと思うな。

HRFQ : オーストラリアのシーンは今にも世界を制覇してしまいそうな感じですよね。

Steve Poter : そうだね!ハハ!!

HRFQ : 他にエキサイティングだと思う場所はありますか?

Steve Poter : そうだね。東京もすごくホットだと思うよ。今スゴく東京がアツい!日本はいつでも素晴らしいよ。その他は、メキシコかな、メキシコのシーンも素晴らしいんだ。それにカナダもいいし、東ヨーロッパ、ハンガリー、ルーマニア、ロシアもいいね。この間ロンドンの Turnmills でプレイしたんだけど、それも素晴らしかったしね。実を言うと、もうちょっと冷たい感じのクラウドを想像してたんだけどね。

Steve Porter Interview

HRFQ : なぜですか?

Steve Poter : やっぱりイギリスのシーンって音楽的にすごくベースがしっかりしてて、歴史もあるしさ。だからクラウドがオープン・マインドでびっくりしたんだ。イビザのギグも楽しかったな。それに、まったく予想もしていなかったんだけど、テネシーでのショーもかなりヤバかったね。アメリカのちょうど真ん中にある州で、農場しか無さそうな所なのに、あんなに盛り上がるなんて、面白いよね。全然予想もしない場所で、ベストなギグが出来たりするんだから。もちろん明らかに盛り上がりそうなところで盛り上がることもあるけどさ。

HRFQ : アメリカのシーンについてお伺いしたいと思います。Chris Fortier や Jimmy Van M といったアーティストは、5年前にはダークでディープなプログレッシヴ・ハウスのスタイルで有名でしたが、最近ではエレクトロな方向にシフトしたような感じがしますが…

Steve Poter : もちろんさ。そういった特定のエレクトロ・ブーム、つまりドイツのエレクトロ・ブームは、今年のイビザで特に感じたね。いろんなところでプレイされてたよ。僕にはちょっとミニマルすぎるし、アナログすぎるけど。だけど、ああいう音だって、全く違うつくり方をしてるわけじゃないんだ。作り手は、ただシンセサイザーから音をとって、レトロな音を使って、それに不器用な感じを加えるだけ…ちょっと故障した感じの音をね。服のブランドに例えれば、Von Dutch って感じさ。Gap や Banana Republic みたいに、数あるブランドの中の一つ。確かに音を聴いたりはするけど、僕はもう少し広い視野から物事を見ようとしてるんだ。いろいろな音楽の影響を少しずつ拾っていくのさ。まぁ、とにかく、そういうブームは起こってるよね。

HRFQ : 確かに、あなたの音楽からはいろいろな音の影響が感じられますね。以前あなたのアフターアワーズ・セットを観た友達によると、ファンクをプレイされていたということですが、それは本当ですか?

Steve Poter : 本当だと思うよ。DJをする時は、いろいろなスタイルでプレイするからね。これは僕の友達のせいなんだ。彼らのおかげでいろんな音楽の影響を受けてきたのさ。考えるに、僕のDJの守備範囲はオーセンティックなファンクから、トランスっぽいダンス・ミュージックまであって、言葉で表現するとファンタジー・ファンクとか、ファンタズミック・ファンクといった感じかな。

HRFQ : ファンタズミック・ファンクですか。いいジャンル名かも知れませんね。

Steve Poter : それが多かれ少なかれ僕のスタイルって感じかな。ちょうど中間。もちろんシチュエーションによっても違ってくるけどね。ラウンジ・タイプの小さい、キャパが100人位のクラブでプレイするときに、ビッグ・ルーム系のトラックはプレイしないよね。少しウォーム・アップして、あったかい感じにしたいと思うでしょ。大きいハコは大きいハコで、それに似合うスケールの大きいトラックをプレイする。もちろん、ミックスしてもいいけど、そうやって分けるほうがベターだよね。

こういうスタイルは、僕のウェディングDJや、フリーランスDJとしての経験からつくられたと思うんだ。ウェディングDJでいるためには、多様性が無くちゃならない。だからこういったアンダーグラウンドなギグでプレイするときも、こういった多様性なスタイルを心がけるようにしてるんだ。

HRFQ : 1週間で、どのくらい新しい音楽を聴かれるんですか?

Steve Poter : 週によって違うと思うけど…。

HRFQ : だいたいでオーケーです。

Steve Poter : そうだね…2〜300枚は聴くよ。最近はデジタル・ダウンロードのおかげでオンラインでショッピングできるからすごく簡単になったしね。2〜300枚聴いて、それから15枚〜20枚に絞って、セットに取り込んでいく。やっぱりDJとしてのテイストがあるからね。それでも、相当な量の音を聴くよ。そのうちのほとんどはセットにも使わないわけだけど。自分には合わないからね。だから結局は使わない音楽がどんどん溜まっていくわけだけど、それもDJとしての仕事の一部だよね。

HRFQ : 今でもアナログを買っていますか?セットではどうですか?

Steve Poter : 今でもアナログを買ってるよ。デジタル・ダウンロードでは見つからないレコードもたくさんあるんだ。アナログでトラックをリリースしているアーティストはたくさんいるわけだし、そういう人がアナログを先にリリースするのも、納得がいく話だよね。もし先にデジタルでリリースしてしまえば、自分で自分の首を絞めることになるんだから。だから、今でもアナログを買ってるよ。だけど、結局はCDに落としてしまうんだ。やっぱりその方がいろいろと楽だし、リ・エディットも出来るしね。レコードは買うけど、リ・エディットをしてCDに落としてしまってからプレイする。そうすれば重いレコード・ボックスを運ばなくてもいいし、音が飛ぶなんてこともなくなるし、レコードも自分の好きな音に調節できて、リミックスの要素をDJセットに加えることが出来る。

基本的に今持ってるレコードは全部リ・エディットしてるんだ。手入れして、プレイしたいかたちにする。そうすれば普段プレイしないような音楽も、自分のスタイルに調節してプレイすることが出来るからね。例えば、あるヴォーカル・トラックがあって、ヴォーカルが好きじゃなくても、トラックのグルーヴが好きな時は、ヴォーカルをカットしてしまえばダブとして使えるでしょ。

Steve Porter Interview

HRFQ : 現在のシーンで生き延びていくためにはそういった作業が必要になってくると思いますか?

