デトロイド・テクノのテイストをヨーロッパ風に解釈したインテリジェンスな作風が支持を得ているスコットランド、グラスゴー在住のベテラン・プロデューサー Vince Watson が、去る3月10日(金)Womb のレギュラー・パーティー Irizoに出演を果たした。
昨年の同パーティー出演から6ヶ月という短いインターバルで再来日を果たした彼に HigherFrequency がインタビューを決行。「日本を移住先に考えている」ほど日本好きだと言う彼のバック・グラウンドや、昨年〜今年にかけてリリースされた2枚のアルバムについて話を訊いた。
> Interview and Translation by Kei Tajima (Higher Frequency)
HigherFrequency (HRFQ) : はじめまして。まず、今日はお忙しいところありがとうございます。
Vince : こちらこそありがとう。また戻って来れてうれしいよ。
HRFQ : 前回来日されたのが昨年の10月と、比較的短い期間で再来日されていますよね?
Vince : そうなんだ。というのも、昨年の WOMB のギグが素晴しくてね。彼らから再びオファーがあったんだ。日本のクラウドやプロモーターが僕の音楽を気に入ってくれて、すごくうれしいよ。それと、Fenomeno からライブCDを出さないかというオファーを受けていたから、金曜のプレイを録音したんだ。7月ごろに出る予定だよ。
HRFQ : あなたは、アシッド・ハウスがイギリスで全盛期を迎えていた頃に DJ を始められましたが、当時はどのような音をプレイされていたのですか?現在よりもアシッド・ハウス寄りのスタイルだったのでしょうか?
Vince : 当時、回りはみんなシカゴ〜デトロイト系のスタイルをプレイしていたね。それでも僕は他人とは少し違った音をプレイするように心がけてたよ。それは今でも同じだけどね。流行っているトラックはプレイしないで、あまり知られていないトラックをプレイしているんだ。'88〜90年にプレイしてたのはデトロイトかUKモノが中心だったけどね。
HRFQ : あなたの作品にはデトロイト・テクノの影響を感じさせる作品が多く見られますが、デトロイト・テクノこそ、あなたが一番影響を受けた音楽だと言えますか?
Vince : いいや、全然そうは思わないな。確かにこれからも影響を受けていく音楽だとは思うけど、それ以前に影響されたアーティストもたくさんいるからね。Herbie Hancock や Jean Michel Jarre といったアーティストの楽曲は、Mike Banks や Larry Heard、Derrick May や Carl Craig に出会う前から聴いていたしね。今挙げたアーティストからは、多大な影響を受けたことは確かだけどね。
HRFQ : 最新アルバム " Echoes From The Future : View To The Past" は、前作 "Sublimina" の発売から間もなくリリースされましたが、この二枚のアルバムはかなり対照的ですね。"Sublimina" がリスニング的であるのに対して、 "Echoes From The Future : View To The Past" は、フロア・ライクな仕上がりと言えると思います。これは自然の成り行きだったのでしょうか?それとも、何らかのアイデアがあったのでしょうか?
Vince : 聴く側にバランスのとれたリスニング経験をしてもらうためさ。僕は一つのスタイルに偏った音作りはしていないからね。僕はたくさんの音楽を聴くし、作る。人を驚かせるような音楽だって、これからもっと作っていくつもりだよ。僕は日頃からごく自然に音楽を作っているし、自分が正しいと思えないことを無理矢理やろうとはしない。
この2枚のアルバムの違いは、"Sublimina" があるテーマを元に作られたのに対して、"Echoes From The Future : View To The Past" が、「レーベルのコンピレーションを作る」といったアイデアから生まれているところにあると思うんだ。"Echoes From The Future : View To The Past" に関しては、既にリリースされているトラックをただ並べてリリースするより、違ったフォーマットでリリースしたかったのさ。タイトルの "Echoes From The Future : View To The Past" は、古いトラックと新しいトラックを並べて、前に向かっていくという意味なんだ。
HRFQ : 二枚のアルバムに対する反響はいかがですか?
Vince : "Sublimina" の反響はすごく良かったよ。特に、最近のマーケット事情で、ああいうタイプのCDにしては本当にいい反響が得られたと思う。すごく嬉しいよ。"Echoes From The Future : View To The Past"は、まだリリースから日にちがたってないけど、いまのところいいフィードバックが帰ってきてるよ。
HRFQ : 現在もグラスゴーを拠点に活動されているのですか?活動のベースにグラスゴーを選ばれる理由は何ですか?
Vince : 今もグラスゴーに住んでるし、もともとグラスゴー出身で他の場所で住んだこともないんだ…ただ最近はサンパウロか東京に移住しようかと考えていてね。この二つの場所が大好きだから、いつか近い将来実現できればと思ってるんだ。グラスゴーも大好きだよ。才能のあるアーティストがたくさんいるし、活気に満ちて新鮮な素晴しいシーンもある。だからいざ離れると寂しくなるだろうね。
HRFQ : グラスゴー出身でなかったら、あなたの音楽スタイルは違ったものになっていたと思いますか?
Vince : 育ち方や環境はアーティストの作る音楽に影響してくるものだと思うんだ。音楽制作はすごく感情的で思想豊かな過程だからね。だから、全体的には変わってくるだろうけど、僕の受けた影響やアイデアはかなりしっかりしたものだから、どのくらい変わってくるかは分からないな。だからこれからどこかに移住して、自分の音楽がどのように変化するかを見てみたい気持ちもあるね。
HRFQ : 同時にグラスゴーは非常に危険な場所だと聞きました。国際連合のレポートによって「先進国で最も危険な国」に選ばれたそうですが、日常からそういった危険な側面を目にすることがよくありますか?
Vince : そのレポートは読んだよ。でもあれは正しくないね。他にもグラスゴーと同じくらい危険な都市だってあるはずだよ。一般に「安全」といわれてる国でもグラスゴーより危険を感じる場所だってたくさんあるしね。スコットランドは日本やブラジルと同じくすごくフレンドリーな場所なんだ。だからこそ日本とブラジルが好きなのかもしれないけどね。正直、国際連合が何を考えてるのか全く理解できないね。だからあのレポートのことはあまり気にしないようにしてるんだ。
HRFQ : あなたのレーベル Bio Recordsから、今後のリリースがあれば教えてください。
Vince : いいリリースが山ほどあるよ。僕の作品の他には、Joel Mull や Sebastian Kramer の作品のリリースが決まってる。それから最近、新しいサブ・レーベル Bio Elements を設立してそこからアムステルダムのアーティスト Estroe との共作をリリースする予定だし、Elton DやTaho、Jeromeの作品もリリースすることになってるしね。
それに、これから "City to City" という EP のシリーズをリリースしていくんだ。「それぞれの都市にフォーカスして、その都市のアーティストの楽曲のみフィーチャーしていく」というコンセプトのアルバムなんだけど、今のところグラスゴーと東京、ベルリン、アムステルダム、サンパウロの5つの都市が決まってるよ。"Echoes From The Future : View To The Past" からの限定アナログも来月リリースされるしね。だから…こまめにチェックしてくれよ!
End of the interview
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リリース情報 : Vince Watson / Echoes From The Future : View To The Past (2005/12/5)
リリース情報 : Vince Watson / Sublimina (2005/5/5)
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