現在のミニマル&テックハウス・シーンにおいて絶大な影響力を誇る Damian Lazarus 主宰の人気レーベル Crosstown Rebels から初のアルバムをリリースし、世界中のダンスミュージック・シーンで大きな話題を呼んだ注目アーティスト Pier Bucci。他にも同郷チリが生んだミニマル / クリック・ハウス界の重鎮 Luciano によるレーベル Cadenza からのリリースや、 Argenis Brito とのユニット Mambotur、 Andres Bucci との兄弟ユニット Bucci など、Croostown Rebels 以外のフィールドでも精力的に活動を続けている彼が、今年の1月に待望の再来日。ワールド・ツアーや楽曲制作のエピソード、彼が参加するユニットやデュオについての話を聞かせてくれた。
> Interview : Cameron Eeles _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : 最近はよくツアーに出られていますね。特に日本には頻繁に来られている気がするのですが…。
Pier Bucci : そうだね。実際日本に初めて来たのは ‘06年9月の Labyrinth で、その後は Yellow でプレイしたんだけど、今回のツアーはほとんど休暇みたいなものなんだ。というのも、ここ1ヶ月間ずっと旅をしていてね。モスクワから北京まで電車で移動して、そこから東京に飛んで、プロモーターに電話して「2週間ほど日本にいるんだけど、何かオーガナイズできるかな?」って聞いたんだ。
HRFQ : ツアーによって音楽制作に影響は出ませんか?
Pier Bucci : もちろん、ツアーに出ていない時は家でずっと音楽制作をしてるよ。でも今はツアーに出る機会が多くて、制作の時間があまりないんだ。でも旅はインスピレーションを与えてくれるからね。僕は目で見たものを吸収して、それを音楽で表現しているんだ。
HRFQ : あなたの作品の中には、ユニットやデュオとして手掛けられたものが多数ありますね。例えば、Argenis Brito とのユニット Mambotur 、Argenis そして Luciano とのプロジェクト Monne Automne …
Pier Bucci : あとSkipsapiens もね。
HRFQ : そうですね。他のアーティストとコラボレーションする面白さとは何でしょうか?
Pier Bucci : 人と一緒に仕事をすると、いろいろ経験できて勉強になる点かな。それが誰であっても学ぶことはたくさんあるんだ。何もトップ DJ や偉い人と選んで働く必要はない。実際、自分とは少し違った嗜好を持った人と一緒に働くと、学ぶこともすごく多いんだ。シーンでトップにつけている人と仕事をするよりね。アイデアをシェアしたり、学んだりすることが僕は好きなんだ。だから人と一緒に働くのが好きというわけさ。ただ最近は一人で仕事をすることの方が多いけどね。
HRFQ : そうですね。特にここ2〜3年の間はソロで手掛けられた作品がヒットを続けていますが、今後もグループのプロジェクトを続けられる予定ですか?それともソロ活動にフォーカスされていく予定ですか?
Pier Bucci : たまには一人で働くのもいいってことを学んだんだ。早いし、なんでも好きなように出来るし、しかも好きな時にプロジェクトを終らせることが出来るしね。だから一人で働くのが好きなんだ。ただ人と一緒に働くのも好きだから、今後も続けていくつもりだよ。Mambotur もMonne Automne も続けるし、新しい人ともユニットを組んでいくつもりさ。
HRFQ : あなたのプロジェクトの一つ? Bucciは、Andresとの兄弟ユニットですよね。家族と一緒に仕事をするのはいかがですか?
Pier Bucci : 最高だよ(笑)。一番さ。彼らからいろいろ学ぶことが出来るからね。僕には二人兄弟がいて、そのうちの一人が僕にエレクトロニック・ミュージックを教えてくれたんだ。彼らは長くドイツに住んでいたから、ドラム・マシーンとかそういった機材をチリに持って帰って来てくれてね。だから僕の最初のプロダクションも彼らと一緒に作ったものだし、彼らと働くのは楽しいよ。
HigherFrequency (HRFQ) : こうして見ると、ドイツとチリの間には面白い関係が生まれているような気がしませんか?たくさんのアーティストがチリからドイツに移住していて、中には Uwe Schmidt (a.k.a. Atom Heart, a.k.a. Senor Coconut) のように…
Pier Bucci : チリに移住する人もいる!
