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BACARDÍ Over The Border Launch Party Tokyo

Report

BACARDÍ Over The Border Launch Party Tokyo

  • 2017.06.29(Thu) @ TABLOID
  • Text : Akihiro AoyamaPhoto : Shigeo Gomi

  • 2017.7.31

  • CDJ-2000NXS2 DJM-900NXS2

アートと音楽と――既存の境界線を超えた先にある、真の独創性へと辿り着くために

既存の概念を超えた表現に挑戦し続けるアーティストたちの活動をサポートするべく、世界最大のラム酒ブランド〈バカルディ〉が今年から日本でスタートさせた新プロジェクト、『BACARDÍ “Over The Border”』。オリジナルのプラットフォーム・メディアと体験型イベントの二つを軸にした同プロジェクトのローンチ・パーティーが、6月29日に東京TABLOIDで開催された。オープン直前に会場に到着すると、ミラーボールを無数に使用し光と反射の空間作品を創り出すアート集団MIRRORBOWLERと、廃材と自然から採集した素材を使用した創作活動を行うR領域の手による巨大なアート作品がエントランスでお出迎え。アーティストがパフォーマンスを行うステージの周囲も無数のアート作品で彩られ、一般的なクラブ・イベントの概念を超えた音楽とアートの融合を、視覚的な面でも存分に体験できる会場のデザインとなっていた。

パフォーマンスを行うトップバッターは、レーベル〈MOO〉の主宰やダンス・ミュージック・メディア『FLOOR』の編集長としてマルチな才能を発揮し、先日ヨーロッパ・デビューも果たしたNaoki Serizawa。クラブミュージックをベースに、Kendrick LamarやDrakeといった大物ラッパーのヒット曲を織り交ぜ、硬軟取り揃ったビートを巧みに操りながら会場を心地良く揺らしていく。

 

すっかりフロアが温まったところで、続いてステージに登場したのは和田永。旧式のオープンリールテープレコーダーを楽器として利用する音楽ユニットOpen Reel Ensembleとしても活動し、ブラウン管のテレビを鍵盤打楽器として演奏するBraun Tube Jazz Bandのパフォーマンスで、第13回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞を受賞したアーティストだ。Ei Wadaʼs Braun Tube Jazz Band名義でのパフォーマンスは、驚くほどに独創的。ステージ上には演奏に使用する5台と映像が流れる2台、計7つのブラウン管テレビが並べられ、たった一人で全てのテレビをコントロールしていく。テレビ画面には、時に原色、時にボーダー等の柄と、状況に応じて様々な映像が映り、それに伴って触れた時に発せられる音色も変化。それをリズミカルに叩いてビートを作り、繊細なタッチで上音を重ねることで生まれるダンサブルな音楽は、機械的で電子的だが、どこか温かみと懐かしさもある。誰も見たことのない楽器をアスリートのように全身全霊で叩く和田永の姿は、まさしくアナログとデジタル、フィジカルとテクノロジーが溶け合う様を見ているかのよう。世界的にも類を見ないユニークなパフォーマンスに、フロアは早くも熱気に包まれた。

Talib KweliやThe RootsのQuestloveからも賞賛を受ける日本人女性、DJ SARASAが最先端のヒップホップ・ビートを繋ぐドープなセットを披露した後、出番となったのはロンドン出身、若干20歳の女性シンガーソングライター、Anna Straker。Years & YearsやRudimentalら現在のイギリスを代表するアクトのコーラスを務め、昨年シングル・デビューを果たしたばかりの新鋭だ。ステージ上には、彼女とサポート・ドラマーの2人だけ。数台のシンセサイザーとサンプラーを巧みに使いつつ、伸びやかな歌声も披露して豊饒なポップ・ミュージックを作り上げていく。Mariah CareyやAriana Grandeさえ髣髴させるキャッチーなメロディとパワフルな歌唱。ゲームの効果音まで使った遊び心満載のサウンド・メイキング。真っ直ぐなポップ・センスと型にはまらない実験精神を併せ持っているという点で、最もスタンスの近いアーティストとして連想されるのはカナダのGrimesだろうか。まだデビューから間もなく今回が初来日の彼女だが、その自由奔放なステージングからは十二分に大器の片鱗が感じられた。

