HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Ellen Allien


ベルリンを拠点にDJ 、プロデューサー、そしてレーベル "Bpitch Control" のオーナーとして幅広い活動を繰り広げる女性アーティスト Ellen Allien 。こういった説明のときについ「女性…」という枕詞をつけてしまうところが、いかにも日本人的発想と指摘さわれてしまいそうなのだが、女性アーティストの活躍が当たり前となっているヨーロッパにおいては、男女の区別というものはもはや何の意味も持たないことなのだろう。

とはいえ、Ellen の持つその美しい容貌と、DJ / プロデューサー / レーベル・オーナーとしてエネルギッシュかつパワフルに活動を繰り広げるその姿が織り成す対比に、魅力を感じてしまっているファンもきっと多いはず。特に WIRE を始めとする巨大フェスティバルで、数万人を相手にプレイする彼女の姿は、我々が女性DJに対して持つステレオタイプなイメージを吹き飛ばしてくれるほど貫禄にみなぎっている。

WIRE にも03年、04年と2年連続で出演し、すっかり日本でもお馴染みの顔となった Ellen が、今回で3 回目となる WIRE 05 に出演するために来日。5月に発売されたばかりのニューアルバム "Thrills" についてや、Bpitch Control の運営、そして日本人アーティストについての感想などについて話を聞かせてくれた。

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> Interview : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 今年も WIRE でプレイされますが、確か3度目ですよね?どんな気分ですか?

Ellen Allien : 毎年ヨーロッパでたくさんのフェスに参加してるけど、WIRE はその東京版って感じかしら。卓球のことは MAYDAY の頃から知っているんだけど真のミュージック・ラバーで心から尊敬出来る人よ。だから3 回も招かれたことはとても嬉しいことだわ。私は同じ会場でプレイするのが好きで。というのも、客層も雰囲気も分かっているしまるで友達とのパーティーみたいだから。一体何人くらい踊っているのか分からないんだけど、たぶん1万人くらいかしら…。とても不思議な気持ちよ。でも私は大きなクラブも小さなクラブも好きだし色んなクラブでプレイするのが好きなの。

HRFQ : WIRE では何万人というお客の前でプレイするわけですが、何か精神的な準備を必要としたりしますか?小さいクラブでやる時との違いは?

Ellen : 2 週間ほど前にバルセロナの Sonar でプレイした時は、2 万人くらいのお客さんが居たけどお客さんとの距離があまりに遠すぎて手が上がるのが見えるくらいで顔は殆ど見えなかったの。だから、どうやってみんなの手を上げさせるかって感じだったわ(笑)。だってそれが唯一のリアクションだったし、みんなが腕を上げなければ何にも見えなくて。盛り上がっているかどうかも分からなかったの。ただ、殆どの場合は選曲のことを考えているし、いい音楽をプレイするのが好きだからそのために事前に準備をするようにしているわ。

HRFQ : 最新アルバムの "Thrills" ですが、これまでの反応はどうですか?結果には満足していますか?

Ellen : 私にとって1番ハッピーなプロセスは音楽を制作すること。その後に来るのがプロモーションで。これは、私自身を紹介しその考えや気持ちをみんなに理解してもらうための仕事って感じなの。反応については何とも言えないわ。だって、まだプロモーションをやっている最中だし…。事務所に行けば取材リストを見ることが出来るんだけど、今では私のキャリアが全世界に広がってきたこともあってとても長いものになっているわ。そうね…、今回のアルバムは今までの作品と違うからみんなも楽しんでくれるんじゃないかしら。

HRFQ : 今まであなたが出したアルバムのタイトルを見ると "My Prade" 、"Stadtkind"、"Berlinette"、そして今回が "Thrills" となっていますが、アーティスト的な観点でタイトルに何か論理的な関連性はあるのですか?

