現在全世界を巻き込んでいるドイツ・エレクトロ・ハウス旋風を代表するユニットと言えば、この Ali と Basti Schwarz の兄弟ユニット Tiefschwarz である。Schwarz という苗字と、ドイツ語で "ディープ&ダーク" という意味を持つ Tiefschwarz をもじって付けられたというユニット名が示しているように、もともとディープ・ハウス系のユニットとして活動していた彼らだが、2003年にリリースされ、大ヒットとなった エレクトロ・ハウス・チューン "Ghostrack" を機に、さらに広い音楽性を追求。幅広いアーティストのリミックス・ワークをはじめ、"Issst" や "Wait & See" など、数々のヒット・チューンを連発していくこととなる。
今年7月には、Rapture の Matt Safer、Everything But The Girl の Tracey Thornなど数々の本格派アーティストをフィーチャー、メジャー・グラウンドにまで通じるポップ・センスと希有な才能を披露した最新アルバム "Eat Books" をリリース。本作が大絶賛を受ける中、多忙を極める彼らが石野卓球氏 主宰のイベント Sterne に出演するため初来日を果たした。今回 HigherFrequency では、3時間弱にわたる 素晴らしい音楽に溢れたセットののち、二人にインタビューを決行。耳の早いダンス・ミュージック・ファンならば誰もが知りたいインタビュー内容となった。
> Interview : Nick Lawrence _ Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : セットを終わられたばかりですが、いかがでしたか?かなり楽しんでいられたようでしたが…?
Basti Schwarz : シャイセ!(ドイツ語で "Shit" )酷かった。全身汗だくだよ!
Ali Schwarz : すごく良かったよ。お客さんも叫んだりしてかなり楽しんでくれてたし。楽しかったよ。
HRFQ : 日本は何度目ですか?
Ali: これが初めてだよ。初演というわけさ。
HRFQ : 本当ですか?東京のほかにもプレイされる予定ですか?
Basti : 明日台北でプレイするよ。台湾でプレイして、そのあと東京に戻ってきて3日間プライベートで過ごすだけ。
HRFQ : 日本はいかがですか?
Ali : いいね。
Basti : ここにはちょうど地球の反対側のブラジルから来たんだ。東京も、ブラジルも大きいけど、東京にはもっとリラックスした雰囲気があるね。大きい都市だし、人々はみんな落ち着いてるし、いい人ばかりだと思うよ。
Ali : 礼儀正しい人が多いね。
Basti : 他の都市に比べるとすごい礼儀正しいよね。こんなに大きい都市なのに。
Ali : 特にクラブではね。
Basti : やっぱり仏教が関係してるんじゃないかな。
HRFQ : バイオグラフィーで読んだのですが、"Tiefschwarz" というユニット名は、ドイツ語で "ディープ・ブラック"という意味を表した言葉で、あなた方二人の苗字 "Schwarz"と、ディープ・ハウス への愛を込めてこのユニット名を付けられたということですが、本当ですか?
Ali : そうだよ。
HRFQ : '90年に Ali がスタートしたパーティーはドイツでも随一のディープ・ハウス系パーティーだったそうですね?
Ali : 初めは違ったよ。初めは、ただクオリティーの高い音楽が流れているパーティーだった。ジャズもあったし、テクノも、ブレイクビーツも、ヒップホップもなんでもあったんだ。クオリティーの高い音楽なら何でもね。それからしばらくして、本物のディープ・ハウスを流すパーティーにしようと決めたんだ。アメリカからも当時のヒーロー的なDJをたくさん招いたよ。そのパーティーを'97年に終わらせて、それからツアーに出始めたんだ。
HRFQ : あなた方が一番影響された音楽は何だったのでしょうか?やはりディープ・ハウスですか?
