90年代初期にイギリスで起こったブリット・ポップ・ムーヴメントに代表されるバンドPULPをはじめ、過去に数々のスターを生み出してきたイギリス北部に位置する町Sheffieldから、突如シーンに飛び出して来たGrandadbob。一瞬「…おじいちゃん?」と思わせてしまうようなチャーミングな名前をもつユニットは、サウンド・クリエイターのDave Johnson 、シンガーのVanessa Robinsonの二人で構成されている。先日、Fatboy Slim率いるSouthernn Fried Recordsから、ファースト・アルバム "Waltzes for Weirdoes"をリリースし、Daveのクリエイトするダークなビートと、VanessaのJazzやSwingを思わせる本格的ヴォーカルが重なるという、Space CowboyやArmand Van Heldenなど同レーベルのアーティストとは一味違った渋め&レトロチックなスタイルで、日本のリスナーをうならせた。
今回、Fatboy Slim "Palookaville Tour"にサポート・アクトとして参加し、アジア中を駆け巡り一気に知名度を上げることとなった彼ら。ここ日本でもたっぷりと"ボブおじいちゃん・ワールド"を披露してくれた。
Higher Frequencyは東京は西麻布Space Lab Yellowで行われた二回目のショーの翌日、彼らとのインタビューを決行。ショーとフライトの続くタイトなスケジュールに少々お疲れの様子だったが、インタビューは終始笑いの絶えない和やかなムードで行われた。
> Interview : Matt Cotterill (HigherFrequency) / Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)
HigherFrequency (以下HRFQ) : 昨日のショーは素晴らしかったですね!とても楽しい時間を過ごしました。
Dave : 僕たちもすごく楽しんだよ!おかげで今日はちょっと疲れ気味かな。パーティーの雰囲気にすっかり引き込まれてしまって、少しはじけ過ぎちゃったかもね!
HRFQ : なるほどですね。僕たちはそうならないように気をつけてましたけど。
Vanessa : 賢い選択ね!/p>
HRFQ : それにしてもタイトなスケジュールですよね。東京ではageHaとYellowという二つのクラブでプレイされましたが、どうでしたか?感想を聞かせてください。
Vanessa & Dave : ものすごかったよ!
Vanessa : 二日間ともそれぞれ全く違う感じのショーになったけど。
Dave : Yellowの方がもっとクラブっぽい雰囲気だったね。かなりヤル気って感じのクラウドが集まってたし…奴らはかなりクレイジーだったよ!
Vanessa : 笑。壁にへばりついてDJブースまで登ってきたりね!
HRFQ : 天井にぶら下がってみたり?
Vanessa : そんな感じ!
Dave :やっぱりageHaに比べるとYellowは小さいクラブだからクラウドとの距離も近いし、フロアの熱気も伝わりやすいよね。でも、一方でageHaは広いし、大きいからね。二日ともすごかったよ。本当に素晴らしかった。
HRFQ : 本国イギリスでのショーと比べてどうでしたか?
Dave : そうだね。正直に言うと、やっぱりイギリスでショーをする時のほうが難しく感じるかな。UKのクラウドは…たぶん少し…(周りを気にしているというジェスチャー)
Vanessa : たぶんどのアーティストも自分の国でやるショーが一番難しいと感じるんじゃないかしら。
Dave : やっぱりイギリスのショーが一番難しいね。でも別に嫌いってわけじゃないんだ。ショーは素晴らしいし、いつも楽しい時間が過ごせるんだけど、同時にイギリスでは会場の設備とか、テクニカルな部分でがっくりさせられることがたまにあるんだ。例えば、ここ日本の会場では僕たちのショーで必要なものがすべて揃ってる。でもイギリスではたまに、「え?何ミキサー?」なんて聞かれちゃう時があるんだ(笑)。日本の会場はパフォーマンスする側にとっては最高だと思うよ。だってここではモニターがちゃんと動くかどうかなんて心配しなくていいんだからね。
Vanessa : 今回は大きいツアーの一環として来たから、ちょっとスペシャルだった部分もあるかもしれないわね。だって、あんなにいいスピーカーよ!
Dave : だね。環境の整った場所でショーが出来て本当にラッキーだと思うよ。いいスピーカーだと、オーディエンスにも音の良さが伝わるから、その分音楽も楽しんでもらえるしね。僕たちもプレイしやすいんだ。
HRFQ : 日本のクラウドについてはどうでしたか?
