HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Adam Beyer


スウェーデンのストックホルムを拠点に活動を展開する Adam Beyer。10代の頃からプロデューサー兼レーベル・オーナーして活躍してきた彼は、ハード・エッジなミニマル・サウンドで人気を博し、今や全世界のフィールドを相手に活動を繰り広げる北欧テクノ・シーンの巨人である。昨年 Adam は、Drum Code と True Soul に引き続いて、新レーベル"Mad Eye"を設立。ハードなテクノ・サウンドと知性的なミニマル系サウンドの中間を行くような新たな方向性の模索に乗り出したばかりだ。

2005年もますます大きな活躍が期待される Adam が、今年の来日アーティストの先頭を切って、去る1月7日に渋谷 WOMB にて来日公演を行った。このインタビューはその際に行われたものである。

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> Interview : Laura Brown (ArcTokyo) _ Translation : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ H.Nakamura (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 前回の来日からわずか7ヵ月後の来日ギグとなるわけですが、日本はお気に入りの国なのでしょうか?

Adam Beyer : 日本は特別だよ。文化があって、他のどの国とも違うしね。来るたびにどんどん好きになるんだ。

HRFQ : 昨年、新しいレーベル Mad Eye Recordings を立ち上げられて、そこから Henrik B とのコラボレーション・トラックを2作品リリースされましたね。実験的な作品をリリースするために Mad Eye Recordings を設立されたという話を以前聞いたのですが、Drumcode や Truesoul に続いて、このレーベルをつくった理由を聞かせてくれますか?

Adam : 僕がこの2〜3年ずっとハマってきた音楽って、自分が Drumcode や Truesoul でかつてやってきたことと、最近の大きな流れになっている一連のミニマル・サウンドとを合わせたものなんだ。だから、その辺りの音に刺激されて、自分でもやってみようと思ったのがきっかけかな。Mad Eyeはテクノだけど、そんなにハードじゃなくて、ちょっと風変わりで違ったアレンジがされた、ちょうど中間のスタイルだね。Drumcode にも Truesoulにも合わないし、こういう音をリリース出来るレーベルを他に知らなかったから、自分で新たにレーベルをつくったというわけさ。

HRFQ : Drumcode と Truesoul では今後どのような動きがみられるのですか?

Adam : Drumcode ではスウェーデンのアーティストをリリースすることにフォーカスしようと思ってる。スウェーデンにはいい音楽をつくってるアーティストがいっぱいいるし、若くて、すごくポテンシャルのあるアーティストも多いんだ。だから彼らのために作品をリリースする場を提供してるというのが、このレーベルの今の方向性かな。まぁ、たまには自分の作品もたまにリリースしていくかもしれないけどね。Truesoul では、コンセプトや、アルバム、音楽がメインになってくるよ。ある一定のスタイルや、フロア・ライクなものっていう風に、特に限定してないんだ。ただ僕の好きなものや、メロディックなものをリリースしてるよ。

HRFQ : スウェーデンには Henrik や Aril Brikha、Cari Lekebusch、Jasper Dahlbek をはじめとして、素晴らしいアーティストがたくさんいますね。その他に日本のファンにお勧めしたいアーティストの名前を挙げてもらえますか?

Adam : Hardcell and Par Grindvik っていうアーティストがいて、最近レコードを5枚リリースしたんだけど、パッケージを一緒にしてリリースしたんだ。それがすごく上手くできていて、かなりいいトラックが入ってるんだよ。彼らにとって来年はブレイクの年になりそうだね。しかもライブ・アクトもすごくいいんだ。それと、スウェーデンのシーンでは結構前から活躍してるアーティストなんだけど、David Rossor もいいね。今後リリースもひかえてるみたいだし。Hertzもすごくいいし、それに、最近UKチャートのナンバー1ヒットを出した Eric Prydz もいいね。実は、彼は昔Cirez D という名義で Truesoul からリリースしたこともあるんだ。いずれにしても、スウェーデンみたいに小さな国で、これだけたくさんポテンシャルのあるアーティストがいるのは素晴らしいことだよ。

HRFQ : レーベル・オーナーとして、リリースするアーティストやトラックを選ぶ際に、どんな基準を置いているのですか?

