HigterFrequency DOMESTIC NEWS

ENGLISH OVERSEAS NEWS

soma

international news_2009.09.17

『ニュー・ヒッピー』 は本当にヒッピー?

Text by Jonty Skrufff (Skrufff.com) _ Translation by Shogo Yuzen

Sunday Times 紙は先日、60年代の Woodstock 風スタイルの現代版といえる新しいヒッピー達がイギリスの文化を支配し始めていることを報じ、「イギリスの都会人達がその時代の精神や理想を守るためにここまでの努力をしたことは未だかつてないだろう」 とコメントした。

さらに同紙は彼らの思想を 「自給自足の精神、そして隔たりのない愛の精神」 と呼び、イビサやゴアでのパーティーは、過去のヒッピー文化と同様にカウンター・カルチャーであると報じた。運動家としての思想を持ったヒッピー達はヒースロー空港や石炭火力発電に対し反対運動を行っているという。さらに彼らはグラストンベリー周辺でテント生活をし、中には仏教に目覚めるものもいるという。

しかし、アンビエントミュージックのプロデューサー(そしてWi-Fiの反対運動家でもある)Steve Miller はこの新たなヒッピー達に対し、あまり興味を覚えてはいないようだ。

「最近はヒッピーという言葉がファッションとしてしか使われていない。仏教徒はヒッピーじゃない、仏教徒は仏教徒なんだ。自分で野菜を育ててる人は菜園家であって、ヒッピーの服を着ている女の子たちはただ最先端のファッションを真似しているに過ぎない。」

また、アンビエント界の巨匠である DJ Pathaan も同じように、最近の 「ヒッピー」 という言葉の使われ方に対し、違和感を覚えているという。

「僕は今までも、これからもずっと僕なりの 『ヒッピー』 だよ。だけど、ほとんどの人はただ週末にヒッピーになる。それは本当に馬鹿げてるよ。フェスティバルに行けば、『ヒッピー』 と 『ファッショニスタ』 の違いが判るはずだよ。僕に言わせれば、Sunday Times の記事はヒッピーじゃなくてファッショニスタばかりを取り扱ってると思う。」

同誌では新たなヒッピーとして、Kate Moss と Jade Jagger(パーティー・ヒッピー)、Marianne Faithful(昔のヒッピー)、Scheherazade Goldsmith と Elle Macpherson (ユーロ・ヒッピー)らのファッショニスタ達の名を挙げている。また Peaches と Pixie の Geldof 姉妹を代表とする 「ネオ・ヒッピー」 達を、イーストロンドンの有名なスラム街であるハックニーを愛し、1990年に ”ヒッピー/トラベラー護衛艦” (船に乗って様々なレイブやフリー・フェスティバルに参加していた人々の運動)に乗っていた人達とのつながりがあるという点で 「最も高評価」 としている。

Steve が同紙を 「真剣な考えなど持っていない怠け者のジャーナリズムだ」 と批判する一方、自称 「変態」 のイビサの伝説的DJ/プロデューサーである Lenny Ibizarre は冷静な意見を述べた。

「僕は15歳の頃からヒッピーって呼ばれてきたけど、別に自分自身でそう思ったことはないんだ。僕はもっとビートニク(50年代のビート・ジェネレーション)に近いんだと思う。」

Lenny は60年代のカウンター・カルチャーが 「エコロジーや隔たりのない愛、揺るぎない道徳心を広めた」 ことを高く評価した上で、本来のヒッピー達はより社会活動の色が強かったビートニクや自由思想者と自分たちを同じようにみなしていたことを指摘した。

「『ヒッピー』 や 『ビートニク』 の文化を生み出した精神は、今は本来の姿である 『ボヘミアニズム』 に戻ったと思うんだ。その力っていうのは人数や反対運動の数、ファッション、エコロジーに対する意識で計られるものじゃないと思う。その文化が芸術や文学、音楽としてどれだけ足跡を残せるかだと思うんだ。

そして、僕はこの Sunday Times で書かれているような新たなヒッピー達について一つ聞きたいことがある。彼らはこの社会から当たり前に与えられた全ての物について考えなおしたりしているんだろうか?その答えは基本的には 「ノー」 だろうけど…。だけど、世界のどこで何かが常に起きている。もしかしたらそれは小さなものかも知れないし、すぐには見つからないような場所で起こっているかも知れない。だけどあなたがこの記事を呼んでいるこの瞬間にも、大企業の宣伝やメディアが事実を隠しているその水面下で何かが起きているんだ。」

Wi-Fiに対するアレルギーを避けるためにコーンウォールに住居を移した Steve Miller は同様に、新しいヒッピーが現れた現在のカルチャーの行く末に希望を持っているようだ。

「世界で何が起きているのかに人々が目を向け始めたのはいいことだと思う。権力者達が我々に押し付けようとしている新たな世界のルール、つまり無線回線の悪用や、石油のための馬鹿げた戦争、そして、僕たちの金を搾取する銀行に対して、彼らが戦ってくれることを期待してるよ。これは人類に対する脅威なんだよ。でもその脅威は人間が戦争という手段や利益のために人々を抑圧することを覚えてから、4000年もの間常に存在し続けてきた。ヒッピー文化っていうのは戦争に対する反応の一面に過ぎないんだよ。第一次世界大戦や第二次世界大戦に反対した人たちがいたのと同じようにね。もしもっと学びたいと思うなら Hunter S Thompson 著書、特に ”Fear and Loathing in Las Vegas” と ”The Great Shark Hunt” をおすすめするよ。」

そして、Lenny は最後にこう付け足した。「ヒッピー達はヒップだった。そして、今では Jet Set (ジェット機に乗って世界を飛び回るセレブ)がヒップなんだ。だから、彼らは自分たちをこう呼べばいんじゃない?ジェッティーてね。」


関連記事


関連リンク