HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Mr. Sam Interview

世界のトップ・アーティスト Tiesto が主宰するレーベル Black Hole Recordings から精力的にリリースを重ねているトランス界の注目株 Mr Sam。先日は Black Hole Recordings よりクオリティ・トラック揃いのDJミックス・アルバム "OPUS" をリリース、また、 Dimitri Andreas とのユニット Mojado 名義では待望のニュー・アルバムもリリース予定だという重要アーティストだ。来たる8月31日には、 Unit で初の来日公演も決定、その Tiesto も惚れ込んだ極上のDJスキルを披露してくれる前に、話題作 "OPUS"、 Mojado 名義でのアルバム、さらには Tiesto との関係や自身のバック・ボーンなど、トランス・ファンでなくとも興味深い話を多数訊くことに成功した。

> Interview : Landscape Crew _ Translation : Ryo Tsutsui (HigherFrequency) _ Introduction : Masanori Matsuo (HigherFrequency)

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Q : あなたはDJやライブアクトとして世界中をツアーされていますが、ここ数年の間であなたが特に印象に残っているパーティーを教えてください。

Mr Sam : 僕は東欧の大ファンなんだ。最高のパーティーはいつもそこだったね。みんなとてもフレンドリーだし、彼らのマインドが大好きだ。’90年初頭の、ダンスミュージックがまだ始まったばかりだった頃のフランスやベルギーでのことを思い出すよ。今は日本のクラウドと会うのが楽しみだよ。評判はいろいろ聞いているんだ。ギグの日が待ちきれないよ!

Q : つい先日、あなたにとっての初めてのDJ ミックスアルバム "OPUS" をリリースされましたね。そのネーミングの由来は何ですか?

Mr Sam : OPUS というのはラテン語で 「仕事」 という意味で、特に音楽においては 「大きな功績」 という意味もあるんだ。だからこのアルバムにぴったりの名前だよ!

Q : このCDからは強いメッセージ性を感じました。ぜひコンセプトを教えてください。

Mr Sam : OPUS は自分の子供の頃からの夢を実現したものなんだ。自分自身の物語を音楽に翻訳して伝たえたかったんだよ。これが僕が OPUS を 「Story Of A Musical Tale(音楽で綴る物語)」 と呼ぶ理由さ。それはエキサイティングな冒険だったし、そしてその出来上がりにとても誇りを持っているよ。今までにものすごい数のレビューをもらったし、ビッグなDJやプロデューサーからも素晴らしい評価をしてもらっているんだ。 自分のやりたいことを100%やらせてくれたことをうれしく思っているよ。音楽からアートワークまでね。 これは Black Hole のサポートなしにはできなかったことだよ。彼らはグレイトなレーベルだよ!!

Q : これまでにソロ名義で2枚のアルバムと、Dimitri Andreas との Mojado で1枚のアーティストアルバムをリリースしていますよね。アーティストアルバムとミックスアルバムの製作における違いはどんなものですか?

Mr Sam : その2つは全く違うものだ。なぜならミックスアルバムのためだけに自分ですべて曲を作ることはしないよね。数曲はするとしてもね。だから本当のチャレンジはダイアモンドを見つけることなんだ。まるで音楽の発掘調査だよ。そしてそれをみんなが可能な限りベストなコンディションで見ることができるように展示するのさ。そして 「感情のコミュニケーション」。これがすべてだ。 僕にとっては、ミックス・アルバムというのは物語を語るようなものなんだ。信頼できるナレーターを配役し、細心の注意を払ってシーンを設定する。言い換えれば、音楽で綴る物語だ。作家は言葉を、画家は色を、ダンサーはその体を、そして僕らDJは音楽を媒体として使うんだ。だから僕がすべきことは的確な色、的確な装飾、的確な登場人物、的確な脚本、そして的確なセリフを見つけることなんだ。そしてそれら全てを音楽に変換するのさ。

Q : あなたの音楽の特徴のひとつはディープで美しいメロディーにあると思うのですが、このような曲を生み出し続ける秘訣はなんですか?また、その一方で Dimitri Andreas との Mojado 名義ではテッキーでトライバルなサウンドを展開されていますよね。名義を変える上で特に意識することはありますか?

