「Samantha Fox は僕の若い頃のアイドルの一人なんだ。彼女がポップ・スターとして有名になった時、僕は15〜16歳だったからね。最近 Myspace で彼女を見つけて、友達に加えなきゃって思ったんだ。彼女は僕の歴史の一部だからね」
テクノ〜トランス・ミュージックのプロトタイプとも言える数々の楽曲を15年前からリリースし、最近ではエレクトロやミニマルといったトラックも世に送り出しているドイツ人プロデューサー Oliver Huntemann は、トップ・クラスのプロデューサーとして認められているアーティストである。そんな彼の Samantha Fox に対する執着は Myspace 以外には影響しないと語った。
「DJ として彼女の曲をプレイすることはないね」彼は強調して言う。「でもそれは彼女の楽曲がポップ・ミュージックだからだよ。Samantha Fox の楽曲をプレイするなんて不可能なんだ」
そんな彼が代わりにプレイするのは、初期の頃 Humate のメンバーとして生み出したクオリティーの高いトランス・ミュージックから、最近のプロダクションまでを含むヴァラエティーに富んだ楽曲の数々を次第にビルド・アップしていくベテランならではの旅のようなセットである。
「もしミニマルからスタートすれば、その流れでエレクトロをプレイして、ハードなテクノをプレイする。それから少しメロディックな楽曲をプレイするって感じかな。毎晩違うけどね」
「どのスタイルにもいい曲とダメな曲があって、僕はそのいい曲の方を選ぼうとしてるんだ」
また彼は平日のスタジオでの仕事とレーベル業に支障のないように、DJ として週末の過ごし方にも気を付けていると語ったが、時々ついつい度を越してしまうこともあると話した。
「時々すごく酔っ払ってしまうこともあるよ。僕の酔っ払っている時の DJ はあまりよくないんだ。音があまり良く聴こえなくて、ミックスは出来ないし、間違って変なレコードをかけちゃう時もある(笑)。面白いけどあんまり笑えないかもしれないね」
「悪い癖って誰にもあるものだけど、アルコールでもドラッグでもやり過ぎは良くないよね」
「スペシャルな日に楽しむくらいなら何をやってもいいと思うんだ。ただ中毒になっちゃダメだよね。それに注意すればいいと思うよ」
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以下は対談形式でのインタビューの模様をお伝えする
(Translation by Kei Tajima)
Skrufff (Jonty Skrufff) : Depeche Mode の ‘Everything Counts’ を筆頭にたくさんのリミックス・ワークがリリースされ、シーンはあなたの名前で埋め尽くされていますが、最近では特に楽曲制作に力を入れられているんでしょうか?
Oliver Huntemann : 常にそうさ。今は結構 DJ もしてるけど、通常は週に2〜3回はスタジオに入って色々なプロジェクトの仕事をしてるんだ。ただ最近すごく調子がいいのは確かだけどね。果たして自分が以前よりインスパイアされているからなのかは分からないけど、いい調子で楽曲を作ってるのは事実だよ。
Skrufff : 普通のオフィス・ワークと同様にスタジオには朝9時に行かれるんですか?
Oliver Huntemann : スタジオには大体朝の10〜11時に到着して、調子を見ながら 5〜6 時には終わらせるようにしてるんだ。昔はよくスタジオで徹夜して楽曲を作ってたんだけど、出来上がったものを聴くと仕上がりが最悪でね。ただ、普通の時間にスタジオで作業をした時の曲の仕上がりは良かったから、そのパターンを習慣付けるようにしたんだ。もう20代じゃないし、毎週末にはきまってクラブでプレイしてるからね。僕の人生にだって少しは規則ってものが必要なのさ
Skrufff : 若い世代のプロデューサーや DJ に対してどのような意見をお持ちですか?
Oliver Huntemann : 送られてきたデモを聴いていると、僕らのサウンドに影響された世代がいることに気付くんだ。僕のトラックからループがサンプルされていたり、似たような音を使っていたりするからね。でもそれはそれでいいのさ。次のステップは自分なりの音作りをすること。シーンには John Dahlback のようにオリジナルな音を生み出している若くて素晴らしいプロデューサーがいるんだ。
Skrufff : Depeche Mode の ‘Everything Counts’ をリミックスすることになったきっかけを教えてください。
Oliver Huntemann : Mute Records のボス、Seth Holder に今年のラヴ・パレードで会ってね。彼から、「君の作品はよく耳にしてるよ。今ちょうど Depeche Mode の作品のリミキサーを探しているから、作品を何点か送ってくれないか?」って言われたんだ。だから「選ばれるか分からないけど送ってみよう」と思いながら、自分のアルバムを送ってみたのさ。そうしたら、その2日後に彼から電話がかかってきて、Depeche Mode のヒット曲の中から、好きな曲を一つ選んでくれって言われたんだ。まさに「信じられない!」って感じだったよ。若い頃彼らのコンサートを観に行って、すごく印象に残っていたし、彼らの楽曲はいい曲ばかりだから選ぶのに5日間は必要だったんだ。最終的には ’Everything Counts’ を選んで、Seth も OK してくれたんだ。あの曲のヴォーカルと、いかにもインダストリアルなサウンドが大好きなんだ。リミックスもヴォーカルから手をつけ始めたよ
Skrufff : フロアで映えるキラー・チューンにしようという狙いはありましたか?
