HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Dimitri From Paris Interview


「ナイト・クラブは社交の場だったんだ。クラブに行って、お酒を飲んで、人と会うところだったのに、そういうパーティーらしさが今のシーンからは消えてしまったんだ。ただ友達と出かけて、人と会って、会話をして、酒を飲むことを楽しむってことが、なんだか遠いものになってしまったような気がするよ。今の人々は、どうしてクラブに行くのかも分からずにただ遊びにやってくる。それにDJだって、フロアを盛り上がらせることだけで頭がいっぱいなんだ」

情熱的に、物事を率直に言う Dimitri From Paris は、現在のコマーシャル化し過ぎたクラブ・シーンや、それに関わるクラブ・オーナーやプロモーター、クラウド、特にDJの情熱の無さには、不満だらけだと語った。

「音楽に対する愛情を持っているとは思えないんだ」彼はこのように不満を漏らした。「 "こういうトラックはあまり好きじゃないんだけど、お客さんが喜ぶから…" なんて平気で言うDJもいるけど、そういう言葉を聞くと怖くなってしまうよ。僕は好きな人たちのために、自分が好きと思える "何か" をしたかったんだ」

その "何か" とは、大ヒットを博した In The House のコンピレーションに続く、コンセプチュアルなニュー・ミックスCD "Dimitri From Paris: In The House Of Love" に表れている。

「レーベルは単に 'In The House' の続きをやって欲しかったみたいだけど、僕は同じことを二度やるのが嫌だったんだ。何か変わったものをやりたくて、それで 'In The House Of Love' のアイデアに辿り着いたのさ。あれは今からちょうど一年前くらいだったな。このコンピレーションにはテーマがあって、普通のハウス・コンピレーションに入れるにはメロウすぎるトラックも収録できるようになっているんだ」 ▼

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)

Skrufff (Jonty Skrufff) : 今回のコンピレーション制作にはどのくらい時間がかかりましたか?

Dimitri From Paris : 始めたのはだいたい一年前くらいかな。まず最初に頭に浮かんだトラックをミックスしたサンプルを作って、Defected のスタッフに渡したんだ。そうすることで、次第に彼らも僕がやりたいことを理解してくれてね。やっとそこからトラックの権利を取るといった実際の作業を始めたんだ。ミックスやコンパイルには2週間ほどしかかからなかったよ。

Skrufff : 今回のミックスCDには、どのくらいコンピューター・トリックを使われたんでしょうか?

Dimitri From Paris : そんなには使ってないよ。ただ、ミックスCDを作るときは、可能な限りの機材を使おうと思っていてね。このコンピレーションは、僕のDJとしての才能を前に出したものだとは思っていないし、いい作品を作ることが目的だったんだ。もちろん作業はコンピューター上でやったさ。でも、その作業はすべて僕自身が行ったわけだし、例えミックスが1時間だとしても、実際のライブ・ミックスよりもずっと時間のかかる作業なんだ。しかも今回は、このコンピレーションに収録するためだけに2曲ほどリミックスもしたしね。

Skrufff : 通常どのようにしてトラック・リストを決めていかれるのですか?

Dimitri From Paris : まず、頭に浮かんだトラックを全部紙に書いていく。紙に書いてみて、映えるものじゃなきゃダメなんだ。そうやってどういうコンピレーションにしたいか決めていく。もしテーマが愛だったら、そのテーマに合いそうなトラックを書いていくんだ。

トラックをミックスするのは、実際にトラックの権利がクリアになってから。今回のコンピレーションは、カラーの違ったトラックをたくさん入れたから、テクニカルな面でいうと、すごく難しくてね。トラックを上手く繋げながら、いい流れを作っていくのには苦労したよ。僕は、いいミックスを作るためには、慎重なプログラミングが必要だと思っていてね。ミクシングはただ流れをよくするための技術的なプロセスであって、中心となるものではないんだ。少なくともこのコンピレーションにはね。何よりも大事なのは、トラック・リストと、トラック一曲ずつの価値。だから一つ一つのトラックを際立たせたんだ。

