HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

TDK CROSSCENTRAL

TDK CROSSCENTRAL at KINGS CROSS, LONDON

DATE : 27th-29th August, 2004
PHOTO & REPORT : Matt Cheetham (HigherFrequency, samurai.fm) / Official Site
TEXT : Takuma Matsui (London)



イギリスのフェスティバル・シーズンの最後を締めくくるバンクホリデー・ウイークエンド。LiverpoolではCreamfields、LondonのTurnmillsではFatboy Silmが主催するBoutiqueが開催される傍らで、今年から新たにキックオフする事になった"TDK CROSS CENTRAL FESTIVAL "が、8月28日から29日に渡って、ロンドンはKings Cross周辺のGoods Yardで開催された。

タイトルの通り、TDKをスポンサーとして開催される事になったこのイベントは、いま最先端を行くアーティスやDJによるパフォーマンス、 そしてビジュアルの分野においては、VJのショウケースや 短編映画の上映(Raindance Film Festival) などが行われる、エンターテイメントのあらゆる要素を全てパッケージとして詰め込んだもので、隣接するThe Cross, The Key, Canvasの3つの箱と広場を使い、3pm-5amというロングランで繰り広げられる、イギリス期待の新たなお祭り騒ぎである。

TDK CROSSCENTRAL
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初日の土曜日はLive actを中心としたロッキンかつエレクトロな音で構成され、 日本からはDJ Krush, Boom Boom Satellites、そしてベルリンからはJazznovaがメインステージに登場するという楽しみなプログラムが組まれていた。一方クラブ・サイドにおいても強力なラインアップが用意されており、筆者が午後6時ごろにCanvasへと足を運ぶと、ちょうどDepeche ModeのAndy Fletcherが、 80sロックやDepeche Modeのブレイクス・リミックスなどをスピンしている最中で、既にクラブ内部は、このスーパースターのDJプレイを一目見ようと、多数のクラウド達で超満員の状態となっていた。

午後7時、DJ Krushのプレイがスタート。ダウンテンポなチューンからジャジー・テイスト溢れる高速ブレイクビーツへと展開するサウンドを背景に、ハイスキルなスクラッチなどを絡めながら、鬼気迫るステージ・パフォーマンスを見せてくれた。セットの中盤からは、着物を纏ったMr.森田が登場し、こちらではBamboo Fluteと呼ばれる尺八を使ってKrushとセッションを展開。日本独特のサウンドにKrushが紡ぎ出すスピリチャルなブレイクビーツが見事にマッチし、クラウドたちを大いに沸かせていた。彼らによる、日本の文化的な要素をうまく織り交ぜたステージングは、もの凄い拍手とレスポンスでもって迎えられ、筆者自身も日本にいるかのような錯覚を覚えながら、周りにいるイギリス人の反応の良さに何やら不思議な感覚に包まれてしまう。

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Krushのライブ終了後、先ごろニューアルバムををリリースしたばかりのBentのDJ setを見るべくThe Crossへと向かう。会場に到着すると、6時からプレイをしていたJoey Negro のセットが続いていて、ちょうど終盤に向けての最後の盛り上げに入っているところであった。あまり長時間見ることは出来なかったが、パーカッション・プレイヤーをフィーチャーしたソウルフルでダークな展開に、彼独特のスタイルを目撃できた気がした。 そしてBent登場、いきなりジャジー・チューンからスタートしたセットは、NailとSimonのバック・トゥ・バックによる展開で進んでいく。正直言って、結構この辺は適当にやっていた感じで、しかも残念ながら彼らの名曲"Always in my heart"は最後まで聴くことは出来なかった。


