毎年秋に開催されている"Swedish Style Tokyo"。日本人にスウェーデンの文化や芸術、ライフ・スタイルなどを伝える目的で行われるこのフェスティヴァルには、期間中スウェーデンからたくさんのアーティストや関係者が集まり、東京の街はスウェーデン色で彩られる。
フェスティヴァルに参加した数あるミュージック・レーベルの中でも、エレクトロニカ/ニュー・ジャズ系コンピレーション"Nordic Lounge"や、最近ニュー・アルバム"Moving On"をリリースしたHirdが在籍するレーベルとして、日本でも支持を得ているストックホルムのDealers Of Nordic Music。フェスティヴァルも終盤に差し掛かったころ、La Fabriqueの"Cosmopolitan Night"に、レーベル・オーナーAndreasとJacobがDJとして出演するという噂を聞き、二人にインタビューを行った。
> Interview & Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency) _ Photographer : Martin Adolfsson
HigherFrequency (HRFQ) : 今回 "Swedish Style Festival"のために来日されているということですが。
Jakob : そう。スウェーデン大使館が日本に呼んでくれたんだ。"Swedish Style Festival"はスウェーデンのアートやデザイン、建築物なんかを紹介するフェスティヴァルとして毎年行われているんだけど、音楽イベントもフェスの一環としてたくさん行われていて、それで僕たちがここに呼ばれたってわけ。今日までにRoom やMontookでプレイして、それで今夜はLa Fabriqueでプレイするんだ。
HRFQ : 日本には今回が初めてですか?
Andreas : 僕にとっては今回が初めて。
Jakob : 僕は今までにもSwedish Style関係とかHirdのプロモーションで来日してるけど、日本はすごい好きだよ。
HRFQ : こういった日本とスウェーデンの文化交流についてどう思われますか?
Jakob : 僕たちにしてみれば、日本のレーベルやクラブとコンタクトをとったり、同じ音楽の趣味を持った人たちと知り合える良いきっかけになっているよ。それに、もしたくさんの知り合いがいれば、また日本に戻ってきてプロモーションをすることだって可能になるでしょ?だからこういうイベントがあってすごく助かってるよ。しかも東京にはスカンジナビアの音楽とか、デザインに興味をもっている人が多いから、いつかここに何らかのブランチをつくれればいいなとも思ってるんだ。
HRFQ : ここ数年で日本人の"ラウンジ・ミュージック"に対する意識はどう変化してきたと思いますか?
Jakob : 実際、今回の来日では"ラウンジ・ミュージック"とか"エレクトロニカ"のレーベルに対して、興味をもってくれる人がまた増えたような気がしたんだ。"ラウンジ・ミュージック"がマーケット的にかなり大きくなって、世間にはラウンジ・コンピレーションがあふれ返ってるから、去年なんかはみんなしてラウンジ・シーンを嫌ってるように見えたんだけど、ここに来て人々の反応が大きく変わったみたいで、"ラウンジ"っていうものを音楽だけに限って捉えていないような感じがあって…例えば"空港のラウンジ"みたいに、空間的な意味であったり、生活の一部としてある"ラウンジ"のコンセプトを楽しんでいるように感じたんだ。だから、音楽としての"ラウンジ"だけじゃなくて、"ラウンジ"のアイデアそのものに対しての関心が集まっているというほうが正しいのかな。
HRFQ : Andreasさんの日本の印象はどうですか?
Andreas : 予想した以上だよ!すごく楽しいし、やることがいっぱいあって全然退屈しない。レコードを買ったり、築地の卸売市場に行ったりして、すごく楽しかったよ。今回は結構長くステイしてるんだ。
HRFQ : ストックホルムには "Tokyo Style Festival"があると聞いたのですが本当ですか?
Jakob : 本当だよ。8月に行われたんだけど今回の"Swedish Style Festival"と同じようなコンセプトで、期間中にはストックホルムにたくさんの日本人アーティストやレーベル関係の人が集まってくるんだ。僕たちはKyoto Jazz Massiveを呼んで、僕たちのクラブでプレイしてもらったよ。
HRFQ : クラブを持ってるんですか?
Jakob : そう。DNMって名前なんだけど(笑)。東京のCLASKAみたいに、デザインされたホテルのロビーにあるバー&ラウンジなんだけど、すごいクールだよ。Shuya(Okino)がDJをしたときは、もっと大きいクラブでイベントをやったんだけど、あれは凄かった。400人以上のクラウドがおかしいくらいに踊ってるんだ。クラブというよりは、ロック・コンサートみたいでさ、みんな叫んだりしてて。やっぱりストックホルムでは日本人DJを見れる機会が少ないし、みんな日本のジャズ・シーンに興味があるから、すごくエキサイトしちゃったんだろうね。
HRFQ : あなたのレーベルDealers of Nordic Musicはどうやって始まったのですか?
Andreas : もともとは違う音楽のプロジェクトを一緒にやっていたんだけど、2002年に自分たちのレーベルをつくって、音楽をリリースするようになって。それからNordic Loungeシリーズを始めて、コンピレーションをリリースするようになったんだ。
HRFQ : レーベルのコンセプトは何ですか?