HRFQ : その通りです。どう思われますか?
Pier Bucci : そうだね。僕にとって Atom Heart は一番影響を受けたアーティストなんだ。彼は Mambotur のプロダクションもよく手伝ってくれたし、Mambotur は Atom Heart の息子みたいな存在なのさ。
HRFQ : あなたは今ベルリンにお住まいですね。母国のチリには頻繁に帰られているのでしょうか?
Pier Bucci : 一年に一回友達と家族に会いに帰ってるよ。ただ今年はチリに帰る代わりに日本に来ちゃったけどね(笑)
HRFQ : まだチリに住んでいた頃、Luciano や Ricardo Villalobos、Martin Schopf (a.k.a. Dandy Jack) といったアーティストとの交流はありましたか?
Pier Bucci : そうだね。チリにいた頃から彼らのことは知ってるし、友達だよ。
HRFQ : Luciano を除いて、みなさんベルリンに移住されたわけですが、例えば、チリ人同士の音楽コミュニティーのようなものがあったりするのでしょうか?
Pier Bucci : いいや…ないかな。そういったコミュニティーみたいなものはないよ。僕らはただ友達で、同じ仕事をしてるってだけさ。もちろん、たまに一緒に仕事をすることもあるけど、チリ人だからってわけじゃないよ。
HRFQ : ソロ・ワークの Pier Bucci として、チリ人であることを意識して曲を作られることはありますか?
Pier Bucci : 意識してチリの音楽を作ろうと思ったことは一度もないよ。ただぼくはラテン系の人間だから、音楽に自然とチリっぽい要素が表れてくることはあるかもしれない。でも、意識してやったことは一度もないよ。
HigherFrequency (HRFQ) : いずれかはチリに帰ろうと考えられていますか?
Pier Bucci : う〜ん。そうだね。いつかは帰るかもしれない。でもチリには随分長く住んでいないんだ。
HRFQ : ソロ・ワークのお話を伺いたいと思います。あなたのデビュー・アルバム “Familia” に収録されている ‘Tita’ と ‘L’Nuit’ にはヴォーカルとして Armelle Pioline が参加していますね。彼女をフィーチャーすることになったきっかけを教えて下さい。
Pier Bucci : Armelle は Holden というユニットのメンバーで、その Holden を Atom Heart がプロデュースしていたんだ。だから彼らがレコーディングのためにチリに来た時に Armelle に会ったというわけ。その次に会ったのは、僕がパリに行った時だったな。Armelle は僕のチリ人の友達とスタジオをシェアしていて、僕がそこに遊びに行ったんだ。その時僕はコンピューターやっていたんだけど、Armelle がギターを弾きながら歌い始めてね。「これを録音したい!」って思って、「このまま即興で5分くらい演奏してくれ」って頼んだんだ。そうやって録音したものから完成させたのがこの2曲さ。
HRFQ : 彼女のヴォーカルは本当に素晴らしいと思います。
Pier Bucci : 次のアルバムには彼女の曲がもっと入ってるから心配しないで(笑)僕も彼女の声が大好きなんだ。
HRFQ : 現在進行中のプロジェクトがあれば教えてください。
Pier Bucci : Wagon Repairから新しくリリースする EP と、Crosstown Rebels から出すアルバムの準備をしてるよ。アルバムはたぶん今年の夏にはリリースされるんじゃないかな。それに新しい Bucci の EP もリリースする予定だよ。
HRFQ : 今日はお時間を有難うございました!
Pier Bucci : とんでもない。こちらこそありがとう!
End of the interview
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