DATE : 7 June, 2008 (sat)
LIVE : DBX, Nathan Fake, Jim O`Rourke, INO hidefumi, Ulrich Schnauss, rei harakami, Tha Blue Herb, V∞REDOMS, あふりらんぽ
DJ : DJ Quietstorm, Fumiya Tanaka, Daniel Bell, James Holden, Kubota,Takeshi, Luke Vibert, Nick The Record, Moodman, Osunlade, Petter, Quantic, 石野卓球
TEXT : Midori Hayakawa(HigherFrequency), Yuki Murai(HigherFrequency)
PHOTOGRAPHER : 大森あがり & Naoko Maeda
早くも第3回目を迎えたTaicoclub。今や野外パーティーシーズンの始まりを告げる風物詩としての存在感も増し、今年は遂に前売り券ソールドアウト・当日券なしといった異例の状況を巻き起こしたほどパーティーピープル達からの支持も篤い当パーティー、数ヶ月前からHigherFrequency編集部内でも「今年のTaicoどうする?」といった声がささやかれていた。
あいにくの薄曇りではあったが、緑に囲まれた心地よい環境は相変わらずで、屋台・店舗の数は2年前と比べ格段に増えていた。また、デコレーションも本格化しており、常設の遊具類とあいまって楽しげな雰囲気をより高めていた。
17時、スペシャルステージのV∞REDOMSへ。凸凹な地形に沿って360度ぐるりと観客が囲むというステージに、メンバー同士が向かい合って環になっての演奏。早い時間にもかかわらず、すでにものすごい人集り。初めて生のライブを見た筆者は、始まりから終わりまで一瞬も目を離せないほど彼等のパフォーマンスに釘付けだった。3台のドラム、5本ネックのギター、EYヨの声。どうやって音を合わせているのだろうと思うくらいの複雑な演奏で、そのパワーと勢いにやられて終始興奮で頭に血が上っている状態だった。衝撃が大きすぎて、終わった後もしばらく余韻に浸っていた程であった。 空が薄暗くなってきた18時頃、PetterのDJセットでメインステージが再開。トラックメーカーとしての印象が強い彼であるが、昨年の来日時にColorsStudioで明け方より披露されたDJセットが予想以上に楽しいものであったため、筆者個人としては今回のブッキングを心待ちにしていた。抑え目のディープなハウストラックからのスタート。音が夕暮れ時に映えはじめると共に、メインステージにも次第に人が増えていった。「夜の部」スタートにふさわしい空気を作り出し、さりげなくテンションを上げて場を完成させる技術は、まるでベテランDJのような風格さえ感じさせるものであった。 続いてのTha Blue Harb の熱いリリックスをしばし堪能した後、しばし食事と休憩へ。 その繊細な音とギャップのあるトークに定評がある(?)rei harakamiのセットを狙って野外音楽堂へ。2年前の朝からのセットは今も語り草となっている氏だが、「11時に入って朝7時から。寒くてお湯割りばかり飲んでいた。聞いてるほうは(朝からのセットが)いいらしいんだけどね…」と、フェスの早朝にブッキングされたアーティストの知られざる苦労話など、今回もマイペースなトークに会場から笑い声が絶えない。そんな中でも披露される曲は優しげな宇宙観をたたえて空に響き、筆者もしばし芝生の会場に寝転がって音を楽しんだ。 | |
小雨の中でのFumiya Tanaka。彼のDJキャリアの長さを感じさせる、相変わらず安定感のある、それでいてどこまでも観客を躍らせるプレイ。疲れさせずに踊り手のテンションを下げさせない選曲の妙ははさすがであった。 メインステージではなく、野外音楽堂へのブッキングが意外といえば意外だった石野卓球氏。ビッグパーティーの常連ともあって、キャッチーなセットを予想していたが、実際に出てきたのは何と90‘sに軽く回帰したかのようなタイトなグルーヴのテクノセットであった。直前のアクトがアコースティックギターでライブを披露したJim O’rourkeだったこともあり、人の多い前方は思いの外踊っていないのに、後方では踊りまくる人が続出、というちょっと不思議な光景になっていた。もちろん、筆者は思い切り楽しんでいたことは言うまでもない。 実は一番の楽しみにしていたDBXのライブ。彼のライブを楽しみに集まっている人がこんなにも多くいるということを象徴しているかのように、始まりと同時に湧き上がる歓声は凄まじいものがあった。出音からもうド渋で、野外特設ステージの空気が一気に変わったのを身体全体で感じた。余分なものをそぎ落とし、最小限の音で作られた極上のグルーヴにキックやらハットやらベースやらが一つずつ入ってきては消えの繰り返し。音の出入りが繊細すぎて、ハッと気がつくとさっきとは違うグルーヴの中で踊らされているという感じ。おまけにDaniel Bellがマイクで声を・・・!"Losing Controll〜"。それをループさせて・・・もうかっこいいの一言。幸せすぎて本当に一時間がアッという間であった。 Nathan Fakeのライブ、そして2年ぶりの来日となるJames HoldenのDJセットという、Border Communityファンにはたまらないタイムテーブルが幕を開けた。2年前は機材トラブルに悩まされたNathan Fakeであったが、すでにその後2回の来日をはさみ、ステージングにも随分余裕が感じられる。元々のエレクトロニカ的な持ち味はややなりを潜め、かなりブリーピーでアブストラクトな、Nathan流のダンスミュージックを立て続けに鳴らす。そのスタイルの変化に賛否両論が聞かれたが、ノイズの絶妙な使い方、間のとり方のセンスはやはり常人ではない何かを感じさせるものであった。 引き続いて、いよいよ登場のJames Holden。Nathan Fakeのライブの自由な雰囲気とはうって変わって、どこかしらクラウド側にも緊張感がただよう。Pink Floydの ’On the Run’ のリミックス版、という一風変わった選曲から始まり、ダークでアグレッシブなセットを予想していたが、その後はどちらかというとプログレッシブな選曲がしばらくの間続いた。折りしもの強い雨、筆者もたまらず一度テントへ引き上げたものの、空が明るくなると同時にボーカルとノイズをフィーチュアしたなにやら奇妙なトラックがドロップされ、次第にHolden独特の混沌とした熱気が満ちたセットとなって満足のうちに終了。 後を継ぐDaniel Bellが後ろに登場し「今日は彼の誕生日なんだ!みんなでJames にHappy Birthdayを唄おう!!」 すっかり明るくなった空に響き渡ったHappy Birthday, Jamesの大合唱は、なんともTaicoらしい、心暖まる素晴らしいひと時であった。 孤高の音楽詩人Ulrich Schnaussのセットは、あの大自然の中での朝という最高のロケーションで始まった。何故かななめ後ろで客側に背を向けて座る不思議なセッティングだったが、出てくる音はとても気持ちがよく、自然の驚異を前にして心が研ぎ澄まされていくような感じ。日が出てきて暖かくなったこともあり、胸が切なくなるような、とてもきれいで素晴らしいライブだった。 最後はおなじみ、Nick the Record。 低空飛行で上げ過ぎもせず下げすぎもせずと言ったグルーヴを保ちつつそれでいて全く飽きさせない、いくらでも踊っていられるようなあのなんとも言えない温かさはさすがといった感じで、ラストを飾るに相応しい素晴らしいプレイで幕を閉じた。 |
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