Skrufff : 中には'90年代初期やそれ以前のクラブ・シーンを思い出させるトラックが収録されていましたね…。

Dimitri From Paris : それは常に心がけていることだよ。違った時代から音をピックアップしてきて、ミックスする。長く愛されるコンピレーションを作ることが重要なのさ。「ここ数年で流行ったトラックを集めて曲を作ろう」なんて思ったことないんだ。だから、このアルバムに入っているトラックの中にメジャー・ヒットを飛ばしたものは入っていないよ。Grace Jones の 'La Vie En Rose' はそうだったかもしれないけど、当時のダンス・ミュージックはラジオで流れていたからね。でもヒットといえばそれくらいじゃないかな。このコンピレーションは、最近のヒット曲やクラブ・ヒットを集めたものでもない。ただ、強烈な印象を持ったトラックの集まりなんだ。そういったトラックが一緒になって、一つの作品となっている。僕はそういう見方をしてるんだ。だから、曲が新しかろうが古かろうが全く関係ないね。

Dimitri From Paris Interview

Skrufff : 今回のコンピレーションに収録したトラックのように、現在でもこれから10年後にセレクトしたいと思うであろうトラックに出逢うことはよくありますか?

Dimitri From Paris : そんなにないね。でも今から10年前にだって、直感で「このトラックは長く愛されるアンセムになるだろう」と断言できるものはそんなになかったと思うんだ。アンセムと呼ばれるトラックは、毎年ごく少量しか生まれないからね。それが僕には同じテーマの下でコンピレーション・アルバムを作れない理由でもあるんだ。これぞと思えるトラックには簡単に出逢えないんだよ。ハウスのコンピレーションを作るなら、作品の間隔が最低でも2年ないと無理。以前やった 'In The House' は、最近のハウス・ミュージックに焦点を当てたコンピレーションで、昨年の夏には the Southport Weekender という似たコンセプトのハウス系コンピレーションをやったけど、2つの作品の間には2年ほど期間があったしね。それ以上のピッチで作れるとは思えないんだ。

今回の "House Of Love" には、過去6ヶ月間の間にリリースされた新曲が3つしか入っていない。アンセムになると思えるようなトラックや、長い間人々に愛されるようなトラックには簡単に出逢えないのさ。もちろん僕が着目していないトラックの中にも、アンセムと呼べるトラックはたくさんあるけど、それでも、シーンで長生きする音楽を見つけるのは簡単じゃないと思うんだ。

Skrufff : 最近では、Justice や Ivan Smagghe など、フランス人新鋭プロデューサーの活躍が目立っていますが、彼らとの交流はありますか?

Dimitri From Paris : いいや、そうでもないね。このエレクトロ何とかっていう音には、あまり興味がないんだ。トレンディー過ぎて退屈なんだよね。音楽ではなく、そのファッション性が重要視されているところにうんざりしてしまうし。ああいう音楽は ものすごいスピードで 「オシャレな人々」に受け入れられていったでしょ?音楽に関しては何の知識もない人々にね。このシーンは音楽に基づいていない。ただの流行なのさ。

Skrufff : このシーンに本物の革命家はいないということでしょうか?

Dimitri From Paris : Ivan が素晴しい活動をしてることは確かだよ。彼のことは知ってるし、結構長くシーンで活動してるからね。ただ、ほとんどのエレクトロ系プロデューサーが、2年前にはガラージ・ハウスに興味があったのに、その次の瞬間には違うことをしてる人ばかりだと思うんだ。ほとんどのアーティストが、その音楽に向いていないのに、ただ 「流行っている」 という理由だけで、エレクトロをやってる気がするのさ。

Skrufff : ダンス・フロアのヴァイブは、どれくらい世の中で起きている出来事の影響を受けると思いますか?例えば経済状況に対する人々の不安はダンス・フロアに表れてくるのでしょうか?

Dimitri From Paris : 難しいね。ただ、クラブに行くひとつの理由として、世の中で起きている現実問題から逃げるということもあるから、ストレスの多い社会になればなるほど、フロアが盛り上がることも考えられるよね。ただ、人にはそれが一般的であろうが個人的であろうが、それぞれの逃避方法があると思うんだ。僕自身、世の中の出来事がクラウドの様子に影響していると思ったことはあまりないかな。9・11のあと、ヨーロッパでは相変わらず頻繁にプレイしていたし、アメリカではあまりプレイしなかったけど、しばらくしてまたアメリカでも頻繁にプレイし始めても、クラウドがそういった状況に影響を受けてるとは思えなかったな。

Skrufff : 2003年に行ったインタビューで「最近会ったジェントルマンは、Hugh Hefner はだった」と話されていましたが、あれから再び Hugh に会う機会はありましたか?

