HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Carl Cox


今年は自ら率いるレーベルIntecも5周年という節目の年を迎え、5月末には集大成的コンピレーション"Pure Intec"を発売、また秋には自らの音楽的ルーツを探る異色のコンピレーション"Back to Mine"をリリースするなど、例年以上に精力的に活動を行ってきたテクノ界の巨人Carl Cox。夏前には体調を崩して周りを心配させたが、ほどなく元気にカムバックし、一度体験すると病みつきになるあの独特なグルービー・テクノ・サウンドで世界中のクラウドを熱狂させ続けている。

年末には昨年に引き続いて、ageHaYellowでのダブルヘッダー公演を行い、2004年のパーティー・イヤーを見事なプレイ内容で締めくくってくれたことは記憶に新しい。その際にHigherFrequencyがYellowでのパフォーマンスの翌日に滞在先のホテルにて行ったのがこのインタビュー。既に配信されているビデオ・インタビューでは編集でカットされていた部分も含む完全版(20分)としてお届けする。

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> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 先週末はageHaとYellowでプレイされましたね。ageHaでは昨年と同様、石野卓球と共演されたわけですが、いかがでしたか?

Carl Cox : 昨年と同様、アニバーサリーの時期にageHaでプレイすることが出来て嬉しかったよ。ある意味、家に帰ってくるみたいな、そんなスペシャルな感じがあるんだ。僕のギグを心待ちにしてくれていたクラウドに迎えられると、こちら側もすごくモチベーションが上がるしね。しかも、今回は上のDJブースじゃなくてフロアのDJブースで、サウンド・システムとかライトとか、全部クラウドと一緒に感じながらプレイすることが出来たからなおさら良かったよ!ageHaのサウンド・システムは素晴らしいし、上のDJブースのセットは僕が今までにプレイした中でもベストの一つではあるけど、あまりフロアで鳴っている音のエネルギーを感じることが出来ないからね。その分、下のブースはフロアの中にあるから、やりやすかったよ。あと、今回また卓球と共演することになったんだけど、彼はすごくいいプレイをしてクラウドを盛り上げてくれて、僕がスタートする頃には、みんなクレイジーになっていたよ。彼はものすごくリスペクトされているDJだし、そんな彼と一緒にプレイ出来るのは僕にとってすごく喜ばしいことだったね。

HRFQ : 翌日のYellowのロング・セットの後半には、あのLaurent Garnierも登場したとのことですが。

Carl : Yellowも本当にスペシャルなクラブだよ。それにプレイする度に絶対何かおもしろいことが起こるんだ。今回は僕が7時間のセットを終えたところで、ちょうど同じ日程で来日していたLaurentが遊びに来てくれたんだ。僕がロング・プレイをすることを知ってたみたいで、レコードを持って来て、僕の後にプレイしてくれたんだ。歴史に残る夜だったと思うよ。最後の最後までそこに居合わせた人みんながエンジョイしてた。Laurentと僕はすごく相性が良くて、彼とはいつも楽しい時間を過ごせるんだ。だからクラウドもそれを感じたみたい。Laurentのプレイはすごくバリエーションに富んでいて、ディスコやオールド・スクール・ハウス、ジャズみたいな感じでいろいろプレイしてた。それに、何よりも素晴らしかったのは彼が僕のプレイを完璧なかたちで受け継いでくれたこと。最後にドラムン・ベースをかけてもまだまだついてくるクラウドにも驚いたよ!素晴らしい夜だったし、次回のギグに向けていい思い出になったんじゃないかな。出来るだけ早く戻って来たいとも思っているよ。

Carl Cox Interview

HRFQ : 今年の早い時期にはオリジナル・アルバムをリリースされる予定だということですが?

Carl : Second Signというタイトルのアルバムなんだけど、Carl Coxとしては3枚目のアルバムになるんだ。今回のアルバムは、僕が音楽をつくる理由や、僕のバックグラウンドを人々に知ってもらうという意味で、より発展的な内容の作品になると思う。しかも今回のアルバムでは、Roni SizeやNorman Cook、Josh WinkにKevin Saunderson、それにRoni Size のバンドReprazent のヴォーカリストOnalee、元RepublicaのSaffron、最近'Give Me Your Love'というトラックで一緒に仕事をしたHannah Robinsonといったアーティストたちと一緒にコラボレーションをしたんだ。かなりすごいことになってるよ!ドラムン・ベースにパンク・ロック系のギター、テクノ、テック・ハウス、ファンクにジャズ……いろんなタイプの音が一枚のアルバムにつまってるからね。思うに、今こそ僕ら音楽を制作している人間は、もっとアルバムのための楽曲を作っていくべき時なんじゃないかな。ただ一つのコンセプトにとらわれた音じゃなくてね。僕にとってのいい音楽、自分の持っている音楽的知識を広くみんなに知ってもらいたい・・・その辺りのことが、このアルバムにはよく表れてると思うよ。ただ、ある人は驚きながらも喜んでこのアルバムを聴いてくれるけど、完璧なテクノ・アルバムを期待していたリスナーの中にはがっかりする人もいるだろう。もちろん、テクノの曲も入っているけど、作品が広く受け入れられってことが大切なことだからね。

HRFQ : あなたのレーベルIntecが始まってから5年が経ちますが、この5年間で最も印象深い出来事は何でしたか?