Dave : 自由でいいね。またしても悪く言うつもりではないんだけど、イギリスのクラウドは、人が着ているものとか持っているものとかを気にし過ぎるし、周りを気にして踊らなかったりするんだ。多分日本人より自分がどう見えるかを気にするんだろうね。でも日本では…もちろんみんな自分のルックスに気を配ってはいるんだろうけど、あんまり回りを気にせずに飛んだり跳ねたりして楽しんでる。ただ単純に二つの国の文化が違うということなのかも知れないね。だから僕たちにとってはイギリスでプレイするのもすごく楽しいんだ。違う文化から生まれる様々なリアクションを見るのはすごくおもしろいよ。
HRFQ : ageHaではあのビックなステージでプレイしたんですか?
Dave & Vanessa : そうだよ!めちゃくちゃ凄かったよ。
Vanessa : あの大きいフロアが人でうめつくされてたの。随分後ろの方にいる人もかなり盛り上がってたし。
Dave : ステージから後ろの方にあるバーが見えて、そこにいる人たちも食べ物片手に踊ってくれてたんだよ!(笑)
HRFQ : 小さいステージに、モッシュ・ピットという昨日のショーに比べると随分違いますね。
Vanessa : かなり違ったわね。(Daveに向かって)Daveは昨日の方が楽しんでるように見えたけど、どう?
Dave : そうだね!
HRFQ : すごく楽しんでる様子が伝わってきましたよ!
(一同笑)
Vanessa : 私はageHaの方が良かったかも。広い空間と広いステージとかそういう面で。
Dave : 実際 ageHaではクラブ・イベントだけじゃなくてライヴもやってるみたいだしね。だから君には良かったんじゃない。ライヴのシステムも必要なものすべて揃ってたし。でも昨日のYellowは基本的にDJのためのハコだからね。君はブースのはしで歌わなくちゃいけなくて少し気の毒だったけど!
Vanessa : (笑)でも素晴らしかったけどね。Yellowのサウンド・システムがすごく良かった!
HRFQ : 今までに何度となく聞かれてきた質問だと思うのですが…日本のリスナーのために質問させてください。あなたたちのユニット名にもなっている、Grandadbobとは一体誰なのですか?
Vanessa : 私のおじいちゃんなの!大きくてすごくラブリーなおじいちゃんなのよ。ユニット名がなかなか決まらなくて…
Dave : 何曲か曲も完成して、CDに曲を焼いて…さぁリリースか!?ってなった時に「ヤバい!ユニット名決めてない…」って(笑)。とりあえず決めなくちゃいけなくて…何故かわからないんだけど、Grandadbobにしたんだ。
Vanessa : Hi-De-Hi(80年代にイギリスで放映されていたコメディー番組)を覚えてる?
HRFQ : 覚えてますよ。
Vanessa : 私のおじいちゃんってHi-De-HiのTed Bovisそのものなの!日本の読者にはなんて説明したらいいか分からないんだけど、彼って普通じゃないのよね。ふざけてばっかりで、いつも何かやらかすの。
Dave : 僕たちの書いた曲の中のいくつかはかなりシリアスで、そこで真面目な問題に触れてもいるんだけど、名前の面では(ダース・ベイダーの声で)「ダーク・フォース」みたいな感じのシリアスさは避けたかったんだよね。
HRFQ : Grandadbobってユニークで目を引く名前だと思いますけどね。
Dave : だよね。僕たちのキャラクターをよく表している名前だと思ってくれるといいな。別に僕たちがアホらしくて、バカっぽいって訳じゃないんだけど…。
Vanessa : そうじゃないの?
(一同笑)
Dave : そうだよ!でも言いたいのは、シリアス過ぎず、かといって風変わりで間抜けな感じを狙ってる訳でもないってこと。
Vanessa : ユニット名ってホントに難しいと思わない?
Dave : この間もこういう話をしてたんだけど、新しいバンドが出てきた時、だいたいの人は馬鹿にして「変な名前だね」とかって言うんだけど、バンドが有名になった途端、バンドの名前なんてどうでもよくなっちゃうんだよね。"Wet Wet Wet"とか、" Super Furry Animals"とかさ!
(一同大爆笑)
HRFQ : なるほど。ところで二人がユニットを組むきっかけは何だったんですか?
