昨年イギリスでリリースされたデビュー・アルバム "Destroy
Rock & Roll" が、シングル"Drop The Pressure" と共に大ブレイクし、一躍ダンス・ミュージック・シーンの中心的存在へと躍り出たスコットランド、スカイ島出身のアーティスト
Mylo。その人気はクラブ・シーンにとどまらず、メジャー・グラウンドへと広がっていき、ここ日本でも、クラブ・ミュージック・ファンをはじめ、音に敏感なリスナーの間では非常に高い人気を誇っており、兼ねてから来日が待ち望まれていたアーティストの一人である。
最近ではワールド・ワイドでのメジャー・デビューを果たし、今夏は世界中の主要音楽フェスティヴァルにひっぱりだことなるなど、まさにライジング・スターの名に相応しい快進撃を続けている彼が、来週末に開催が予定されている Fuji Rock Festival に出演するため、初来日を果たすことが決定した。
そんな待望の初来日を記念して、日本のクラブ・ミュージック・ファンを代表すべく、HigherFrequency が多忙を極める Mylo に E-mail インタビューを決行。オックスフォード大卒という素晴らしい学歴を持つ Mylo らしく 、ウィットに富んだ文体で質問に答えてくれた。
> Interview , Translation & Introduction : Kei Tajima (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : あなたはスコットランド北部の島 スカイ島の出身だそうですね。どういった場所なんですか?
Mylo : いつも寒くて、雨ばかり降ってる暗い島。でも天気が良ければ世界中で一番美しい場所だよ。ゆったりしてて静かなところさ。特に冬はね。
HRFQ : スカイ島にはラジオ局が一つしかないそうですが、どんな音楽が放送されているんですか?
Mylo : 今はもっとあるけどね、僕が子供の時にちゃんと聴けるラジオ局は一つしかなかったんだ。Atlantic 252 っていう名前のラジオ局だったんだけど、いわゆるソフト・ロックが中心にかかってたかな。
HRFQ : あなたの音楽性に一番大きな影響を与えてきた音楽を一つ挙げるとすれば?
Mylo : 常にいろいろな音楽を聴いてきたから、一つに限定するのは難しいな。それに、僕の音楽も決して一つのスタイルに形容できるものではないしね。ただ、このアルバムに限って言えば、ホームメイドな感じのエレクトロニック・ポップ・アルバムを作りたいと思っていたから、Les Rhythmes Digitales や Jollymusic、Daft Punk、Metro Area、Röyksopp といったアーティストに影響を受けたかな。
HRFQ : 大学では哲学を専攻されたそうですね。そういった経験があなたの音楽性に何らかの影響を与えていると思われますか?
Mylo : いいや、二つのことが関係してるとは思えないね。
HRFQ : 音楽活動を始めた当初は音楽制作とDJのどちらに興味があったのですか?
Mylo : 去年までDJには全く興味がなくて、音楽制作だけに興味があったんだ。でも人からDJを勧められてるうちに、やってみようかなって気になってね。おかげで今はすっかりDJ中毒さ。楽しいよ。もちろん最初のうちはプレイもヒドいものだったけど、だんだん上手くなってきてるしね。
HRFQ : スタジオ・セットアップを教えてください
Mylo : いくつかソフトウェアが入った MacのG4 と、MIDI キーボード。それに Reason と Protools っていう二つのプログラムはいつも使ってるね。
HRFQ : あなたのレーベル Breastfed Recordings についてですが、他のアーティストをリリースする予定などはありますか?それとも、もともとあなたの作品のみをリリースすることを目的につくられたレーベルなのでしょうか?
Mylo : 僕だけのレーベルってわけじゃないけど、昨年アルバムをリリースしてから想像以上に忙しくなってしまったから、他のことに集中する時間がなかったんだ。既に契約をしている作品もいくつかあるんだけどね。Guns'n'Roses の "Sweet Child of Mine" のかなりヤバいエレクトロニック・カヴァー・バージョンとか。それに、Cassius の Philippe Zdar の作品も契約しようとしてるんだ。
HRFQ : 今年の夏はものすごい数のフェスティヴァルに出演なさってますよね。一番印象深かったイベントを教えてください。
Mylo : 難しいなぁ…でも、やっぱりスコットランドのフェスティヴァルが一番良かったな。Isle of Skye music festival でプレイして、その二日前にはスコットランドで一番大きいフェスティヴァル T in the Park の Slam テントでトリを務めたんだ。暗くてデカいテントの中に12,000人ものクラウドがいて…あれはクレイジーだったね!
HRFQ : あなたのホーム・グランドである Isle of Skye music festival でのプレイはいかがでしたか?
