HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

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The Very Last Week at Space Lab Yellow LAURENT GARNIER @ Space Lab Yellow

DATE : 20 June, 2008 (Fri)
GUEST DJ:Laurent Garnier
PHOTOGRAPHER: Iwao Ohtake
TEXT: Yuki Murai (HigherFrequency)

HigherFrequency取材陣がYellowに到着した時には、表に行列こそできてなかったものの、ロッカーはすでに一杯、どこもかしこも驚くほどの混雑であった。筆者も、これまでのバーでの待たされ最長記録をあっさりと更新してしまった程。 それでも、ハコ全体に何とも言えない熱気とエネルギーが満ち満ちていて、これだけ待たされてるのにイヤな空気は全く感じられない。メインからYellow全体を揺らす低音に、ただただ否応なしにテンションが上がってくる。
2Fラウンジには「Yellow Mag Gallerie」と称して、初回から最終号までの「Yellow Mag」が壁一面に掲示されていた。 時間(と空間)が許せばじっくり端から読んでみたかったが、残念ながらバーカウンターで注文の酒を貰って移動するのが精一杯といった状況だった。

光陰矢の如しなクラブ界にあって、16年間もの間動き続けたYellow。 たった5年程前に参戦したばっかりの、歴史全体から見れば明らかに新参者の筆者がその重みの全てを計れるはずもないのだが、 Yellowが稀に見るいいクラブで、そんなYellowが大好きだという気持ちは確かだ。
『明日でYellowはなくなります、来週末にはもうありません。』
その現場に居るのに何の実感も沸かず、誰もが何かの前夜祭のように浮き足だっていた。 そう錯覚してしまいそうなほど、店内のデコレーションはどれもきらめいていて、あちこちに花が咲いていて、 中でも1Fのバーカウンター奥の向日葵を中心とした黄色ベースのデコレーションは本当に素晴らしいものだった。


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2Fから、Yellowの名物ともいえる螺旋階段を降りると、満杯のメインフロアはまさに熱狂の海。 最前列から最後列までが、ガルニエの紡ぎだすグルーヴに揺れている光景は圧巻だった。 こんな熱気をクラブで感じたのはいつ振りだろう? 誰もが本当に楽しそうに、嬉しそうに、音楽を純粋に全身で受け止めて踊っていた。

筆者がフロアに下りた時には、丁度ファンキーでグルーヴィーな、お祭り感溢れるハウシートラックで場を盛り上げていた最中だったが、 サックスが冴え渡るSon of rawの"The Black man in Space"などを経由して、ディープでスタイリッシュなテックハウスへと移行。 お祭りから一点、真夜中の高層ビル群を思わせる都会的な音像に陶酔する。 …のはずが、どんどんbpmが上がり、ドライヴィンなテクノセットへ! 建物全体からうなっているような重低音、ブレイクのたびにクラウドは文字通りの狂喜乱舞。 フロアの混雑までもが音の魅力で緩和されているようにすら感じ、筆者も見知らぬ人達とまでも笑顔で無数のハイタッチを交わした。

当日は、予想通り筆者の友人知人も多数Yellowに訪れており、彼らとのしばしの休憩を挟んでフロアに戻ってみると、 先程までの激しさはすっかりどこかへ消えており、何ともジャジーな心地よい雰囲気に。
Sonar Kollektiv10周年を記念して結成されたSonar Kollektiv Orchestraにより、すっかりラテンジャズへと化したAmeの名曲 "Rej" を、 ピークタイム真最中のフロアにドロップできるDJは、さすがになかなかいないのではないだろうか? この全く先読み不可能な展開をフロア全体に納得させ、踊らせてしまう力量に改めて恐れ入る。 ガルニエだからこそできるプレイ、まさに絶好調。 その後も、昨年の来日時のライブセットで見せてくれたディープなドラムンベースや、50年代に戻ったようなロックンロールダンスなどが続き、 今が何時なのか、どこなのかもわからなくなりそうになる、独特の時間へと突入していった。

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翌日のクロージングパーティーを勤めるFrancois Kをはじめ、この日のYellowには本当に色々な人が現れた。朝5時を過ぎても、他のパーティーからはしごしてきた風の人々がフロアにどんどんと加勢し、混雑のピークは過ぎたものの、 フロアはいつまでもにぎやかなままだった。

鳥が羽根をひろげているような不思議なポーズで、クラウドからの声援に笑顔で答えるガルニエ。 「Love the music. Yellow loves music!」と叫び、その途方もない音楽愛を自身のDJを通して我々に伝えてくれる姿は、 超有名DJでありながらも、週末ごとフロアで夢中で踊っている我々クラウドの確かに延長線上にいて、時に身近さすら感じてしまう。

ハウス・ダンスクラシックセットを披露中のガルニエの、「みんな、もうそろそろ12時だ!」という声にも、 フロアからまだまだ元気な歓声があがる程盛り上がっているという疲れ知らずなフロアであったが、徐々に近づきつつあるパーティーの終わりに向かい、 エモーショナルなボーカルチューンの連投もあいまって、次第に『明日Yellowがクローズする』という事実が痛切に身に染みてくる。

 

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「ありがとうYellow!みんな、明日またここに来て、このハコにお別れを言おう!」
何度もそんな言葉を繰り返すガルニエ。といいつつ、次の曲ではボーカルが「Don't say goodbye」と唄いあげる。 そんな演出にとうとう、フロアで涙を流す人達までもが現れはじめた。

このまま、この雰囲気で終わるか?と誰もが思っていたところに、Nirvanaの"Smells like Teen Spirit"のリフが、 クローズという受け入れがたい事実に抵抗するように痛切に響き渡る。 そこからまたもピッチを上げていき、2度のアンコールを経て、13時45分、ガルニエが最後にドロップした曲は、何とProdigyの"Out of Space"。
突飛過ぎると思うだろうが、この曲の歌詞を思えば納得のこと。
"Space lab" Yellowは、他の"Space"へと旅立ったのだ。

近所の企業で働いてる風のビジネスマンやら、ロッポンギにたむろするちょっと悪そうなガイジン達と その取り巻きの派手な女の子たち、ナンパ箱からうっかり紛れこんだキッズ達、 飲みすぎて大騒ぎする若いクラバー、毎週末どこかで会うようなコアクラバー、足取りも素敵なベテランクラバー…
Yellowは、全部飲み込んで、全部許してしまう、本当に稀有な場所だったのではないだろうか。
Yellowがクローズしてしまったことは本当に悲しいが、 ガルニエが最後に言ったこの言葉のように、これまでの16年に最大限のありがとうを言いたい。

「Yellowは一番好きな場所。この場所が本当に、本当に大好きです。 明日、この素晴らしい場所にさよならを言わなければいけません。 心の底から、アリガトウ!ドウモ!サヨナラ!」

 

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