Carl : Intecのカタログにはたくさんのハイライトがあるけど、Renato Cohenの曲"Pontape"かな。この曲は彼がまだサンパウロにいた頃にピックアップしたんだけど、今でも売れてるんだ。この曲のリミックス盤としてリリースした'Just Kick'も、認知度という面で、ここ数年にリリースされたテクノの作品を全て凌駕したと思うよ。Tim Deluxeの"It Just Won't Do"のヴォーカルをのせたことも手伝って、かなりの大ヒットになったよ。'Just Kick'については面白いストーリーがあってね。Yellowでプレイしてたときなんだけど、ブースにこのレコードを持ってきた男の子がいて、「このレコードかけてくれ!」って言うんだ。だから「いいよ」ってすぐプレイしたら、フロアが盛り上がって、すごいことになっちゃって。で、プレイし終わって、そのレコードにサインして彼に返したんだ。その後すぐ彼はどこかに行っちゃったんだ…多分E-bayにレコードを売りにでも行ったのかな(笑)?でもすごい面白い出来事だったよ。人からレコードを借りて、プレイしてすぐ返すなんてね。彼は僕がプレイしたレコードを持ってるんだ。そのほかに、Tomaz and Filterheadzの"Sunshine"もすごく成功したレコードの一つだね。それに、Deetronの"Miss Suave"やBryan Zentzの"Declash"も人気があったよ。

HRFQ : Intecの今後のリリースを教えてください。

Carl : Marco Baileyの作品をリリースするよ。彼は最近かなり注目されているみたいだね。彼の音にはいろいろな音楽の強い影響が感じられるから好きなんだ。以前IntecからUnderloungeっていう彼のEPをリリースしたことがあるんだけど、それもすごくいい感じだったしね。その他には、Thomas and Cobra、パリのSebastian Leger、マドリッドのプロデューサー Leandro Gamezのニュー・トラックもリリースする予定。Valentino KanzyaniはIntecが出す次のコンピレーションCDを担当するDJなんだけど、彼のプロデュースするトラックは最高だよ。近いうちに彼のトラックもリリースできるように進めてるんだ。たくさんやることがあって、結構忙しいよ!

Carl Cox Interview

HRFQ : リリースが予定されているDVD'Carl Cox and Friends'には、Led ZeppelinのJimi Pageも出演しているとか?

Carl : Jimi Pageには是非出演してもらいたかったんだけど、残念ながら今回はスケジュールが合わなくてね。すでに彼のために曲を書いてあるから、次の'Carl Cox and Friends パート2'には是非出演してもらいたいと思ってるんだ。彼も出たがってくれていたから残念だったよ。ツェッペリンのリード・ギタリストに自分の書いた曲を弾いてもらう…僕にとっては夢のような話だったんだけどね、今回は実現しなかった。当初、彼にはシークレット・ゲストとして出てもらうつもりだったから、今回はロッテルダムの自称アーティストSecret Cinemaに"シークレット"出演してもらったんだ。だから、的確な人に穴を埋めてもらったと言えるかな。でも、自分たちが目指していたスペシャルでユニークなレベルまではいかなかった。だから、Carl Cox VS Jimi Pageの実現はまだあきらめてないよ。

HRFQ : このプロジェクトを始められたきっかけは何だったのでしょう?今後は更に多くのDVDをリリースしていかれる予定ですか?

Carl : 今、Carl Coxが取り掛かっている大きいプロジェクトを知ってもらいたいというのが、このプロジェクトを始めた理由なんだ。僕が今クラブでやっているのはDJだけじゃなくて、ライブ的な要素を取り入れてショーをすること。だからショーでプレイする音楽は、全部僕がヴォーカリストやギタリスト、パーカッショニストたちとつくったアルバムの楽曲からピック・アップするんだ。だから必然的に彼らにもショーに出演してもらって、トラックを生で演奏してもらう。僕はDJとして出演するんだけど、時々DJをストップしてアーティストと一緒に曲をプレイしたりして、ライブ音楽とDJを融合させた感じの内容なんだ。結構な長丁場で、7時間以上のショーになることだってあるかな。しかも、このショーにはきちんとした舞台製作や、振り付けまでもが用意されている。次回のショーでは、もっといろんなことをやる予定だけど、今までの3回は成功したから、とても嬉しかったね。一回目はイビザのSpaceで、その次はマドリッドにある素晴らしいクラブRadicalでやったんだけど、どちらにも1万人以上の人が集まってくれたんだ。これからは世界中でこういうショーをやっていきたいと思ってるよ。

HRFQ : 今度公開される映画"LA DJ"にカメオ出演されているそうですが、他にも出演予定の映画はありますか?