Ali : 僕たちが影響を受けたのは、ナイト・ライフに対する愛情と、音楽一般。何か一つに影響を受けた!って訳ではなくて、Basti はドラマーだし、僕たち二人とも音楽が大好きだから、いろんなものから影響を受けてきているんだ。Basti はいっぱいパンクを聴いて来たし、僕はニュー・ウェーブを聴いてきたし…それに僕たち二人とも David Bowie が好きだしね。どのアーティストもみんなそうなんだと思うよ。僕たちも例外ではないんだ。ただ単に音楽が好きで、ナイト・ライフに憧れて、最終的にプロになってDJを始めたというだけさ。
HRFQ : 今度リリースされるシングルには、RaptureのMatt Safer がヴォーカルで参加していたり、アルバムにはEverything But the Girl の Tracey Thorn が同じくヴォーカルで参加していましたね。また、今夜のセットでは Bloc Party もプレイされていましたが、こういったロックとダンス・ミュージックの融合は、意図的になさっているのですか?
Ali : そうだよ、何でいけないの?って感じさ。それって自由だし、好きなものは何でもミックスしていいと思うんだ。ロックとテクノ、レゲエとロック、クラッシックとロック…何をミックスしようが自由さ。今日のセットだって、いろんなスタイルの音をプレイしたと思ってるよ。エレクトロも、テクノも、ロックっぽいやつもね。何してもオッケーだと思うよ。
HRFQ : イビザでは、Manumission が展開したテーマ "Ibiza Rocks" が大盛況のうちに終わりましたが…
Ali : すでに下降気味だとは思うけどね。
Basti : だといいよ。
Ali : こういうロックとダンス・ミュージックの融合のブームって、かろうじて残ってる感じだと思うんだ。波が上がって下がるみたいな感じでさ。例えば、今日プレイした Bloc Party はテクノ・ミックスなんだ。だから僕たちがプレイしたものはもうロックではない。もちろん原曲の要素は少し残ってるけど、あれはテクノ・トラックなんだ。僕たちがプレイした他のトラックに関しても同じことさ。
ロックとのミックスは、やったらいけないって訳じゃないけど、その方法に気をつけなくちゃいけないと思うんだ。かなり技術や注意が必要なことだよ。ギターが入っていればそれでオッケーって訳ではなくて、もっとデリケートで難しいものだからね。3〜4年前なら、ギターが入ってくれば万事オッケーって感じだったけど、今はそうじゃない。今はミニマルの方が面白いと思うな。
HRFQ : 今日はヴォーカルものも多くプレイされていましたが、それも最近のブームなのでしょうか?
Basti : いいや…どうだろう
Ali : 今日ヴォーカルものをいっぱいプレイしてたと思う?
HRFQ : プレイされてたと思いますが…
Ali : してないと思うな。せいぜい2〜3曲じゃない?
Basti : …いや、4〜5曲はプレイしてたかも。
Ali : これはアルバムとは全く違う話だよ。アルバムはアルバムで、DJセットはDJセット。アルバムは、車の中で運転してたりとか、友達といたりとか、トイレにいたりとか…ともかく、実際にトラックを聴くけど、クラブでは次々と曲を聴いていく感じでしょ。僕たちはクラブ・アルバムをつくった訳じゃないんだ。それは確かだよ。とにかく、それがDJセットとアルバムの違いさ。だから今日のセットとアルバムを比べられるとは思わないんだ。DJセットと関係してくるのは、アルバムのリミックス・トラックさ。例えば、今日セットの中でもプレイした 'Warning Siren' のリミックスは、Tiga も彼のチャートのナンバー1に挙げていたんだ。リミックス・トラックはセットの中にも加えられるんだ。人々が僕たちのトラックをリミックスすることも多くなったし、それは全然OKだと思うよ。何も僕たちがソングライターになろうとしてるって訳ではないけどね。
HRFQ : そのアルバム "Eat books" ですが、評判はどうですか?どんな反響がありましたか?
Ali : いいよ。賛否両論だけど。でもいい意味でね。
HRFQ : あなたたちのアルバムは'99年にリリースされましたよね?
Ali : '99年だっけ?いや'00年だったような気がする。
HRFQ : オッケー、'00ですね。前回のリリースからこれだけの期間が空いたのは何故ですか?
Ali : その間に200トラックもリミックスをやっていたからさ!
