HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

THE STAR FESTIVAL 2009
WORLD OF DANCE MUSIC FESTIVAL @ 名村造船跡地, OSAKA

DATE : 30 December, 2009 (Wed)
LINE UP : DARREN EMERSON (ex UNDERWORLD/Underwater Records) , RADIO SLAVE (aka Rekid, Quiet Village, Matt Edwards/Rekids) from Berlin, X-DREAM feat ARIEL MULLER from UK, The Sun Paulo (佐藤タイジ&森俊之) , Kaoru Inoue (井上薫) , XAVIER MOREL, BACK DROP BOMB, GOTHTRAD (BACK TO CHILL) , DAMAGE, DJ TOYO&MC CARDZ (BLACK BEATZ BOX/IAI RECORDINGS) , KOICHI SATO (CROSS COUNTER/OSAKA POP) , M.MINAMI (NEW SENTIMENT/ULTRA PUMPIN) , DJ MASASHI&MC AOI, KUNIMITSU, DJ SHO, and more
VJ : VISUALOGIC (LiveTechnical/TC RECORDINGS)(MITSUHARU TANIDA + KAZUCHIKAFUKUMOTO)
LAZER : Psypno TeK Project (Killer Sound INC.)

Photo by KuRo, Eliu*
Text by Terumi Tsuji



TRIANGLE が主催する一大ダンス・フェスティバル The Star Festival が、年の瀬12月30日に名村造船跡地で開催された。Darren Emerson, Radio Slave, X-dream, SunPaulo を筆頭に世界各国のトップアーティストが一挙大集結するということで関西のみならず、四国や九州からも多くのオーディエンスが駆けつけた。

Studio Partita と Black Chamber の愛称で知られる大阪名村造船跡地は、倉庫をつかったユニークなベニューで、対岸越しには製鋼所や工場が立ち並んでいる。工場の煙突から出る炎がターミネーターやマトリックスのような怪しげな雰囲気を醸し出しており、普段のクラビングとはひと味違ったワクワク感を与えてくれる貴重な場所だ。ただ心斎橋から電車で約30分、しかも駅からも少し離れているため、なかなか足を運ぶ機会がないのが現状。そんな著者の思いが主催者側に通じたのか、今回は心斎橋と会場を結ぶ専用バスまで用意された。'09年踊り納めを十分に楽しむべく、心斎橋を22時に出発するバスに乗り込み友人たちと会場へ向かった。


今回はメインステージの Partita とセカンドステージの Black Chamber 以外にも、ショップやアートエキシビョンが楽しめる White Chamber、そして Black Chamber と Partita の真ん中にあるオープンエアステージの4つのエリアがあり、さながらプチ・レイブのようだ。Black Chamber と Partita の移動は寒いだろうなと思いつつも、コートと荷物を早速クロークに預け、Xavier Morel のスピンする Black Chamber へ。
グリーンのレーザーと音しかないミニマルな空間に、Xavier の硬派なテックトランスが響き渡る。個人的には彼のダークな音はもう少し遅い時間に聴きたかったが、次に控えている X-dream にバトンタッチするには Xavier 以外のハマり役はいないだろう。マインドベンディングなトランスでオーディエンスをフロアにしっかりロックした。


24時半を回った頃、Black Chamber の2F部分に設置された特設ライブステージに X-dream の2人のシルエットが浮かび上がった。ライブがスタートと同時に、会場からは歓声が沸き上がる。ゴア全盛期にトランスにどっぶりハマった著者にとっては、もはや懐メロとも思える往年のジャーマン・トランスも、20代前半のオーディエンスには新鮮なようだ。
疾走感溢れるトラックを3曲ほど披露したところで、パフォーマー&ボーカリストの Ariel が登場。80'sテイストたっぷりなロッキンな風貌にボコーダボイスという独自のスタイルにオーディエンスは釘付け。鉄腕アトムや銀河鉄道999に描かれているような"近未来"を彷彿とさせるフューチャリスティックなサウンドで、X-dream ワールドを創りあげていく。Ariel の姿を一目見ようと続々とフロアにオーディエンスが駆けつけ、踊るスペースを確保するのも困難になってきたため Partita へ。