Oliver Huntemann : そうだね。機能的に作ったし、かなりストレートな仕上がりだと思う。実際これよりも少し複雑なヴァージョンを作ってはいたんだけど、仕上げるのが遅くなってリリース出来なかったんだ。ただ、今度リリースされるリミックスが一番の仕上がりだと思うけどね。あと、フル・ヴォーカルのヴァージョンもあるんだ。でもそれも結局ダブ・ヴァージョンのみのリリースになると思うけどね。
Skrufff : あなたは現在でもハンブルグをベースにされていますが、ベルリンに移住されなかったのはなぜですか?
Oliver Huntemann : ハンブルグはベルリンから電車で1時間半しか離れていないし、僕の彼女もここに住んでいるからさ。それにハンブルグにも大きな音楽シーンがあるしね。だからベルリンに移住する必要もないんだ。それに今ベルリンは少し注目され過ぎな気がするしね。もちろんベルリンは面白いよ。ただプロデューサーやミュージシャンが多すぎて、その下に埋もれてしまう可能性もあるしね。僕はハンブルグにいるのがいいんだ。
Skrufff : 知って驚いたのですが、20代の前半の6年を海軍で過ごしたそうですね。以前は海軍としてキャリアを積むことを考えられていたんですか?
Oliver Huntemann : 家族やみんなの期待に応えるために入ろうと思ったんだ。きちんとした教育も受けたかったし、海軍ではそれが出来たからね。実際軍に加わった時はあまり深く考えていなかったんだ。以前はプロの DJ になるなんて思っていなかったしね。DJ は学生の時に始めたけど、趣味みたいなものだったんだ。だから普通の教育を受けるために何かしなければいけなかったのさ。海軍ではジャーナリストになって、仕事も経験したよ。
Skrufff : ある時、突然音楽を仕事にしようと決意されたのですか?それとも自然にこうなったのでしょうか?
Oliver Huntemann : ただ自然とこうなったのさ。ブレイクダンスを始めて、DJ するようになって、Garret と会って Humate として活動し始めて…本当にすべてが自然に起こったんだ。あれはテクノが生まれて、すべてが変わり始めた時だったな。何も計画したことなんてなかったよ。
Skrufff : 最近になって、そろそろ落ち着きたいと思われることはありますか?
Oliver Huntemann : 38歳だし、たまに考えることもあるよ。ただ最近は彼女と一緒にツアーを回ったりして一緒にいろいろ出来るから楽しいけどね。でも家庭を持つためには、もっと現実的にならなくちゃいけない。僕には息子がいるけど、一緒に住んでいないから2ヶ月に一回会える程度なんだ。悪くないけど、足りないよね。少なくとも僕は DJ をしているお父さんであって、普通のお父さんじゃないからいいんだ。たまに一緒に旅行出来ることもあるしね。何が起こるかは誰にも分からないのさ。時々 DJ する回数を減らして、日曜日に家族と静かに過ごしたいと思う自分もいるしね。だから60歳になっても まだDJ してるとは思わないよ。
Skrufff : あなたにとって UK は重要な場所ですか?
Oliver Humtemann : UK は常に重要な場所だと思うよ。インターナショナルだし、いいクラブはたくさんあるし、素晴らしいミュージック・シーンもある。数年前までドイツ人 DJ としてイギリスで名前を挙げるのはすごく難しくて、有名なのは Timo Mass とPaul Van Dyk ぐらいだったんだ。それなのに、今じゃ僕もイギリス中の素晴らしいクラブからオファーを受けるし、雑誌もドイツ人アーティストの話題で埋め尽くされてる。この変化にはすごく驚かされてるよ。最近 Turnmills でプレイして、Fabric でも2回プレイしたけど、すごく楽しかったし、個人的にもイギリスの音楽シーンには常に注目してきたんだ。インディー・ロックやエレクトロニック・シーンも面白いしね。ドイツ中がイギリスのシーンに注目していて、世界中が The Prodigy のように有名なイギリスのクラブ・ユニットの音を揃って流してた時代もあった。すごくクールだったし、ドイツでそういうムーヴメントは起こったことがないからね。
End of the interview
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