Steve Poter : アーティストとして、常に他人とは違う何かをしていないといけないと思うよ。こういう作業は、僕がDJとして抜きん出ているために努力している点なんだけど、世界中を旅して回りながら、音楽をプレイして食べていきたいという人なら、このくらいの努力はするべきだと思うな。僕にとって、これは努力を注ぎ込まなくてはならない過程なのさ。ただ何となくレコードをプレイして旅するためではなくて、一つずつのショーを最高にするため。ショーが終われば、汗だくになっていて、お客さんが僕と同じくらい楽しんでくれたことを願ってる。ただそれだけなんだ。

HRFQ : 今年は随分お忙しくツアーを回られていたようですが、今年の秋〜冬には Porterhouse のEPとコンピレーション・アルバムをリリースされる予定だそうですね。それについて少しお話していただけますか?

Steve Poter : 今夜も何曲か新しいトラックをプレイするけど、EPは4曲入りになりそうだよ。その後に今制作中のコンピレーションがリリースされる。これは僕にとって初のコンピレーションで、商業的な要素のあるDJミックスなんだ。だから、僕のトラックも何曲か入ることになるけど、他のアーティストのトラックもたくさん入れていくよ。

こういう宣伝目的のコンピレーションをつくることも大事だと思ったんだよね。もともと人にミックス・テープをつくったり、ライブ・ミックスしたり、スタジオ・ミックスをしてプロモーションのためにフリーであげたりするのが好きだったんだ。まぁ、そういうミックスの方が商業的なコンピレーション・アルバムより出来が良くなると思うんだけど、今回のアルバムはすごく楽しみだね。なぜかって言うと、このリリースの後にはすぐマイアミの WMC があって、僕たちのイベントがあるんだ。このリリースが来年のイベントに花を添えてくれそうだよ。

HRFQ : 完璧なタイミングですね。

Steve Poter : そうだね。すごく楽しみだよ。Porterhouse もみんなで楽しみながらやってるんだ。ネーミングだって、初めはジョークだったんだ。友達から、いつも「ステーキ・レストランみたいに、Porterhouse って名前にすれば?」って言われていて、初めは単なるジョークだったんだけど、次第に、「オッケー、それにしよう」って感じになってきてさ。 まぁ、でも "Porter" の "House" だから意味は合ってるし、よく表現できてるでしょ。

HRFQ : 最近のアメリカのシーンについてはどう思われますか?

Steve Poter : そうだね。ある意味、とてもユニークで、大きいシーンだと思うよ。カナダも含めて言うと、エリアごとにシーンが独立しているよね。ニューヨークのシーンは常に進行しながら回り続けていて、2〜3年ごとに自らをリサイクルしてかたちを変えている活動的なシーンだよ。その他にもたくさんエキサイティングなシーンがあって、僕がアメリカに帰るたびに、例えばピッツバーグとか、クレーブランドとか、あまりシーンが発達していないようなイメージのある場所が、今すごくアツくなって来ているのを感じるんだ。まだ一回も本当のブレイクを経験していないような場所がね。アンダー・グラウンドなレイブが流行っていた時は、そういう場所にもレイブ・パーティー・ブームはあったんだろうけど、今シーンを盛り上げてるのは、そういったレイブを卒業した人々や、新しい世代の人々なんだろうね。

だから僕が考えるに、アメリカのシーンはすごく大きなエンジンなんだ。だから、一度スタートすればものすごい力を発揮するけど、エンジンがかかるにはすごく時間がかかってしまう。今はまさにそのクランクを回しているような状態なのさ。アメリカのシーンにはバラエティーもあるし、今まさに成長期を迎えてると思うよ。

HRFQ : これだけの多様性と才能のあるアーティストがいるのなら、発達しないほうがおかしいですよね。

Steve Poter : そうなんだ。それに、みんながいろんなことを学んだんだと思うよ。正しいクラビングをして、いかがわしいことはしないこと。倉庫レイブをやめて、協力し合うこと…さっきも言ったように、みんなレイブを卒業したんだ。それに、クラブのオーナーたちも、どうやってビジネスをしていくか学んだんだと思う。セキュリティーを整備して、警察との裏のビジネスもやめるといった感じにさ。

どのシーンも違うんだけどね。面白いんだよ。アメリカの小さい町なんかに行くと、そこには小さいシーンが発達しているんだ。2〜300人くらいしか入ってないんだけど、どのシーンも初めはそういう感じで始まっていくよね。常に時代は回っているんだと思うよ。オーランドは昔プログレッシヴ・ハウスの温床として知られていたんだけど、少しずつ人が離れていってしまって、下降気味だったんだ。でも、この間の7月に僕がそこでギグをやった時には、人がまた人を呼んでって感じで増えて行っていて、どんどん大きくなっている感じがしたよ。シーンにはすごくいいことだよね。

HRFQ : では、最後に日本のファンにメッセージをいただけますか?

Steve Poter : 日本に来れて嬉しいよ。ギグをするのは今回が初めてだからね。今日のギグや、このインタビューを楽しんでくれるといいな。また、すぐに戻って来たいよ!

HRFQ : 今日は有難うございました!お話出来て良かったです。今後も頑張ってください。

Steve Poter : ありがとう!

End of the interview

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