HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Frank Muller


石野卓球、DJ TASAKA と公私ともに交流が深く、大の親日家でも有名な Frank Muller。'96年に"MULLER RECORDS"をスタートさせ、'01年には、BEROSHIMA 名義でリリースされた「POP」が世界中で大ブレイク、その名声を世界レベルで確立したドイツを代表するテクノ・アーティストである。WIRE にも毎回常連として参加、日本滞在の度に長期の滞在をし、京都を訪れたり、築地市場で魚を食べたり、日本人以上に日本をこよなく愛する彼が、1月21日に Torsten Feld の主宰するイベント"Cross Mountain Nights"に出演するために半年振りに来日し、素晴らしいDJセットを披露してくれた。

HigherFrequency とのインタビューでは、グラスを片手に、時に日本語を、そして時に爆笑を誘うジョークを交えながら、ウイットに富んだ一面を見せてくれたFrank。それでいて、現在のドイツ・テクノ・シーンに辛らつな警鐘を鳴らすところは、さすがはベテラン・アーティストというところだろう。

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> Interview : Matt Cotterill _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 大の日本好きという噂を聞いたのですが、本当ですか?

Frank Muller : 大好きだよ。特に食べ物がね。その他にもいろいろ好きな部分はあるけど、日本は唯一アジアで合法的な音楽マーケットが成立している国だという点も理由の一つかな。今は中国でも、マレーシアでもどこでもプレイすることが出来るし、そこにもおいしい食べ物はあるからみんなあまり意識していないけど、これらの国ではとにかく違法なものが横行しているんだ。アジアの日本以外の国では、業界があって、アーティストがいてっていうきちんとした音楽マーケットが育っていないからね (笑)。

HRFQ : あなたと石野卓球の交友関係は有名ですが、彼とはどのようにして出会ったのですか?

Frank : 卓球とはメイデイの時にプラハで会ったんだ…多分そうだったと思う。もう忘れちゃったよ!また酔っ払ってたからあんまり覚えてないね!(笑)。でも確か、彼がちょうど Loopa で忙しかった時期で、ちょうどソニーがクラブ・マーケットに入ってきた時だったかな。まだWIREは始まってなかったし、Liquid Room が東京で一番大きいクラブだった。その頃に一緒に仕事を始めて、今となっては本当にいい友達だよ。

HRFQ : 前作、'The Catastrophe Ballet 'は、石野卓球のレーベル'Platik'からリリースされましたよね。どのような反応がありましたか?

Frank : かなり成功したみたいだね。卓球が彼のレーベルからリリースしないかって誘ってくれたんだけど、もちろんすぐにオッケーしたよ。僕にとってもいいチャンスだったしね。Soundscape や Cisco も素晴らしい仕事をしてくれたし、僕一人じゃとても無理。あんなに大変な宣伝を一人やろうと思ったら、始める前に破産しちゃうよ!(笑)。

HRFQ : 今後も'Platik'からのリリースは考えていらっしゃいますか?

Frank : 今はヨーロッパとマレーシアでのリリース作品を準備しているところなんだ。でももし次のアルバムの準備が出来れば、そのときはもちろんPlatikに話を持っていくつもりだよ。

HRFQ : 'Muller Records'の方はどうですか?今現在プロモーションしているアーティストはいますか?

Frank : ブラジルと日本出身の新人アーティストがいくつかいるんだけど、実は今までレーベルのほうを少しお休みしていたんだ。というのもディストリビューターを二回も変えなくちゃいけなくて。ちょっと変えすぎって感じだけど、前のディストリビューターが本当にひどくて、どうしても彼らとは一緒に働けなくなってしまったんだ。だから、少し休みをとってアーティストも減らすことにしたわけ。どうせ今の音楽市場もあまり元気がいいわけじゃないしね。今は前みたいに高いアドバンスも払えなくなっているから、リリースについては慎重にやらなくちゃいけないっていうのが今の現状かな。それに、他のアーティストのことばかりにエネルギーを使って疲れちゃうこともあるから、たまには自分のことを考える時間も必要だしね。

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HRFQ : あなた自身のプロジェクトについてですが、今現在進められているものはありますか?

Frank : 今年は Beroshima 名義で2つか3つリリースする予定だよ。テクノじゃないプロジェクトもいくつかやるんだ。もう少しダブとかエレクトロニカっぽいまじめな音楽ね!(笑)

HRFQ : ラヴ・パレードの件について少しお話したいんですが、残念ながら昨年はキャンセルされてしまいましたよね?

