DATE : 29 August 2009 (Sat)
LINE UP
DJ : Chris Liebing, Christian Smith, DJ Tasaka, Ellen Allien, 田中フミヤ, Heiko Laux, Jens Zimmermann, Joris Voorn, Joseph Capriati, Ken Ishii, Len Faki, Mark Broom, Matt John, Popof, 石野卓球
LIVE : Beroshima, Dusty Kid, Gabriel Ananda, Gui Boratto, Hardfloor, Moderat, Schwefelgelb, 2000 and One
VJ : Devicegirls, Ukawa Naohiro
PHOTO : Kazuhiro Kitaoka, Masanori Naruse
TEXT : isoyama sayaka (antenna nacht)
テクノミュージックファンから確固たる支持を集め、昨年無事10周年を向かえた、日本最大級の屋内テクノイベント 「WIRE」。11回目の開催となった今年も、夏の終わりの8月29日(土)、横浜アリーナにて開催された。 8月中旬までに発表された今年の全出演者には、例年通りクオリティの高い新旧テクノアーティストが名を連ねた。Hardfloor、Beroshima、2000 and One、Joris Voorn など、昔からのテクノ好きから、昨今クラブに通い始めた若い世代まで、十分楽しめるラインナップとなっており、このあたりのクオリティは、WIREならでは、と言ったところである。 さて、当日筆者が新横浜駅に到着したのは20時ちょっと前。会場まで途切れ途切れに続く人の流れに乗って、丁度 DJ Tasaka が始まった頃横浜アリーナに到着した。既に入場していた知人から、Jens Zimmermann のDJと Moderat のライブがとても良かったことを聞き、余裕をかましてスタートから居なかった自分に対し苦々しい思いをしながら、気を取り直してまず Tasaka のDJで軽く踊ろうとメインフロアに向かった。 | |
フロアに入ると、ふと今年は例年に比べて客足が遅いのか空いているようにも見えたが、DJブース前のCエリアは既にに満員状態。Disco Twins の時とはまた違い、新譜 "Soul Clap" を踏襲するようなある意味落ち着いた TASAKA のプレイは、気持ちが昂ぶるオーディエンスのテンションをうまくキープしていたように思えた。このあたりは、ほぼWIRE皆勤賞の Tasaka だからこそ出来る流れ、といったところか。 その後、徐々に上げつつ持ち時間を終えた Tasaka のプレイを見届けた後、フードコーナーの WORLD CAFE で一休み。毎年このエリアの食事を悩むのも、WIREの楽しみのひとつである。今年は悩んだ末カレーを買い、空いたスペースで口にしつつ、次の動きを考えていると、筆者の目当てである Ellen Allien のDJと、気になっていた Beroshima のLIVE、そして(宇宙旅行中の)Jeff Mills の(中継)DJがほぼ被っていることに気が付いた。見たいアーティストが被って悩むのも、またしてもWIREならでは。長考の末、少しだけ Beroshima を見てから、Ellen へ向かうことにし、まずはセカンドフロアへ。 Beroshima は、シカゴテイスト溢れるテンションが高めな頭出しで、いきなりオーディエンスをがっちり掴み、セカンドフロアの熱気を一気に上げていく。Ellen を見るため、仕方なく途中でフロアを抜けてしまったが、(筆者の勝手なイメージだが)Beroshima にはエレクトロなイメージが強かったため、正直このライブセットはもう少し聞いてみたかった。 そして Ellen のプレイを聞きに、メインへ再び戻ると、先程よりも随分と人が増えており、場内のテンションも一段と上がっていた。フロアの盛り上がりに対して、Ellen は叙情的なメロディーの曲を随所にかませつつ、ミニマルからハウスまで、センスの良いDJプレイで返答。終盤エフェクターの使い勝手が悪かったのか、残念ながら上手くディレイがはまらなかった部分もあったが、全体的には、さすが Ellen といった内容だった。 |
