アトム・ハートなど様々な名義から発表する個性の強い作風で人気を獲得している“天才エレクトロ職人”ウーヴェ・シュミットによるラテンエレクトロ・プロジェクト、セニール・ココナッツ。フランクフルトをベースに活動をスタートした彼だが、97年頃からドイツを離れチリの首都サンチャゴに移住。その 頃から彼の愛するラテン音楽に影響をうけた“エレクトロニック・ラテン・バンド”セニョール・ココナッツ”としての活動を開始させ、これまでに、 クラフトワークからマイケル・ジャクソン、シャーデーまで数々の名曲をラテン・テイストにアレンジしてきた。中でも2006年にYMOをカバーした`プレイズYMO `が大きな話題となり、ここ日本でも一気に認知度が広がったのは記憶に新しい。 Higher-Frequency では今回ニューアルバム `Around the world` を発表した彼にインタビューを決行。アルバムのことや、チリのこと、次のアイディアなどの貴重な話を聞かせてもらうことに成功した。
> Interview : Ryo Tsutsui
HigherFrequency (HRFQ) : 今回のニューアルバム `Around the world` では Daft Punk, Eurhythmics, Prince など、様々なアーティストの楽曲をカバーされていらっしゃいますね。どのようにして楽曲を選んでいったのですか?
Senor Coconut : セニョール・ココナッツのプロジェクトにおいて興味深いのは、知り合いのアーティストたちや、ファン、そして家族までもが、将来のセニョール・ココナッツについてのアイデアを私に話してくれるということです。その中である人がダフト・パンクの「アラウンド・ザ・ワールド」をカバーすることを勧めてくれました。またその頃、レス・バクスターのリミックスを依頼されていたのですが、彼の過去の作品の中に『アラウンド・ザ・ワールド・ウィズ・レス・バクスター』という曲があることに気づきました。偶然の中、その2曲が私の中で結びついた事によって、 “アラウンド・ザ・ワールド”というテーマが浮かんだのです。そのテーマに沿って、自分の頭の中でラテンにアレンジしたときにその曲がイメージできるものを選んでいきました。
HRFQ : 今回のアルバムを制作するのにどれぐらいの時間がかかりましたか?
Senor : レコーディングは昨年(2007年)の夏にドイツで行い、その後そのデータをサンチアゴへ持ち帰って12月までに最終的な形へ仕上げました。
HRFQ : 今回のアルバムを通し何を表現しようとされたんですか?
Senor : このアルバムの制作に取り組み始めた時には、『プレイズYMO』を製作した時とは違ったフィーリング持っていました。『プレイズYMO』のような複雑さを持ったものよりも、もっとシンプルで『フィエスタ・ソングズ』のスピリットを含んだポップなアルバムに仕上げたいと考えていたんです。 また、地球上の様々な場所や環境の中で暮らす、それぞれにとっての「世界」というものが存在すると思うのですが、私の考える様々な多様性を含んだ「世界」をアルバムとして形づくることによって、聴く人にいろいろ考えてもらえればとも考えていました。
HRFQ : あなたは2003年より自分のバンド “HIS ORCHESTRA” とともにプレイされていますね。レコーディングのときも彼らが演奏を担当するのですか?
Senor : オーケストラのメンバーは世界各地に存在し、レコーディングにも参加をしますが、そのメンバーは流動的です。スケジュールの調整などの理由で代わりのメンバーがライブで参加するといったこともあります。
HRFQ : あなたは先日日本で tenori-on のイベントへ参加し、実際に演奏もされましたね。 tenori-on は私達にはまだ未知の楽器ですが、どのような印象をもたれてらっしゃいますか?
Senor : テノリオンはシーケンスを行うインタフェイスとしては非常にユニークなものだと思います。一方内蔵している音源などに制限もあります。ただこういった制限は私個人にとっては楽しめるものです。今回のテノリオンのライブセットもMPC3000というサンプラーを中心に非常に制限された環境を敢えて構築して行っています。
HRFQ : チリに移住したことはあなたのライフスタイルを変えましたか?
Senor : チリに移住したのは世界から切り離されたような場所で創作活動を行うことに魅力を感じたからなのです。ライフスタイルが変わったといった感慨はありませんが、ここでは周囲に影響されずに制作が行われています。
HRFQ : 他の場所へ移ることを考えたことはありますか?
Senor : ありません。
HRFQ : Senor coconut の次の予定は?
Senor : 次作では1980年代のハードロックやヘビーメタルをカバーすることを考えています。まだアイデアの段階ですけれどね。
End of the interview
撮影監督:梅川良満
編集監督:笹生宗慶
演出:林巻子
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