大ヒット曲 'Chime' をはじめとする数々のアンセムを生み出し、Underworld や Chemical Brothers と並んで「テクノ四天王」として称された Orbital。その元メンバーである Phil Hartnoll が新木場の ageHa で行われた Clash に出演するため、待望の来日を果たした。
最近では映画「ハンニバル」の音楽制作や数々の CM 音楽なども手がけるアーティスト Nick Smith からなるユニット Long Renge を結成し、今年の1月にデビュー・アルバムとなる "Madness and Me" をリリース。その後のシングル・カットでのリリースでもダンス・ミュージック・ファンをはじめ多くのリスナーより反響を得ている彼に HigherFrequency がインタビューを決行、 Long Range での音楽的スタンスや栄光のバック・ボーンなどを和やかなムードで語ってくれた。
Interview : Ryo Tsutsui (HigherFrequency) _ Len Iima (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : Long Range の相方 Nick Smith とはどのように出会って、何がきっかけで Long Range をはじめられたんですか?
Phil Hartnoll : 僕は元々ロンドンに住んでいて、そこからブライトンに移ったんだけど、当時はブライトンに誰も知り合いがいなくてさ、以前にブライトンに住んでいた友人に聞いたら、こいつが案内してくれるよってある人の電話番号を教えてくれてね。そうやって出会ったのがNick だったんだ。そのとき彼はトランスを作っていてね、(10年ぐらい前だけど)すでに何枚かアルバムも出していたから話も合ってさ。その後彼は映画や広告のサウンドデザインをやるようになって、それをすごく興味深いと思っていたんだ。そんな中、オービタルが終わったのと同時期に彼も丁度仕事をやめて、じゃぁ一緒にやってみようってことになったんだ。彼と一緒にやってサウンドデザインの要素を組み込むことで、どのように音楽を進展させることができるか興味深いと思ってさ。 Long Range はそうやって始まったんだ。
僕は Massive Attack がやるように僕ら2人を中心に、場合によって様々な人をゲストに迎えるやり方でやってみたいって思っているんだ。ブライトンには才能溢れる人が沢山いるし、 Orbital の時はたまには人を迎えることもあったけど基本的には僕ら兄弟2人だけだったからね。いろいろな人とやってみたいって欲求が高まっていたんだ。そんな中、僕はDJを沢山やるようになってね。それに熱中していったことで Long Range のプロジェクトもそれに影響されて、形作られていったんだ。
HRFQ : Long Range を通じて何を表現されたいですか?
Phil Hartnoll : 僕は基本的にやってみるまでどうなるかっていうのはわからないと考えているんだ。もちろんアイディアを考えることはできるし、好きで是非一緒にやりたいと思う人も沢山いるけど、実際にスタジオに入ってやってみるまでどうなるかわからないものだし、おそらくだからこそ今回のアルバムには様々な要素が含まれているんだと思うし、それを止めるつもりもないんだ。今回のアルバムでは一緒にやる人を決めた以外にはプランも立ててなかったし、僕は Kelly (Malone) のようにフォーク・アコースティックの人と一緒にやるのをすごく楽しんだよ。常にインストゥルメンタルの曲だけじゃなくて、多少は歌詞だったり、歌の要素があることをやるのもすごくいいものさ。僕は他にもフォークのシンガーソングライターに出会って、次のプロジェクトで彼女とやることもすごく楽しみにしているし、そういう風に一緒にやってみたいと思っている人が沢山いるんだ。
HRFQ : Orbital を解散されたときにもっとダンサブルな音楽をやりたいとおっしゃっていたのをどこかで拝見したんですが、そのときどのように感じてらっしゃったのかを少しお聞かせください。
Phil Hartnoll : んーひょっとしたらそのときはそういうプランだったのかも知れないね。このアルバムはそんなにダンスオリエンティッドな感じではなくてどちらかというともっとアルバム的なものになってるよね。リミックスは Hybrid, Lee Combs とか guy called Maggie が手がけてくれたすばらしいリミックスが予定されているけどね。ひょっとすると次の作品はもっとダンサブルなものになるかもしれない。僕は Ellen Allien の “Orchestra of Bubbles” が大好きで、しばらく前に出た作品だけど、最近になって本当のよさに気がついてね。あのホームリスニングとダンスの両方ともいける感じがあって、しかもところどころにすばらしいメロディが散りばめてあってっていうのが、まさに常に僕がやりたいと思っていることだよ。
HRFQ : ダンスミュージックのアーティストとして今までの経験の中で特に思い出に残っている出来事をいくつか教えてください。
Phil Hartnoll : 僕は今まで本当にラッキーで恵まれてきたと思うし、何かをピックアップするのは難しいんだけども、とにかく自分が好きなことをやってそれで成功してこれたことがとても幸せだと思うよ。グラストンベリーでもプレイすることができたし、マドンナや YMO, クラフトワークのカール・バルトス博士とか自分がそれに値しないと思うような人々とも共演することができたし。僕は常にベストの結果を求めているし、その中でいくつかの本当にすばらしい体験もできたわけだけど、その中から何かを選ぶことは難しいな。でももっとも大切だと思うのは人が僕の音楽を楽しんでくれて、何かを感じてくれることかな。それ以上にすばらしいことはないよ。
HRFQ : あなたはダンスミュージックのアーティストとしてすでに多くのことを成し遂げてこられましたが、次はどのようなことを成し遂げたいですか?
Phil Hartnoll : 今までに何かを成し遂げようとして成し遂げたことはないんだ。いつも自分で「こんなにすごいところにいる」って自分で驚いている感じなんだよ。もしすべてが明日終わったとしても僕はすばらしい経験ができたって満足できると思う。おそらく人々に対して音楽を投げかけて感覚を共有するってことが今後も僕がやっていきたいって思うことじゃないかな、だってもしそうじゃなかったらやっていても仕方ないし、もし人々と共有できなくなったら他の仕事を見つけて家で自分のためにやるよ。たから自分の音楽を通して人々と感覚を共有すること、それが僕がやっていきたいことだな。
End of the interview
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