HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Mouse On Mars Interview

今年で活動開始から10周年という節目の年を迎えることになったジャーマン・エレクトロニカの雄 Mouse On Marsが、去る7月にリリースされたばかりのオリジナル・アルバム" Radical Connector"を引っさげて、8月末に行われたMetamorphoseに出演するために急遽来日を果たしてくれた。生楽器とエレクトロニクスが極上のブレンドで溶け合うサウンド。そしてハードなテクノやトランスとは対極にあると言ってもよい静的に放出されるエネルギーの粒…。Jan St.WernerとAndi Tomaという二人の鬼才が創りあげてきたその世界観は、長い年月を経て様々な形に進化を遂げてきたエレクトロニック・ミュージックのひとつの究極的な到達点であると言っても過言ではないだろう。

この二人に加え、彼らの盟友であり第3の男とも称されるDodo Nkishiを交えてのインタビューは、まさに彼らのサウンドと同様に哲学的であり、特にJanの口からよどみなくあふれ出る言葉の数々は、一聴すると自由奔放に並べたてられているようでありながら、実は理路整然と組み立てられた数式のような整合性を持っている…そんなことを感じさせられる非常に示唆的な内容であった。

HigherFrequencyにとってもかなりの力作となった今回のインタビュー。秋の夜長に彼らのCDでもかけながら、じっくりと読んで頂けると幸いである。

> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation : H.Nakamura & Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HRFQ : 今週末、Metamorphoseフェスティバルでプレイする事になっていますよね?日本のフェスティバルに参加するのは今回が初めてですか?

Jan St.Werner (以下JSW) : 以前、Electroglideに出た事があるよ。あれも大きなテクノ系のイベントだよね。

HRFQ : 最新アルバムがとても高い評価を受けているようですが、このアルバムが出来上がるまでの経緯を教えてもらっても良いですか?

JSW :プレスは本当に甘いと思うよ。とても良いことだけどね。今回のアルバムでは、今までとは違った幾つかのアイデアを試してみたくて、音楽的にはもっと簡素で、より「歌」と言うものにフォーカスしたものに仕上がったと思う。でも、それらのアイデアが上手くワークするかどうかなんかは、作っている最中には分からない事だし、「出来た」と思ったとしても、それは結局僕らの判断だったりするわけで、とにかくある時点で作品に区切りをつけてリリースし、それからどうなるかを見守る必要があったんだ。で、今回もまたスゴク良い反応を得る事が出来ってわけ。特に、今回のアルバムでは、Mouse On Marsとしてのスタイルを維持しながらも、音楽面で明らかな進歩と変化を実現する事が出来たと思うんだけど、その事に多くの人が気付いてくれたことは嬉しかったね。でも、だからと言って、僕らはそんなにリスナーからのフィードバックには依存していないんだ。音楽はそこから生まれてくるものではないからね。

僕らはいつも自分達の身の回りに起きている事を集めている。ライブをする時だったり、あるいはインタビューを受けている時だったり…。で、あまりに多くのものが集まってくると、今までのものを一旦データに記録して、別のファイルを開けたくなる。それが今回のアルバムなんだ。この作品には、本当にたくさんの僕らの人生における体験が詰まっている。でもその方向性としては、多種多様で色んなものが折衷しているようなものではなく、より密度の濃い、焦点がハッキリと定まった内容になるように心がけたんだ。

HRFQ : 今年、"doku/fiction (doku/fiction:Mouse on Mars reviews & remixed)というタイトルの本を発売し、同時にギャラリーでのイベントも開催されましたよね。こういった色んなタイプのアーティストとコラボレーションをするアイデアは本当に素晴らしいと思うのですが、こういったニューメディアに関するプロジェクトはしょっちゅうやっているのですか?

JSW : アートは好きだし、ヴィジュアル・アーティストや作家達と仕事をするのはとても楽しかった。でも、この本に関するプロジェクトは、「リミックス・アルバム」を作る感覚と同じようなものだったんだ。他人による違った提案や解釈、それにアイデアって言う意味でね。だから、僕らの関わり方も「提唱者」っていう側面がより強くて、実際の作業にはそれ程関わっていないんだ。確かに色んな人と話をしたり、アイデアを伝えたりはしたけど、レコードを作るにくらべるとそれ程大変じゃなかったし…。とにかく色んな人を募って、何か面白い事をやろうって感じで始めたプロジェクトだったんだけど、それが結果的にはデュッセルドルフでの展示会へとつながって行って、しかも、会場となる場所がとても大きなところだったので、そのエギジビション自体も急激に大きくなってしまったというわけ。まぁ、本を出すと言うのは、僕らにとっては全く新しい分野だったし、あれはとても良い経験だったと思うな。いろんな人と一緒に仕事をする事も出来たし、色んな場面でインスパイアされる事もあったしね。でも、音楽に関しては、自分達の仕事場に篭って、自分達だけの世界観で作り上げているよ。