Frank : 僕が最後にラヴ・パレードに行ったのは確か1996年だったかな。その後のラヴ・パレードは、僕の音楽とはまったくかけ離れたものになってしまったから、個人的には全然興味がなかったね。ただ、やっぱりラヴ・パレードはドイツから出てきたものだから、どこかを訪れるたびに「ラヴ・パレードはどうですか?」って聞かれるんだ。確かにテクノ・シーンではかなり大きなイベントたし、150万人もの人々が一気に集まるなんてすごいことだと思う。だけど、問題は、その150万の人が誰なのかってことなんだ。彼らは間違いなくミュージック・ラヴァーじゃない。ただのフーリガンだし、サッカーのサポーターと同じ。ただエクスタシーでハイになってる奴らの集まりなんだ。それがラブ・パレードをダメにした一番の問題だろうね。そもそものラヴ・パレードは、デモ行進だったんだよ。だから州もパレードの後の清掃作業にお金を払ったんだ。だけど、今はすっかりイベントになってしまった。デモの意味合いはすっかりなくなってしまったというわけさ。イベントをやるときは、オーガナイザーがトイレのケアや清掃をしなくちゃいけないでしょ。それは簡単なことじゃないよ。

HRFQ : 何かがコマーシャリズムの介入によってダメになっていく場合の典型的なケースですね。

Frank : イベントが大きくなりすぎた時には、明らかにそうだったね。150万人もの人が集まって来るし、テレビ局やコカ・コーラなどの大きい会社もイベントに関わるようになっていたんだ。お金を稼ぐのは悪いことじゃないし、みんなお金が好きだからしょうがない。でも、結果的にシーンとは関係ない方向に行ってしまったんだ。でも、ラヴ・パレードを海外に広めるという意味では、彼らは成功したと言えるんじゃないかな。日本でも近々ラヴ・パレードをやるっていう噂を聞いたんだけど…違ったかな?でも、僕が思うにはそれは"チョット ムズカシイネェ!(日本語で)"(笑)。まぁすごくいいチャンスだとは思うんだけどね。政府も"デモ行進"だったら完璧にNOとは言えないはずだし。もしかしたら今年は東京でラヴ・パレードがみられるかもね!そういえば以前、中国人の知り合いがラヴ・パレードをやりたいって言っていたんだけど、中国の政府はもっと厳しいでしょ?だから、彼らは"ドイツ式エアロビクス・パーティー"っていう名前にしなくちゃ提案さえも出来ないって言うんだ(笑)!道でドイツ式のエアロビクスをやるパーティーってことにすれば、オリンピック好きの中国政府も納得するんじゃないかってことみたい…うん、スポーツはいいことだ!!

HRFQ : 健康的な響きがまたちょっと皮肉っぽいですね(笑)。

Frank : おもしろいよね。でも、ラヴ・パレードは、人を集めるという意味では、長年にわたって大切な役割を果たしてきたパーティーでもあるんだ。ラヴ・パレードのある週末には町中で何十っていうパーティーが行われていたしね。本当にいいパーティーがたくさんあったよ。

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HRFQ : 近年のドイツ・テクノ・シーンについてはいい話もたくさん聞きますが、いかがですか?

Frank : 僕は、ドイツのテクノ・シーンは過小評価されすぎていると思うな。一番の問題は、ドイツには英語で書かれている音楽雑誌が一冊もないということ。だれがドイツ語の音楽雑誌を香港で読むっていうんだ?誰も読まないよ!選ぶんだったら Mixmag かなんかを選ぶはずじゃないかな。いつだって注目されるのはイギリスのマーケットなんだから。イギリスで一枚でもリリースすることが出来れば、ドイツのメジャー・アーティストよりも、ワールドワイドで有名になれるんだ。ドイツの音楽シーンは急速に下降してきているよ。メジャー・シーンも含めてね。だから今後どうなるかは見当も付かないな。僕だって、音楽でお金を稼いでいるのは明らかにドイツ以外の国だよ。ドイツより、フランスやブラジルでプレイするほうが多いからね。

HRFQ : DJセットについてお伺いしたいのですが、Traktor や Final Scratch といったニュー・テクノロジーはつかわれていますか?

Frank : Traktor はいいよね。でも僕がつかうにはちょっと難しすぎるんだ(笑)。古いアナログな機材に慣れてるからね。Traktor は…すごくいいとは思うんだけど難しすぎて、いいと思える音を出すまでに時間がかかっちゃうんだ、だから僕のお気に入りは Logic だね!あれはちょっと頭が悪くても使えるから、まさに僕のための機材だよ!(笑)。それに、Abeleton Live もすごくいいプログラムだよね。完璧に新しいタイプのソフトだと思うよ。でも、やっぱり僕は Logic が好きだな。あと、僕が今までにつくった中で一番のテクノ・トラックは、古い機材を使って作られたものなんだ。チープなシーケンス・パターンにアレンジも特になし。複雑でも何でもない曲さ。

HRFQ : 何か他の生楽器をセットに取り込まれたことはありますか?

Frank : たくさんあるよ!以前ライブ・セットをやっていた時はアナログ機材をいっぱい使ってたんだ。でもあれは大変だったな。それを全部持ってツアーなんて出来ないし、機材が5トンもあれば、プロモーターだってお金を払ってくれないからね。だからそういう面でラップトップはすごく便利なんだ。でも、ラップトップだけのライブ・セットは退屈でしょ。確かにいろんなことが出来るかもしれないけど、個人的にあんまり満足出来ないんだ。

HRFQ : 最後に、日本のファンにメッセージがあればお願いします。日本語で言ってもらえたらファンも喜ぶかも…?

Frank : そうだね…もう"ダッフンダ!"は言い過ぎちゃったからね(笑)。もっとたくさんの人に日本食を食べてほしいな。特別なメッセージはこれといってないけど、とにかくたくさんレコードを買って、音楽ダウンロードは控えるように!

End of the interview

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