Dave : 僕が昔…
Vanessa : (ひそひそ声で) カクテル・バーのウエイトレスをしてた時に…
Dave : (笑)。そのジョークつまらないぞ!僕がシェフィールドのスタジオでサウンド・エンジニアをしてたときに、そのスタジオの社長が女性シンガーと曲を作りたいって言い出したんだ。当時僕は既に自分自身で曲作りもしていたんだけど、同時にVanessaの方もミュージシャンを探していて、"女性シンガーがミュージシャンを探しています"っていう広告を彼女のショップの窓に出していたんだよね。で、それを社長が見て、ある日Vanessaがスタジオにやって来た。僕は基本的にサウンド・エンジニアと製作、ビートつくりを少し担当するだけだったんだけど、彼女の声を聴いた途端すっかり魅了されてしまって、ユニットを組みたいと思ったんだ。実は以前から女性シンガーと一緒に曲作りをしたいと思っていたし、僕の夢みたいなものだったから。しかも社長とVanessaのセッションは上手くいかなかったんだ。
Vanessa : 全然上手くいかなかったの。
Dave : だから僕とVanessaが内緒で話し合って、「社長とユニットを組むのはやめても僕たちは連絡を取り合おう」ってことになったんだ。つまり僕が彼女を盗んだってこと(笑)!
HRFQ : 何がきっかけでSouthern Friedと契約にすることになったのですか?
Dave : それは完全にSueのおかげ!Sueは僕たちの著作権を管理してくれている人なんだけど、以前ユニットを始めたばかりの頃、僕たちにはマネージャーがいて、その人はSueの知り合いだったんだ。それでSueが僕たちのシングルに音楽出版の契約をしないかって持ちかけてきたのが僕たちとSueの関係の始まりなんだけど、実はSouthern FriedとSueの会社 Asongsはオフィスをシェアしていているんだ。だからSueの聴いている音楽は自然とSouthern Friedのスタッフの耳に入るわけ。それで僕たちの音楽を彼らが気に入ってくれて、それでまずシングルを出して、それが上手くいったから今回のアルバムをリリースすることになったんだ。
Vanessa : とりあえず契約してみようって感じだったみたいだけど。
HRFQ : アルバム "Waltzes for Weirdoes"にですが、このアルバムを制作するにあたってなにか特定のコンセプトはあったのでしょうか?
Dave : 不思議なことに、ファースト・アルバムだからといって特に意識して曲を書いたり、頑張ってアルバムをつくろうとした訳ではなかったんだよね。ただ自然と曲を書きためていって出来た曲を集めて完成したアルバムなんだ。
Vanessa : ただ楽しんでつくった感じだったわよね?
HRFQ : すごくイキイキとした感じが伝わってくる作品ですよね。楽しみながら曲をつくっていたという感じがします。
Dave : まさにそうなんだよね。小さなベッドルームに座って、そこで全部つくったんだ。
Vanessa : そうだったわね。おもいつきで、そこにビープ音を入れてみようかって感じで曲を変えてみて、すごくよくなったように聴こえたのに、次の日になったら結局抜かしちゃったりとかね。
Dave : Southern Friedがアルバムをつくろうって持ちかけてきたときには、もう既に7?8曲くらい完成していて、それで他にも結構いい線の曲があったから、じゃあそれも完成させてアルバムに入れようかみたいな感じだったんだ。実際どんなバンドでもファースト・アルバムを作るときはこんな感じなんじゃないかなと思うよ。ただメンバーが集まれば、自然と曲ができるみたいにさ。
Vanessa : 結局最初が肝心なのよね。
HRFQ : あなた方は多方面の音楽に影響を受けてきたようですね。Vanessaさんは以前スウィング・バンドでも活動なさっていたということですが、Grandadbobの音楽をクリエイトしていく上で、メインとなる要素はJazzやSwingだと思われますか?