Mouse On Mars Interview

HRFQ : Matthew Herbertとやっている"DJs Collapse"名義でのコラボレーションを始めたきっかけは何だったんですか?

JSW : お互いの音楽的なつながりから生まれたと言うべきかな。このコラボレーションは、ある種のフレンドシップ的な意味合いも持ち合わせていて、意図的に何かを生み出そうとして始められたものではなく、どちらかと言うと、「とにかく何か一緒にやってみようよ」って感じで始まったものなんだ。まず、Matthewが僕らの作品に関わってくれて、その次に今度は僕らが彼の作品に関わって…。まぁ、これはほんの数分の作品だったから、「これからどうしようか?」って事になって、それでこのプロジェクト自体をバンドにする事になったというわけ。で、「このバンドの音はどちらかと言うとDJ向けのものだけど、バンド形式なので、完璧にDJプレイにフィットしたものとは言えない」…そんなコンセプトもあって、名前をDJs Collapseにすることにしたんだ。DJの葛藤と言う意味も込めてね。でも、そんなにキチッとやっているプロジェクトでもないし、次は何が出来るかなぁって感じで、特に具体的なプランも立ててはいないんだ。僕らは、Matthewの新曲を聴くのをいつも楽しみにしているし、彼だって僕らの新曲を楽しみにしていると思うよ。でも、だからと言って、それがすぐさま新しい音楽を一緒に作るって事に結びつく必要性は全然ないし、時にはお互いにぶつかる事もあれば、失敗する事だってあると思うんだ。だから、どちらかと言うと、このプロジェクトはお互いに対する尊敬の念が基本であって、例え一緒に曲を作っても作らなくて、その尊敬の念は消えずに残っている…そういった類のものだと思う。まぁ、音楽自体、「お互いに対して興味を持つ」ってことのサイド・プロジェクトみたいなものだからね。

HRFQ : 他に一緒に仕事をしてみたいと思っているアーティストはいますか?

JSW : PrinceとOutkastのAndre 3000。Tony Allenともやってみたいかな。あと、Nicoletteともずっと仕事をしてみたいと思っているんだけど、なかなか実現しないんだ。でも、僕らは決してコラボレーション・フリークじゃないし、自分達の作品を作っている事で充分に幸せだからね。他の人と一緒に作業をすると、話し合いとかも色々必要になってくるし…。事実、今までの10年間で、たった3つのコラボレーションしかやっていないんだ。StereolobのLaetitiaと一緒に出したシングルと、あと幾つかのプロジェクトで彼らを手伝ったくらいかな。

HRFQ : あなた自身、色んなものからインスピレーションを受けているように見受けられますが、新曲を手がける時、「非音楽的=ノン・ミュージック的なアイデア」をどうやって音楽的なものへと昇華させていくのですか?

Dodo Nkishi : それは単に「認識の問題」って事で、結局は全て同じものだと思う。さっき君は、「あなた達は音楽以外にも興味をもっているようですが…」って言ってたけど、確かに僕らは映像に対しても興味を持っている。映像もまた人生の一部分だし、音と同じように僕らが経験するものなんだ。だから、それをどうするのかと言ったことはあまり問題ではなく、見て、感じて、意識するって事が大切だと思う。そうすれば、後は何とかしてそれらの要素を(音楽に)入れ込んでいく事も出来るわけだからね。君が気付く事さえ出来れば、アイデアなんてどこにだってあるさ。だから、ノン・ミュージック的なコンセプトを考えると言うのは、そんなに意識的な作業ではないんだ。

JSW : たとえ何かをうまく変換していけるようなコンセプトを持っていたとしても、結局、最初の閃きみたいなものは幾らか消えてしまうものだと思う。それに、インスピレーションや何かの源となったアイデアみたいなものを、実際の生活の中に持ち込むのは、それが映像だろうと音だろうと、とても大変な事だからね。ましてそれを他のものに変換していくとなるとなおさらのことだと思う。しかも、このプロセスはとても意地の悪いものでもあるんだ。なぜなら、人は、何かを見つけようと努力し、次にそのやり方を見つけようと努力する。でも、一旦そのメカニズムが分かってしまうと、それに手を加えたり、改良したり、違った形で貼りなおしてみたりしたくなるものだからね。