Dimitri From Paris : いいや、なかったよ。

Skrufff : その後、Hugh の他にもジェントルマンだと思える人に出会いましたか?

Dimitri From Paris : もしかしたらね。でも覚えてないよ。Hugh は、時代を象徴する素晴しい人物だと思うんだ。彼のように素晴しい人物で、同時にジェントルマンな人にはまだ出逢っていないよ。正直言って、彼がジェントルマンだとは思っていなかったんだ。だから驚きが大きかったのかもしれないね。会うまでは、もっとやかましい感じの人だと思ってたんだ。派手なアメリカのお偉いさんってタイプのね。だけど、実際は全然違っていたよ。

Skrufff : 調査によると、イギリス人とフランス人はお互いに「失礼で横柄」と思い合っているようです。実際はどちらの方が失礼なのでしょうか?

Dimitri From Paris : イギリス人もフランス人も失礼だとは思わないね。ただ、両方とも横柄に成り得るとは言えるかもしれない。特に外国人に対してはね。外国人がフランス人を横柄と思う理由の一つに、フランス人は簡単に友達を作らないということがあると思うんだ。フランス人は友達になる前に、用心して相手のことを知りたがる。その代わり一度友達になれば、その友情はすごく深いものになるんだ。

多くのフランス人は、イギリス人に限らず遠ざけられてしまうことがあると思う。特にすぐに友達を作ってしまうアメリカ的な感覚には、笑い者にさせられたような気持ちになって、がっかりしてしまうんだろうね。そういったことがフランス人をもっと用心深くさせてしまうんだ。イギリス人の友達から、「フランス人はいつもフランス人同士で固まってる」って言われることがよくあるんだけど、それは正しいと言えるかもしれない。他人に対して心を許すまでは、自分たちを閉ざしているんだ。ただ、一度心を許すと、本当にオープンになる。僕が思うにイギリス人は失礼でも横柄でもない。ただ、飲み過ぎとは言えるかもしれないね。まぁ、これはただの決まり文句かもしれないけど。

Skrufff : 昨年インターネット上で、あなたがタイでドラッグ摂取の罪で捕まったという嘘の記事が出回っていましたが、どうしてそんな噂が立ってしまったのでしょうか?

Dimitri From Paris : まったく分からないね。タイには昨年の11月と12月に、2回行ってるんだ。それは明らかに僕がタイから出国できているってことだし、どこからそんな話しが出てきたのか不思議でしょうがないよ。タイのギグは、今はもう一緒に仕事をしていない、ある事務所のブッキングでプレイすることになっていたんだけど、ちょっとした意思の相違やハプニングがあって、キャンセルされてしまったんだ。だから、そのキャンセルに関係していた人が、仕返しをするつもりであんな噂を流したのかもしれないね。それが誰かはまったく分からないけど、僕がキャンセルをした腹いせにフォーラムに書き込みをしたんじゃないかな。まぁ面白かったけどね。噂では僕がドラッグ密輸の罪で告発されたってことになってたんだから。

Skrufff : これからDJキャリアをスタートさせるDJの卵たちにアドバイスはありますか?

Dimitri From Paris : アドバイスは、「本当に音楽が好きならやれ」ってことかな。例えば、「有名になるため」とか、音楽に関する気持ち以外の 理由でDJをしているなら、例え短い間成功したとしても、長続きはしないからね。20〜40年も続けている ベテランDJを見てごらんよ。彼らはみんな「音楽が好き」っていう気持ちからDJを始めたんだ。お金が欲しいからじゃないよ。大事なのは、自分の好きな音楽をプレイし続けて、自分を信じること。目上の人や他人を喜ばせようとせずに、自分を喜ばせること。そうすることが自分のサウンド・スタイルを見つけて、自分を他人と違った存在にする唯一の方法なんだ。

End of the interview

Dimitri From Paris "In The House Of Love" はDefected Records から発売中


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