Partita では、現在人気急上昇中のエレクトロ・ロックバンド DAMAGE がエネルギッシュなライブを展開中。彼らのライブを見るのは初めてだったが、ハードコアやヒップホップの影響も受けたというだけあって、バラエティーに跳んだサウンドを聴かせてくれた。DAMAGE終了後は、会場後方に設けられたDJブースに、TRIANGLE を中心に活躍中の若手ドラムンベース DJ MASASHI と MC AOI が登場。MASASHI の早すぎないドラムンベースと AOI の歯切れのよいMCに、普段はドラムンベースとは疎遠の著者も気がつけばフロアの真ん中で体を揺らしていた。


Radio Slave まで少し時間があったので、オープンエアエリアでしばしブレイク。Compufunk のファンキーなディスコハウスをBGMに、お酒を愉しんでいると久々に会う友人たちに次々と遭遇。多くのアクトが一気に見れるだけではなく、普段クラブで会えない友人たちにも会えるのがビックパーティーの醍醐味だ。

一通り年末の挨拶を交わした後は冷えた体を温めるべく、再度 Black Chamber へ移動。Japanese Dubstep シーンの第一人者こと GOTHTRAD に続いて、著者的メインアクトの一人 Radio Slave がスタート。
アゲすぎず、でもディープすぎない心地良いテクノがフロアに広がって行く。例えるなら38℃位のぬるま湯にずっと浸かっている感じ。洗練されたテクノに時折ラテン調のトラックを取り入れて、セットにメリハリを付けていく。バーに辿り着くためにはフロアを一旦出なくてはいけないという試練が待ち受けていたため、アルコール欲求を何とか抑え、音遊びに専念。

ちょうどその頃 Partita では SunPaulo のライブがスタートしたが、Radio Slave の奏でるサウンドにすっかり心を奪われてしまい今回は SunPaulo は見送ることに。音にシンクロしているかのように自由自在に形を変えるレーザーワークも素晴らしく、あっという間に1時間半のセットが終了。また彼のセットをじっくり聴いてみたいものだ。


そして息をつく暇もなく、Darren Emerson のプレイする Partita へ。流石は本日のヘッドライナー、入り口まで人が溢れ返っている。お酒片手にフロアへ、なんてことは到底無理そうだ。手に持っていたテキーラオレンジを一気に飲み干し、いざフロアへ突入。人を掻き分け中に進んで行くと、ステージ前に踊るスペースを発見。しかも一気飲みしたテキーラがいい感じに効いてきた。浮遊感のあるテックハウスが体にスーっと染み込んで来て気持ちよすぎる。
この4、5年で何度も Darren を見る機会があったが、'Rez/Cowgirl' や 'Born Slippy' を始めとする Underworld のヒット曲や、Nirvana や Blur といった鉄板ロックトラックを中心としたアップリフティングなパーティーセットばかりで、彼のセットに心惹かれることは正直ほとんどなかった。
ただ今回の Darren はひと味もふた味も違う。Global Underground からMix CDを出していた頃の彼を思い出させてくれるような、シリアスなサウンドでフロアをグイグイと引っ張って行く。

しかし中盤にさしかかった頃、'Born Slippy' のイントロが聴こえてきた。「あぁ、やっぱりこの曲に頼ってしまうのね…」 と肩を落とす著者とは反比例するかのように、フロアのボルテージは最高潮に。
しかしそこは本気の Darren、喜ぶオーディンスを横目にサビに行く前になんと次のトラックをスタート!おそらくフロアの90%はこの展開に 「なんで??」 と不満を感じたに違いないが、彼のSっぷりに著者は思わずニンマリ。今日の Darren はやっぱり違う!と確信。そこに St.Germain の名曲 'Rose Rouge' をドロップ!このタイミングでこのトラックを持ってくるなんて、もうズルすぎる!!
もはや今日の Darren は疑う余地無しと、彼のプレイに完全に身を任せ、心ゆくまでサウンドジャーニーを堪能させてもらった。この日の Darren は最後の最後まで一貫してストイックなサウンドを聴かせてくれるとともに、Underworld の元ブレインとして活躍した Darren Emerson の底力を再確認させてくれた。


The Star Festival は'09年を締め括るに相応しいとても豪華でクオリティーの高い一夜だった。オールジャンルのクラブミュージックが楽しめるこのようなフェスティバルは、年に1度と言わず、シーズン毎に是非とも開催して欲しいものだ。'10年の大阪クラブシーンも楽しいことになりそうだという期待を胸に、工場地帯に沈む黄金の月を眺めながら名村をあとにした。

 




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