HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Deep Dish

ダンス・ミュージック・シーンにおいて、メジャー・フィールドにも通じる人気を博し、同時にコアなクラブ・ミュージック・ファンからも大きな支持を受けているベテラン・デュオといえば Deep Dish である。クラブ系のアーティストとしては驚異的なセールスとなった 昨年の 'Flashdance' そして今年の 'Say Hello' という大ヒットを2作品連続でリリースし、それに続いて今年7月には待望のセカンド・アルバム "George is On" をリリースした彼らが、それを記念して一年ぶりに来日。AIR と ageHa@studio coast という、二つの対照的なクラブでギグを行った。

HigherFrequency は、300人限定で行われた Air のギグ、そしてフロアを埋め尽くした何千人というクラウドの前で行われた ageHa でのギグを終えたばかりの彼らと週明けに接触。彼らのステイしたホテル・ルームでインタビューを行った。

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> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)

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Sharam : HigherFrequency ! 僕たちが一番初めに Tribal America から出したレコードが Higher Frequency っていう名前だったんだ。

HigherFrequency (HRFQ) : 訴えないで下さい!!

Sharam : 名前の権利は持ってないんだよね。

HRFQ : なるほど、安心しました(笑)。先週末は Air とageHa という二つの異なったクラブでプレイされましたね。人数も 300 人限定と何千人規模とのショーと、全く違ったと思うのですが、いかがでしたか?

Ali : 素晴らしかったよ。特に ageHa については以前からいろいろと聴いてたしね。両方とも始めてのクラブだったから、本当に素晴らしかったよ。オープンからクローズまで回せたしね。

HRFQ : 300人を前にしたセットと、2〜3千人の前にしてのセットはどのように異なりましたか?

Sharam : 大きなクラブで、大勢のクラウドの前でプレイするときは、それなりのトラックをプレイできるよね。"ビッグ・ルーム"って呼ばれるようなトラックがあるでしょ。そういうのをプレイできる。小さなクラブでは、もっとパーソナルな、ハウシーでテンポ遅めのレコードをかけられるし、トラックの方向性もわりと簡単に変えられるね。

HRFQ : 今回はアルバム "George Is On" のリリース・ツアーとして来日されたわけですが、このようなアルバムをプロデュースするのに、どのくらいの時間がかかったのですか?

Sharam : 集中して上手くやれば一ヶ月くらいで出来てしまうだろうね。Armand Van Helden なら一ヶ月で出来ちゃうんじゃないかな。僕たちは2年かかったけどね。

Ali : ずっと続けてってわけじゃないけどね。その間にもツアーに出たりリミックスをしたり、ミックスCDをつくったりっていう仕事もあって、すごく忙しかったんだ。だからアルバムだけに集中できる時間を見つけながら制作していったのさ。

HRFQ : アルバムに対するリアクションはいかがですか?

二人 : すごくいいよ。

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HRFQ : アルバムに収録されたトラックの中でも、"Flashdance" は大ヒットとなった作品ですが、このトラックはどのようにして生まれたのですか?

Sharam : そうだね。"Flashdance" は、僕がまだイランで生活していた頃の経験にインスパイアされて生まれた作品なんだ。その頃、僕たちが音楽を聴く唯一の手段と言えば、映画しかなくてね。海賊版ビデオを通して、いろいろ影響を受けてきたんだ。そういったピリオドを振り返ったような楽曲は、以前から常につくりたいと思っていてね。そこでちょうどいい機会が訪れたから、「よし、つくろう」って感じでトラックを完成させてしまった。完成のスピードもすごく早くて、たった12時間でつくってしまったんだ。"Say Hello" には3ヶ月以上も苦労したのにね。だからアルバム全体もそんな感じで、各トラックが僕たちの人生の様々なピリオドの影響であり、現在インスパイアされているものなんだ。それを全部一緒にして、一つの作品としてリリースしたのさ。

HRFQ : その影響についてですが、最近ではたくさんのアーティストが、'90年代中期の音楽から影響を受けていることを認めていますが、あなた方はその頃すでにプロデュース業を行われていましたよね。当時自分たちが制作した音楽にインスパイアされることはありますか?

