オーストリア・ウィーン出身でLA在住のJohn Tejadaは、アメリカのテックハウスのシーンにおいてNo.1の人気と実力を誇るDJ/プロデューサーであり、デトロイトやヨーロッパ各地のテクノ・クリエイターとのコラボレートを通じて、ジャジーなサンプルとデトロイト・スタイルのシンセを柱としたサウンド・スタイルを確立してきたトップ・クリエイターである。自らのレーベルPaletteを運営する傍らで、映画、TVなどへの楽曲提供やリミックスなどでも多忙な毎日を送るJohnが、ArcTokyoの招聘により来日。4月2 日に名古屋Club Editで、そして翌4月3日には大阪Underloungeにて素晴らしいPerformanceを披露してくれた。
> Interview & Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)
HigherFrequency (以下HRFQ) : 昨年のPlus Tokyoへの出演以来の来日ですね。今の感想は?
John Tejada : 素晴らしいね。とても楽しみにしてたんだ。
HRFQ : 日本のテクノシーンについてのあなたの感想を教えてください。
John : それほど多くの事を知っているわけではないけど、初めて見た時、とても良い印象を持った事を覚えているよ。日本のシーンについてはいつも良い噂しか聞かないね。
HRFQ : 誰か影響を受けた日本人DJは居ますか?
John : これまでに日本人DJを目にする機会は余りなかったんだよね。特にLAに住んでいるとなおさらって感じで。でもケンイシイの初期の作品は大好きかな。
HRFQ : 制作パートナーであるArian Levisteとは10年以上に渡ってコラボレーションを続けていらっしゃいますが、長期間に渡ってコラボレーションを続ける秘訣みたいなものってありますか?また、二人の間には何か一定の役割分担があったりするのですか?
John: そうだね、もう13年にもなるんだよね。でも、僕らのコラボレーションはその間ずっと上手くワークしてきたと思うよ。彼とは気楽に仕事が出来るからね。役割分担については、曲が完成するまで交代で主導権をとりながら作業していくって感じかな。
HRFQ : あなたのレーベル、Paletteについて教えていただけますか?どのような戦略やコンセプトを描いて活動されていますか?
John : Paletteに関してはかれこれ7年半ほど運営していて、この5月に出てくる一連のリリースで、ちょうどシングルで30タイトル目、アルバムで2タイトル目を数えることになるんだ。もちろん、長期間にわたって継続して来れたってことも嬉しいけど、その間にレーベルがコンスタントに成長して来れたって事が特に嬉しいね。このレーベルは、もともと何か特別な戦略があって始めわけではなくて、基本的には自分の作品をリリースする為にスタートしたものなんだけど、最近ではレーベル自体の運営がとても順調に行っている事もあって、今後はもっと積極的に自分の作品のリリースをこのレーベルに集約していこうと考えているんだ。
HRFQ : Paletteからのリリースを含めて今後予定されているリリースについて教えていただけますか?
John : Paletteからの次のリリースは、Justin Maxwellと僕のコラボレーション作品になる予定だよ。この新しいコラボレーションはとてもエキサイティングなものになりそうで、JustinのデビューEP自体も5月にはPalette 31としてリリースする事にしているんだ。また、その前の5月上旬にはArianと僕の3曲入りの新譜「Psycho Happiness」もリリースされる予定になっていて、9月には僕のニューアルバム「Logic Memory Center」もPlug Researchからリリースされる事になると思う。
HRFQ : あなたのご両親がクラシックの音楽家で、母親がソプラノシンガー、父親が指揮者である事はよく知られていますが、あなたが現在テクノのフォーマットで音楽を制作する際に、クラシックからの影響を受けていると感じる事はありますか?
John : クラシックからの影響は、いつも僕の頭の中に何らかの形で潜在的に存在していると思う。でも、最近では所謂オーケストラ・サウンドからの影響は徐々に少なくなってきているかな。まぁ、いずれにしても「音」である事に変わりはないからね。
HRFQ : 以前の幾つかのインタビューで、あなたの母国アメリカでは大きなテクノ人気は殆ど見られないと発言されていましたが、なぜテクノはなかなかアメリカのマーケットにフィットしないのでしょうか?
John : 正直言ってよくわからないな。おそらく僕以外の人は全員その答えを知っているんだろうけど・・・。でも、やっぱりテクノが認知されている場所に行ってプレイする方が楽しいね。
HRFQ : ヨーロッパのテクノシーンとアジアのテクノシーンについて何か大きな違いを感じる事はありますか?
