Swedenのストックホルム在住の若き天才テクノ・プロデューサー、Aril BrikhaがHigherFrequencyのビジネス・パートナーであるArcTokyoの招聘のもと待望の再来日を果たし、4月3日に代官山Airで開催されたパーティー"groundrhythm"において、その美しくかつエネルギッシュなライブ・パフォーマンスを披露してくれた。超満員のフロアを埋め尽くした熱心な日本のファンを前に、時にはアグレッシブにそして時にはレイド・バックした雰囲気で見事な世界観を演出し、オーディエンスとの呼吸が一致した時には本当に素晴らしい笑顔を見せてくれたAril Brikha。そのハイクオリティで美意識あふれるパフォーマンスは、あのDerrick Mayが彼に惚れ込んだ理由を改めて我々に確認させてくれる巣晴らしい内容であったと言える。 そんなArilにHigher-Frequencyが独占Interviewを敢行。今までなかなか日本のFanには伝わる事のなかった彼の素顔をここにお届けする。
> Interview & Translation _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)
HigherFrequency (以下HRFQ) : 約1年ぶりの来日だと思いますが、どんな気分ですか?
Aril Brikha : 実は今年の新年は東京で過ごしていたんだ。相変らず素晴らしい時間を過ごさせてもらったよ。日本に来るのは大好きで、いつもとても楽しみにしているんだ。
HRFQ : 日本のテクノシーンについてはどんな様な感想を持っていますか?
Aril : 「素晴らしい」の一言に尽きるね。ホントここでは毎回楽しい経験ばかりさせてもらっているし、クラウドからの反応もいつも最高だし・・・。日本人の音楽の楽しみ方は、他の国と比べるとちょっと違っているんじゃないかなと思うんだ。他の国では同じように音楽が好きな人でも、決して手放しで楽しんだり、音楽にのめり込んだりしないような所があったりするからね。
HRFQ : 今回あなたがプレイするAirもそうなんですが、海外から来日したDJの多くが「日本のクラブのサウンドシステムはヨーロッパのクラブと比べてもなんら遜色がない」と発言しています。あなたもその意見に賛成ですか?
Aril : 全くその通りだね。実はあるSwedenの雑誌とのインタビューでも同じ事を話したんだけど、AirもYellowもホントに素晴らしいサウンドシステムを持っていると思うよ。やっぱりいい音でプレイできるって言うのは、純粋に楽しい事だよね。
HRFQ : 日本のクラウドの反応についてはどうですか?多くの人がヨーロッパでの反応とは随分と違うと感じているようですが、どこが一番大きな違いだと思いますか?
Aril : さっきも言ったとおり、日本人はヨーロッパの人達よりも深く音楽に入り込んでいて、もっと手放しで楽しんだり盛り上がったりする事が出来る人種なんだと思う。ヨーロッパのある所ではお客さんの反応はもっとクールなもので、汗をかきながら興奮するって事もあまりなかったりするからね。まぁ、その意味で僕的にはドイツと日本でプレイする事がやっぱり好きかなぁ。
HRFQ : あなたの母国(Sweden)におけるテクノシーンはどのような感じですか?
Aril : クラブって観点で言うとそれほどでもないね。場所はそれなりにあるんだけど、殆どがハウスの箱で、テクノのクラブはあまり良いところが無いのが実情なんだ。あと、クラブを運営している人たちの中には、決まった固定のハコを持たずに、いつも場所を変えてやっている人たちもいたりして・・・。まぁ、AirやベルリンにあるWMFみたいなクラブがSwedenにあればいいんだけどね。どちらもハウスとテクノがうまく混ざり合っている感じがするし、お客の層も「ハウス好きだけ」とか「テクノ好きだけ」みたいな感じで偏っていたりしないからね。
HRFQ :あなたの才能は身近にいる人たちによってではなく、遠く離れたデトロイトに住むDerrick Mayによって結果的には発掘されたわけですが、地元の人たちからあまり良い反応を得られなかった中で、かの伝説的な人からレスポンスがあった時はどんな気分でしたか?
Aril : 最高だったね。もし誰かが僕の音楽を発掘する運命にあったとすれば、これ以上の人は望みようがないほどの素晴らしい結果だったよ。
HRFQ : 今はあなた自身がエスタブリッシュ・アーティストとなった訳ですが、新しい才能を発掘する事に興味はありますか?未契約のアーティストからたくさんデモテープが送られてくると思いますが・・・
Aril : うん。でも、これはいつも言っている事なんだけど、僕は自分のレーベルを持っている訳じゃないし、デモテープを貰っても何も出来ないのが現実なんだ。むかし自分のレーベルをスタートしようと考えた事もあったんだけど、その時も基本的には他のレーベルからリリース出来ない自分の作品を出す為に作ろうと思っただけだし・・・。勿論、みんなが僕の感想を聞きたがっているって事は重々承知なんだけど、他人の音楽をあれこれ批評するのはあまり好きじゃないんだよね。まぁ、もし自分がレーベルを始める事になれば、人の音楽も聞く事にもなるんだろうけど・・・。
HRFQ : ニューアルバムのリリースが年内にTransmatからリリースされると聞いていますが、どんな感じのアルバムになりそうですか?
