DATE : 17 October 2009 (Sat)
LINE UP
Box (Hi-TEK SOUL) : Derrick May, Carl Craig, Jim Masters
Bar (secretsundaze) : Giles Smith, James Priestly, Will Saul, Dan Berkson & James What
Loft (HOLIC) : Tomoki Tamura, Satoshi Otsuki, Toni C, Alex & Paul
Baby Box : Analogue
PHOTO & TEXT : Takahiro Nakayama
Derrick May が2006年に発表されたテクノ・ミュージックのルーツを辿るドキュメンタリー・フィルム 「Hi-TECH SOUL」 の名前を冠にして主宰するパーティーであり、ムーブメントである 「Hi-TEK SOUL」 が3周年を迎えた。 世界各地で開催されるこのパーティー、ロンドンでは1年に3回 Ministry of Sound (以下MoS) で開催されている。 過去に、Octave One, Kevin Saunderson, Francois K, Rolando, Derrick Carter などをゲストに迎えて来た Hi-TEK SOUL の今回のゲストは Carl Craig。一晩で Derrick May と Carl Craig が見れるのはデトロイトテクノ好きには非常に贅沢だ。 さらに今回は3周年という事で、Barでは前回のロンドンレポートで紹介した secretsundaze の二人、Giles Smith, James Priestley と Will Soul、Dan Bekson & James What が登場。そして HigherFrequency でもお馴染みの Tomoki Tamura 自らレジデントを勤める HOLIC が Tres Vibes を主宰する Satoshi Otsuki を日本から迎えて Loft room で開催された。 HOLIC のオーガナイザーである筆者は、オープン30分ほど前に MoS に到着。サウンドチェックをしたり、タイムテーブルやバナーを貼付けたりしていると、オープンと同時にスゴイ勢いでお客さんが入って来た。好き嫌いは別にして、世界で最も商業的に成功しているクラブだけにオープンから1時間程で世界各地から来るクラブ好きの若者達でフロアは埋め尽くされた。 |
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Bar room では、Simple Records のレーベルオーナである Will Saul がディープなテックハウスでクラウドを上手くコントロールしていた。オープンから2時間、時計が1時をまわった所で Dan Berkson & James What のライブがBarでスタート。Poker Flat からのリリースなどで知られるロンドン在住のドイツ人2人組の彼等だが、始めてライブを見た時の衝撃が忘れられなかったので、期待してBarへ。 30分で期待は確信に変わった、テックなリズムとミニマルビーツを自在に操り、楽曲を組み立てる二人のライブは圧巻のパフォーマンスである。最後まで彼らのライブを見たかったのだがLoftで Tomoki Tamura がスタート、後ろ髪を引かれながらもLoftへ移動。Loftに戻ると溢れんばかりの人でフロアが埋め尽くされていた。Tomoki は過去に何度もこのルームでの6時間以上のロングセットをこなしているだけに安定のプレイを見せていた、最近また凄みを増して来ている気がするのは筆者の思い過ごしかもしれないが、現在最も期待している日本人である事は間違いない。 メインルームであるBoxへ移動、オープンからの2時間フロアを暖めていた Jim Masters にDJブースで挨拶をしていると、Carl Craig が準備を始めだした。Jim は Derrick May の盟友で、ロンドンで開催される 「Hi-TEK SOUL」 をオーガナイズしている。過去には今年惜しまれながら13年の歴史に終止符を打った THE END で木曜日に Carl Cox と共に伝説のパーティー 「Ultimate B.A.S.E」 を主宰するなど、ロンドンのテクノの歴史を語る上で忘れてはいけない重要人物である。 | |
時計は2時になり、Boxでは Carl Craig が始まり、Barでは Giles Smith が始まった、だんだん忙しくなってきた。 Carl Craig はダークなテックサウンドを基調とした彼の楽曲の世界観を演出するかのようなDJで、まだかまだかと待ち構えていたBoxのフロアを完全にロック。世界最高峰のサウンドシステムを誇るMoSのBoxで聴く Carl Craig は破壊力が違うと痛感。 Barで Carl Craig と対照的なプレイをしていたのが、Giles Smith。クラウドを惹き付けては離さない新旧の楽曲を織り交ぜた心地のよいハウスでフロアに癒しを与えていた。Loftでは、Tomoki から Satoshi Otsuki へとバトンタッチ。安定感に溢れていたフロアへ一石投じるかのように新しい流れでフロアを少しずつロックしていくプレイは、さすがの一言である。彼のDJを聴くのは去年の THE END 以来だったので、楽しみにしていた甲斐があった。お陰で、彼のセットが終わった後にBoxに戻ると Carl Craig のセットは殆ど終わりかけていた。 そして Derrick May 登場。何故か Mr C と一緒にDJブースに現れると早速、レコードを並べてヘッドフォンを装着。プレイ中の Carl Craig と会話を交わす事はなく、暖かく見守っている感じで横に座っている姿はまさにかつての師匠と弟子という構図を思い描ける。Allen&Heath の真空管付きロータリー式DJミキサー XOne:V6 と Traktor のコントローラーを操る Carl Craig とは対照的にその横でレコードを選びながら Pionner DJM 1000 を操る Derrick May。アイコンタクトで二つのミキサーを同時に使ってMixが始まった。前もって打ち合わせしていたかのような素晴らしいMixを披露しながらバトンタッチ。Octave One の black warter で Derrick May がキックオフ。EQを離さないサービス精神旺盛な Derrick May らしいパフォーマンスで、次々とデトロイトの聖歌というかアンセムを投入しフロアは狂気の絶頂へ。BPMの早いテクノの中にファンキーさやソウルを感じる彼のDJからは生きる力を強く感じる。「世界をソウルがない音楽から救う事が使命」 と語る彼ならではの世界観に圧巻。しかし、オープンから飛ばしていたお客さんが多かったせいか、時計が5時をまわる頃にはフロアに空きスペースが目立ち始めた。 | |
音楽が本当に好きというよりは、クラブでナンパしたりなどを目的としている若いお客さんがMoSには比較的に多いので、夜も更けて来るとお客さんが一気に激減する。この時間がクラブで一番楽しいという人も多いと思うが、筆者もその一人である。Loftも閉まり HOLIC も大盛況で幕を閉じたので、ほとんどお客さんがいないBarのフロアでBPMの気持ちよく遅いDiscoをプレイする James Priesley に心を奪われ、夢中でBarが閉まるまで踊った。 Barが閉まって、Boxに Derrick May を聴きに戻った時には残りは100人くらいになっていた。 2,000人以上ものクラウドが Hi-TEK SOUL に来ていたにしては、寂しい数である。 この日は Fabric が10周年を記念し3日間ぶっ通しの豪華ラインナップで24時間営業していた事が影響したのかもしれない。 7時には音が止まった Ministry of Sound を後にして、重い体を引きずりながら Fabric の10周年へと移動した。 | |
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