Mylo : すごく良かったよ。実は、イギリスでツアーした中で雨が降ってたのは Skye music festival だけだったんだけど、クラウドが本当に素晴らしかったね。
僕はひどく疲れてたんだけどね。というのも代役のドラマー (今までに一度も会ったことのない人) と徹夜でリハーサルしなくちゃいけなかったんだ。バンドのドラマーが背中を悪くしてしまってね。フェスティヴァルが終わった後に2時間寝て、朝7時には南フランスで予定されていたレイブに出演するために出発しなくちゃいけなかった。だから自分の実家でリラックスする時間なんて全然なかったんだ!最近の忙しさはほんとにクレイジーだよ!
HRFQ : 通常、どのようなスタイルでギグを行っているんですか?ライブですか?DJですか?ライブ・セットアップについて教えてください。
Mylo : 一番多いのはバンド形式でのライブかな。今バンドにはメンバーが4人いてね。僕の弟Hectorがエレクトロニック・ドラムを、友達の Lewis がベース、William がギターやキーボード、コンピューター、僕がギターとキーボードを担当しているんだ。
HRFQ : ファースト・アルバム "Destroy Rock & Roll" には合計でどのくらいの時間をかけられたのですか?
Mylo : このアルバムは、僕が音楽制作を始めて2〜3年のうちに完成したトラックを集めたコレクションなんだ。2001年の夏に初めてコンピューターを買って、アルバムにも入っている "Sunworshipper" というトラックをつくって、その6ヶ月後には "Destroy Rock & Roll" を完成させた。そして、03年にはアルバムに収録した中で、一番最後に出来上がったトラックを完成させたんだ。でも結局アルバムは04年の夏にイギリスで、05年の夏に世界で発売された。ポップ・ミュージックをリリースするのって時間がかかるよね…。
HRFQ : "Destroy Rock & Roll"や、"Drop The Pressure"を完成させた時、これらのトラックがここまでヒットすると予想していましたか?
Mylo : いいや、今回のアルバムが完成するまでセールスについては全く考えなかったよ。
HRFQ : "ビッグ"になってから人生が変わりましたか?
Mylo : ライブやDJ、プロモーションのために、しょっちゅう世界中を旅するようになった点では変わったと思う。以前まで僕の生活はかなり平穏だったし、音楽活動もスタジオ・ベースのものばかりだったから、そういう部分では大きく変わったね。でも、一度ロンドンの自宅に帰れば、今までとなんら変わりないヒドい場所に住んでるんだ。だからそういった部分ではあまり変わってないかな。この調子だと、大きな変化が出てくるようになるまで、あと数ヶ月はかかってしまいそうだね…もうすこし物事が落ち着いたらアパートを買って、スーツを買って、ヘア・カットをして…って感じかな。
HRFQ : Elton John や Kylie Minogue など、ビッグ・アーティストのリミックスをされていますが?こういったリミックスへのアプローチ方法を教えてください。
Mylo : 決まったアプローチ方法はないんだけど、コーヒーを飲みながらアイデアが浮かぶまでいろいろ試して、一度放り投げて、また初めて…っていうことを繰り返しながら締め切りの日まで作業するって感じかな。
HRFQ : リミックス業も楽曲制作と同じくらい楽しいですか?
Mylo : 時々ね。でもどちらかを選ぶとしたらやっぱり楽曲製作の方かな。楽曲は全部自分のものだからね!全部自分の!!(マニアックな笑い)
HRFQ : 05年後半の予定を教えてください。
Mylo : ここ数ヶ月はスペインの Benecassim から St. Petersburg の Fortdance、FujiRock までフェスティヴァル続きでかなり忙しい日が続きそうだね!その間にイビザでも数回DJする予定になっているし、Röyksopp のトラックをリミックスすることになってるんだ。それから9月にはアメリカでツアーが決まっていて、11月にはヨーロッパでのコンサートがある。その後やっと休みがとれるって感じかな。
HRFQ : 日本の音楽シーンについて、何か知っていることはありますか?
Mylo : Yellow Magic Orchestra っていう日本のバンドの大ファンなんだけど、音楽シーンについてはあまり詳しく知らないな。FujiRock について知っている人は、みんな口をそろえて「素晴らしい」って言ってるけどね。
HRFQ : 日本のファンにメッセージをお願いします。
Mylo : 日本にファンがいるなんて知らなかった!メッセージは… "Love" かな(笑)。
End of the interview
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ディスクレビュー: Mylo / Destroy Rock & Roll
イベント情報 : Fuji Rock Festival (2005/07/29)
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