だから上手いやり方を認識している以上、それはもうクリエイティヴといえるんじゃないかな。ものをつくっている時点で、それをすでにつくり直しているんだから。 音楽やアート、ライティングとかすべてにおいてそうだけど、認識された上で生まれるものは、その結果副作用として自然に表れてきたものに近いのかもしれない。 だから大半のミュージシャンは、クリエイティヴになろうという考えを捨てるんだ。おもしろいことに、クリエイティヴになりたいという考えを捨ててしまわない限り、クリエイティヴにはなれないんだ。クリテイティヴな人の場合、「どうやってこのアイデアが生まれたのか?」とか「どうやったらこんな新しいことを思いつくのか?」なんて考えないんじゃないかな。逆に彼らはそういう風に考えないようにしていると僕は思うね。

僕が音楽のプロデュースを始める前は、よく好きなバンドのアルバムを聴いたりしていた。でも、アルバムを3つか4つ聴いてみると、だいたい全てが同じに聴こえたり、似ている要素があるなぁと感じてしまったんだよね。だからいつも「どうして変えようとしないんだろう」とその頃は思ったものだよ。極端な例を言うと、REMとかU2の曲は全部同じに聴こえてしまう。決して彼らが嫌いって言ってるわけじゃないんだけど…だって僕たちだっていつも似たような曲をつくっているわけだからね。じゃあ、どうしてこんなことを話しているかっていうと、同じように聴こえてしまうのは、聴く側が気にしていないからだってことを言いたいからなんだ。アーティストは曲をつくって、常に何かを伝えようとしているし、何かをアピールするような曲を作りたいと思っている。だけど結局そんなことは、聴く側にとってあまり重要な問題じゃないってこと。だから、大事なことは「何をつくったか」ではなくて、「何を理解したか」ってことなんだと思う。作品は自分の後からついてくるものだし、もちろんそれを演奏することも、人にリミックスを頼んだりすることもあるだろう。だから、本当にアーティスティックな作品というものは、副作用的なものであったり、あるいはノイローゼ的なものだったりすると思うんだ。

自分なりの仕事の仕方や、頭の中で物事を整理する方法をしっかりと理解していたら、 そして何かをクリエイトするためのプロセスというものを知っていれば、もう何もつくる必要はなくなるんだ。時々、急に作品をつくらなくなるアーティストとか、長い長い時間をかけて、何か違ったものをクリエイトしようとしているアーティストがいるでしょ。僕はいつでもそういうアーティストを尊敬してきたんだけど、一方で僕ら自身は、ルーズに自分たちのやり方で音楽をつくるタイプだから、あんまり深くは考えないようにしているんだ。だから、僕らはある意味良いミュージシャンだと言えるのかもしれないね。

Dodo : だから前のアルバムは2年間もかかったのさ。

JSW : 僕はSun Ra (超前衛的な即興ジャズ・ビッグバンド)が好きだったんだけど、彼って、いつも「演奏しているのは俺ではない。交信しているだけだ。これは宇宙の音楽なんだ」と言ってたでしょ。確かに、多くのスピリチャルな音楽がこの要素を持っていると思うよ。自分自身の音楽に取り込むために、宇宙音階やそのスキームを見つけようとしていたMoon Dogなんかもそうかな。

Dodo : でも、繰り返しになっちゃうけど、結局は「認識の問題」なんじゃないかな。だって、最終的には、何かを表現しようとしている人であれば誰だって、同じことを経験しているはずだし、それって、インスピレーションや秘密の場所といった呼び方をされる場所へどうやって繋がるか、みたいなものでしょ。確かに、他の人達が気付かなかったことを、Sun RaやMoon Dogは本気で取り組んだのかもしれない。でも、それってつまらない考えが生まれてくるだけだし、Janが言ったみたいに、人は結局色んなものを排除しようとするわけでしょ。

JSW: 結局、僕が気にすることはそういうことだよ。ほとんどの人が他人のつくった音楽をかけるとき、"プレイ"するって言うだろう。特にDJが他の人の音楽をかけるのは、ほとんど音楽を作っているのと同等のことで、そういう時にいかにその音楽を理解しているかっていうことが問題になってくる。だから僕は実際に一歩ひいて、その楽曲を本当に理解しようとする人を尊敬するんだ。

Mouse On Mars Interview

HRFQ : あなたの音楽はスピリチュアルだということでしょうか?