Adam : 今までは、常に友達ベースでやってきたんだ。というのも、やっぱり知っている人と一緒に働くのが好きだし、方向性やスタイルなんかに関しても、友達だからこそ分かってあげられるからね。それに、友達だったらただ単に12インチをリリースするだけじゃなくて、もっと長いスパンで付き合えるでしょ。だから、そんなにたくさんのアーティストを抱える必要はないし、それよりは、地元のアーティストや、仲のいい Marco Calora や Chris Liebing といったクリエイターたちと契約したいと思ってるんだ。もし本当に素晴らしいトラックに突然出逢えば、それをリリースしたいと思うだろうけど、そういうピックアップの仕方はあまりしていない。どちらかと言うと、知り合いを中心に、お互い作品を交換しあうって感じかな。例えば僕がそのアーティストのために12インチをつくって、今度は彼が僕のために12インチをやるとかね。そういうのが僕のやり方なんだ。

Adam Beyer Interview

HRFQ : よく、Henrik B とコラボレーションをされていますが、お二人のスタジオでの役割は、特に決まっているんですか?

Adam : 以前は僕がドラムをプログラミングして、Henrik がシンセサイザーなんかで音をつくるっていう役割だったんだ。僕は昔ドラムをやってたしDJも結構長くやってるから、アレンジやプログラミングが得意で、Henrikは音をつくるのが上手いからね。でも最近では逆のパターンで曲をつくることも結構ある。Henrik とはすごく息が合うんだよね。前は一人で曲をつくることが多かったけど、最近では音楽そのものがどんどん複雑になってきているから、スペシャルなトラックをつくるために、出来るだけ一緒にスタジオに入ろうとしてるんだ。一人で曲をつくるよりも、二人のほうが簡単だしね。例えばアイデアに詰まったとき、片方が何か思いつくかもしれないしね。二人のほうが、簡単だし、速い。

HRFQ : サウンド・プロダクションのホスト・シーケンサーとして、どんなソフトウェアをつかっているんですか?

Adam : 今は Cubase SX3 と Ableton 4 Live をつかってる。Halion 3 みたいなフリーのソフト・ウェア・サンプラーや、フリーのプラグ・インもいっぱいつかってるよ。つかえるものなら何でもね。たまにシンセザイサーみたいなハードウェアもつかうしね。いろんなものをつかって、いろんな音を出そうとしてるんだ。

HRFQ : ベース・ラインについてはどうですか?お気に入りのシンセやコンプレッサーはありますか?

Adam : 以前は機材の数が少なかったから、つかうものも決まってたし、気に入ってるものもあったけど、今はいろんなソフトウェアやシンセが出てきてるから、一つのものにこだわってつかわなくても、すぐに新しいものが出てきて、そっちをつかうようになったりってことが多いんだよね。だからベース・ラインについては、お気に入りの機材があるってわけではないかな。

HRFQ : ニュー・アルバムについてはどうですか?先回のアルバムをリリースしてから、2年が経ちますが…?

Adam : ちょっと微妙なんだよね〜。やりたいことはわかってるんだけど、まだ具体的にならないんだ。出来れば来年にはリリースしたいものだね。ファースト・アルバムをリリースしたのが'96年で、セカンドが'99年、サードを'02年っていう風に3年ごとにアルバムをリリースしてきたから、そのまま行けば来年にはリリースされるはずでしょ。まぁいずれ分かると思うよ。まだはっきりとは言えないけどね。もしかしたら、落ち着いた感じの作風になるかもしれないし、ヴォーカルが入るかもしれないし。まだしっかりと決めてないんだ。

HRFQ : ここ日本で、デトロイト・テクノ・シーンはかなり大きいのですが、あなたのサウンドからもデトロイト・テクノの大きな影響が感じ取れます。あなたにとってデトロイド・テクノとは何ですか?

Adam : かつては大きな意味を持っていたと思うよ。Jeff Mills や Robert Hood、あと、デトロイト出身ではないけど、Joey Beltram といったアーティストはスウェーデンのテクノ・シーンを形作ってきたと言えるだろう。最近では、あまり「これ」といった作品が、デトロイトから出ていないような気がするけど、コード進行やメンタリティーの部分で、いまだにデトロイトからの影響を大きく感じることはあるよ。そうやってデトロイトの精神を脈々と受け継いでいくことは大切だと思うし、テクノ・シーンにおいては、原点に生まれたものが一番素晴らしいんだからね。

End of the interview

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