続いての登場は、Flying LotusやThundercatといった超大物を擁し、世界のビートミュージック・シーンをリードする名門レーベル〈Brainfeeder〉に女性として初めて所属した才媛、TOKiMONSTAだ。キャリアやネーム・ヴァリューから言っても、彼女がこのパーティのメインアクトと言っていいだろう。つい先日最新アルバム『Lune Rouge』のリリースを発表したばかりで、今回の来日は新作のモードを一足先に体験できる貴重なセットとなっていた。

 

Lupe Fiascoのデビュー曲“Kick, Push”のチョップド・アンド・スクリュード・バージョンに彼女特有の繊細なピアノの音色が被さるオープニングから、序盤はいつになくヒップホップ寄り。「はじめまして、TOKiMONSTAです!」と日本語でオーディエンスに語りかけるなど、お茶目で可愛らしい表情を見せつつも、トラップ以降を意識したベースとビートは常に極太でパワフル。抑揚と緩急をつけながら、巧みに会場全体を揺らし続ける。6月20日に急逝したラッパー、Prodigyに追悼を捧げるようにMob Deepの“Shook Ones (Part II)”をプレイした後、「Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」ムーヴメントを象徴するアンセムとなったKendrick Lamarの“Alright”を繋ぐ流れには、思わず涙腺が緩み、こみ上げてくるものがあった。

セットが折り返し地点を過ぎると、ビートは倍に加速しダンス・モードへと突入。“Steal My Attention”や“Realla”といった自身の楽曲も散りばめながら、一気にフロアの熱を上げていく。所々で、DrakeとFutureのコラボ曲“Jumpman”やKendrick Lamarの“HUMBLE.”といった楽曲をフックとして使い、単調にならずオーディエンスを飽きさせないような工夫がされているのも素晴らしい。最後は、これまた超大ネタのDaft Punk“Harder, Better, Faster, Stronger”のDillon Francisによる早回しリミックスで締め。女性らしいしなやかさと絶妙な気配りが行き届き、ジャンル越境的なTOKiMONSTAのオリジナリティが遺憾なく発揮された、素晴らしい一時間だった。

 

パーティーのラストを務めたのは、シングル“Drinkee”がデビュー曲にして今年のグラミー賞ダンス・レコーディング部門にノミネートされたニューヨーク発の新鋭、SOFI TUKKER。女性のSophie Hawley-Weldと、男性のTucker Halpernから成る、男女2人組だ。彼らのステージもまた、見たことがないような独創的な世界観。ステージ後方には、キリンとチーターの影絵が描かれたパネルが円形に吊るされ、その一つ一つがサンプラー・パネルになっている。そのパネルをスティックで叩き、多様な音をパーカッシヴに鳴らしながら、時にベースやギターを弾き、時には2人合わせてユニゾンでダンスを踊り……。Tuckerがラップを披露したかと思えば、Sophieはモダン・バレエのようなダンスを踊ったりと、ステージを目いっぱいに使って魅せ、オーディエンスを巻き込んでいく圧巻のパフォーマンスだった。これは果たしてダンスミュージックなのか、ワールドミュージックなのか、それともそんな狭苦しいカテゴリを超えた新しいポップミュージックなのか。いずれにしても、これでいまだデビューから一年足らずとは、末恐ろしいポテンシャル。これからの動向にも要注目のアクトだ。

視覚的な刺激を与えてくれる斬新で強烈なアート・インスタレーションに、特定のジャンルに縛られず自由な精神性から創出される音楽。この夜、それぞれの出演者が提示してくれた「既存の概念を超えた表現」は、予想以上に独創的でオリジナルな楽しみに満ち溢れていた。今秋にかけて、名古屋、札幌、福岡でもポップアップ・パーティの開催を予定しているという『BACARDÍ “Over The Border”』。今後、同プロジェクトからさらに斬新でクリエイティヴな活動が届けられることを、心から楽しみにして待ちたい。

Pioneer DJ

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