JSW:そういうことではないんだけど。

Dodo : Radical Connectorで表現していることと同じようなことだよ。違ったレベルに通じることができる能力や、それらが本来共存しているものだということを気付くこと。彼には彼なりのやり方があるけど、最終的にそれが形になったときには結局同じということさ。僕たちにも理解できない不思議な方法でね。

HRFQ : もし、あなたたちがクリエイトするエレクトロニック・ミュージックが哲学的なアイデアに直結しているならば、まじめすぎる音楽になってしまうはずですよね。そういった音楽が同時にダンス・フロアを熱狂させてしまうのはどうしてなのでしょうか。

JSW: 僕等は哲学することに情熱を傾けているから、音をつくることは考えること、再考すること、そして考え方を再び形作ろうと努力することなんだ。でも、ライヴの時には、明らかにオーディエンスが目の前にいるんでしょ。たまに、あたかも目前に誰もいないかのようにプレイする人がいるけど、僕にはそんなことは出来ないんだ。だからこれはコンセプトというよりかは、理解力の問題だと思うな。

HRFQ : あなた達のライブのセットアップに関して伺いますが、何か新しいテクノロジーを使っていたりしますか?

JSW : 僕の担当は、エレクトロニクス全般。サンプラーとシンセ、それからソフトを幾つか使っている。

Dodo : 僕はドラムとボーカル。また、ボーカル・サウンド。で、Janが僕のボーカルを取り込んで、"電気処理"するんだ。でも大切なのは、僕らが何を使っているかではなくて、どう使っているかと言う事。例えば、僕がやっている事をJanが聞いて、マシーンと彼の指を使って同時に反応する。で、彼がいじった音を聴いて、今度は僕が反応する。Andiはベースを担当しているんだけど、彼もサウンドをマニュピレートする…。ある種、非常に偶発的で、綾織り風になっているものと言えるだろう。まぁ、これをマジックと呼べるのかもしれないけど、それは、その日の僕らのパフォーマンスと、それに対してオーディエンスがどう反応したかにもよるね。

HRFQ : あなた達の運営するSonigレーベルですが、最近はどのような事にフォーカスしていますか?

JSW: Sonigはいわばアーティストにとっての実験場のようなレーベルで、明確なコンセプトや共通の音があるわけではないんだ。だから、それぞれのアーティストには自分たちの個性で楽曲をつくって欲しいと思っている。しかも、このレーベルに在籍している連中は全員アーティスティックなバック・グラウンドやビジョンを持っていて、自分なりの音楽性を強力に発展させていっているし、実際、ほとんどのアーティストが音楽活動と平行して芸術的な活動もやってたりするから、中にはエキセントリックな奴もいたりするんだ。でも僕らは、そういった個性的なアーティストが音をつくるスペースとして、こういったレーベルを提供出来ることを本当に楽しんでいるし、それに、幅広い音楽テイストを持ったアーティストがつくり出す音楽を、無理やりひとつのジャンルに当てはめようとしても難しいでしょ。

例えばNiobeってアーティストがいる。彼女は、自分の声と楽器をかなり面白い方法でサンプリングしたものをつかって音楽をつくっているアーティストで、彼女自身はいろんなパーソナリティーを持っている。でも、音をつくる時はそのすべてが一緒になってNiobeというアーティストを形成するんだ。だからSonigは彼女に自由に音楽をつくれる環境を与えているんだと思う。