John : 僕はその質問にキチンと答えられるほどアジアに行った経験がないのかもしれない。でもヨーロッパもアジアも、音楽に対してとても熱心なところだと思うよ。
HRFQ : 去年イギリスのImmigrantからオリジナルアルバム「The Toiling Of Idle Hands」をリリースされたばかりだと思いますが、このアルバムのコンセプトについて教えていただけますか?
John : 正直言うとあまり思い出せないんだよね(笑)。というのも、このプロジェクト自体が2年以上も遅れてしまった企画だったからなんだ。実は僕らが一番最近になって制作した作品はPlayhouseからリリースされた「Fairfax Sake」で、Immigrantの作品とMoods and Groovesの作品が遅れたために、これらの作品が後から出る事になってしまったんだ。でも今後はこんな事にならないよう注意をするつもりだよ。それから、さっき話したPlug Researchからリリースされる予定の次のニューアルバムだけど、この作品には色んな面白いサプライズが仕掛けてあって、音の面でも作り込んでいるから楽しみにしていて欲しいな。
HRFQ : 昨年リリースされたPlusのコンピの様なMix CDをコンパイルする際、どのようにして収録曲を決めるのですか?
John : 単にレコードボックスをチェックして、希望のトラックリストを作るだけだよ。今回は1曲を除いて残りは全部OKが出たからとても上手く行ったと思う。
HRFQ : 新しい技術に関しての話題が絶えない昨今ですが、あなたはi-tuneやnapstarと言ったものが生まれた国に住んでいますよね。みんな7〜8分もあるようなテクノのトラックをi-tuneなどのダウンロード系のショップで買うようになると思いますか?
John : うん、間違いなくそうなると思うよ。特に最近ではデジタルDJ関連の商品がたくさん出回っているからね。でも、これはとてもいい話で、この方法がキチンと確立されて正しく運営されるようになれば、お店で商品が売り切れる事もなくなるだろうし、レーベルもお金をちゃんと受け取れるようになるんじゃないかな。
HRFQ : あなたはPlug Inソフトなどの新しい音楽制作のテクノロジーに大変精通されているようですね。つい最近もNative Instrumentsのサイトであなたのデモソングを見かける機会がありましたが、こう言った会社に対して製品開発の段階で色んなアドバイスを与えたりしているのでしょうか?
John : 僕は単にベータ版チームの一員なんだ。ソフトを開発している友達が何人かいたりするので彼らと話したりする事はあるんだけど、そんなに大きく関わっているわけじゃないよ。
HRFQ :何人かのアーティストが「アウトボード機材の価値を再認識すべきだ」と発言していますが、これについてはどう思いますか?また、あなたの音楽制作は全てパソコンで完結していますか?それともアウトボード機材を使ったりしますか?
John : 自分の音楽制作にはMACを使っている。まぁ、こういった議論は結局のところ人それぞれの制作スタイルの好みに集約されるべきで、みんなこう言った議論をいつもしているようだけど、個人的には進化したものはドンドン使うべきじゃないかなと思うんだ。だから、僕は今のセットアップに満足しているし、最近では100%コンピューターで作業しているよ。
HRFQ : お奨めのプラグインは何かありますか?
John : 最近はArturiaのminimoog VやReFXのVanguard Synthにハマッている。あと、LinplugのRMIVサンプラーやAlbino 2なんかも良いね。
HRFQ : 日本にいる多くのクリエイターたちがあなたにデモテープを送って、評価をしてもらったりチャンスがあればPaletteからリリースして欲しいと考えていると思いますが、いつも未契約のアーティストの楽曲は聴いたりしますか?
John : うん、なるべく聴くようにしているよ。でも実際にPaletteからリリースする事はなかなか難しいかもしれない。と言うのもリリースの機会をPaletteの仲間であるアーティスト達の作品の為にリザーブしておきたいからなんだ。だからいつも「新しいアーティストと契約するつもりはありません」とあらかじめ言うようにしているんだよね。でも、素晴らしい才能を持つ新しいアーティストについてはいつも興味を持っているので、デモテープを聴く事自体は大好きだよ。
HRFQ : あなたにコンタクトを取るのにはどうしたら良いですか?
John : info@paletterecordings.comにメールをするか、www.paletterecordings.comを覗いてみて欲しい。
End of the interview
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