Vanessa : 私はシンガーとして、確実にJazzやSwingに影響されてきたと思うわ。でも実際表にはあまり強く出ていないと思う。だってDavidの音楽は結構ひねくれてるし、ゴリゴリした感じだから、JazzとかSwingとはかけ離れてて合わないはずだものね。だからこそ逆に合うのかもしれないけど。
Dave : それがある意味僕たちの目指しているスタイルかな。荒っぽくて汚いサウンドの上に、キレイで可愛いヴォーカルがのっかるみたいなさ。
Vanessa : 私たちが影響された音楽は多すぎて言い切れないわね。
HRFQ : ライヴ・セットについて少し教えていただきたいのですが。
Dave : トラックが全部入ったMacを使って、あとはいろんなツマミをカチカチやるだけ!初めてライヴでやる曲はその場でいろいろとアレンジしてみたりもするよ。もしライヴでオーディエンスの反応が良かったら、最終的にさらに音を尖らせてみたりしてアレンジを加えて発展させていく。もちろんVanessaのほうはその間もずっと歌ってるよ。
Vanessa : Davidもはじめの方はキーボートをやったり、ちょっと歌ったりもしてたけど、全部やるのはちょっと大変だったよね。
Dave : 今のライヴのやり方の方がいいね。簡単だし、前よりいいライヴができるよ。
Vanessa : 今のやり方の方がずっと楽しいしね!
Dave : 昨日はまさにDJのためのクラブでプレイすることが出来たから、すごくスムーズにいい感じにできたよ。
Vanessa : でもライヴではいつもハラハラしてるわ。だってDavidが急にどんなアレンジをしてくるかわからないんだから!
(一同笑)
Dave : わかってるよ!でも今までもそうやってライヴをこなして来たでしょ!
Vanessa : だから昨日は私もアレンジを加えてやったのよ。
Dave : そうだね。確かに曲を間違ってたみたいだけど。でもそっちがそう来るなら、こっちはこうしてやるって思ったまでだけどね。
(一同笑)
HRFQ : オフィシャルのウェブ・サイトをみました。すごく良い感じですね。実際にデザインされているのはSheffieldの町やお店の様子ですか?
Dave : そう。実際にはSheffieldとLondonのどこかを合わせたものだと思う。
Vanessa : お店のいくつかはLondonのものだと思うわ。
Dave : 実際に僕たちが出かけて、町や店の写真を撮ったんだ。でも確か、新聞屋さんの写真を撮るのを忘れてしまったんだと思う。だからロンドンのデザイナーが実際に出かけて、僕たちの代わりに写真を加えて、デザインをしてくれたんだ。それ以外はSheffieldの建物だと思うよ。
Vanessa : 果物やさんと八百屋さんはSheffieldの。街頭も…ほとんどがSheffieldのよ。サイトを見た人の中には、「これは本当の町の様子じゃない!」って思う人もいるかもしれないけど、私たちもそうじゃないって知ってるから大丈夫!
HRFQ : レトロチックな感じもしますよね。デザインの部分にはどのくらい関わっているのですか?
Dave :結構関わってるよ。
Vanessa : デザインをやってくれてる人たちとは仲が良くて。すごくいい人たちなの。
Dave : ウェブ・サイトに関しては、まず僕たちが全体的なアイデアを彼らに伝えたんだ。とりあえず、都会的でおしゃれすぎる感じにはしたくないというのがあって。だって…ユニット名をみてよ!だから、とりあえず近代的で、エレクトロっぽい感じにはしたくなかったんだ。それよりも、ちょっとレトロチックな雰囲気を加えたかった。そうしたらデザイナーが新しいアイデアとロゴを出してきてくれて、それを僕たちが気に入って、そうやってここまで発展したという感じかな。
HRFQ : 名前にぴったりのデザインだと思います。サイトをみただけでGrandadbobという人相が掴めてしまうような…
Dave & Vanessa : でしょ?
HRFQ : それでは、あなたたちが好きなものと嫌いなものを教えてください。
Dave : 日本食かな…本物の日本料理を昨日初めて食べたんだけど、すごく美味しかったよ!嫌いなものは…
Vanessa : トマトじゃない?(笑)
Dave : トマト、パルメザン・チーズ、それに罪のない人への暴力。
Vanessa : 嫌いなのは…タマネギ!犬と田舎町とカシューナッツ、それに私の家族が大好きだわ。家族と友達が一番大事。嫌いなものはあんまりないの。
HRFQ : 明日もどこかに旅立つそうですね。
Dave : そう。明日は台北に行くんだ。
Vanessa : それで大阪に戻ってきて、また北京に立つ。
Dave : で、また朝霧フェスのために日本に帰ってくるんだ。
HRFQ : 楽しんでください!元気で、そしてこれからのGrandadbobのご活躍に期待しています!
Dave & Vanessa : ありがとう!
End of the interview
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