NY ブラック系ダンス・ミュージックの牙城として名高いパーティー The Shelter の創設者である Timmy Regisford。気迫の漲るダイナミックなミキシング、驚異的なロング・ミックスでフロアの温度を上昇させることから「マエストロ」との異名を持ち、厳しい選択眼によって選び抜かれた楽曲とアフロセントリックな感性が紡ぎ出す漆黒のダンス・グルーヴによって、シリアスなダンス・ミュージック・ファンを中心に熱い支持を得ている重鎮中の重鎮だ。そんな彼の長いキャリアの中から初めてリリースしたファースト・アルバム "Africa Calling" の話題も冷め止まぬまま、今年また新たなアルバムをリリースするという情報をキャッチしたので、早速 HigherFrequnecy もインタビューすることに。ニュー・アルバムの詳細はもちろん、彼が手がける伝説的クラブ The Shelter についてのエピソードも訊くことに成功した。
Interview : Ryo Tsutsui (HigherFrequency) _ Len Iima (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)
HRFQ : 今制作されているというニューアルバムについてお聞きします。今回のアルバムではどういったことを表現されようと考えていらっしゃいますか?
Timmy Regisford (以下 Timmy) : エレクトロニックミュージックを基本としたインストルメンタルなんだけど、ただ単にテッキーなものではなくて、もっとリズムがあって、ソウルがある感じなんだ。アフリカンパーカッションも入っているし、昔ながらのハウスのパーカッションなんかも使ったりしているんだけどモダンな内容になるよ。一般的なテックサウンドのアルバムとは違った独特のサウンドになっているよ。皆が踊れるようなエレクトロニックミュージックを作りたいんだけど、そこにソウルも入れたいんだ。
HRFQ : あなたの今までのキャリアの長さを考えるとファーストアルバム “Africa calling” をリリースされてからまだ8ヶ月しかたっていない中で、早速新たなアルバムの制作に取り掛かられているわけですが、これほど早く制作に入られているのはなぜですか?
Timmy Regisford : 今は自分にとってそういう時期だと感じているんだ。しばらくスタジオにこもってクリエイティブな作業をしていたんだけど、今まで世界中を旅して回って、皆が聴けるようなありとあらゆる音楽を聴いてきて、ただ単に一般的な音楽じゃなくて色々な音楽をマーケットに投げかけられるんじゃないかって感たんだ。それに僕はアフリカンな音楽だったり、ポップミュージックだけを作るアーティストとかってレッテルを貼られたくないんだ。僕はいろいろな音楽を作れるんだから。
HRFQ : あなたは1991年よりあの有名な The Shelter をホストされてきていらっしゃいますね。The Shelter がいったいどのようにして始まっていったのか教えてください。
Timmy : それは基本的に僕が自分のクラブを持ちたいと考えていたからなんだ。僕なんかもパラダイスガラージで育っていたんだけど、ガラージがクローズしてしまったあと、自分なりに思うことをやってみれる機会だとおもったんだ。僕は誰のためでもなく自分のために働きたいと思っていたし、僕が好きな音楽がプレイされる箱が欲しいと思っていて、ガラージがクローズした後はそれがぽっかり空いていたような状況だったんだけど、ガラージで起ったようなことを再現するのは誰にもできないと思っていたから、違ったアプローチとしてガラージではあまりなかったようなラテンやジャズ、アフリカンなんかを取り入れたながら様々なバックグラウンドの人に響くような、様々な音楽をプレイしようとおもったんだ。
HRFQ : 継続していくのは大変でしたか?
Timmy : そうは感じなかったよ。情熱があって、好きだと思っていれば大変だなんて思わないものさ。
HRFQ : 何度か中断し、また再開されてきているようですが?
Timmy : それは大変だったということではなくて、賃貸契約が切れてしまったり、近所の人々から苦情がでてしまったり、 New York っていうのは一つのことを一つの場所で継続していくのが難しい場所なんだ。
HRFQ : 去年、私の友人がニューヨークへ行ったときに The Shelter が唯一アンダーグラウンドだと感じたクラブだったそうです。今のニューヨークの状況をお聞かせください。
Timmy : もう大型クラブというのはそれほど多くないね。今のトレンドとしてはバーやラウンジといったスタイルの店が多くなっているし、そういったやり方が儲かるんだよね。ただそれは僕らがやっていることとは違うし、アンダーグラウンドハウスの本来の姿ではないと思っている。でもこれからもそういったところは増えていって、大箱は存続していけなると思う。それがトレンドかな。
HRFQ : 現在、大手レコードディストリビューターがクローズし、レコード店も弊店を余儀なくされています。こういった状況に対してはどのようにお感じになられますか?
Timmy : こういった状況になるのは前から予想されていたことだと思うし、それが遂に訪れているということだと思う。来年には今以上に状況が進んで皆ダンスミュージックはどこかのサイトで入手するようになると思うし、欲しいものはいつでもどこでも手に入る状況になると思う。じきにワイヤレスでそういったことも可能になるはずさ、僕はあと2年もすればそうなると予想している。音楽はデジタルになっていくと思うし、基本的には便利になっていくと感じている。今後DJやプロデューサー、ダンスミュージック全体が大きな一つのシステムというかネットワークのような同じ仕組みの中で動いてゆくようになっていくと思う。その中でクリエイティビティを発揮した人が上に行けるようになっていくと思うんだ。誰でもアイディアやクリエイティビティがあればチャンスをつかめるようになるんじゃないかな。皆がレコードを買わなくなったからといって音楽がなくなるわけじゃなくて、アイディアを持っていたり、クリエイティビティを発揮できた人が成功するようになるんじゃないかな。
HRFQ : あなたはこれまでもここ日本で何度もすばらしいプレイを披露されていますが、その中で特に印象に残っているパーティはありますか?
Timmy : 僕の中でとくに印象に残っているのは Yellow で18時間プレイしたときのことかな。途中から時計もはずして何時かわからない状態でやっていて、スタッフにもう夕方の5時だからそろそろストップしようといわれて、最終的には6時に終わったんだけど、その時点で自分が18時間もプレイしていたんだと気づいたんだ。
HRFQ : 最後に日本のファンに一言お願いします。
Timmy : メッセージといえるかどうかわからないけど、自分が信じることをやって欲しいと思う。それにもし自分が聴いている音楽がいいと思ったらそれも信じよう。
End of the interview
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