HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Steve Angello Interview


若干23歳のスウェーデン / ギリシャ人ハウス・スター Steve Angello は、流星の如く突如昨年のトップDJランキングの上位に登場してからというもの、最近では、Ministry Of Sound で新しくパーティーをスタート、そして同クラブがリリースする "Sessions" シリーズでもコンパイルを手掛けるなど、2006 年も更なるブレイクが期待されているアーティストである。

その "Ministry Sessions CD" に挿入された解説において、彼の活動をサポートしてきた友達やDJ、ファンに感謝の意を述べた Steve 、そこには「今まで戦ってきたレジデントDJたちへ」という一文が記されていた。

「数年前に僕がDJを始めたばかりの頃、クラブのメイン・アクトとして登場すると、"何の苦労もせずに出世した奴め" って顔で見られたものだよ。僕だってここまで来るのに相当な努力をしてきたのにね」

「僕がプレイを始める前に、ヒット・チューンを連発させてフロアを自分の天下にしてしまうレジデントDJも少なくないんだ。僕より自分の方が上だって見せ付けるためにね。でもそれはとんだ勘違いさ。レジデントDJには、競い合って見せびらかすより、いいパーティーをクリエイトするために、自分の役割をこなすことが重要だと思うんだ。そういう状況に立たされたら、笑って、お酒とショットでも飲んで、"よし、パーティーするぞ" って思うようにしてるよ」

「楽しまなきゃ始まらないのさ。今までたくさんの素晴しいレジデントDJと一緒にプレイして来たよ。ただ、シーンにはクソみたいなレジデントDJもたくさんいる。奴らは人のことなんて全く気にしないんだ。他のDJをリスペクトして、音楽を愛する一心でDJを続けているDJもいるのにね。僕は常に仲間を励まして、新しいトラックを渡すようにしてるんだ。DJには何よりもそういった姿勢が大事だと思っているからね」

彼の「楽しみながら一生懸命仕事をする」 という論理は、明らかに成功していると言えるだろう。

「常に自分を駆り立てながらやってきたよ。すべての事を、179%成し遂げる気持ちで、完璧+αになるように努力してきたんだ」

このように、もしかすると彼の倍の歳のDJよりも、しっかりとした目的を持つ Steve 、彼のこのような性格はアテネでギャングスターの家系に育ち、13歳の時に父親を殺されたという、彼の家庭環境によって培われたのかもしれない。

「こういう家系に生まれた場合、どこかで決断をしなくちゃならないんだ。家族の伝統に沿うのか、他のことをするのか。僕は音楽があったから救われたんだ。そうでなければ父親と同じ運命を辿ってたよ」

そのようなギャングスター話は別として、彼は明るくポジティヴに、また Ministry のパーティーに対しては非常に熱心な様子でインタビューに応えてくれた。 ▼

以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)

Skrufff (Jonty Skrufff) : コンピレーションのリリースや自身のパーティーのラウンチが迫っていますが、Ministry Of Sound との関係はどのようにして始まったのですか?

Steve Angello : 数年前、ちょうど Cement DJ エージェンシーと仕事をするようになった頃、 初めて Ministry でプレイしたんだ。その後、去年の初めに Eric (Morrilo) の Subliminal Sessions でプレイしてね。すごくいいパーティーが出来て、好評だったんだ。それで、もう少し頻繁にプレイしないかって話になってね。それからクラブでよくプレイするようになって、今回の Size Night が決まったんだ。Size は、僕のレーベルの名前でね。だからこれは僕のレーベルのイベントになるんだけど、基本的には僕が呼びたいアーティストを呼ぶって感じかな。単にビッグ・ネームを呼ぶパーティーとは違うよ。

Skrufff : パーティーをホストするのと、レジデントDJになるのとはどう違いますか?

Steve Angello : 全然違うよ。レジデントはレジデントさ。自分をレジデントって呼ぶのは嫌いなんだ。自分のパーティーって呼ぶ方が好きだね。ただ単にクラブに現れて何となくプレイして帰るだけじゃなくて、ゲストDJも選びたいし、パーティーにももっと深く関わりたい。何かをクリエイトするってことが大好きなんだ。それが僕のスタイルなのさ。

Skrufff : クラウドともコミュニケーションを取ったりするんですか?

Steve Angello : もちろんさ。パーティーにはなるべく早めに着くようにしてるよ。それからフロアを歩き回って、バーに行って、VIP ルームをチェックして、友達と会って、ドリンクを飲みながら女の子をチェックしたりね…

Skrufff : 今後、イギリスに移住する予定はありますか?

Steve Angello : いいや、スウェーデンを拠点に活動するほうがいいね。ストックホルムが好きだから。イギリスでは大きいパーティーをたくさんやりたいし、出来るだけ頻繁に、月に数回は行きたいと思うけどね。イギリスのシーンの大ファンなんだ。パーティーに遊びに来る人も、エネルギーがあって、精一杯楽しんでて…ただクラブに行くってだけじゃなくて、パーティーしにくるでしょ。それが大事だと思うんだ。

Skrufff : 今日のシーンでは、John Dahlback や Ceri Lekebusch といった多くのスウェーデン人プロデューサーの活動が目立っていますね。大規模なクラブ・シーンが無いにも関わらず、なぜスウェーデンという国からは、多くのエレクトロニック・ミュージックが生まれてくるのでしょうか?