Carl : 他には特に予定はないね。台本はいくつか送られて来たりするんだけど、ちょっと僕には大変すぎるかなって気がするんだ。だいたい、自分がDJ兼俳優になるなんて考えられないし、二つを両立させるのはすごく大変だと思うからね。映画を観るのは好きだし、映画撮影術や台本、それにセリフのすばらしさも認識してる。でも、もし映画をやりたいなら、それに100%集中しないとダメだろうね。中途半端にはできないよ。それに、他の俳優の演技をみていると、やっぱりスゴイなって思う。特に、難しい台詞のある台本を見たときなんかは特にそう思うね。僕は、とにかく長いセリフが覚えられないんだ!まぁ、"LA DJ"では、ハリウッド・デビューすることが出来たし、内容も簡単だったから良かったけど。しかもすごく楽しかったしね。映画はこれで2本目なんだけど。

HRFQ : 一作目について少し話してもらえますか?

Carl : "Human Traffic"っていう映画で、パブロ・ハッサンっていう役をやった。実際に映画を観た人にとっては、すごく面白かったと思うよ。僕はDJとしてじゃなくて、ナイト・クラブのオーナーの役として出演してたんだ。しかも、そのパブロ・ハッサンがすごく怖い役で、役作りに苦労したんだけど、スタッフに「このカットが終わるまで今日は終われないよ」って言われて、つまり、このカットが終わるまでみんな食事が出来ないってことだから、とにかく頑張ったね!その甲斐もあって、結局みんな食事にありつけたんだけど、それでもあのシーンには12時間もかかったんだ。だから、役者として仕事をするってことがどういうことなのか、僕にはわかるんだ。魅力的な職業だけど、完成するまでにはカメラのアングル設定からなにやらで待たされることだって多いしね。" LA DJ"だって同じだよ。撮影するのに12時間かかったんだ。この映画のストーリーは、スーパー・スターDJを目指してる2人のユダヤ人の男の子に関する話。彼らの父親はバルミツバー (ユダヤ教の13 歳の男子の成人式)でDJをやっているんだけど、病気になっちゃうんだ。だから父親の代わりに彼らがDJを始めるんだけど、トランスとかトリップ・ホップとか、式でかけるべきじゃない音楽をプレイし始めて…。やがてDJをしたり、自分たちのレコードを売ることでお金を稼ごうとして奮闘を始めるってストーリーなんだ、僕はそこで彼らにアドバイスをあげる役を演じてるんだけど、結構面白い映画だと思うよ。"American Pie"をつくったスタッフも参加しているみたいだし。

HRFQ : ニュー・テクノロジーについてですが、Final ScratchやDVD-J、Traktorなどは最近のDJセットに取り込まれていますか?

Carl : 今僕がハマッっているのはPioneerのCDJs 1000だけかな。あと、Tecnicsの新しいプレイヤーも好きだね。僕は自分をクリエイティヴなDJだと思っているし、ターンテーブル上では出来ないことも、CDなら出来ることがある。ただ、僕は両方の優れた点を利用したいんだ。まだレコードをプレイしたい人はたくさんいるし、そういう人に全てCDでやれというわけにはいかないでしょ。だから、レコードとCDのコンビネーションを次なるステップとして慎重に踏んでいるという感じなんだ。僕はCDJの機能を完璧に使いこなすことが出来るし、それを使いこなすうちに、「どうやってループやサンプルを作るか」とか「どうやって自分の思ったように操作するか」ってことは分かってきた。でも、同時に、DJをやっている時にそれ以外のことに時間を割ける余裕がないってこともよくわかったんだ(笑)。だから、Traktorや Final Scratchに関しては、今はそれほど必要性を感じていない。それに、DJのエキサイトな面が少し減るような気もするしね。確かに、いろいろなタイプの音楽を集めるという点では便利だし、アナログを持っていく必要もない。でもコンピューターはクラッシュするし、それはイヤだからね。だから、今のところは古いスタイルに留まるつもりだよ。だってコンピューターを使って、念入りに準備したとしても、もし電源が切れてしまえばそれまでだからね。一方CDJは、たくさんのDJの間で人気があるし、しかも15年もかけて開発されたものだ。だから、今後は今にも増して、たくさんのDJがCDJを使うようになると思うよ。

End of the interview

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