Aril : リリース日についてはハッキリとした事は言えないかもしれない。というのも、Transmatはデトロイトで開かれている「Movement」というフェスティバルを去年から仕切るようになっていて、そのイベントの前後数ヶ月は作品のリリースに関してあまり手を付けられない状態にあるからなんだ。勿論、彼らが何とかしてリリースしようと努力している事は知っているけど、フェスティバルを仕切るのは本当に大変な労力が必要だからね。僕のアルバムの中身について?・・・よく分からないな。僕の音楽制作のスタイルはそんな感じで進めているわけじゃないからね。いつも僕は単に曲を作るだけで、それを彼ら(レーベル)がアルバムとしてまとめあげて行く感じだし・・・だから、トータルでは色んなスタイルの混ざったアルバムになるとは思うけど、基本的には僕がいつも作っているようなタイプの音楽が収まっているような内容と思ってもらっていいんじゃないかな。
HRFQ : 楽曲制作はPCベースで行っているのですか?それともアウトボードを使っていますか?
Aril : 実は2ヶ月前までは音楽制作にコンピューターは一切使っていなかったんだ。最近になって始めるようになった理由は、単純に僕の持っているハード機器が、あちこち旅している間に壊れてしまったからなんだ。そんな訳で、これからはもっとPCで制作をする事になると思うよ。
HRFQ : 最近では様々な技術革新が起こっていて、「音楽を制作する」と言う事はほんの一握りの才能ある人たちだけの特権ではなく、プリセットサウンドの使い方さえ知っていれば若いキッズ達にとっても可能な事になってきたような気がしますが、こう言った傾向についてはどのようにお考えですか?
Aril : ポジティブな側面としては、ちょうど君が言ったみたいに「誰でも音楽を作れるようになった事」だと思う。でもネガティブな側面としては、それが余りに簡単すぎるって事を感じるね。確かに、本当にたくさんのサウンドやプログラムが簡単に手に入るようになったかもしれない。でも、それは決して何か新しいものをクリエイトしているってわけじゃないでしょ。それに、一つの事にこだわりを持たなくても、色んな事にチョロチョロと手を出せてしまうような環境があると言うのは、やっぱり音楽制作にとってプラスと呼べる状況じゃないと思うんだよね。僕は16歳の時からずっと同じ機材を使っているし、その機材の事は隅から隅まで知り尽くしている。で、昔はもっとサウンドプログラミングにのめり込んでいた時期もあったし。でもそう言う努力をしていたのって、やっぱりそのサウンドをどこかで見つけたり、いわゆる「デトロイトテクノのストリングス用サンプルCD」みたいなものが買えなかったりしたからなんだよね。
HRFQ : 最近ではたくさんの人たち、とくにメジャーレコード会社の人たちが、「MP3ダウンロードは単純に音楽ビジネスを駄目にするだけじゃなくて、音楽文化そのものを破壊している。なぜならアーティストが報酬を受ける事が出来ないからだ」と言っているようですが、彼らの言い分は正しいと思いますか?
Aril : おそらく当たっているだろうね。フォーマット自体に問題はないと思うけど、みんながお金を払わないで音楽を盗用しているという事実は、やっぱり問題だと思うよ。もし、アーティストが自分のMP3やWAVファイルに対してお金を貰えるような環境が整っていればいいんだけど、実際には殆どの人がお金を払わずに音楽をダウンロードしているわけでしょ。これじゃ、少なくとも小さなレーベルやアンダーグラウンドアーティストにとっては害が無いとは言えないよね。まぁ、僕自身は音楽制作でそれほどお金を稼いでいる訳じゃないから(実感はないけど)。でも、何か(お金を稼ぐ)他の方法を探すとすれば、やっぱりそれはパフォーマンスをするって事になるのかなぁ・・・。まぁ、いずれの場合にしても、将来的には何らかの変化が起こってくると思うよ。だって、メジャーはいつまでもロスをたくさん出している訳にはいかないからね。
HRFQ : 去年Airでプレイしたときもライブセットで、今回もまたライブセットという事ですが、DJ活動よりライブ活動に重点を置いている感じですか?
Aril : 実はDJをした事はないんだよね。何故かって?それは僕がプロデューサーだからだよ。よくわからないんだけど、なんでプロデューサーが自動的にDJじゃなきゃいけないのかなぁ?僕は自分の得意な事にだけこだわり続けていきたいと思っているんだよね。だから、実際にレコードをプレイしたとしても、自分が楽しむ為に好きな曲だけかけるって感じになるだろうし、それは決して他人がクラブでフルボリュームで聴くようなものでもなければ、クールなバーで聴くようなものでもないと思うよ。
HRFQ : ライブをやる時にセッティングを教えていただけますか?
Aril : 機材という点では、今回ラップトップPCを初めて使うんだ。2、3週間前に買ったばかりだから、ちょっとナーバスになっているんだけどね。あと、Nordlead 2とBasssationは持っていくかな。MPCは今ちょっと壊れているから、日本に来ている間は自宅に置いてきているんだ。
Aril : 日本にもたくさんの才能あるプロデューサーやDJが居ますが、地理的な距離という問題もあって、欧米のシーンに食い込むって事がなかなか難しいのが実情のようです。しかし、あなたは実際にその地理的なハンディキャップを乗り越えてブレイクを果たされましたね。その経験から日本の若いプロデューサーに何かアドバイスはありますか?
Aril : とにかく自分の好きなレーベルやいつも聴いているレーベルにデモを送るしかないね。言えるのはそれくらいかな。僕も実際にそうやって来たわけだしね。
HRFQ : あなたにデモテープを送る場合はどうすればいいですか?
Aril : さっきも言ったとおり、僕はレーベル・マネージャーとしてデモテープを聴くことはしないし、まずは他のレーベルにデモを送った方が良いと思うよ。でも、www,artofvengeance.comにいけばinfo宛のアドレスが書いてあるから、送りたい人はチェックしてみて欲しい。
HRFQ : 2004年に日本に戻ってくる予定はありますか?
Aril : 今のところはないね。でも近いうちにまた来たいと思っているよ。もうこれで満足って事は決してないからね。
End of the interview
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