常に半歩先をいくエクスペリメンタルなプロジェクトでUKのダンス・ミュージック・シーンを引率して来た巨匠、 Tom Middleton。’89年頃に Richard D. James と出会い音楽制作をスタートし、後の共同プロジェクト Aphex Twin に繋がり、盟友 Mark Pritchard と共に、 Global Communication、 Jedi Knights、 Reload といった名義で、テクノ、ハウス、アンビエント、ドラムン・ベースなどジャンルの垣根を超え、"時代を経ても色褪せない名曲" の数々を残す。その後、ソロ活動にシフトして Tom Middleton、 Cosmos、 Amba 名義で、チルアウト作品からダンス・トラックまで幅広くコアで美麗な音楽を生み出しており、近年は Jamiroquai、Underworld、 The Chemical Brothers といった大御所アーティストのリミキサーとしても多忙を極めている重鎮だ。そんな彼が、今年の大晦日に行われる Unit カウントダウンにゲスト出演することが決定。カウントダウンならではの特別なセットを準備してくれているという彼が来日直前のインタビューに答えてくれた。
> Interview : Masanori Matsuo (HigherFrequency) _ Translation : Yuki Murai (HigherFrequency)
Coordinated by Seiji Hitomi (HITOMI Productions)
HigherFrequency (HRFQ) : あなたの音楽的なバック・グラウンドをお聞かせください。
Tom Middleton : 地元のオーケストラでピアニストとチェリストをやっていたな。冨田 勲の ’Snowflakes Are Dancing’ を聴いてたのが、古い記憶にあってね。僕の音楽には未だに彼の曲からのインスピレーションがあるくらいだよ(だから日本は僕にとって、インスピレーションを与えてくれる本当にスペシャルな場所なんだ!)。
‘89年に、 Richard James (The Aphex Twin) がエレクトロニック・ミュージックの作り方を教えてくれて、Richard との共同プロデュースでレコードを出したんだ。その後 Mark Pritchard に会って、Evolution Records と Universal Language を‘90年に設立した。たぶん君たちも知ってるかと思うけど、’90年代半ばには Mark と一緒に Reload、Global Communication、Jedi Knights、Secret Ingredients、Chameleon 名義で活動していたよ。
HRFQ : 4x4 以外にもダウンテンポなどを巧みに織り交ぜた、あなた特有のクロスオーバーなDJスタイルがありますが、それはいつごろから確立されたのですか?
Tom Middleton : よく考えてみたら、もう19年もこのスタイルでやってきたよ!僕は心からミュージック・ラバーだし、いつだって踊るのが大好きさ。この2つがエクレクティックなDJに欠かせないものだね。それに、本当に色々なスタイルの音楽にハマってるものだから、今では Pioneer の CDJ でスムースに曲と曲とをブレンドさせるのが随分うまくなったよ。 あと、クラブの中にお祭り的なエキサイティングさを持ち込むのが好きだね。そうすればクラブにいるのがもっと楽しくなるからね。
HRFQ : AMBA や Cosmos など、近年では他の名義での活動がみられませんが、今のTom Middleton名義での方向性はどうようなものですか?
Tom Middleton : 世の中に向けて自分のアイデンティティをはっきりさせるために、他の名義を全部やめて、自分の名前だけでやることに決めたんだ。長いこと、この名前でプロデュースもリミックスもDJもやってきてるから、他の名義を使わなくてもいいかと思ってね。それに、どんなスタイルでやるか自分で好きに選ぶことができるからね。
HRFQ : 作曲のときにはどんな機材を使ってますか?
Tom Middleton : 曲のプログラミングには modular を使ってるよ。 ラップトップ上で、必要な人数をいくらでも揃えられるヴァーチャルのオーケストラとバックバンドみたいなもので、僕はドラマーにもなれるし、ベーシストにもなれるし、どんなキーボードでも使えるキーボード・プレイヤーにもなれるし、フル・オーケストラの指揮者にだってなれるんだ。無限の可能性ってやつだね!
HRFQ : 今年の1月には ミックスCD "Renaissance: 3D" をリリースされましたね。ダンス・トラック中心の印象が強い Renaissance からのリリースというのは少々意外だったんですが、 どのような経緯があったのか、その裏話など教えていただけると幸いです。
Tom Middleton : Renaissance の Geoff と Marcus が、Faithless が ‘Renaissance :3D’ をリリースした後に、次回作をやる気があるかどうか尋ねてきたんだ。 以前から、’02年にリリースした ’The Sound Of The Cosmos ’ のCD3枚組コンピレーションの続きを作りたいという気持ちがあったから、まさにうってつけだったよ。 僕自身のエクレクティックな感覚を反映して、スタジオ作品やりミックス、クラブ向けのミックスやホーム・リスニング用の選曲の中からのベストを選んでコンパイルするには本当にベストな機会だったと思うよ。
HRFQ : 今後コラボレートしてみたいアーティストなどいれば教えていただけますか?
Tom Middleton : 冨田(勲)さんは今でも作曲してるのかな?あと、 Brian Eno と一緒にU2あたりのメジャー・バンドのプロデュースをしたり、 Thomas Newman みたいなサウンド・トラックの作曲家との仕事もやってみたいね。 僕は広告系の仕事も全然構わないから、サウンド・トラックとかサウンド・デザインの仕事ももっとやっていきたいんだ。
HRFQ : プライベートではどういった時間をお過ごしですか?
Tom Middleton : 父の跡を継ぐような形で、長いことデザインの世界でやってきていて、それが自分の生活の中で大部分を占めてるな。今は母親達向けの製品の開発をしてるんだけど、すごく面白いね。工業デザイン、建築デザイン、インテリアのデザイン、どれも本当にエキサイティングだよ。あとは今2つ、ビルのプロジェクトを進めてるよ。この前、友達のためにオーダーメイドでビーチの別荘をデザインして、それはちょうど建築中だね。現実の世界に、自分のデザインのアイデアが出来上がってくるのを見るのは素晴らしいものだよ。
HRFQ : 今回の来日公演は、あなたも以前プレイされた UNIT カウントダウン・パーティという特別なイベントですが、 UNIT に対する印象を教えてください。
Tom Middleton : UNIT でプレイした時はすごく楽しかったな。地下でスーパー・ディープなアンビエント・セットをやってたとき、パフォーマー側としても名誉に思えるほど、これまでになく皆が音にハマりこんでてね。テンポを上げていった途端に全員が踊りだして、最後には階段を駆け上がってって、メイン・フロアでピーク・タイム・セットをやったんだ。忘れられない夜だったよ!だから、大晦日が待ちきれないね!
HRFQ : NYEならではの特別なセットは用意されているのでしょうか?
Tom Middleton : もちろん!UNIT でしかかけないエクスクルーシブ・トラックをいくつか用意してる。期待しててくれよ!
HRFQ : ’09年以降のプランを教えていただけますか?
Tom Middleton : Renaissance から ‘One more Tune’ という新しいコンピレーションを出すよ。パーティーの最後にかけるアンセム曲をリミックスしたり、リエディットして1枚のディスクに収めたもので、ミックスしてないボーナスCDもついてくるんだ。あとは、新しい方向性の音楽を作ったりしてるね。
HRFQ : それでは、来日を心待ちにしているファンへメッセージをお願いします!
Tom Middleton : メリークリスマス. Isshoni odorimasenka? Dewa mata suguni ne!
(日本語で)メリークリスマス。一緒に踊りませんか?ではまたすぐにね!
End of the interview
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