HigterFrequency パーティーレポート

ENGLISH PARTY REPORT

Stewart Walker

CHAOS feat. STEWART WALKER @ SPACE LAB YELLOW, TOKYO

DATE : 20th August, 2004 (Fri)
PHOTOGRAPHER : Ollie Beeston


4ヶ月ぶりに開催されたYellowの誇る人気テクノパーティーChaosは、レジデントである田中フミヤのDJセットに加え、実力派ミニマリストStewart Walkerのライブが登場、テクノ・ファンにとっては嬉しいコラボレーション・ナイトとなった。自らのレーベルPersonaから2003年にリリースされ、後にTresorへライセンスされた"Live Extracts"は筆者の愛聴盤でもあり、タイトでグルーブ感溢れるリズム・トラックをベースに、青白い炎が徐々に燃え上がっていくような世界観をライブで体験できるとあって、取材とは言いながら最前列にかぶりつく状態でStewartの登場を待つ事になった。

Stewart Walker Stewart Walker
Stewart Walker Stewart Walker
Stewart Walker Stewart Walker

まずはレジデント田中フミヤが登場。タイトなリズムを持つテックハウス風のトラックで徐々にフロアの雰囲気を作っていく。ピッチもこれから盛り上がっていくダンスフロアを前に程よいスピードで、時々意表をつくかのように変則ミニマル・トラックを絡めてビルドアップしていく力量は流石!しかも、スピーカーから出てくる音のバランスが素晴らしく、「やっぱYellowで聴くテクノは最高だなぁ」なんて思っているうちに、フロアは完全に超満員に。早くも絶叫があちこちから聞こえ始めるようになる。そして、本日の1組目のライブ・アーティストNao Tokuiが登場。Powerbook G4一台にコントローラーにミキサーという一見シンプルなセットアップだが、自らソフトウエアを開発する工学者としても知られる彼だけに、恐らくそのパソコンの中はMax/MSPなどでビルド・アップした、複雑なオリジナル・シーケンサーなどが入っているのかな?など勝手な事を想像しながら、彼のライブに耳を傾ける。ちなみに筆者はMax/MSPの解説書を数ページ読んだだけで辞めてしまった挫折組である。

さて、イルでダークな雰囲気を持つアブストラクト系トラックからスタートしたセットは、やがて4つ打ちへと進化。シンプルなトラックで構成されたミニマル・チューンや、デトロイト風のエッセンスがオーバーラップするテクノトラックなど、バリエーションに富んだ構成でクラウドの気持ちをがっちり掴んだ構成で進められていく。そして圧巻だったのがセット最後の曲。プログレッシブ・ハウスのDJでもピークタイムにプレイしそうなダイナミックでアップビートなパーカッシブ・トラックに、フロアは待ってましたとばかりに大爆発。最高の状態でStewartをステージへとと迎えることになる。

Stewart Walker Stewart Walker
Stewart Walker Stewart Walker
Stewart Walker Stewart Walker

Powerbookを中心としたNao Tokuiのセットアップとは好対照に、Stewartのセットアップはパソコンを一切使わないスタイルで、AKAIのサンプラーMPC1000とPioneerのエフェクトマシーンEFX-500をミキサーにつないだ、アウトボードを中心とした構成となっている。恐らくその横に置いてあるのは、彼が長年ライブで使用してきたEMUのサンプラーだろうか?そして大歓声に迎えられたStewartの手がMPCへと伸び、遂に彼のライブがスタートする。今までの彼の作風から言って、もう少しディープでアトモスフェリックな感じの展開を予想していたのだが、この日のセットはのっけからタイトでグルービーなミニマル・リズムが大炸裂する、かなりアップリフティングな展開。筆者の稚拙な予想は良い意味で裏切られる事になった。というか、ハッキリ言ってメチャメチャかっこ良い!長身の体を大きく揺らしながら、すばやくノブからノブへと指先を動かし、ビートと完全に同化したかのようにリズムを体全体で取るStewartにクラウド達も大興奮。あまりの動きのすばやさに、当サイトのカメラマンOllieも撮影に苦労している様子が目に入ってくる。

Stewart Walker Stewart Walker
Stewart Walker Stewart Walker
Stewart Walker Stewart Walker

そしてリズム・トラックは時間を追うごとに微妙に変化を見せ、ここぞと言う絶妙なタイミングで印象的な効果音やサンプルがカットイン。「分かっているねぇ」と思わず言ってしまいたくなるくらいのセンスである。そして、フロアと音の洪水とStewart自身が完全に一体になった時、アトモスフェリックなブレイクが・・・やられました。完全に。フロア中にレスペクトの輪が広がる中、何人かがStewartに駆け寄り感激のシェイク・ハンド。久々にクラブらしい雰囲気を実感できるひと時であった。

その後も緩急つけた展開で我々を心から楽しませてくれたStewart Walker。翌日、「ライブの時のトラックリストを教えて欲しい」と彼に頼んだところ、彼の答えは「ライブだったからトラックリストはないよ」とのこと。そう、あのセットは完全にライブリーに組み立てられた、その日その場でしか聞けない本当の意味での「ライブセット」だったのである。

Stewart Walker Live at Yellow - このライブは筆者の記憶の中に長く留まることは間違いないだろう。そんな彼がHigherFrequencyの質問に答えてくれたインタビューも近日アップ予定。こちらの方もお楽しみに。(H.Nakamura - HigherFrequency)



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