HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Danny Krivit Interview

DEEP HOUSE/GARAGEシーンで70年代中期から活躍する大ベテランであり、NYにて行われていたパーティー"Body&SOUL"のDJとしても有名なDanny Krivit。御大FRANCOIS.Kをして「自分を唯一惨めな気持ちにさせるDJがいる」と言わしめ、DJの神様として名高いLarry Levanに「Dannyほど美しく優しいスイートな世界をクリエイト出来るDJはいない」大絶賛される偉才。そんなDannyが4/10に代官山Airにて行われた"NUIT LIBERTE -DANNY KRIVIT birthday celebration-"に参加するためにBody&SOUL Live in TOKYOに先駆けて来日し、その卓越したミックス・スキルと流れるような選曲でフロアを愛に満ちた空気で包んでくれた。

11時間にも及ぶプレイの後にも関わらず、とても丁寧かつ誠実にインタビューに応じてくれたDanny Krivit。彼の紡ぎ出す音楽は彼の素晴らしい人格から滲み出たものであると改めて再認識させられたひと時であった。尚、今回のインタビューはオンラインマガジンのRestir Magazineの協力によって実施されたものである。

> Interview : Restir Magazine _ Translation : N.Nakamura (HigherFrequency) _ Introduction : Masashi Kitagawa (HigherFrequency) _ Photo : Jim Champion

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HigherFrequency (以下HRFQ) : 昨日はどうでした?

Danny Krivit:よかったね。とても楽しませてもらったよ。

HRFQ : かなり長いセットでしたね。

Danny :長い方が好きだからね。

HRFQ : 昨日は10時間くらいですか?

Danny : もっと長かったと思うけど。11時間・・・?というか12時間位はやってたんじゃないかな。午前1時にスタートして終わったのが12時45分だったからね。

HRFQ : 長時間プレイをされる理由はなんですか?好きだからですか?それとも最初からそう言う話になっていたのですか?

Danny : もちろん楽しいからだよ。「音を止めて」と言われるまでやめない感じかな。昨日もマネージャーから「だいたい何時ごろ終わるのか」は聞いていたんだけど、彼自身も時間になってもずっと踊ってるし・・・どうも気が変わったみたいだったよ。

HRFQ : 海外のDJがよく日本のサウンドシステムが一番だって言いますが、あなたもそう思いますか?もしそうであれば、どの辺りでそうだと思われますか?

Danny :その通りだね!日本のサウンドシステムが良いのは、日本人が音楽に対してものすごく情熱を持っていて、特にクラブシーンに来ている人たちを含めて、そんなに簡単に満足してくれないからだと思うよ。ヨーロッパあたりだと、単にトレンドに群がって酒飲んでハイになっているだからね。

HRFQ : 日本人は音楽に対してよりマジメってことなんでしょうか?

Danny : そう!それが日本の良いところだし、僕が出来るだけ多く来日したいと思う理由は、まさにそこにあるんだ。

HRFQ : どのくらいのペースで日本に来ていますか?

Danny : だいたい年2回以上かな。5回位来た事もあるけど。

HRFQ : 日本に初めて来たのは?

Danny : 1996年かな。

HRFQ : その頃と比べて今の日本のクラブシーンは変わったと思いますか?

Danny : 確かに変わったね。僕が初めて来て間もない頃は、まだシーン自体に新しい感じがあったし、クラウドの反応もそうだったんだ。でも日本の人たちもホントに色んな事を見聞きしてきて、経験も豊富になってきたから、今ではそんなに簡単に楽しんではくれないんじゃないかな。みんな今の状況にきちんとキャッチアップしているようにも感じるしね。

HRFQ : 最初にプレイした場所はどちらですか?

Danny :Yellowと札幌のプレシャスホール。プレシャスホールは世界中で一番気に入ってるクラブなんだ。

HRFQ : どういった所が好きですか?

Danny :すごく荒削りな感じのするところかな。規模的にはYellowとかAirくらいある大きなクラブなんだけど、300人とか400人くらいの小規模なクラウドを十分楽しませるような造りになっていて、踊るための部屋がたくさんあるようなハコなんだ。それに、あそこの人たちは、あまりDJカルチャーとかクラブカルチャーとかいうものに囚われていなくて、純粋に良い音楽を楽しもうとしている所がいいんだよね。。

HRFQ : ところで、ブルックリンの718 Sessionについて聞かせてもらえますか?

Danny : 元々はブルックリンで始まったんだけど、今はマンハッタンでやっているんだ。場所を変えてもイベントの名前だけはそのままキープしたって感じかな。このイベントは僕にとっても特別なもので、客層は主に地元の人が中心なんだけど、みんな宗教的と言ってもいいくらい熱心で、しかも、いつもだいたい同じ顔ぶれが集まっているから、毎回なるべく違った選曲をして、その都度違ったタイプのお客さんに合わせてプレイするように心がけているんだ。とにかく僕的にはすごく力を注ぎ込んで来たし、今ではNYで最高の部類に入るイベントに成長したんじゃないかな。

HRFQ : 最近Body&SOULが開催されたと聞きましたが、如何でしたか?

