HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Sander Kleinenberg Interview

人口わずかに1,600万人という事実から考えると、おそらく世界有数のダンスミュージック人口密度を誇るであろうオランダ。TiestoやJunkie XLといったトップ・スターを数多く輩出し、ヨーロッパの中において常に中心的な役割を果たしてきたダンスミュージックの大国…Sander Kleinenbergもまたダンスミュージックの女神が微笑むこの国から羽ばたいた才能の一人であると言えよう。かつては"John Digweedの再来"などという呼ばれ方をしていたこともあったが、最近では自らの世界観とプレイスタイルを確立することでメキメキと頭角を現し、今ではプログレッシブ・シーンにおいて欠くことの出来ないビッグな存在へと成長してきたSander。その実績が認められる形で、昨年にはプログレッシブの名門レーベルRenaissanceよりミックスCD "Everybody"を発売し、その内容が各方面で高い評価を受けたことによって、早くも第2弾である"This Is Everybody Too"が去る10月11日に発売されるなど、今まさに乗りに乗っている旬のアーティストであると言える。

その"This Is Everybody Too"のプロモーションをかねたワールド・ツアーの一環として10月末に来日し、WOMBにてその類まれなる才能を披露してくれたSanderにHigherFrequencyがインタビューを敢行。ギグ直前の多忙なスケジュールにも関わらず、時にはジョークを交えながらフレンドリーに、また時には理路整然と我々の質問に答えてくれた。勿論、あのジャケット写真に登場した「ナゾの黄色い帽子」についても語られているのでお楽しみに!

> Interview : Matt Cotterill _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley

triangle

HRFQ : (レコーダーを触りながら)きちんと音が撮れてるのか分からないくらい小さいレコーダーなんですけど…

Sander Kleinenberg : 暗記しとくから大丈夫!(笑)

HRFQ : 今日はお忙しい中有難うございます。

Sander : こちらこそありがとう。

HRFQ : まず日本についてなんですが。これで何度目の来日になりますか?

Sander : これで4回目だと思うけど。

HRFQ : どうですか、日本は?

Sander : 日本は大好きだよ。唯一嫌なのは官僚社会的なとこなんだけど、人に対する接し方とかいいよね。狭い場所にに人がいっぱい詰め込まれてる様なところだから、人との付き合い方とか、お互いを尊敬しあうことが上手なんだろうね。来るたびにすごく歓迎されるし、すごい素晴らしい環境だと思うよ。食べ物も美味いし、文化もあるしね。

HRFQ :ウェブ・サイトに載っていたスケジュールを見ましたが、日本に来る前にアジアもツアーで回られたようですね。現在のアジアのクラブ・シーンについてどう思われますか?

Sander : 日本のシーンはかなりいい感じだと思うよ。たくさんのトレンドが流れる様に入ってきた後で、それがフィルターに通された結果、しっかりしたシーンが出来上がったみたいだね。最近中国の成都に行ったんだけど、なんと僕はそこでプレイした世界で二番目のDJだったんだ。だからお客さんも同じDJが同じような音楽を2時間以上もプレイするような状況に驚いたんじゃないかな。僕たちのシーンが15年前にそうだったように、ヒップ・ホップとかR&B、ハウスをミックスしてかけるDJが一般的っていう状況だからね、そういうところでプレイするのは面白かったよ。それに、クラブ・シーンってそういう段階から、いろいろなステージを経て変化していくわけだし。トランスの変化形とか、ヒット・チューンとかね。だからどの場所もそうであるように、変化し続けてるって感じかな。

Sander Kleinenberg Interview

HRFQ : 最近ではパイオニアのDVJ-XIを使われたプレイをなさっていますが、今回日本でこれを使うのは初めてですよね?

Sander : そうだよ。

HRFQ : DVJ-XIを使うようになってから、あなたのDJスタイルはどのように変化しましたか?

Sander : "DJする"っていう概念を完全に吹き飛ばされてしまったような感じだよ。僕らくらいの年齢にとっては、特にもう少し…5歳、10歳くらい若い人たちには…僕は30だからね。まぁ実際は30歳プラス少しだけど…OK、45歳いや62歳だよ!(笑)

HRFQ : いや、60歳には見えませんから(笑)

Sander : とにかく、そういう年代の人はビデオと、30以上もあるテレビのチャンネルと一緒に育ってきたでしょ。僕が小さい時はまだ3チャンネルしかなかったからね。