Ellen : 私は毎回アルバムを出すごとに違ったことをやりたくて、いつも違った機材を探すようにしているの。だから、コンセプトも機材も完全に変えてしまうことが多いわね。"Stadtkind" はどちらかと言うと「私はミュージシャンよ」という自己紹介的な作品で、セカンド・アルバムの "Berlinette" はデジタル・レコーディングを試したとても実験的な作品でトランスの要素とブレイクビーツが共存していて、そのブレイクビーツもポップでありながら不思議な雰囲気も漂っている…。そんな作品になってるの。で、今回の "Thrills" ではラフなサウンドを出してくれるアナログシンセを探すのに時間をかけたわ。どのアルバムも本当に違った内容だし、自分のエモーションをうまく表現できるようにいつも違った機材を探すようにしているの。その意味で、今回の "Thrills" の制作はとても楽しかったわ。すごく楽にプロデュースできたし、録音に使ったシンセ ARP 2600 も素晴らしかったし…。今ではアナログ機材の方がデジタルより好きになってしまったわ。

Ellen Allien Interview

HRFQ : 今回のアルバムのアートワークですが、とてもクールで綺麗ですね。ジャケットとかのアート・ディレクションにはどの程度関わっているんですか?

Ellen : 私は自分のレーベル Bpitch Control のアート・ディレクターだし。勿論、自分の作品についてもそう。だから、レーベルから出る作品のジャケットについては全て私が良し悪しを判断しているの。 アーティストとはいつも事前に話し合いをして、彼らが伝えようとしていることやエモーショナルな部分でのプロセス…、作品の音などについて議論するようにしているわ。 その後で、チャートを作りながらデザイナーと話をするの。エモーショナルな感情や音楽のスタイルやちょっとしたアイデアなどが書き込まれたチャートをね。 "Thrills" に関してはベルリンのデザイナーを起用したくて Carol Roche と仕事をすることにしたの。私のリクエストは白い服を着て動きがあるというもの。でも、その動きには自分自身が木になったような表現させたかったの。私自身、内面はすごく静かでもその周りはある種の狂気に囲まれているからとにかく今はそういった気持ちが強くて。世の中や私の生活はとてもクレイジーなのに、私の内面はとても平和に感じる…。まるで悟りに達したような素晴らしい気持ちよ。この境地に達するまでにはかなり時間がかかったけど。それがジャケットのアイデアになったというわけ。あと、カメラマンにはベルリン出身で "ID" などのファッション誌やノンコマーシャルな写真などでも活躍してた Florian Kolmer を起用したの。この写真を撮ったのはクリスマスの頃だったんだけど、普通は撮影のときに動いてしまうといい写真を撮るのが難しくなってしまうでしょ。でも、今回は楽しみながらの撮影だったので上手くいったわ。

HRFQ : 97年からご自身のレーベル Bpitch Control を運営されてますよね。今日本にいるわけですが、あなたのレーベルから作品を出したいと思っている無名のプロデューサーがたくさんいると思います。彼らのために、あなたがいつもどうやって新人を発掘しているのかを教えてもらえませんか?

Ellen : …。最近は音楽を作ることがすごく簡単になったから才能を見つけるのが難しくなったと思うの。実際に、本来は Bpitch に送られるべきじゃない音楽もたくさん聞いているし…。確かにプログラムを勉強するのが簡単になったお陰で音楽を作るチャンスが広がったのは良いことだけど、一方でつまらない曲が多くなったのも事実なのよね。ただ、みんながチャレンジして楽しんでいるのは良いことよ。人生はそんなにイージーじゃないし。自分の手で何かを作る楽しみがあるのは良いことだから…。私がヨーロッパで契約している殆どのアーティストたちとは友情関係にある人たちなの。それはどんどん作品を作っていくうちにサウンド的にも深みが増していくという友情で、私が仮に「ノー」と言ったとしても音楽的なことを話していける、そんな関係だと言えるかしら。もちろん日本人アーティストとも契約したいと思っているけど実際には見つけるのがとても難しいの。日本人の作品は全体的にアブストラクトなリスニング向けの曲は良いんだけど、私はDJだからもっと踊れる曲が欲しいし。リスニング的な要素と踊れる要素が混ざり合った音楽…そういった曲が欲しいのよね。だから待っているわ(笑)。

HRFQ : あなたはベルリン出身ですが、今のシーンはどんな感じですか?ここ数年で気づいた変化など何かありますか?