Danny :スゴイよかったよ。そもそもBody&SOULを最初に始めたクラブが閉店するって言うので、最後に一発パーティーしようってことになったんだ。そこは6 Hubert StreetにあるVinylって呼ばれていたクラブで、今はClub Arcって呼ばれているよ。

HRFQ : 音楽制作に関してお伺いしますが、これ迄にたくさんのリエディットを手がけてきたと思いますが、どのような基準で曲を選ぶのですか?

Danny :DJをしている時にアイデアの殆どが出てくるって感じかな。曲をプレイしている間に、何曲か「ちょっと手を加えたほうがいいかな」と思うような曲が出てくるんだ。もちろん、自分が好きな曲であるっていうのが大前提になるんだけどね。その意味で、エディットは基本的に自分自身のためにやっているって感じかな。

HRFQ : 何かお薦めの作品があれば教えていただけませんか?

Danny :僕自身のパーソナリティーに最も近いのは「Grass Roots (注 : 2001年にStrutよりReleaseされた2枚組Mix CD)」って言うアルバムだと思う。自分にとって何らかの影響を与えた音楽ばかりを集めたアルバムなんだけど、内容的にはゆうに50年分はカバーしているんだ。

HRFQ : 最近東芝からSalsoul Mixをリリースされましたよね?収録曲と曲順ってどうやって決めたんですか?

Danny : Salsoulのコンピレーションはそれこそ本当にたくさん出ているし、Salsoulには色んな曲があるわけだから、その中から選んでいくっていう作業は本当に大変だったんだ。 まあ、誰もがやっているようなヒットパレード的なものをやってもよかったんだけど、それだったら僕がやる必要もないと思ったし、もう少しスピリチュアルな感じにしようかとも考えたんだけど、それもあまり面白くなさそうだし・・・。で、結局、何曲か自分のリエディット作品を収録する事で折り合いをつけたんだ。「自分がパーティーでプレイするとすれば、こんな流れになるだろう」っていう事をテーマにしてね。だから、選曲については頭を相当ひねったし、有名な曲だけが入っているだけじゃなくて、結構バラエティーに富んだ収録内容になっていると思うよ。自分自身のパーソナリティーも充分に表現する事が出来たしね。

HRFQ : 最近の音楽制作活動はどんな感じですか?

Danny :ちょうどDivinitiのFind The Wayって新曲を終わらせたところで、これはKing Streetがサインしてくれると思う。あと、日本にいる間にJazztronikの「Samurai-侍」って曲をもらったんだけど、それはNYのChez Recordsがライセンス取ったはずで、恐らくその曲のリミックスをやる事になると思うよ。他にもいろいろあるけどね。

HRFQ : 音楽制作に使用している機材はどんなものなんですか?やっぱりコンピューターメインですか?

Danny:ほとんどProToolsだね。

HRFQ : そういえばアメリカではi-tune storeが結構はやってますよね。もうじき日本にも来るみたいなんですが、こうやってレコードを買わずに皆が音楽をダウンロードできるようになることについてどう思いますか?

Danny:音楽業界の連中がやっている事は、本来やるべき事からちょっと遠回りしてしまっているような気がするね。誰かが違法でネットからダウンロードをしようが、企業が格安でダウンロード販売を行おうが、結局のところダウンロードって現実はそこにあるわけだし、業界全体の根本的な問題の解決にはつながっていないと思うんだ。だから業界は、トレンドとか流行といったものばかりに気をとられ過ぎて、ちょっと慌てて前に進みすぎているんじゃないかと思う。本来はもう少しアーティストの育成とか才能の発掘に力を注ぐべきだし、しかも、仮にこうした便利なツールを全部手にしたとしても、やっぱりミュージシャンをきちんと使っていかないとダメだからね。いずれにしても、こうやって使い捨ての音楽がどんどん出てくるって事はとても嘆かわしい事で、みんな使い捨ての音楽のほうが利益を生むと思っているんだろうけど、音楽業界が本当に生き残りたいと考えているなら、もっとこういった事を真剣に考えるべきだと思う。でも、全体的にはインターネットにも良い面がたくさんあるんじゃないかな。まぁ、もし自分がレコード店でも経営していたなら、「ダウンロードしないで下さい」と言ったかもしれないし、この問題をもっと真剣に考えたりしたのかもしれないけど・・・。でも、仮にそう言ったところで、彼らはどの道ダウンロードするわけだからね。

End of the interview

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