Sharam : あるよ。当時のトラックを聴くと、「ワォ、今このレコードをサンプルしたら面白そうだね」って感じになるんだ。

Ali : 初期の頃は、今とは違った制作の仕方をしていたんだ。当時はまだ何でもコンピューターで出来てしまうような時代ではなかったしね。ミクシングもリアル・タイムでやっていたし、DAT に落とすのだって、全部リアルタイムでやっていたんだ。今は何でもハード・ディスクに録音できるけど、当時は DAT しかなくて、しかもリアルタイムでエフェクトを操作したりしながら録音していたから、失敗したらまた初めからやり直さなくちゃならなかったんだ。

そんな感じで、制作のプロセスが全然違うから、今とはまったく異なるものが生まれていたと思う。今日の音楽制作では、プロダクションのすべての面において、以前よりもいろんなことを簡単にコントロールできる。でも、それが素晴らしいというわけではないんだよね。ミスこそが大事な要素なんだから。

HRFQ : もし宜しければ、スタジオ・セット・アップを教えていただけませんか?Ableton などは使われますか…?

Sharam : 基本的に、Logic をシーケンサーとして、それ以外は何でもって感じ。どんな機材を選ぶかは重要じゃないんだ。重要なのはそれをどう使うかだよ。

Ali : 大事なのはアイデアさ。何を使ってるかじゃない。

Sharam : 機材なら何個でも集められるさ、だけど、いくら機材を集めても他人と同じ楽曲は作れない。個性と使い方が違うからね。

HRFQ : 今回のアルバムでは Ali もヴォーカルを担当されているそうですが…?

Ali : 一曲だけね。

HRFQ : ヴォーカルは以前からチャレンジしたかったことなのですか?

Ali : そうだな…昔、自分で弾き語りのトラックを4曲くらい録っていてね。一回タレント・ショーにも出て歌ったこともあるし!毎回長続きはしなかったけど、常にバンドもやっていたんだ。だからそういう方面には常に興味があってね。今回のトラックには、たまたまヴォーカリストが見つからなかったんだ。Richard Morel の声は、あのトラックには合わなかったし、僕にはあの曲をどういうサウンドにしたいかのアイデアがあったからね。だから「なんならオレがヴォーカル・ブースに入ってやる!」って決めたのさ。何回も録り直ししなくちゃならなかったけど、いいものが出来たよ!

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HRFQ : 先程も話されていた 'Say Hello' は、Paul Van Dyk によってリミックスされましたね。これはどちら側からのオファーだったのでしょうか?

Ali : Paul とはお互いにリスペクトし合っている仲だし、いい友達でもあるんだ。だから交換みたいな感じで、僕たちが 'The Other Side' をリミックスして、彼が 'Say Hello' をリミックスしたのさ。

Sharam : ちょうどタイミングもぴったりだったしね。彼も僕たちも同時期にニュー・シングルをリリースすることになって、リミックスが必要だった。それで実現したのさ。彼は僕たちにない要素をトラックに加えてくれて、僕たちは逆に彼にない要素をトラックに加えることが出来た。だから良かったよ。

HRFQ : このリミックスによって異なった層のリスナーにリーチするチャンスが出来たと思われますか?

Ali : トラックを通常自分では不可能な方向性にアレンジすること。それがリミックスの目的だと思うんだ。

Sharam : 今までに依頼を受けてきたりミックスだって、そういったことを考えながらやってきたしね。ブレイクス系のトラックだったら、僕らがリスペクトする Dylan Rhymes を起用したり、トライバル系トラックには Chus & Ceballos。それに今回の Paul Van Dyk の…彼はあまりトランスって呼ばれ方が好きじゃない見たいだけど、トランス系トラックとかね。

HRFQ : 次にあなた方のレーベル Yoshitoshi についてお伺いしたいと思います。巷の若いプロデューサーたちはどんな努力をするべきだと思われますか?Yoshitoshi ではどんな才能を探しているのでしょうか?

