HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Jeff Mills


テクノ・シーンのカリスマ・アーティスト Jeff Mills。彼が毎年10月に WOMB で開催してきたレジデント パーティーが、今年は「Contact Special」というタイトルの元で行われた。「未知の存在との遭遇」が、 お互いの違いが原因で争い続ける人々の距離を縮めていくというテーマを掲げるこのパーティー。人種や 宗教、国家システムなどの相違によって、数多くの血が流されている現在の状況に大きな一石を投じる、 まさにJeff らしい問題提起と言えるだろう。

今回のレジデント・イベントでは、第1週に Co-fusion、第2週に Scion、第3週に Sub Space と Elektrabel という、「ピュアでエモーショナル」なテクノ・サウンドを紡ぎだすアーティストをゲストに迎え、 コンセプトに沿った演出と共に、昨年を超える素晴らしいセットを披露してくれた Jeff Mills。20年近い キャリアを経ても、まったくその勢いに衰えすら感じない、テクノ・シーンのトップ・アーティストに、 HigherFrequency が待望のインタビューを実施、今回のイベントのコンセプト、彼が推し進める「音と 映像の融合」などについて話を訊いた。

あまりに素晴らしい内容のため、その発言の全てをお伝えすべく、2週に分けて掲載していく今回の インタビュー。今回はその後半部分をお届けする。

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> Interview : Richard Isaacs _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 音楽と映像を融合させることについては、どのような意見を持っていらっしゃいますか?

Jeff Mills : そうだね。人々に映像に注意を払ってもらうのは、僕が想像していたより、ずっと難しいと感じたよ。ここ数年かけて、いろいろな場所でDJとしてプレイしてきたけど、スクリーンに映し出されている映像を見ている人はほとんどいないんだ。せっかく音楽やパーティーの雰囲気に合った映像を流しているのに、すごくもったいないと思っていたよ。だから、映像と音楽に限らず、ライティングといったほかの要素も全て融合すれば、ある一定の雰囲気をクリエイトすることが出来ると思ったんだ。それが僕たちが明日から3日間実践することさ。そこにはある一定のシナリオがあって、ある一定の時間にある色が現れて、ある映像が現れて…といった風に、物事が連続して起きるようになっている。映像と音のみではなくて、全体的な効果があるんだ。

HRFQ : 今年の7月、フランスの世界遺産ポン・デュ・ガールで、モンテペリエ国立管弦楽団と共に、パフォーマンスをなさいましたね。来年早々にはDVDとCDがリリースされるそうですが、テクノ・サウンドとオーケストラ・サウンドをどのようにして融合させたのですか?レコーディングの段階では、実際にどのようなことをなさったのですか?

Jeff : 80人のミュージシャンために、僕の自分のトラックを14曲ほどオーケストラ用の楽譜に書き上げて、今年の7月にフランスのポン・デュ・ガールで、大規模なスペシャル・パフォーマンスをしたんだ。今度リリースされるのは、そのショーを録音・録画したものさ。

こういった感じのプロジェクトは普通、そのアーティストがトップ40ヒットを出した時に起こりえるようなもので、オーケストラ・サウンドを足すことに正当な理由があって、リスナーも全ての原曲を知っているものだと思う。でも、今回のケースはそうじゃなかった。僕たちがプレイした曲は、ほとんどが12インチのみでリリースされたようなトラックで、大方のオーディエンスがまったく知らないようなものばかりだったんだ。こういうことはすごく珍しいというか、通常なら有り得ない話だよね。でも、今回のショーは、完璧にアーティストの視点からつくり出されたコマーシャルでもなく、メインストリームでもない、すごくユニークなショーだったんだ。だから、トラックの中でもすごく思い入れのあるものを中心に選んだし、それは過去のトラックだったり、Underground Resistance 時代につくった曲だったりしたわけ。。オーケストラが実際にそれらの曲を演奏して、僕はそのサウンドにシンクロさせながら、エレクトロニックなパーツを演奏していったんだけど、本当にすごく上手く行ったよ。これは、僕がすごく誇りに思っているプロジェクトなんだ。

Jeff Mills Interview

HRFQ : すごく複雑そうなプロジェクトですが…

Jeff : そうだね。僕が始めに想像していたよりもはるかに複雑だったよ。プロジェクトに参加した80人のミュージシャンは、例えトレーニングを受けたプロのミュージシャンだとしても、やはりシンクするという点では、どうしても人間的な面が出てしまうんだ。一方、僕はずいぶん長い間、テンポや BPM、シーケンスといった面で完璧な機械と仕事をしてきたから、80人の完璧ではない人間と仕事をするのには、さすがに慣れるまで時間が随分とかかったよ。でも、そのおかげで、シーケンスにおいて一番大切なのは、完璧さではなく、全体のフィーリングだということを理解することが出来たと思う。ミュージシャンが集まって、全員でプレイするということがすごく大事なんだってね。だから、この作品は僕が今までに手がけてきたものとは、全く異なる作品になるんじゃないかな。。

