DATE : 5 September 2009 (Sat)
LINE UP : TANGERINE DREAM, Bill Laswell presents METHOD OF DEFIANCE feat. BILL LASWELLl (bass), BERNIE WORRELL (keyboard), TOSHINORI KONDO (electric trumpet), Dr ISRAEL (vocal, electronics), HAWKMAN (mc, singer), GUY LICATA (drums) with special guest DJ KRUSH (turntable), RICHIE HAWTIN (MINUS, Berlin) visuals by ALI DEMIREL, AFRIKA BAMBAATAA, PREFUSE 73, LOTUS, MOODYMANN a.k.a. KENNY DIXON JR, Gilles Peterson, LARRY HEARD, SMITH & MIGHTY, LOS HERMANOS, LOCO DICE, INNERVISIONS, GAISER, YURA YURA TEIKOKU, NUJABES, Rei Harakami, Q'HEY, FUMIYA TANAKA, DJ WADA, EYE, CALM, KIHIRA NAOKI, AOKI takamasa, MAYURI
VJ ACTS : UKAWA NAOHIRO, SAKOTA HARUKA, sys, Masato TSUTSUI, REALROCKDESIGN, THE RKP a.k.a. rokapenis, tripon x voice.zero
HIKARI ART : SHINKILOW
VISUAL CONCEPT MAKING : JULIETTA, LUFTZUG
TEXT : Motoki Tanaka a.k.a Shame
イベント詳細
エレクトロニックミュージックを中心に、毎年斬新かつ豪華なラインナップで幅広い音楽ファンから支持の厚いMetamorphose。
2000年の始動から10年、今やオールナイトの野外イベントとしては日本最大規模にまで発展した。今年は例年より2週間ほど開催日が後ろにずれ、外は秋めき始めた過ごしやすい気候。加えて夜空には満月も輝き、節目の開催はこの上ないシチュエーションでスタートした。
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会場に着いて Solar Stage に降りると、厳かなオルガンの調べと共に Method Of Defiance のライブが開始。 ニューヨークを拠点に活動するプロデューサー/ベーシスト、Bill Laswell 率いるユニットだ。その幅広い音楽性で知られる Bill Laswell ではあるが、この Method Of Defiance でもレゲエやダブを基調にハードコア、ドラムンベースのエッセンスが反映され、ジャンルの垣根を超えたハイブリッドなサウンド。 パワフルなMCを二人従え、重低音を前面に押し出した凶悪なグルーヴでオーディエンスを飲み込んでいく。‘反逆の方法’という名が示すよう、既存の概念を覆す破壊力を感じさせるエネルギッシュなライブであった。 続いて Lunar Stage に向かうと、Richie Hawtin 率いる Minus の看板アーティストの一人である Gaiser がライブ中。デトロイトからの影響を匂わせるストイックなミニマルでジワジワとオーディエンスをダークサイドへと導いていた。重厚でありながら音数に無駄のないシンプルな構成のトラックは、地を這うようなベースに躍動的なリズム、更に粒子のように飛び交う高音のノイズが大きなうねりを作り出し、波のようにフロアへと押し寄せていく。独特の世界観で、序盤にして早くも熱気立つ Lunar Stage を更にたぎらせていた。 | |
一旦 Solar Stage へ戻り、今年の目玉の一つである Tangerine Dream を鑑賞。電子音楽の源流として数々のアーティストに影響を与えてきたドイツのプログレッシブロックバンドであり、何と来日は25年ぶり。彼らを見るためだけにきたであろう壮年の聴衆もちらほら見受けられ、注目度の高さが伺えた。 長い歴史の中で幾度となくメンバーチェンジを経てきた彼らだが、今回は男女混合5人組での登場。衣装は黒で統一しているが、フォーマルな装いでビシッと決めた男性陣に対し、女性陣はライダーのようなジャケットやまるで魔法使いのようなドレスを着てたりと様々な出で立ち。ライブ中も黙々と機材に向かうオリジナルメンバーの Edgar Froese と、楽しそうに笑顔で跳ね回る女性メンバーの対比が印象的であった。そんな外見とは裏腹に、演奏は肝胆相照らす盤石具合。 夜空をたゆたうように響くシンセ、ブルース仕立ての物悲しいギター、艶のあるサックスと力強いドラミングが、映画のサウンドトラックを彷彿とさせる壮大なサウンドスケープを描き出していく。 緩やかなテンポの中に浮かんでは消える品のあるメロディで老若男女を惹きつけ、良い意味で異質とも言える雰囲気。ここ日本ではもう二度とはお目にかかれないかもしれない、そんな刹那の時を鮮やかな音色で彩っていた。 余談だが、演奏を終えてからはメンバーも会場を転々とし、ファンとの写真撮影に興じるなどすっかり楽しんでいたよう。ビデオカメラを片手に久方ぶりの日本を満喫する姿が何とも微笑ましかった。 | |