HRFQ : そう言えば、そうでしたね。

Sander : だから僕が成長していく中でどんどんチャンネルも増えていった感じで、やっぱりテレビと一緒に育ったんだよね。一方、クラブ・シーンってビデオとかテレビの影響が一番届きにくかった場だと思うんだ。映像と音をシンクロさせながら、DJの作業に集中していいミックスをするなんてやっぱり難しいし、もし曲をかけるなら、それが事前にプログラム化されてるからプレイするんじゃなくて、それをプレイしたいからかけるわけだからね。前は音と映像をシンクロさせたいなら、全部プログラム化してからじゃないと出来なかったんだ。でもDVJは、ピッチをあわせられてスクラッチも出来るプレイヤーって感じだからね。

HRFQ : かっこいいですよね。是非試してみたいです。

Sander : 操作自体はすごくシンプルだよ。基本的にはCDJと同じ。ただDVDJが素晴らしいのは、そこにビデオが付いていて、映像を映し出せるってこと。

HRFQ : 大きな進化だと思いますか?

Sander : すごい進化だよ。あと5年くらいして、アンダーグラウンドのダンス・ミュージック・レーベルが、DVDとセットになったレコードとかCDや、新曲の入ったDVDをリリースまたはダウンロードできるようにしてくれたら嬉しいな。そうしたら商品としてもっと面白くなると思うし、インターネット上の違法なダウンロードなんかも減ると思うんだ。レーベルは「消費者がCDを買ってくれない!」なんて嘆いているけど、実際いい商品を売れば、ダウンロードに3時間もかけるよりも、商品を買うほうを選ぶ消費者はたくさんいると思うよ。

それに、DVDJを使うことによって、さらに自分のアイデンティティを表現しやすくなったね。パフォーマンスにビジュアルの要素を持ち込むことで、ネクスト・レベルに進むことが出来たと思うし、単に他人の曲をかけることだけではなくて、それに映像加えることによって、自分というものをさらに表現することが出来るようになったんだ。実際、最近では他の人とチームとして一緒に働きながら、お互いに意見を交換し合ったりもしている。僕が彼に方向性とか、色とか、フレーバーとかいろいろ映像化したいものを伝えるんだ。まるで超モダンなカラオケだよ!(笑)

Sander Kleinenberg Interview

HRFQ : 今までいろいろなところでプレイなさいましたが、最近印象に残ったギグはありましたか?

Sander : そうだね。僕にとってのフェーヴァリット・ギグはいつも次回のギグなんだ。過去を振り返って「あれはいいギグだったなぁ!」なんて考えるのはあまり賢いやり方とは思えないし、意味が無いと思うんだよね。でも一方で、世界中には最高に盛り上がってるシーンはあるわけで…カナダ、特にモントリオールにはものすごくいいシーンがあるし、NYも一時期に比べたら勢いを取り戻してきたみたいで、新しいクラブが出来たり、フレッシュなアイデアがあったり。いい場所はいっぱいあるよ。もちろん、日本も含めてね。

HRFQ : 日本は楽しいですよね。

Sander : 日本は楽しいよ!地震が無ければね!!(この日は震度4強の地震が何度もあった)

HRFQ : 最近手がけられたリミックスについてお伺いしたいのですが、まずJanet Jacksonの"All Nite"ですが、このリミックスを手がける様になったきっかけは何だったのですか?

Sander : A & Rから「Janet Jacksonのリミックスをしたいですか」って電話があったんだ。椅子から転げ落ちそうになって「やりたいです!」(笑)なんて具合ではなかったけど、全然悪い気はしなかったね。というのも、誰のどの楽曲のリミックスをする時も、フレッシュで人をインスパイアするようなものをつくりたいんだ。誰でもリミックスするようなリミックス・マシーンではないからね…Elvisとかをやっちゃうようなさ!

HRFQ : Justin Timberlakeの"Rock Your Body"もリミックスなさって、大きなヒットになりましたね。そういったいわゆる"ビック・スター"のリミックスを手がけられることについてどう思われますか?

Sander : 全然いいと思う。'80年代中盤にオランダのプロデューサーのShep PettiboneとかBen Liebrandという人たちもそういった"ビック・スター"の楽曲をダンス・フロアに合うようにリミックスしていて、僕自身も彼らの楽曲にはすごくいい思い出があるからね。それに正直、どうしていけないの?って感じだよ。僕たちのサウンドをメジャー・グラウンドに持ち込むことって、すごく大事だと思うんだ…僕たちのシーンもフレッシュにしてくれるし、注目も集めることになるしね。僕たち自身もダンス・ミュージックとエレクトニック・ミュージックのシーンを再発見することだって出来るし。考えてみれば、僕たちの日常生活においてもエレクトロニック・ミュージックはかなり普及しているんだ。車とか、携帯電話のコマーシャルにもエレクトロニック・ミュージックが使われているでしょ?もはやエレクトロニック・ミュージックはある一定の人のためにあるものではなくなってきていると思うよ。 それに、これは重要なポイントだけど、僕のリミックスするアーティストはみんな才能がある人たちなんだ。もし面白くもないアーティストからリミックス依頼が来たら、受けないしね。今までに断って来た人もいっぱいいるし、リミックスをした人はそれに比べれば少ないよ。

HRFQ : 最近リリースされたニュー・アルバム" This Is Everybody Too"についてですが、この作品は昨年リリースされたアルバム"Everybody"の続編という解釈してもいいのでしょうか?

