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DIGGIN’ IN THE CARTS

Report

RED BULL MUSIC FESTIVAL DIGGIN’ IN THE CARTS 電子遊戯音楽祭

  • 2017.11.17(FRI)@LIQUIDROOM
  • Text : Akihiro AoyamaPhoto : Keisuke Kato / Red Bull Content Pool, Suguru Saito / Red Bull Content Pool

  • 2017.12.4

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

現代のエレクトロニック・ミュージックにも絶大な影響を及ぼした、日本発・ゲーム音楽の歴史を祝う宴

一ヵ月に渡って東京を舞台に行われた『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017の最終日を飾ったのは、『DIGGIN’ IN THE CARTS 電子遊戯音楽祭』。現在のエレクトロニック・ミュージックにも絶大な影響を与えている、80年代~90年代のゲーム音楽をテーマにしたライブイベントで、LIQUIDROOMでのオールナイト開催となった。

 

そもそも「DIGGIN’ IN THE CARTS」とは、「CARTS(ゲームカセット) DIG (掘り探す)」という意味で、2014年にレッドブル・ミュージック・アカデミーが公開した、日本のゲーム音楽の歴史とその魅力を探った全6エピソードのドキュメンタリー映像シリーズが元となっている。

 

また、このイベントと同日の1117日には、日本のゲーム音楽から厳選されたトラックを収録したコンピレーション『DIGGIN IN THE CARTS』もリリース。発売元はダブステップのパイオニア的レーベルで、現代のUKを代表するエレクトロニックミュージック・レーベルの〈Hyperdubだ。この事実からも、ゲーム音楽が世界のエレクトロニック・ミュージック・シーンに与えた影響の大きさが窺い知れるだろう。

 

東京を拠点に活動し、今年〈HyperdubからEPをリリースしたQuarta 330がトップバッターを飾った後、登場したのはCHIP TANAKA。任天堂出身で、ゲームボーイの音源開発をはじめ、『メトロイド』や『ドクターマリオ』など、数々のゲーム音楽を手掛けた、チップチューンのオリジネイターだ。名作ゲーム『MOTHER』の音楽で始まったセットは、CHIP TANAKA自身が手がけたゲーム音楽の名曲が散りばめられた極上のエンターテイメントとなっていた。

 

DIGGIN’ IN THE CARTS

 

続いての登場は、海外でも今なおカルト的人気を誇るプレイステーション用ゲーム『L.S.D』のクリエイター、佐藤理。事前にSNSを通じて、世界各国のファンに『L.S.D』のプレイ画面のように街を歩く映像を募集し、その映像を編集したAVショーを展開した。『L.S.D』のプレイ映像と各国から募集した映像が鮮烈な色彩感覚の中で溶け合う、サイケデリックなアシッド・トリップ。夢の中をさまようというゲームのコンセプトがフロア全体に拡張したかのような、ディープな視聴体験だった。

 

 

DIGGIN IN THE CARTS』のリリース元〈Hyperdubの創始者Kode9は、このイベントのために来日。いつものダブステップ的セットとは一味違う、チップチューンを組み込んだ上音メインの始まりから、徐々にベースを響かせ、ドープにフロアを揺らしていく。特別AVショーとしてスクリーンを彩るのは、KEN ISHIIらとのコラボでも知られるアニメ監督・森本晃司の映像作品。『鉄コン筋クリート』『音響生命体ノイズマン』など、近未来を描いたアニメの場面が次々と映し出され、Kode9の音像と相まってレトロフューチャーな世界観を見せていた。

 

続く古代祐三と川島基弘は、Flying LotusJust Blazeにも影響を与えたと言われる、91年発売のゲーム『ベア・ナックル』のサウンドトラックを中心としたスペシャル・ライヴを国内初披露。後方のスクリーンに「Streets of Rage」(『ベア・ナックル』の海外版タイトル)という文字が映し出されると、会場から大きな歓声が上がる。その後もスクリーンには絶えずプレイ画面が流れ、古代祐三がキーボードの手打ちで印象的なフレーズを次々繰り出したかと思えば、川島基弘はミキサーを操作してグルーヴィに音源をチョップ&エディット。想像以上に即興性の高い演奏に、オーディエンスは何度も沸いていた。

 

DIGGIN’ IN THE CARTS DIGGIN’ IN THE CARTS

 

日本を代表するテクノ・アーティストKEN ISHIIのステージは、90年代テクノ・セット。序盤からLFOの代表曲“LFO”でオーディエンスの心をぐっと掴むと、四つ打ちのビートを基調に、長い時間をかけてフロアのムードを構築していく。踊ることの気持ち良さにフォーカスしたそのセットは、懐かしくもあり、今では逆に新鮮でもあり……。最後に聴こえてきたのは、95年にリリースした彼の代表曲“Extra”。この曲は前述した森本晃司によるミュージックヴィデオでも話題となり、90年代後半以降の世界的な日本アニメ・ブームに先鞭をつけた歴史的名曲だ。日本の90年代ポップ・カルチャーにフォーカスしたイベントとも絶妙にリンクする粋な選曲に、フロアはこの日一番の熱狂に包まれた。

 

DIGGIN’ IN THE CARTS

 

電子音楽の黎明から、ゲーム音楽は最先端のエレクトロニック・ミュージックに刺激を受けて発展を遂げてきた。その発展がエレクトロニック・ミュージックにも刺激を与え、また新しい音楽へと繋がっていく。そんなゲーム音楽とエレクトロニック・ミュージックの密接な関係性と歴史を全身で浴び感じることのできた一夜。ユニークな視点で音楽シーンを切り取り、斬新な魅せ方で数々のイベントを行ってきた『RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2017の締め括りには、これ以上ないほどにピッタリのイベントだった。

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