HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Nathan Fake Interview

鬼才James Holden によってコンパイルされ、全世界で絶賛を受けた "Balance 005" に収録された作品の中でも、多くの人のリスナーの耳を奪ったトラックと言えば、間違いなく Nathan Fake の 'Outhouse' だろう。当時若干19歳というイギリスの若きプロデューサーの名は、美しいメロディーとエモーショナルな感情を併せ持ったこの楽曲のヒットと共に世界に広がって行き、その後リリースされた 'The Sky Was Pink' 、'Dimano' をはじめとする楽曲がすべてヒット。Nathan Fake はわずか数年の間に、エレクトロニック・シーンを代表するアーティストに成長した。

ここ日本では、カルト的な人気を誇る Border Community の代表的アーティストとして、カリスマ視されている彼が、6月3日に長野県木曽郡こだまの森で行われた taicoclub に出演するため初来日。待望の来日とあって以前から注目されていた今外のギグを前に、フェスティヴァルをレポートした HigherFrequency がインタビューを決行。その透き通った青い眼に映るピュアな音楽の世界に迫った。

> Interview : Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introducion : Kei Tajima (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : 今日はお疲れのところありがとうございます。

Nathan Fake : 大丈夫だよ。

HRFQ : あなたのファースト・シングル 'Outhouse' は今から3年前にリリースされましたが、まず始めに Border Community からリリースすることになったきっかけを教えてください。

Nathan Fake : トラックのデモをEメールで James Holden に送ったんだ。それだけだよ。そうしたら James が気に入ってくれたから、曲を完成させた。シンプルなことさ。

HRFQ : 'Outhouse' は、Armin van Buuren のミックスCD "Big Room Trance" にも収録されているんですよ。

Nathan Fake : そうなの?クールだね。

HRFQ : あなたの音楽が "Big Room Trance (大箱トランス) " と表現されることについてどう思いますか?

Nathan Fake : めずらしいよね。多分。でも違うタイプのリスナーに気に入ってもらえるのは嬉しいよ。

HRFQ : 広いタイプのリスナーに好かれる要素を持ったトラックだと思いますか?

Nathan Fake : どうだろう。この曲には違った要素がたくさん含まれてるから、トランス系の人にはあのメロディーが受けるのかもしれないね。

HRFQ : ニュー・アルバム "Drowning in a Sea of Love" は本当に美しく、エモーショナルな作品ですね。歌詞に頼らずに、どのようにしてそのような感情を表現することが出来たのですか?

Nathan Fake : 僕は歌詞を書くのがあまり得意じゃないんだ。出来れば曲の中で歌詞を使えるようになればいいんだけど…どうなんだろう。ただメロディーをつくるのが好きで、自然とそうなるんだろうね。たぶんあまり意識していないからかもしれない。ただ曲を書いて、それを完成させてるだけだから。

HRFQ : 常に自然と音楽が出来てしまうという感じですか?

Nathan Fake : 自分がベストだと思う作品はほとんどそうだね。考えすぎると最終的に難航してしまうんだ。いいものは常に自然と出てくるものだよね。

HRFQ : アルバムの制作作業は、シングル作りとは違ったものでしたか?

Nathan Fake : 今回のアルバムに入った曲は、どれもすべて2〜3ヶ月の短期間の間に書き上げた曲だったんだ。アルバム全体を仕上げるのには時間がかかったけど、曲自体はどれもだいたい同時期に書かれたものだったから、全体的につながりのある感じになっているのかもしれないね。長年かけてつくったシングルを集めてアルバムにしてもいいと思うんだ。ただ、そうすると"アルバム"って感じにはならないよね。コンピレーションっぽくなっちゃうと思うんだ。今回は一つのプロジェクトとしてのアルバムをつくりたかったのさ。

HRFQ : アルバムのカヴァーにある写真についてはどうですか?あれはあなたの家族の写真ですか?

Nathan Fake : そうだよ。ちょうどアルバムのことを考えてる時に、自分の古いアルバムを全部見返してみたんだ。そこで見つけたものを James と一緒に Photoshop を使ってアートワークを付け足してね。実際には Photoshop もあまり使わなかったかな。壁紙を付け足すために使ったんだ。ただ、写真がぼやけてるのはもともとなんだよ。上手く撮れなかった写真を集めたのさ。例えば、誰かがブランコに乗ってる写真があるんだけど、完璧にブレてるんだ。でもそれはもともとそういう写真だったのさ。

HRFQ : "Drowning in a Sea of Love" がリリースされる前、12インチでリミックス盤がリリースされましたね。他アーティストのリミックス曲を聴いてどのように感じられましたか?

Nathan Fake : クールだと思ったよ。あのEPでは、僕が自分の音楽をリミックスして欲しいと思ったアーティストにリミックスしてもらったからね。今僕の隣にいる、友達の Vincent Oliver にも 'Long Sunny' のリミックスをしてもらったしね。レーベルに「この人にやってもらうべきだ」って言われて頼むより、僕自身が親しみを感じる人にやってもらう方がいいと思うんだ。それに、FortDax や Apparat といったアーティストもすごく好きだから、彼らのリミックス作品を聴くのは嬉しかったよ。アーティストとトラックの組み合わせについては、James とかなり話し合って決めたんだ。だからやってもらったリミックスは全部気に入ってるよ。

Nathan Fake Interview

HRFQ : BB King や Van Morrison も出演する スイスの Montreux Jazz Festival に出演することが決定していますが…

Nathan Fake : そうなの?知らなかったけど、嬉しいな。僕の父は Van Morrison のファンだから、喜ぶだろうね。

HRFQ : こういったタイプのフェスティヴァルに出演することを想像したことはありますか?