ただ、レーベルは実験場としては広すぎるのかもしれないね。Jason Forrestのようなかなり個性的なアーティストもいるし…彼はロックやディスコのテイストも持っているから、踊れる音だとは思うんだけど、とにかくいろんな音をミックスする奴なんだ。それに、ブリュッセルのScratch Pet Landもいる。彼らはものすごく才能豊かで、メンバーの一人はDJをしているんだけど、DJのテクニックとエレクトロニカを融合させてみたりしていて、もう一人の方はビジュアル・アーティストだったりもする。彼らには常に豊富なアイデアがあって、新しいことに挑戦しているんだけど、いつもそれをScratch Pet Landらしくまとめてしまうんだ。とにかく、彼らはSonigというレーベルに在籍していて、僕らはその運営に関わっているから、僕らは彼らを世の中に紹介していく。でも、そのレーベルは一人のアーティストの発掘によっていろいろな方向性へと発展出来るものだと思うんだ。だから僕たちのレーベルは単純なハウスやエレクトロニカのレーベルとは違って、様々な分野に広がっている。かなり強烈な個性と、多様な表現方法を持ったWorkshopのようなバンドもいるしね。ニュー・フォークのような、ロックのような、エクスペリメンタルなバンドなんだけど、バンドのメインとなる奴は、実はビジュアル・アーティストとしても成功している人なんだ。彼はKai Althoffのメイン・パートナーでもあって、今ボストンの美術館で大きい展覧会を開いているよ。だから彼はアートの世界では有名人だけど、彼の音楽について知っている人は少なかったんだ。しかも、だいたいのレーベルにはこういう音楽は欲しいけど、こういう音楽はいらないといった一定のコンセプトがあるから、彼の音楽に合ったレーベルを探して、契約を交わすことは難しかったみたい。だから今は"好きなようにアートしろ"というコンセプトのレーベルで音楽活動が出来て、なおかつそれを僕らが世に広めるんだから、彼らは幸せだと思うよ。僕らはレコード・セールスの伸びないからといって、アート・シーンの音楽であろうが、どんなジャンルの音楽であろうが、リリースすることをためらわない。だってリリースするものには強いこだわりを持ってブランド・イメージをつけなくてはいけないし、僕たちのこだわりとは、ブランドをつくらないことだからね。つまり、僕らのレーベルはアンチ・マーケティングなんだ。

Mouse On Mars Interview

HRFQ : 来月はツアーでアメリカを回られるのですが、アメリカのオーディエンスの反応やあなたの音楽に対する認識はほかの国と比べてどのように違いますか?

Andi Toma:これはある一定のオーディエンスに限って言えないことだと思うけどね。音楽の方向性や、会場の天気、その国、その国の人の態度によるんじゃないかな。

実際、以前ベルギーでコンサートをしたことがあったんだけど、それが僕らのワースト・コンサートと呼べるようなひどいものでね。オーディエンスが僕らのショーにまったく興味がないように見えたから、ちょっと困らせてやろうと思って大きなフィードバック音を残したままでステージを降りたんだ。まぁ、結局は自分たちを傷つけることになってしまったけど…(苦笑)。それから6年間ベルギーでコンサートをする機会がなかったから、そのことも忘れかけていたんだけど、ある日再びそこでプレイすることになって…最初はすっかり忘れていただけど、部屋に入ったとたんそれが6年前と同じクラブだったことに気付いたんだ。しかもそのクラブの人に「うちの客はいまだに君たちの6年前のコンサートの話をしてるよ」って言われて…。まぁ、無理はないと思ったよ。30分もあんなフィードバック音を聴いてたら医者の一人や二人にもかかっただろうしね。ところが、これがとても素晴らしいコンサートになったんだ!なかなかステージから立ち去れないくらい盛り上がって、6年前とは全然違うコンサートだったんだ!

HRFQ : それではどんなオーディエンスが一番ですか?どういったオーディエンスがあなたのショーを一番楽しんでいるように思いますか?

JSW:さっきの話は、ある意味オーディエンスにもスペースが必要だということを証明したんじゃないかな。僕たちの音楽を最大限に楽しむためには、彼らにも時間が必要だったということだよね。結局6年もそこでコンサートをしなかったから、オーディエンスも僕たちのショーを相当楽しみにしてくれていたみたいだったし。

AT:ドイツのオーディエンスはやっぱり厳しいかな。いい曲も悪い曲も、聴いているというよりかは、始終評価してるという感じだね。彼らはただ僕たちの音楽をどこかのバンドと比べて、自分が正しいと証明したがっているような感じがして居心地が悪いんだ。アメリカのオーディエンスは常にパーティーしたがっていて、なにかおもしろいことを期待してるんだ。日本のオーディエンスはきちんと曲を聴いてくれる。変なノイズが聴こえたり、アクシデントが起こったとしてもきちんと聴いてくれる。おもしろいことに、もしオーディエンスがきちんと曲を聴いてくれると、僕たちも曲を聴く。もしオーディエンスが何かを待ち受けているならば、僕たちも何かを期待してしまうんだ。

End of the interview

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