Steve Angello : それはスウェーデンって場所が本当に退屈だからじゃないかな。基本的に冬が6ヶ月も続くから、あんまりやることがないんだ。太陽が顔を出すのはせいぜい3〜4時間であとは真っ暗。空が真っ暗の時に寝て、空が真っ暗の時にまた起きるんだ。町に出てる人も少ないしね。今年の冬はここ(スウェーデン)もすごく寒くて、みんな外に出たがらないんだ。曲作りを始めたばかりの若いアーティストには、ただ黙々とスタジオで仕事することが一番なんだ。他の国の人よりも、スタジオで費やせる時間が多くあるっていうのが大きな理由じゃないかな。この国ではあまり多くのことを心配しないで済むしね。将来住むところだってあるし、食べ物に困ることもないんだ。

Skrufff : 解説にはギャングスターへの皮肉が所々に見られましたが、これはどうしてですか?

Steve Angello : 僕はマフィアの家系で育ったんだ。僕の父親はギリシャ人で、彼の家系はずっと昔からマフィアと関連があってね。そういった環境で育ってきんだけど、'96年に父親が亡くなった時に、それがどんなに危険なことなのか気付いたのさ。彼は銃で撃たれて死んでしまったんだ。それからアテネには年に3〜4ヶ月ステイするだけで、その他はストックホルムで生活するようになった。母はスウェーデンに住んでいたからね。子供の時はまだ何も分からなかったからそうやってアテネとストックホルムをいったり来たりしていたんだけど、成長するにつれて、次第に集中して自分の進む道を決めなくちゃならなくなるんだ。こういう家系に生まれた人には、いつか必ず決断をする時が来る。家族の伝統に沿うのか、他のことをするのか。僕は音楽があったから救われたんだ。そうでなければ父親と同じ運命を辿ってたよ。

Skrufff : アテネでのそういった状況は最近になって変わってきましたか?

Steve Angello : アテネには未だ大家族がいるし、昔はよく向こうに行っていたけど、このくらいの年になると、みんな「お父さんに似てきた」とか言い出してくるからね。そうやって始終泣いてもらいたくはないんだ。家族には会いたいけど、アテネに帰ることは考えられないな。古い友達もたくさん向こうにいるんだ…だけどここ最近は、すごく忙しかったからね。そういった事情もあってここ数年帰ってないんだ。

Skrufff : 今でもアテネに帰るのは危険なんですか?

Steve Angello : そうだね。向こうにいる時、誰と一緒に行動しているかにもよるけど。家族の昔からの知人と一緒にいれば、僕の身も危険になるよ。「Steve が来たぞ。奴も父親と同じ仕事がしたいかもしれない」って思う人もいるだろうからね。

Skrufff : アテネの家族は あなたがDJとして活躍していることは知っているのでしょうか?

Steve Angello : 知っているよ。「いいじゃないか、自分の生きたいように生きて幸せになってくれ。僕たちのようにならなかったことを良かったと思いなさい。がんばってくれ」って言ってくれてる。一度そういった面倒な組織に巻き込まれると、二度と抜け出せないからね。僕は、悪さして町を逃げ回る生活より、DJ にフォーカスしている方が全然幸せなんだ。

Skrufff : あなたは23歳という若さで、DJとしてもプロデューサーとしても大成功していらっしゃいますが、常にトップを目指して自分を駆り立ててこられたのでしょうか?

Steve Angello : 常に自分を駆り立てる気持ちでやってきたよ。すべての事を、179% 成し遂げる気持ちで、完璧+αになるように努力してきたんだ。機会があったから、それに飛びついたんだ。考えたり戸惑ったりすることなしにね。欲しいものがあれば手に入れる。そうやってきたんだ。

Skrufff : DJとしてニュー・テクノロジーの扱い方を常に学んでいらっしゃいますか?

Steve Angello : 学んではいないな。楽しんでるって言った方が正しいと思う。DJをしていると、いろいろな人に会うよね。ある場所では、一定のクラウドがつくこともある。そうすると、そこでプレイするのが楽しみになる。それは、そこに行けば自分の知ってる顔があって、そういった人が見に来てくれるのは、自分のプレイが好きだからってことを知ってるからさ。自分の好きなことをして、お金がもらえるなんて本当に嬉しいことだよ。お金をもらえなくたって続けているだろうに。

最近のDJビジネスは発達しすぎてしまったと思うんだ。かなりの多額をオファーしてきたギグを断ったことも数回あってね。ギャラが高くてもクソみたいなパーティーで回すより、ギャラが少なくてもいいパーティーでプレイした方が全然いいんだ。

Skrufff : ここ数ヶ月でたくさんの大物アーティストのリミックスを手掛けられてきましたが、どのようにしてメジャー・アーティストからのオファーを受けるようになったのですか?

