HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Lil' Louis


Junkie XL ; スタジオ・ジャンキー、そしてエキスパンディング・リミット=限界を超越する、という極めてハイテンションな意味合いの言葉を掛け合わせたアーティスト名を持つオランダ出身のプロデューサーTom Holkenborg。90年代後半から次第に頭角を表してきたJunkieは、99年に発表した"Big Sounds Of The Drags"においてビッグビートやブレイクビーツを背景としたロックテイスト溢れるサウンドを展開する事で大きな評価を獲得する。その後は徐々に4つ打ちのサウンドに傾倒し、2002年にリリースされたSASHAのデビューアルバム"airdrawdagger"のプロデューサーとして起用された事で、一気にプログレッシブ・シーンのトップアーティストとしての地位を確立。最近ではその居をハリウッドに移し、映画のサントラ製作などの世界において活躍をしていると言う。

そのJunkieが、2003年の伝説的な新宿リキッド・ルームから1年を経て再来日を果たし、WOMBで白熱のライブ・パフォーマンスを見せてくれた。その直後に行われたHigherFrequencyとのインタビュー。今の制作活動やニューアルバムの予定、そしてSashaとのコラボレーションなどについて話を聞いた。

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> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : ちょうどWOMBでのセットを終えられたばかりですが、いかがでしたか?

Junkie XL : 東京でプレイするのは大好きなんだ。すごく楽しかったよ。

HRFQ : 今日のライヴ・パフォーマンスのセット構成を少し教えてもらえますか?

Junkie : ラップトップのコンピューターにProtoolsとAbleton Liveを同時に走らせているよ。あと、YAMAHAのAW4416…これは、マルチ・エフェクターとシーケンサーも付いている40チャンネルのマルチ・トラック・デジタル・レコーダーなんだ。あと、もちろんビンテージ・シンセのKORG MS10もね。

HRFQ : 現在はL.Aに住んでいると聞きましたが、何年くらい住まれているんですか?

Junkie : もう一年になるね。ロスに移り住んだ理由は、ずっとやってきた映画の仕事にもう少し比重を移していこうと思ったからなんだ。例えば、"キャット・ウーマン"の音楽も30-35%くらい手がけたし、新しいイライジャ・ウッドの映画"フーリガンズ"シーンも沢山担当した。Forzaっていう来年発売予定のレーシング・ゲームのために楽譜も書いたし。ハイネケンやキャディラックのコマーシャルもつくったんだ。

HRFQ : 今後はどんなプロジェクトを手がけられる予定ですか?

Junkie : 今年はニュー・アルバムに取り掛かる予定だよ。映画の音楽もつくり続けるけど、アルバムのほうに集中したいから、今年の早い時期にはアルバムづくりを始ようと思ってるんだ。

HRFQ : 前回のアルバムでは、アーティストにオファーをする前から、あなた自身が20人のヴォーカリストを選んで、彼らが歌ってくれることを想定して、それぞれの楽曲を制作したそうですね。結局全員のヴォーカリストがあなたのオファーを受けたということですが、次回のアルバムに向けてはそういった一緒にコラボレーションしてみたいヴォーカリスト/アーティストのリストを用意されていますか?

Junkie : 彼らがオファーを受けてくれたなんて、まさに夢のようだったよ。理想のヴォーカリスト……僕にとってはヒーローのような人たちがオファーを受けてくれたんだからね。でも、次回からはもっと若いアーティストたちとコラボレーションしていこうと思ってるんだ。僕のL.Aの友達でLucas Bankerって奴がいるんだけど、彼は才能を発掘する天才なんだ。だから、僕も今後は名前の知れたヴォーカリストよりも、若いヴォーカリストと仕事をしてみたいな。ただもし可能なら、一度でいいからDavid Bowieと仕事してみたいな。

HRFQ : Sashaとは現在でも一緒にコラボレーションされているんですか?

Junkie : 実はInvolverに収録するために、彼と一緒に取り組んでいた楽曲があったんだけど、リリースまでに完成させることが出来なかったんだ。でも、将来的には何らかのコラボをすることになると思うよ。彼はいい友達だからね。

HRFQ : またSashaといえば、ダンス・ミュージックとロックの融合を第一線で行ったことで注目を浴びているアーティストの一人であるといえますが、私たちとしてはあなたが2002年にリリースしたアルバムが、当時のSashaの音楽テイストに大きな変化を与えたという事実を無視して通ることは出来ません。彼と仕事をした時には、こういった話はよくされたのですか?