Sander : まぁ、"This is Everybody Too"だからね。実際、どんな風に解釈してもらっても構わないよ。自由で、オープンな発想のアルバムにしたかったからね。僕もその"Everybody"の一人として存在したいけど、これは僕についてでもなく、DJについてのことでもない。これはダンス・フロアで一緒になって雰囲気をクリエイトしてくれるみんなのことなんだ。僕のやってることなんて、誰にでも出来てしまうことなんだから。このアルバムで表現したかったことは、人が集まって、一緒に何かをクリエイトするということ。僕はただエレクトロニック・ミュージックにおける一番面白い部分を引き立たせようとしているだけ。そのためには沢山の音楽を知らなくちゃいけない。だから普段からものすごい数の音楽を聴いて、それをフィルターにかけて、そうやって残ったものが一番だと思ってるんだ。今回リリースしたCD2枚とも、はじめの4・5曲は後半のために流れをつくってコンパイルしたつもりだよ。自分の音楽で世界が変わるなんて思ってない。ただ、僕の音楽には心が込もってる。それが僕にとって一番大事なことなんだ。

Sander Kleinenberg Interview

HRFQ : 素晴らしく構成されたアルバムだと思いました。アルバムをつくるにあたってのコンセプトは何でしたか?

Sander : とりあえず、スーパー・スターDJ的な見せ方は避けたかったんだ。ボーイ・バンドのメンバーみたいなジャケットにはすごく抵抗があって。(いかにもボーイ・バンドがしそうなポーズをしながら)こんな感じのね。プレス用の写真ならともかく、ジャケットは嫌だね。ポップ・スターじゃないんだからさ。

(一同笑)

わかるでしょ?自分らしくいたいってこと。

HRFQ : いかにも「俺のトラックすごいクールだろ?もし使いたいならリリースされるまで3年待てよ」って感じの顔は嫌だってことですよね。

Sander : そうそう。よくDJチャートのTop10を聞かれるんだけど、「なんで知りたいの?」って思うんだよね。チャートの中にはあと12ヶ月くらい経たないとリリースされない未発表の楽曲もあるわけでしょ。そうしたらそれを読んでも「うーん?」って感じじゃないのかな?"好きなビールのトップ10"とか"世界中のベスト・フィッシング・ポイント"なら喜んでつくりたいと思うんだけどさ…まぁ、それじゃ何だからなしとして。中にはウェブ・サイトなんかで熱心に調べてる人もいるんだろうからね。

HRFQ : 家の中でカーテンを閉め切って…

Sander : そう、家の中でね…何がクールかクールじゃないか話し合ってる。そういう人たちが一番シーンをダメにしちゃうんだよ。だから僕のやってることは彼らとまったく正反対のことなんだ。「お前たちは間違ってる、こういうやり方じゃないとダメなんだよ!」ってね。

HRFQ : 今回のアルバムのジャケットですが、最高ですね。どこで撮られたものなんですか?

Sander : あれは今年のGlastonbury で撮った写真だったんだけど、偶然なことに"Everybody" のジャケットもGlastonburyで撮ったものだったんだ。ちょうどジャケットのカヴァーをどうしようかって考えてた時なんだけど、どのイメージもしっくり来なくてストックしちゃってるとこに、Glastonburyで撮ったクレイジーな写真のことを思い出したんだ。それで、なんていう名前だっけこの黄色い帽子…

HRFQ : サウスウェスターでしたっけ?

Sander : それをかぶったこの写真を見て、「これだっ!」ってすぐ思ったよ。回りのみんなは「冗談でしょ?やめてよ!」って言ったけど、「いいじゃん、使おうよ!」って言ったんだ。だってこのアルバムのイメージをすごくよく表現してるんじゃないかと思って…雨の中に立って、サウスウェスターをかぶって、手にはDJバックを抱えて、ぬかるんだ地面を歩いてるなんてさ。

HRFQ : ありがとう、サンダー。最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

Sander : いつでも自分に正直に、周りの人にどんどん愛を広めていって。僕がこれからもそうするようにね。

End of the interview

関連記事


関連サイト