HRFQ : Beatport などのウエブ・サイトの人気が証明するように、最近では、確実にデジタル・ダウンロードが一般的なものになってきています。あなたの「音楽配信」に対する戦略を教えてください。

Jeff : デジタル・ダウンロードの普及によって、音楽業界は救われて、その質をさらに高めることになるだろうね。技術的な点から見れば、現状存在するフォーマットでは物理的に不可能な方法で、トラックをプロデュースすることが可能になるかもしれない。例えば、CDには最大で78分の音楽を収録できるけど、全体で25分の音楽をCDでリリースするには、短すぎておかしいし、かといって12インチのレコードには長すぎる。だからデジタル・ダウンロードによってプロデューサーはもっと自由になるんだ。骨を折ることなく曲作りが出来て、構成やフォーマット、フォーマットのキャパシティーを心配する必要がなくなるからね。インターネットの普及や、その開かれた販売スタイルのおかげで、さらに多くの人々に曲を聴いてもらって、コンタクトしてもらえるというのも利点だよね。ネットでのショッピングはわざわざレコード店に行って何枚ものレコードをそこで聴くよりもずっと楽なんだ。全てのプロセスがもっと簡単に、早くなったと言えるだろうね。

ただ、これだけ多くのことが可能になった結果として、さらにリスナーを惹きつけるようなトラックをプロデュースしないといけないというプレッシャーを、プロデューサーたちも感じるようになると思うんだ。曲を制作して、すぐにインターネットで販売して、すぐに消費することが出来るようになるかわりに、プロデュースの面ではさらに競争が激しくなって、プロデュースの本質を究めた、本当に売れる作品が中心に世に送り出されていくようになるはずだからね。

HRFQ : それでは WMA といった著作権管理システムをサポートしますか?それとも、DRM (管理システムの略称)フリーのダウンロードをサポートしますか?

Jeff : いいや!僕はコピーライトをサポートするよ。音楽はアーティスト個人の知的財産であって、個人が頭を使うプロセスなのだから、そういったものは常に保護されるべきなんだ。保護なしでは、アーティストは生きていけないよ。だから絶対に必要だと思うな。

Jeff Mills Interview

HRFQ : Axis からのニューリリースについて少し話していただけますか?

Jeff : 今アルバムの制作中なんだ。MP3 のフォーマットで売るかにもよるけど、アルバムに近いものをリリースする予定だよ。ロボットの進化をテーマにした作品で、その中で僕が特にフォーカスをしようと思っているのは、一番最初にロボットを発明した人たちの意図なんだ。彼らがロボットの人間社会での役割について、どんな風に考えていたのかを理解したくてね。今はそのリサーチをしていて、彼らがどんなことを考えていたのか…ロボットは彼ら自身を反映したものだったのか、それとも彼らの不十分な部分を反映して、完璧なものをつくりたかったのか、自分たちの問題を解決してくれる何かをつくりたかったのか。それを追求しようとしているんだ。基本的には、ロボットをつくるところにどんな目標があったのか、なぜロボットをつくろうとしたのか、にフォーカスしたアルバムになる。半分くらいはつくり終えているよ。

それと、1930年代に活躍したダンサー Josephine Baker に基づいたプロジェクトもあって、これは1939年に彼女がムーラン・ルージュや他の場所で踊っていた映像をベースに僕がつくったビデオ・コレクションなんだけど、映像をリミックスして新しい音楽を加えて、再構成してイメージをミックスしたんだ。今年の終わりには他の作品と一緒にリリースしたいと思っているよ。

HRFQ : わかりました。最後に、ここ日本にもたくさんいるあなたのファンにメッセージをお願いしてもいいですか?

Jeff : もちろんさ。常に日本でプレイ出来ることを光栄に思っているし、DJとしてプレイするには最高な場所の一つだと思っている。ここにプレイしに来るDJなら誰でもそう思うはずさ。何か新しいアイデアを試すには絶好の場所で、日本でうまく行けば、他の国に持っていける。日本のシーンはそういったテストが出来るようなシーンに成長したんだね。だから、日本でプレイすることが出来てすごく幸せだよ。

HRFQ : 了解です。有難うございました。

Jeff : ありがとう。

End of the interview


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