Jakob : スカンジナビアにはたくさんいいアーティストがいて、いい音楽もたくさんリリースされているんだけど、実際にスカンジナビア以外の場所でそういったアーティストの音楽を知っている人は少なくて。というのも以前はイギリスだったりアメリカだったり、もしくはここ日本でスカンジナビアのアーティストが作品をリリースすることはすごく難しかったんだ。だから僕たちの音楽を世界中の人にもっと簡単に聴いてもらえるようにしたかったし、僕たちの音楽に親しんで欲しかった。だからコンピレーション・シリーズをリリースし始めたんだ。だからレーベルの基本的なコンセプトは、人々にスカンジナビアの音楽にふれてもらうことと、逆にアーティストには自分たちの音楽を宣伝できる場所として、このコンピレーションをつかってもらうこと。たくさんの人にスカンジナビアのシーンを紹介することは、今日僕たちがやるみたいに他の国でギグをしたり、ツアーをするきっかけにもなるしね。それに、僕たちのウェブ・サイトを通して、人々に情報を与えること。これも大事なポイントだね。
HRFQ : スカンジナビアでは人々の"ラウンジ・ミュージック"に対する意識は高いのですか?
Jakob : そうだね。例えばシティに住んでいて、モダン・ライフを送っているような30代だって、ラウンジ・ミュージックだったら気軽に聴けるでしょ。パーティーやちょっとしたキャンドル・ディナーの時に、ラウンジとかニュー・ジャズをかければクールだし、ちょっと気分がいいからね。もちろん音自体やアーティストに興味があって聴いてくれているリスナーもいるんだけど、たぶんほとんどの人にとっては誰の曲が入っているかなんてあまり問題じゃなくて、ただ持っていると便利だからコンピレーションを買うんだと思うよ。だけど、それはそれでいいと思ってるんだ。
HRFQ : 世間一般のラウンジ・チックなコンピレーションと差をつけて、リスナーにそれを感じとってもらうのは、時折難しいことだと思うのですが、いかがでしょうか?
Jakob : そうだね。でもある意味そういうラウンジ・チックなものって本当にダメだし、聴いてみると本当にダサいのも結構あったりするからね。実際 "Nordic Lounge"っていう名前も、他のラウンジ・チックなコンピレーションがそうであるように、買ってもらいやすいタイトルを付けてはいるんだけど、実際に聴いてもらえばリスナーもベタなラウンジ・クラッシックスが少ないと気づくはずなんだ。"Nordic Lounge"っていうのはただの名前であって、実際の音はもっとニュー・ジャズとかエレクトロニカに近いんだ。それに、このコンピレーションの特別なところはスカンジナビアのアーティストの楽曲しか扱っていないということなんだ。スカンジナビアのアーティストの楽曲こそ僕たちが紹介したいものだからね。スカンジナビアの音楽を紹介するということがレーベルのアイデンティティなんだ。 ただ確かに、"Lounge"という言葉をコンピレーションの名前につかうことに関しては、いろいろと議論が繰り広げられて…だってほとんどのダサいラウンジ・コンピレーションには"Lounge"が付いてるからね。だけど結局、だからこそ "Lounge"という言葉を人に興味を持ってもらうためのIDとして使おうということになったんだ。僕たちが好きな音楽だけを心をこめて選んでいれば "Nordic lounge"だって、良い名前なんじゃないかってね。確かに覚えやすい名前だし、コンセプトのある名前だからそうすることに決めたんだ。
HRFQ : レーベルのアーティストについて教えてもらえますか?
Jakob : 実はもうひとつ "Jazzflora"というコンピレーションをリリースしていて。これはもうちょっとライブ・ジャズっぽいコンピレーションなんだけどね。それにHirdはアルバムをリリースしたばかりなんだけど、彼は日本でもすごく評判がいいんだ。特にYukimi Naganoをフィーチャーしてリリースしたシングル "KEEP YOU KIMI"もJ-WAVEなんかでたくさん流されてるんだ。
HRFQ : シンガーのYukimi Naganoとはどうやって知り合ったんですか?
Jakob : Hirdを通してだよ。たしか一緒の学校に通ってたんじゃないかな。彼らはGothenburg出身なんだけど、小さい町だから基本的にコミュニティーもすごく小さいんだ。だから同じ興味がある人間は、自然と集まってみんながみんなとコラボレーションしてるって感じなんだと思う。彼女はHirdとも、The Similouともコラボレーションしてるしね。今は彼女自身のアルバムをつくってるみたい。とりあえず、良い友達だよ。
HRFQ : 今後のリリース情報を教えてください。
Andreas : 日本限定で12月に"Nordic Lounge 3"をリリースして、来年にはThe Similouがアルバムを出す予定だよ。
Jakob : The Similouの音楽はもうちょっとelectro-popっぽい感じなんだけど、まだ日本でリリースされるかは分からないんだ。リリースされるといいけど。彼らの音楽は結構いろんな人に好まれると思うから。
HRFQ : 最後の質問です。スカンジナビアのエレクトロニカ・シーンはイギリスやドイツのシーンとどういった関わり方をしているのですか?
Jakob : このジャンルにおいては、どこから来たかっていうのはあんまり問題じゃないと思ってるんだ。世界的に見ればもし同じ興味のある人間が集まれば、結局誰がどこから来たかなんてあんまり関係ないでしょ。SonarやドイツのレーベルKompostにしても、どこの国かに関わらず、一緒になって協力してやっているだけだし。要するに同じ興味を持った人間が固くつながっているというだけのことなんだ。大切なのはどこから来たかじゃなくて、何をしたいかだと思うよ。
End of the interview
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