Basti : そういうことさ。ファースト以降、自分たちのサウンドも変えて、全て変えてしまったんだ。さらにクラブ・シーンに傾倒していったしね。かなりの量のリミックス・オファーを受けて、全てをこなすのに時間がかかったんだ。それでも断った数の方が多かったんだからね。ただ、いろんなジャンルのトラックのリミックスが出来たから、すごく良かったよ。僕たちはそこで壁を越えたんだ。もうディープ・ハウスだけじゃなくなった。それはすごくいい変化だったんだ。自分になって、何でも好きなことを出来るようになったからね。それが何よりも大事だったんだ。
HRFQ : あなた方がリミックスを手掛けた Spektrum の 'Kinda New' が House Music Award にノミネートされましたが…
Ali : すでに2部門で優勝したんだよ。
Basti : 3つじゃなかった?
HRFQ : 初めから手ごたえはありましたか?
Ali : いや、自然にそうなっただけだよ。メディアに注目された途端、自分ではコントロール出来なくなってしまうものなのさ。
HRFQ : 今回のアルバム 'Eat Books' でも同じことが起こると思いますか?メイン・ストリームでもヒットすると?
Ali : 分からないな。これからシングルを何枚かリリースしていくんだけど、Rapture の Matt Safer をフィーチャーしたトラックとか、クラブ・シーンに向けたアンダー・グラウンドなリリースをしていくんだ。次のステップはもうプラン済みなのさ。アルバムが受け入れられればいいけど、それで終わりって訳じゃないんだ。
HRFQ : プロデュース業とDJ業を平行してやられているわけですが、実は今年のイビザであなた方のプレイを観る機会があったんです。
Basti : どこで?
HRFQ : Cocoon club です。
Basti : ああ、あれは良かったよ。素晴らしいセットだった。すごく楽しかったよ。
HRFQ : かなり楽しみながらプレイされてるようでしたね。
Basti : 4日間ともフルで楽しんださ!木曜の朝はいつも死人みたいだったけど…。
HRFQ : 現在のイビザ・シーンについてどう思われますか?
Ali : 良くなって来てるね。去年は全然ダメだったけど。Pacha とか、あんまり名前は出したくないけど良くなって来てるよ。DC10 も Cocoon も Space もいいし、これからも年々良くなって行くような気がするよ。
HRFQ : それでは、巷で噂されている "イビザの危機" については…
Basti : 元気を取り戻してるんじゃないかな。何年か前に底まで落ちて、それからはまた上に上がって来ているみたいだね。
HRFQ : ドイツの音楽シーンについてはいかがですか?イビザにしても、日本にしても、世界中のクラブ・シーンがドイツ一色といった感じですが、ドイツ人として今の現状をどのように見られていますか?
Ali : 最高の状態だね。
Basti : 大きい波が来てるよね。ドイツだけじゃなくて、ヨーロッパ全体が盛り上がってるね。
Ali : いいや、ドイツの波だよ。
Basti : もちろんドイツにはいいDJがいっぱいいるし、いいプロデューサーもいる。でも一般的に見て、盛り上がってるのはヨーロッパ全体だと思うよ。フランスやスペイン、イギリスとかね。大きい波だよ。
Ali : でも、プロダクションの面ではドイツが一番だよ。
Basti : プロダクションの面ではそうだね。
HRFQ : ツアーで多くの場所を回られていますが、一番のお気に入りの国はどこですか?
Basti : 難しいな。先週サンパウロでプレイしたんだけど、ほんとに凄かったしね。1万人以上の人が目の前で叫んでるんだ。ポルトガルでもプレイして、すごく楽しかったし、イタリアもかなりヤバかったし、イギリスもすごくいいし…どこも素晴らしいよ。でも、僕たちにとってスペシャルなクラブは、やっぱりフランクフルトにある Robert Johnson だね。Playhouse のクラブなんだけど、前回プレイしたときは10時間も回したんだ。
HRFQ : オーナーの ATA とは、以前インタビューをしましたよ。
Basti : (笑)ATA と?彼はクレイジーだよね。大好きだよ。ハロー ATA!
HRFQ : 彼は日本が大好きみたいですね。
Basti : ああ、知ってるよ。僕もさ!
HRFQ : それでは最後に、日本のファンへメッセージをいただけますか?
Ali : また呼んでね!
Basti : フィッシュ&チップスを食べなさい!
End of the interview
関連記事
イベント情報 : Sterne feat. Tiefschwarz (2005/10/07)
関連記事