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なお、Jeff のDJを聞いた知人に現場の状況を聞いたところ、どうやら途中入場制限がかかっていたらしく、フロアの期待感は相当高かったとの事。またDJも宇宙っぽい音が入るなど、シチュエーションを意識した選曲だったが、まったり感は無く、要所要所でしっかり上げてくるので、Jeff 信者にはたまらなかったのでは?との感想だった。また、宇宙センター(のコントロールルーム)を彷彿させるデザインのど真ん中に巨大スクリーンを据え、そこへ Jeff の映像が流されていたが、背景が宇宙船内のようになっており、去年行われた同様の Jeff 中継パーティーより、細かいところまで作りこまれていたようだ。 ひとしきり汗もかいたので、今度はセカンドフロア横の飲食スペースにて酒を買って休んでいると、オーガナイザー卓球氏の時間に。チラリとフロアを覗けば、物凄い人数がメインに集結しており、終始アッパー気味のDJで、場内のボルテージは上がりっぱなしに。筆者は残念ながら、フロアを離れており見れなかったが、途中故 Michael Jackson の 'Beat it' が流れた際、映像モニターに 「Happy Birthday, Michel.」 (※WIRE当日は、Michael の誕生日。)の文字が出るなど、サプライズもあったとの事。WIREの顔は今年も大盛り上がりだったようだ。 ちなみに、実は筆者は卓球氏のDJを抜け出して、気になっていたセカンドフロアのアクト、Schwefelgelb を見に行ったのだが、これがとんでもない拾い物(失礼)で、正直今年一番のライブアクトだった。まさに、Body music、New waveフォロアーで、パンチの効いたドラムに、良い意味で安っぽいシンセ音が絡み、そしてボーカル Sid のパンクスと見紛うような熱唱は、DAF や Nitzer Ebb 好きにはたまらないライブ内容であった。 (しかも、途中からステージ上に全身タイツ姿のパフォーマー2人が登場。不可思議な動きで客を煽り、Sid から水を掛けられたり、客席に降りてきて踊りまくったりと、やりたい放題で、腹を抱えて笑ってしまった。) | |
びっしょりかいた汗を、物販で買ったネックタオル(これが非常に使いやすい)でぬぐいつつ、再び休んでいると、もう夜中の1時を回っていた。急いでメインの、Hardfloor のライブに向かうと、何と彼らがノートパソコンを使っていた(恐らくシーケンサーとして使っていたと思われる)。手元にはTB-303があったのだろうけれども、軽い衝撃と時代の流れを感じた瞬間だった。ライブ自体はアップテンポな曲とスローな曲を組み合わせ、無理矢理上げない感じなどは、さすがベテランといったところである。そしてその後を受けたのが、今年デビュー15周年を迎えた、大御所 Ken Ishii。今回は途中 'Cave' を掛けるなど、怒涛のハードトライバルな内容のDJで、フロアの盛り上がりはピークに達していた。 このあたりから、筆者は少し疲れてきたため、メインとサブを交互に休み休み覗いて見ることに。 セカンドでは、“シカゴ直系90年代テクノ進化系”といった感じで、固めの音がグッと来た 2000 and One のほか、終盤粘りのあるグルーヴに変化したのが印象的だった Mark Broom、そこからの流れを引き継いで、満員のセカンドフロアの期待に応えた田中フミヤのプレイなど、WIREならではの好アクトが連発されていた。またメインフロアも、Joris Voorn、Len Faki といった、今をときめくビッグネームDJが、ハードなミニマルサウンドでフロアの熱狂を持続させ、最後は Chris Liebing が渋めのハードテクノで締める、なんとも豪華な終盤戦であった。 心地よい疲労感の中、最後はビールを呑みつつ、Chris Liebing の音が止まるのを、横浜アリーナのエントランス付近で確認し筆者は会場を後にした。 帰路の途中考えていたのだが、WIREは目当てのアーティストをガッツリ楽しみつつ、程よい“新たな発見”もある。そのバランスの良さが、11年続く“強さ”なのではないのだろうか。 今回も素晴らしいアクトが集結し、十二分に楽しめた内容だった。 | |
パーティー・レポート
WIRE 07 @ YOKOHAMA ARENA (2008/12/17)
WIRE 06 @ YOKOHAMA ARENA (2006/09/02)
WIRE 05 @ YOKOHAMA ARENA (2005/07/16)
WIRE 04 Day 01 @ YOKOHAMA ARENA (2004/07/17)
WIRE 04 Day 02 @ YOKOHAMA ARENA (2004/07/18)
関連リンク