A Critical Mass に向けて Planet Stage に移動すると、アシッド・ジャズの第一人者である Giles Peterson がプレー中。 ラジオDJとしても名高く、ところどころMCを挟みながらカットインやバックスピンといった小技を駆使し、テンポよく場面を転換させていく。ハウスにジャズ、ファンクからモータウンまでを横断し、ここが野外であることを忘れさせるようなディスコティックで華やかな雰囲気を作り出していた。自己の世界観を表現した後は、続くアーティストへの地ならしも忘れず。終盤はクールダウンに徹しながら、後に控える A Critical Mass へ向けた高揚感を維持する絶妙なテンションでセットを締めくくっていた。DJのテクニックばかりに目が行きがちな昨今の風潮の中、センスがきらりと光る職人気質のプレーを目にすることが出来たように思う。 続いて登場したのはベルリン発のモダンハウスレーベル Innervisions の首領、Dixon と Ame に、看板アーティストでもある Henrik Schwartz からなるユニット A Critical Mass。今や単独でもフロアを満員にするネームバリューを誇る彼らが三人揃ってのライブセットを本邦初公開となれば見逃すわけにはいかない。 登場するやいなや歓声に包まれライブがスタート。序盤は土臭さを感じさせるドス黒いグルーヴにヒプノティックなシンセを重ねていく。 メンバー同士互いに合図を出しながら息の合ったセッションを繰り広げる様はラップトップ一本のライブにはない’生’の感覚に溢れ、視覚的にもオーディエンスを惹きつけていたよう。曲間でもたつく部分も見受けられたが、それもまた味というものだろう。 開始20分ほどで早くも Ame の大ヒット曲、'Rej' を繰り出し、フロアは否応なしに大爆発。 以降ジワジワとテンションを保ち、D.P.O.M.B や Ame の 'Setsa'、更には Unkle や Underworld のリミックスといった飛び道具も繰り出し、あっという間の一時間。 俄かに台頭しつつある次世代のハウスミュージック、そのポテンシャルの高さを改めて感じさせる堂々たるセット。是非ともまた日本でライブを披露してもらいたい。 | |
小休止した後は Solar Stage に戻り、テクノ界の貴公子 Richie Hawtin のプレーを堪能。度々来日している彼ではあるが、野外での開放感と共に聞くのはまた格別だ。2007年同じく Solar Stage に登場した際にはハウス感のあるしなやかなグルーヴで幅の広さを見せつけていたが、この日は打って変わって無機質なミニマルテクノで攻め立てていく。科学者の異名に違わず、蓄積された知識と経験でその場のテンションに適合させる手腕に改めて恐れ入る。 オーディエンスの熱狂に答えるかのようにキレのある動きで煽り、更に Minus 専属のビジュアルアーティストである Ali Demirel の創意に富んだVJが後押しする大スペクタクル。 最後は自身の名曲 'Spastik' に Mory Kante の 'Yeke Yeke' を重ねる荒業も飛び出し、2時間を短く感じさせる圧倒的なセット。原点回帰とも言えるストイックな展開で強大無比のカリスマ性をまざまざと見せつけていた。 再び Planet に移動し、シカゴハウスのオリジネーター Larry Heard。 Moodymann からの流れともなれば黒いグルーヴが好きな人には堪らないだろう。序盤は自身のプロダクションから見受けられるディープで繊細なトラックを中心にジワジワと引っ張り、徐々にシカゴのアシッドテイストを強めていく。時折狂気を孕んだようなスリリングな展開も顔を覗かせ、全体としてリラックスした趣きにありながらも、一定の緊張感を保つバランスの良いパフォーマンス。川の流れのように緩急をつけたプレーで聴く者をどっぷり浸らせ、朝もや漂う Planet Stage を幻想的に演出していた。 | |
後ろ髪を引かれつつも Planet Stage を後にし、残念ながらキャンセルとなった STS9 に代わり急遽出演が決定した Lotus を見に再び Solar Stage へ。ライブトロニカバンドとして本国では STS9 と双璧を成す存在だけに、並々ならぬ期待を抱えて登場を待つ聴衆の姿が多く見受けられた。 ジャムバンドのようなスタイルで繰り出されるサウンドは、電子音を取り入れながらも有機的な暖かみに溢れ、粘り気のあるファンクネスで聞く者の腰を突き動かしていく。 ハイライトとなったのは終盤にプレーされた 'Spiritualize'。浮遊感に満ちたトランシーなシンセと哀愁漂うギターのメロディーがステージ全体に沁み渡り、オーディエンスを夢見心地の恍惚状態へと誘い込む。 空模様が変化していく薄明の時間帯に絶妙にマッチしたパフォーマンスで今年のベストアクトに上げる人も多かったようだ。 | |
そして今年の私的トリに選んだのはデトロイトのテクノ集団 Underground Resistance より、Gerald Mitchel 率いる Los Hermanos。朝日に照らされる中、熱のこもったMCとともにライブがスタートした。 ラテンのフレーバーが反映された独特の楽曲で序盤からハイテンションで飛ばしていく。 青空の下にパーカッションの音が小気味よく響きわたり、ソウルフルかつエモーショナルな展開で確実に空気を暖め、MCによる煽りで熱気は更にヒートアップ。終盤には壮大なイントロからテクノクラシックとして名高い 'Knights Of The Jaguar' にスペーシーなシンセが幾重にも連なる 'Central Nervous Systems' で畳みかけ、神々しいまでのメロディーは青空に突き抜けるよう。 情熱、威厳、エンターテイメント性と三拍子そろったライブセット。一晩遊び倒して疲れた体をも奮い立たせる力強いパフォーマンスであった。 今年もまた瞬く間に時が過ぎたが、求めていた感動や新たな音との出会いに酔いしれた一晩。間違いなく楽しめるイベントの一つといっても過言でないだろう。 早くも一年後にはここに舞い戻ることを胸に誓い、心地よい朝日の差す伊豆の地を後にした。 | |
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