HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

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UNIT 5th ANNIVERSARY PARTY SPECIAL LIVE ACT -SILVER APPLES- @ UNIT, TOKYO

DATE : 3 July 2009 (Fri)
【UNIT】
SPECIAL LIVE ACT : Silver Apples
LIVE : Buffalo Daughter, Salmon (WC) feat. Maki999
DJ : Kenji Takimi (Crue-L, Luger E-Go), Chida (Ene, Dancaholic), DJ Kimi (In lak' ech, Saloon)
VJ : 100LDK, So In The House, Real Rock Design
DECO : 雪月華
【SALOON】
DJ : J.A.K.A.M. (Juzu a.k.a.Moochy), DJ Tasaka (Disco Twins), Yone-ko (Cabaret, Runch)
DECO : 羽鳥 智裕
【UNICE】
DJ : Gonno (WC), Dasha (WC), Hachimitsu Sausage (WC), Kimura Yuta vs. Kohei Tomio, Umemoto (Civilesto), DJ Kazz, Kurita Naoki (RealRockDesign)
PHOTOGRAPHER : Wataru Umeda
TEXT : Yuki Murai (HigherFrequency)




新しいクラブという認識が未だに強いUNITも、今年で早くも5周年を迎える。今後も続々予定されているアニバーサリーパーティーの一環として異色のライブアクト Silver Applesが迎えられるとのことで、あいにくの小雨がぱらつく中ではあったがUNITへと向かった。 アニバーサリー感満載の花輪を抜け、七夕前の週末ということもあったのか、和装で揃えた受付スタッフの人々の姿も目に涼しげ、フロアへたどりつく前の階段の時点ですでに何ともいえぬワクワク感が空気中に満ちている。

メインでは Buffalo Daughter のライブの真っ最中。筆者が10代の頃から、『あの Grand Royal からリリースした日本のバンド』 ということで何度もメディアを通してその名前に触れていた実力派だが、そういったキャリアに溺れない良い緊張感のなか発される生音と電子音は、一音一音非常に洗練されていて、捻った展開が何の抵抗もなくするりと頭に入ってくる様は想像以上のハイクオリティ。パフォーマンスが終わった瞬間、自然と拍手が出てくる素敵な内容に(少々フロア言葉すぎるが)すっかり 「アゲ」 られた。

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メインのバーの横にいた筆者、ライブが終わってからさらに混み混みになってきたのを避け、ひとまずSALOONまで降りてみると、こちらもちょうど TASAKA氏がプレイしている時間とあって、フロアから溢れんばかりの大盛り上がり。しばらくクラウドの中でもまれながら TASAKA氏の鮮やかな音さばきっぷりを楽しんだが、さすがに Silver Apples の前に一呼吸欲しくなるところ…。そこでUNITのレギュラー・パーティーとしてもすっかりおなじみになった ”WC” のメンツらが固めるUNICEへ。他2フロアが満員大入りで周りの人々を見るどころではなかったというのもあるが、改めて周りのメンツを見渡してみると、今日はいつも以上に遊び慣れた印象の人、クラブ業界風の人々も多く、普段ならクールに遊んでいるような彼らまでどことなくお祭りムードにニコニコしている。スピン中のGonno氏の安定感あるグルーヴの中、やっと今晩1杯目のドリンクにありつき、すれ違う友人知人達と挨拶を交わした。

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さて、いよいよ本日のメインアクトのお出まし!!

2時半の Silver Apples ライブのスタート少し前にメインフロアに戻るも、すでにフロアの中はびっちりと人が詰まった状態。なんとか隙間を見つけて身を納め、首をのばしてステージ側を見ると、ゴツゴツとしたハードウェアの壁の向こうに銀髪の老紳士を発見。時折 「Simeon!」 と彼の名前を (Silver Apples サウンドの肝、自作シンセサイザーの名前の由来でもある) 呼ぶ声も聞こえる。御年70+α歳のアーティストが、これだけの前のめりの観客を前に真夜中のクラブでライブ!という、何やらとんでもなくスペシャルなこの状況自体に、どうやってもニヤつきが隠せない状態になってきた。

まず一曲目は飛行機の離着陸を思わせるようなジェット音の行きかうディープなサントラ曲からスタート。この時点でも一体何事かと思うほどの低音とキックの太さ、迫力にさすがあれだけハードウェアを積んでるだけある…と唸ったが、ここからはいよいよ、冷静に唸るどころではなくなってくる。迫力を保ったまま太いキックがリズミカルに鳴り出したのだ!これは盛り上がらざるを得ない。その上にブリーピーなシンセ音、ヘニョヘニョに曲がったシンセ音たちが奏でるアンチ・ハーモニー、絶妙のタイミングのパーカッションが色も鮮やかに積み重なり、さらに朗々とした Simeon のヴォーカルはどこかすっとぼけた味わいのカントリー風なメロディ、これがまた前述のシンセのメロディ達との天才的なアンチ・ハーモニーぶりでUNITのフロアに響き渡る(そして低音部はすでに 「バキバキ」と表現しても構わない域)。不協和音をギリギリのバランスで引き出す特殊な才能とでも言うのだろうか?
正直に言っておもしろい。おもしろすぎる。楽しすぎる。
このサウンドを前にしては 「アバンギャルド」 という言葉も、「エクスぺリメンタル」 という言葉も、何それ?と一蹴されてしまいそうだ。

そして、こんなに楽しくて面白いのに、中盤ごろにMCでつぶやいた 「この曲は元々2人でやっていたんだけど、今日は一人でやるんだ」 という言葉と、かつて盟友のドラマー 故 Dan Taylor と作り、演奏したであろう曲を何十年も経った今、異国の地で一人でライブする胸中にあるであろう思いに不意打ちされ、泣かされそうにまでなった。

Silver Apples 結成当時の1967年のニューヨークで、いきなりこんな音を聴かされた人々の驚きはどれほどだったであろう?日ごろからエレクトロニック・ミュージックを聴いている私達の耳では、驚き楽しみつつも 「これはドラムマシンの音」 「これはシンセからの音」 などとどこかで理解してしまえるが、当時のクラウドには全く未知の音、それこそ宇宙人の声くらいに聞こえたのではないだろうか…できればその当時の驚きを、当時の人の気持ちで聴いてみたかったな、と、どうやっても叶わない願いが浮かんで来た。
それを言えばクラシック音楽だって、きっと当時は…と思ったとき、なんと某クラシックの名曲を Silver Apples スタイルでアレンジした曲が!この偶然の瞬間は忘れられない。

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数曲のアンコールをはさみ、ライブは終了。いくら手を叩いても足りないくらいの感謝の気持ちがひたすら心に残った。ライブが終わり、筆者は衝撃で少々呆けてしまった頭をひきずって、まだまだ盛り上がり続ける各フロアをしばし巡っていたが、残念ながらちょっと早めの退場と相成った。

UNITはライブハウスとクラブという 『近くて遠い』 両側面を1つに併せ持ち、しかもどちらの側面でも他とは一線を画す 「UNIT色」 なスタイルをこの5年間でしっかりと確立し、音楽とパーティーを愛する人々にそのオンリーワンな地位を感じさせている。この日のパーティーにもそれが実によく現れていた。良いものをみせてもらったな、という満足感はいつも、よい意味で事前予想不可能なUNITのマジックから生まれている。

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