Steve Angello : まず、僕は Moby の大ファンでね。今回も、彼のレーベルがリミックスをオファーしてきて、二つ返事でオッケーしたんだ。ギャラが幾らかも尋ねること無しにね。僕の働き方はいつもこうなのさ。いくら大金を積まれて Jennifer Lopez のリミックスをしてくれって言われても、すぐに断るだろうね。でも、その5分の1のお金で Madonna をリミックスしてくれって言われたらやるよ。僕は常にお金のことばかり考えてるタイプの人間じゃないんだ。自分のやりたいことを楽しんでやる方が大事だと思う。仕事を楽しんでやれば長く続けられるからね。

Skrufff : Jennifer Lopez より Madonna を選ぶ理由は何なのでしょうか?

Steve Angello : Madonna はアーティストだからさ。彼女のことは一つの例として挙げただけだけど、彼女はこの業界で唯一成功している女性アーティストの一人なんだ。Madonna は僕にとって本当のアーティストだけど、Jennifer Lopez は単なるプラスティックのフィギュア。ここは大きな違いだけど、彼女はアーティストというより、商品のような存在なんだ。僕は商品にはなりたくない。ただクラブに行って、笑いもせずにたった2時間回しただけで大金を稼ぐようなDJにはね。僕は楽しんでパーティーする主義なのさ。だからプレイの間もずっとスマイルしてるはずだよ。

Skrufff : Ministry Of Sound のコンピレーションの解説に記された文章はとても明白ですね。あなたは「僕が戦ってきたレジデントDJたちへ」と感謝の意を示していますが、今までにDJから嫉妬されることも多かったのでしょうか?

Steve Angello : もちろんさ。数年前に僕がDJを始めたばかりの頃、クラブのメイン・アクトとして登場すると、「何の苦労もせずに有名になった奴め」って顔で見られたよ。僕だってここまで来るのに相当な努力をしてきたのにね。僕がプレイを始める前に、ヒット・チューンを連発させてフロアを自分の天下にしてしまうレジデント DJ だって少なくないんだ。僕より自分の方が上だって見せ付けるためにね。でも、それはとんだ勘違いさ。レジデントDJには、競い合って見せびらかすより、いいパーティーをクリエイトするために、自分の役割をこなすことが重要だと思うんだ。

Skrufff : そういった人々はどうやって対処しているのでしょうか?

Steve Angello : そういう状況に立たされたら、笑って、お酒とショットでも飲んで、「よし、パーティーするぞ」って思うようにしてるよ。だって、楽しまなきゃ始まらないのさ。今までたくさんの素晴しいレジデントDJと一緒にプレイして来たよ。ただ、シーンにはクソみたいなレジデントDJもたくさんいる。奴らは人のことなんて全く気にしないんだ。他のDJをリスペクトして、音楽を愛する一心でDJを続けているDJもいるのにね。僕は常に仲間を励まして、新しいトラックを渡すようにしてるんだ。DJには何よりもそういった姿勢が大事だと思っているからね。

Skrufff : 解説には、「あのストーカーを何とかしなくちゃね」という一文が記されていたのですが…?

Steve Angello : それは Axwell へのメッセージだよ。彼はある女の子からストーキングされててね。彼女は何処にでも現れるんだ。よくその話をするんだけど、ある日彼がドイツから電話してきて、「今ドイツなんだけど、彼女がいるんだ。本当にどうかしてるんじゃないか」って言ったんだ。あれは確か15回目だったね。

Skrufff : どうやって対処するのでしょうか?

Steve Angello : わからないけど…。まぁ、何とかなるでしょ。

Skrufff : ご自身にも似たような経験はあるのでしょうか?

Steve Angello : いいや。かなり頻繁に遊びに来てくれる人はいるけどね。ニューヨークやスウェーデン、スペインいろいろな場所にファンはいるけど、彼らはただ音が好きで毎回のように遊びに来てくれているんだ。自分が好きなDJ がいて、自分にそのDJと一緒に旅して回るお金があったら、どうして行っちゃダメなの?旅行すると同時に好きなDJをみて、楽しんでるだけじゃないか。

Skrufff : 今年のプランを教えてください。

Steve Angello : 分からないな。'05年は一年間に 150 ものギグでプレイしたんだ。本当にスゴイ量だよ。だから去年は自分のレーベル、Size に全然集中することが出来なかったんだ。今年はウェブ・サイトをリニューアルして、何か特別なものを作るつもり。今まで以上にレーベル業に力を入れるつもりだよ。ブランド力をつけることって大事だと思うんだ。人はブランドが好きなのさ。洋服のブランドと同じことで、Adidas のスニーカー が好きな人は、Adidas のものをずっと買い続ける。レコードを売ることばかり考えるわけじゃないけど、レコードを買ってくれる人々に楽しんでもらいたい。それを目指してるんだ。

End of the interview

"Sessions Presents Steve Angello" は Ministry Of Sound から近日発売

 


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