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午後9時、メインのOpen Air Stageで、Courtney Pineのサックスと共にJazz Sessionがスタート。エレクトロニックなセットではなかったが、結果的にこのライブが筆者の印象に一番強く残ることになる。ピアノ, ギター、ドラム、パーカッション、ウッドベース そしてCourtneyのサックスという、正真正銘のライブ編成による彼らのパフォーマンスは、ちょうどThe CrossでのDJ setを見たばかりだったので、「生音」の深みと温かさ、背筋に来る「何か」を感じる事が出来た。このフェスの最大の魅力は、何といってもこういったライブ形式でのパフォーマンスが多く用意され、ダンス系レイブとはまた違った面白さ、発見があるところと言えるだろう。午後10時、ついにJazznovaのDJ setがOpen Air Stageで始まった!と思い、会場に駆け付けるも、ブースが余りに奥の方に設置されていてぜんぜん見えない。しかも、このフェスにおいてのDJ setのスタンス − あくまでライブのための前座という感じのものがあっての事か、DJのプレイが始まるとみんな座ってチルアウトし始めてしまう始末。おまけに、セット中にスタッフがマイクのテストをしたりと、ちょっとメチャクチャな感じだった。そんな事もあって、筆者自身ものんびり座りながら聴いていたのだが、サウンド自体はすごく味わい深いもので、アンビエントからテクノ、テック・ハウス、ジャズ・ハウスへと展開する、変化に富んだプレイを楽しむことが出来た。ただ、正直言えば、野外ではなく箱でやってほしかったところである。

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さて、次のKosheenまで多少の時間があったので、辺りをブラブラと徘徊し、Canvaを覗いてみると、ちょうどArthur Bankerがオールド・スクールなブレイクスをプレイしているところ。いま期待のElec-Rockバンド, "Chikinki"は時間が押していて残念ながら見ることが出来なかった。その後、Open Air Stageに戻ると、もうすでにクラウドが集まり始め、なかなか姿を現さないKosheenをみんな待っていた。そして、Jazznovaのセットが終わってから20分後、ついにKosheen登場!Sian Evansがいきなりスタジオで仕上げたばかりというロッキンな新曲を歌い出すとものすごい反響が沸き起こり、Kosheen、そしてイギリスにおけるDrum'n'Bassの人気の高さを感じた。3曲目に入り、「I Need Drum'n'Bass!!」とSianが叫ぶと、聴き覚えのあるベースがループし始める、"Hide U"だ。クラブやCDでは何度も聴いた曲だったが、やはり生でみるとすごい。みんな踊り、Sianに合わせて歌い続けていた。そしてここを起点に数々の名曲が次々に披露され、"Hungry"、 "Catch"と続き、そしてラストには、何と彼女のアコースティック・ギターと共に、"All In My Head"で熱狂的なステージが締めくくられた。

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夜も深まっていき、辺りもかなり冷え込んで来たが、ここからいよいよクラブでのライブとDJが本格的になっていく。早速、CanvasでBoom Boom Satellitesが生ドラムとヴォーカルを加えたエレクトロニック・セットでフロアを大爆破。マイクにエフェクトをかけ、人工的な声を織り交ぜながら展開する近未来サウンドに、多くのクラウドが熱狂していた。 と、その時、最近日本でメジャーデビューを果たしたばかりの「ドーピングパンダ」のヴォーカル、ユタカさんに偶然に出会い、色々話させてもらうことに。そして、Boom Boom Satellitesの後は、ユタカさんに誘われ、晴れて来日も決定したChicks On Speedを見にいく。彼女達のパフォーマンスを通して、UKの音楽シーンが全体的にエレクトロニック・サウンドに傾いてきているのを実感する。ピンク・フロイドをカバーしたScissor Sistersなどもそうであるが、昔の音楽スタイルと最新の技術を融合したサウンドが今のトレンドになっているのかもしれない。

その後も、数多くのクオリティ・ミュージックを堪能する事が出来たTDK Cross Central。今回は初日の土曜日にしか参加できなかったが、このフェスティバルを通して、様々な発見をする事が出来たと思う。このTDK Cross Centralだけに限らず、さまざまなフェスティバル、レイブ、そしてクラビング・カルチャーの中に、多くのアーティスト, DJ, VJのクリエイティヴなエネルギーが詰まっていることを思うと、ロンドンという街は本当にすばらしい環境にある場所だと改めて実感した。