Nathan Fake : いいや、なかったよ。でも、今回のアルバムがああいう感じだったからじゃないかな。クラブって感じじゃないからね。違うタイプのフェスティヴァルがサポートしてくれるのは嬉しいよ。

HRFQ : 今日出演なさるフェスティヴァル Taico Club は野外のイベントですが、クラブでのギグと比べていかがですか?

Nathan Fake : オープンな場所でプレイするより、小さいクラブでプレイする方がもっと密な感じがするよね。小さいクラブでプレイすると、すぐ目の前に人がいて、盛り上げることが出来るし、濃い感じのパーティーになるんだ。でもこういった場所でプレイするのもいいよね。(辺りを見回して)すごいロケーションだと思わない?こんな場所今まで見たことないよ。こういう感じもすごい好きだな。

HRFQ : 最近はどのようなライヴ・パフォーマンスを行われているのですか?

Nathan Fake : 今は Vincent と僕の二人で、僕が音楽担当、Vincent がヴィジュアル担当という感じでやってるよ。二台のラップトップを使うんだけど、その二台が繋がっていて、僕のコンピューターからVincent のコンピューターに音が送られて、それよって各トラックと合うように制作された映像が反応する仕組みになっているんだ。トラックによって決められた基本的なガイドラインはあるんだけど、僕もいろいろ試したいから、そのあたりはオープンにしてるつもりだよ。もちろん曲は事前に書かれたものだし、映像もその楽曲のイメージにあわせてつくられたものではあるけどね。Vincent とはもともと友達だったから一緒に仕事をするのは楽しかったね。気苦労がなかったよ。

HRFQ : 今後DJ として活躍されていくつもりはありますか?多くのプロデューサーは宣伝活動のために DJ をしますよね?

Nathan Fake : クラブで DJ するようになるとは思えないな。プロとして DJ する気はないよ。あまり DJ は上手じゃないし、テクノについてもあまり詳しく知らないしね。バーでは DJ したことがあるけど、ミックスなんかも出来ないんだ。DJ は楽しいけど、突き進めて行きたいものではないな。僕は音楽をつくる方にもっと興味があるし、音楽制作やライブと同じレベルで DJ 活動をしていくつもりはないよ。

HRFQ : あなたが DJ しないことに驚く人も多かったのではないでしょうか?

Nathan Fake : 今となれば、みんな僕がライブ・アクトだって気付いてるんじゃないかな。初めの頃は DJ のオファーを受けることもあったけど、DJ はしないって断ったんだ。確かにオファーを受けることも出来たけど、興味がなければするべきじゃないと思ったのさ。

HRFQ : これだけの数のツアーをこなしながら、どのようにして新しい音楽制作の時間をつくっているのですか?

Nathan Fake : これから数ヶ月は忙しくて音楽をつくる時間もあまりないだろうね。曲はちょっとずつ書いてはいるんだけど、真剣に取り組むことは出来ていないんだ。本当はそうしたいんだけどね。7月を過ぎればツアー・ラッシュの少しは落ち着くから、冬にかけては曲作りに集中したいね。

HRFQ : 新しいアルバムにも期待できますか?

Nathan Fake : アイデアはあるけどね。というのも、"Drowning in a Sea of Love" を完成させるのには、全部で2年もかかったんだ。随分前から書き溜めていた曲が偶然まとまって一つのアルバムになったような作品だからね。きっと初めて曲を書き始めたときからアルバムにはなるはずだったんだけど、完成するのにすごく時間がかかったんだ。このアルバムはレーベルにも僕にとっても初めてのアルバムだったから、みんなにとってすごく重要なプロジェクトだったのさ。

HRFQ : アルバムに収録された 'The Sky Was Pink' も数年前につくられた楽曲ですよね。

Nathan Fake : そうだね。あの曲はアルバムをリリースすることを決める随分前に書いた曲だったんだ。でも他の曲と上手くフィットしたからアルバムに入れたのさ。

HRFQ : その、'The Sky Was Pink' のヒットには驚かれましたか?

Nathan Fake : そうだね。ほとんど James のリミックスのおかげだと思うけど、いかにあの曲がヒットして、いまだに成功しているかに僕たち二人とも驚いてるんだ。ちょっと変な感じだよね。嫌なのは、James のリミックスの方をオリジナルだと思ってる人がいること。だから、そういう人がライブを見に来ると、プレイしたばかりなのに、「'The Sky Was Pink' をやってよ!」って叫ばれることがあるんだ。オリジナルはリミックスのものと結構違う音だからね。ただ、本当に僕の音を好んでくれてる人たちは、あれはリミックスだって分かってくれてるはずだよ。

HRFQ : アルバムの中で 'The Sky Was Pink' よりヒットしそうな曲はありますか?

Nathan Fake : ないかな。他のどの曲もシングル化してないから、他の曲を知ってる人はいないと思うよ。'You are Here' は僕の周りでお気に入りにあげてる人が多くて、僕にとっては嬉しいけどね。ただ、今回のアルバムに関しては、アルバムの曲がすべて集まって、一つの作品として成り立ってると思うんだ。だから極端に目立つ曲はないよ…確かに数曲くらい目立つ曲はあると思うけど、全体的にアルバムっぽい感じだからね。初めから終わりまで通して聴いてもらうような作品なんだ。

HRFQ : 最後に日本のファンにメッセージをお願いできますか?

Nathan Fake : ドウモ アリガトウ。

End of the interview

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