Sharam : 人とは違った考え方をすること。人並みの標準から大きく離れたレベルに自分を持って行こうとすることだね。

HRFQ : Yoshitoshi からは Satoshi Fumi をはじめとする何人かの日本人アーティストも作品をリリースしていますが、あなた方が感じる日本人アーティストに足りないもの、逆に、彼らにあって他国のアーティストにはないものは何だと思われますか?

Sharam : 僕の目にはかなり大きく発展しているように見えるけどね。Osamu M も素晴らしい作品をたくさんリリースしているし、他にもたくさんのアーティストが出てきてる。Satoshi Tomiie はかなり前から活躍しているしね。

Ali : 僕はずっと DJ Krush が好きだしね。

Sharam : 今まで問題だったのは、日本がヨーロッパやアメリカに比べると、すごく遠い場所にあるってことかもね。でも、最近ではインターネットが発達して、そういったギャップは関係なくなってきているし、才能があれば、多くの人に楽曲を聴いてもらえるような状況になったんだ。そこの腕のいいアーティスト、まず Yoshitoshi に音を送ってくれ!Yoshitoshi.com だよ!!

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HRFQ : インターネット関連の質問ですが、デジタル・ダウンロードについてのポリシーをお聞かせ下さい。

Sharam : 自分のサイトで有料音楽配信システムを持ってるよ。音を交換し合うのは良いことだけど、プロデューサーたちが活動を続けるためには、きちんとした利益を受けなければならないってことを忘れちゃいけないよね。

Ali : 世の中には、DJ活動をしないで、音楽をつくることだけで生計を立てているプロデューサーもたくさんいるんだ。

Sharam : 洋服のデザイナーが自分の作った服をタダでバラ撒いてるようなものさ!そんなんじゃ倒産しちゃうでしょ。それは音楽だって同じなんだ。フリーで簡単にダウンロード出来てしまうけど、していいってわけじゃないんだ。

Ali : そうなんだ…ダウンロードする前にちゃんと考えて欲しいな。

HRFQ : 今日のようなデジタル・ダウンロード旋風が起こる前に活動をスタートされていて良かったと思われますか?

Ali : もちろんさ。当時は今とは全く違う状況だったからね。インターネットどころか、携帯電話さえも持ってなかったんだから。それこそ、ポケベルを使ってたような時代だよ。シーンの情勢も全然違ったし、今と比べたらアーティストの数も少なかった。だから今でもこのシーンの前線で、他人より一歩先で活動出来ていることだけでもラッキーだと思うよ。

Sharam : 今の方がずっと難しいと思うよ。ただ、それと同時に、上手くやればもっと簡単だと思う。あまりいい例とは言えないかもしれないけど、あの 「カエルの歌」とか何とかいう曲は (注 : Crazy Frog)、テクノロジーが大きいヒット曲をつくりだしたいい例だと思うんだ。着メロのおかげで曲が売れるんだからね。10年前ならそんなことは不可能だった。だから、テクノロジーやテクノロジーの発達はただのツールに過ぎないのさ。結局大事なのは曲のクオリティーや、プロモーションの方法なんだから。

HRFQ : 最後の質問です。今後の Deep Dish のリリース、または Yoshitoshi リリースがあれば教えてください。

Ali : Yoshitoshi のリリースに関してはウェブ・サイトでチェックしてもらうのが一番簡単かな。Yoshitoshi.com を見てもらえば、最新のリリースはデジタル・フォーマットでもアナログでも買うことが出来るんだ。Deep Dish に関しては、アルバム 'George Is On' 関連のものがほとんどなんだけど、最近 アルバムからのシングル・カット第三弾として'Sacramento' をリリースしたばかりで、2月には Stevie Nicks がヴォーカルを担当した'Dreams' をリリースするから楽しみだよ。

HRFQ : 分かりました。今日はお疲れのところ有難うございました!

二人 : ありがとう。

End of the interview

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