Ellen : 壁が崩壊する以前はベルリンは小さな街で東ベルリンは西とすごく違った雰囲気だったわ。でも壁が崩壊してからは人の大きな動きがあって、ヨーロッパやアメリカから大勢の人たちが新しい生活様式を楽しむ為に移住してくるようになったの。音楽やアートをクリエイトするのに適した安い物件がたくさんあったからね。で、それは今でも変わっていなくて、ベルリンはヨーロッパの中でも1番物価が安いしたくさんの人が音楽やアートをやる為に移住してきているの。すべてが生き生きとして国際色豊かで色んな文化的交流が生まれているわ。ヒトラーの後、ドイツは本当に死んでたけど、今では色んな人がやってくるようになったし。「私たちに殺される」という心配は誰もしてないはずよ(笑)。あと、色んな面白い人間も流れ込んできていてすごく良い雰囲気よ。例えば今、Laboratory Instinct というレーベルをやっている日本人女性と一緒に仕事をしてるんだけど、彼女たちがいかにドイツで仕事を成功させていくのか…、いかに世界的なネットワークを作っていくのかとても楽しみだわ。そうやって一緒の働いているとみんなの違いも分かるし。一緒に何かを作り上げながら同時にお互い意識の違いも理解できるのが大好きなの。これが今のベルリンで、Richie Howtin や Miss Kitten もいるし、Ricardo Villalobos もフランクフルトから移ってきたわ。あと、アート・シーンでもたくさんの人がいてすごく良い感じよ。でも、ベルリンやドイツから出てくる音楽がベストだと言う人がいるけどそれは間違いだわ。素晴らしい音楽やクラブは世界各地にあるし。ベストなのは、物価が安くてラフな感じなところ。なんとなく不法占拠地にいるみたいで、周りの全てが今作られているって感じなの。

Ellen Allien Interview

HRFQ : 今後の作品の予定は?

Ellen : 今は Matthew Dear と一緒に Ghostly International から出す曲を作っているわ。彼とは一緒にUSツアーをやったことがあって。お互いにファイルを交換しながらシングルを制作しているの。面白かったのは彼が送ってきた作品の中にお化けみたいに "Ellen 〜" と言い続けている曲があったこと。"Ellen 〜" ってね(笑)。「オッケー…」って感じだったわ(笑)。 あと冬には Apparat と一緒に次のプロジェクトをやるつもりで。他にも Modselector のアルバムが Bpitch から出る予定になってるわ。これはヒップホップとグライムテクノが混ざり合った傑作よ。

HRFQ : 最後の質問ですが、あなたのバイオを読むとあなたにとって音楽は自らの感情や情熱を表現する手段だとありますが、あなたの人生で音楽と比べて勝るものはありますか?

Ellen : …。ないわ(笑)。音楽は私の人生の中で最も奥の深く情熱的なものよ。映画も音楽とは違うし、他のアートも違う。私は色んなことをミックスしてやるのが好きで、DJに関しては世界中を旅しながらクラウドたちと一緒になって盛り上がったりしているし。音楽制作は自分自身を発見して全てをさらけ出す作業だし、レーベル運営は組織で仕事をするということで。これもまた本当に素晴らしいことよ。音楽以外のものは私にとって消費する対象で、絵とか映画とかはそうなんだけど。音楽に関しては私自身が作るものだし、アートでありフレーバーである…、そんな感じかしら。

HRFQ : どうも有難うございました。完璧なバランスをお持ちのようですね。

Ellen : まぁね(笑)。

End of the interview

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