Junkie : そうだね。あの時は色んなことを話したんだけど、あのファースト・アルバムAirdrawndaggerがリリースされた時、彼はもっと内面的な世界を表現しようとしていて、世の中のほとんどのリスナーはもっとトランスっぽいアルバムを期待していたようだけど、彼はそういったアルバムをつくる気はなかったんだ。だから、僕の役割もいわゆる普通のプロデューサー的なもので、アルバムにきちんとしたストーリー性を持たせることが中心だった。プログラミングもやったけど、実際Airdrawndaggerに取り組んでたのは4人のプロデューサーで僕はそのうちの一人だったんだ。明らかに、彼は2作目のInvolver からは、新しい要素をアルバムに取り込み始めたと思うよ。例えば、ファーストの時にはあまりやりたがらなかったヴォーカルをたくさんフィーチャーしたり・・・。だから、やっぱり以前と比べたら、どんどん新しい要素を取り込むようになってきていると言えるんじゃないかな。明らかに、今はギターの音を入れることにもあまり抵抗がないみたいだしね(笑)。

HRFQ : Junkie XLの'XL'には'(e)Xpanding Limits' = 限界を超越する、またビジョンを広くするという意味があるとのことですが、次に限界を超越しようとするエリアはどこですか?ロック・ミュージックとダンス・ミュージックを融合を見事に果たしたあなたが次に起こすアクションとは何なのでしょうか?

Junkie : それは難しいことだよ。既にいろんなことが試されてきたと思うし、今では多くのプロデューサーがいろんな音をクロスオーバーさせる方向に向かおうとしているでしょ。あたかも「ポップ・アーティストになりたいDJ」みたいにね。だから、僕はもうちょっとアンダーグラウンドな方向に行こうと思っていて、映画のサントラを通じて学んできた他とは全く異なった制作手法を活用してみたいと思っているんだ。それが今後の僕の方向性かな。あとはニューアルバムをリリースすること。こちらには逆に10曲から15曲のポップ・ソングを入れるつもりさ。今までにリリースしてきたレコードは3枚ともクロスオーバーな作品だったし、今は他の人も同じことをやってるから、もっと違ったことをするのに興味があるんだ。

HRFQ : 映画のサントラは、大きなチャレンジだったと思いますがいかがですか?

Junkie : そうだね。というのも映画の場合、音楽は一番後回しだからね。映像が出来上がって、映画を受け取って、そこで初めてその映画にあった音楽を考えはじめるんだ。でも、映画の音楽をつくっていて、すごくクールだなって思ったのは、ラジオでエレクトロニック・ミュージックを流している国はまだまだ少ないから、映画とかコマーシャルもラジオと同じような役割を果たすことが出来るってこと。例えば、さっきも言ったキャット・ウーマンとか、キャディラックのコマーシャルは世界中の人が見るわけだよね。キャディラックはアメリカだけのオンエアーだったけど、アメリカはアメリカでも例えばテキサスとか、普段エレクトロニック・ミュージックなんて聴かないような人がみてくれるってことでしょ。わざわざナイトクラブにJunkie XLのショーなんて絶対に観に来ないような人が僕のつくったエレクトロニック・ミュージックののったコマーシャルを楽しんでる…なんて想像しただけでクールだよ。

HRFQ : 近い将来の2015年には、私たち消費者はお気に入りの音楽を手に入れるために、レコード会社やレコード・ショップを必要としていると思われますか?レーベルやディストリビューションなどのシステムは今後どのように変化していくと思われますか?

Junkie : 難しい質問だね。でもとりあえず音楽の違法ダウンロードがひどくて大変だった時期はとりあえず通過したんじゃないかと思ってるんだ。実際に僕の作品も随分と被害を受けたけどね。でも一方で、ダウンロードが一般的になったことで、インターネットを通して新しい音楽を知る可能性はさらに広がったと思うよ。今後もi-tuneとかの会員になる人はもっと増えると思うし、そういったシステムを利用する人が増えると、彼らが売る音楽の値段もどんどん下がっていくだろう。それに最大のポイントは、1クリックで音楽が買えちゃうということ。これに対してレコード会社やディストリビューション会社が将来的にどういう動きをとるかを見極めないといけないと思うんだ。それは、今までにある程度名前のあるアーティストと、これから活動を始めようとしているアーティストによっても随分と違ってくると思う。例えば、インターネットでJunkie XLを検索すれば何かの検索結果が出てくるけど、新しいバンドを始めた人が…例えばバンド名がABCとか DEFだったとして、レコード会社か誰かに認められてプロモーションしてもらうまで、誰にも名前を知られることはないわけでしょ。まぁ、今はレコード会社も昔ながらの宣伝方法をとっているとは思うけど、将来的には、もっとインターネットを活用したマーケティングを始めることになるだろう。でも、レコード会社やディストリビューション会社のアーティストに対する投資はいつの時代も必要なものだから、彼らが消えてなくなることはないと思うよ。ただ、彼らがインターネットを活用する割合は多くなると思う。まぁ、ここですべてを断言するのはやっぱり難しいよ。もしかしたら10年後にもCDやレコードを買いたいと思う人はいるかもしれないしさ!

HRFQ : あなたは長時間スタジオにこもる人としても有名で、だからこそ'Junkie XL'というアーティスト名をつけられたわけなのですが、今までに最高で何時間くらい日の目も見ずにスタジオにこもられたことがありますか?

Junkie : 今住んでるL.Aのスタジオには窓があるから、そんなにひどくはないよ。でも、アムステルダムに住んでいた時のスタジオは、すごく大きかったんだけど地下にあったから、日光がまったくあたらなかったね。だから、朝起きてコーヒーを飲む10分間と、昼にサンドウィッチを食べる10分間だけ日に当たるっていう生活を繰り返してた時もあったかな。

End of the interview

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