Mr Sam : 僕には僕のサウンド、自分自身のスタイルがある。いやが応でもね。だけど作曲することにおいてはちょっと物申したい事があるよ。音楽のことが分かっていない、間違った目的で音楽をやっている人が多すぎると思うよ。有名になるためにやっている人もいれば、ギグをブッキングしてもらうためにやっている人もいるし・・・。彼らは概して、音楽の真の意味を完全に忘れてしまっているよ。僕が音楽をやっているのは自分を癒すため、自分のフィーリングを表現するためさ・・・。チャートに入ったりするためではない。そしてファンや一般の人たちの感覚は麻痺していないんだ。確かにそれを察知しているよ。僕は新しい曲を作るときはいつも、ビジネスやその類のことは考えない。そういうことは他の人に任せるんだ。 変名は Mojado ひとつしか使っていないんだ。よりテッキーで、トライバルだったり、ハウシーなレコードのためにね。その中には Mr Sam 名義のシングルになっていたかもしれない曲もたくさんある んだけど、名義を問わず、肝心なのは音楽さ。僕は守備範囲が広くて、音楽ジャンルの壁を行ったり来たりするのが大好きなんだ。そしていつもそれをしてきたし、これからもずっとそうしていくよ。ほら、Mojado の Kaktus がオランダのチャートで3週間1位になったんだよ。これ以上言う必要はないよね!

Q : これまでに元 OPUSV の Kirsty Hawkshaw はもちろん、Fred Baker や Delerium のRani 等とコラボレーションをしていますね。今後あなたが一緒に曲を作りたいと考えているアーティストは他にいますか?

Mr Sam : ああ、今いくつか新しいコラボレーションを計画していて、みんなはかなり、いやそれ以上驚くんじゃないかな。そのコラボのために今あれこれ考えて作業しているんだ。今まで自分がやってきたこととは比較にならないマッシブな新曲を作るためにね。マーケットにおいて全く新しいものを発想する時が来たんだ。モチベーションとインスピレーションが溢れてくるのを感じているよ。

Mr. Sam

Q : 前述の Kirsty Hawkshaw が Youtube でチャンネルを持っていますよね。そこにあるビデオを見ましたが、彼女とは特に親交が深いようですね。彼女をボーカリストとして起用したきっかけは何ですか?また彼女の魅力は何ですか?

Mr Sam : Kirsty はまるで僕の姉みたいだよ。彼女のことが大好きさ。僕は自分と化学反応する人としか仕事をしないんだ。作業をしたり、作曲するのにそれが必要なんだ。僕はデリケートな人間だから、リラックスするために自分の周りに愛を感じる必要があるのさ。彼女にはとてもインスパイアされるんだ。これは彼女と会ってみれば分かると思うよ。彼女は天使さ・・・。

Q : Dimitri Andreas と一緒に曲作りを始めたいきさつも教えてください。

Mr Sam : 僕は大きなレコード会社の A&R だったんだ。そこで Dimitri のことを知ったんだよ。それでしばらくしてから、僕らはスタジオで一緒に試験的に曲を作ってみることにしたんだ。そこで生まれたのが "Naranja" だよ。なぜかはわかるだろう?僕らが一緒に曲作りを続けていて、アルバムを2つ作り、まだまだ飽き足らないのは・・・僕らは一緒に曲作りするために生まれたのさ・・・

Q : Mojado として曲を作るときは、どうやって曲作りをするのですか?

Mr Sam : 僕らはチームで動いて、A から Z まで一緒にやるんだ。手の5本の指のようにね。僕が神秘的なサウンドやメロディを思い付いたら、それを2人でカクテルにするんだ。Dimitri が思いついたときも同じだよ。そして・・・結果はご承知の通りさ。ただ、やり過ぎは好きじゃないんだ。楽しまないとね。絶対に自分たちをプレッシャーのかかる状況に置きたくないんだ。さっきも言ったように、楽しむことが僕らにとって一番大事なんだよ。

Q : Mojado のセカンドアルバム "Skizo" がもうすぐリリースされると聞きました。どんなアルバムができそうですか?

Mr Sam : イエス、Tiesto の Magik Muzik からリリースされるよ。全く新しいコンセプト、"Skizo"・・・。 僕と Dimitri のリンクしたマインドのコンビネーションさ。とてもマッシブなものに仕上がったよ。僕らがやってきた中でベストなものができたと思っているよ。今回は Kaktus のようなマッシブなクラブ・ボムからラジオにも合うような曲まで、Mojado サウンドが満載だね。驚いてもらえると思うよ・・・ビデオやリミックスを今は製作中なんだ。もうちょっと待っていてね。

Q : 現在は Tiesto 主宰の Black Hole Recordings をリリースの拠点とされていますが、レーベルに参入することになった経緯を是非教えてください。

Mr Sam : それは長い話になってしまうんだけど、これだけは言わせて欲しい。僕らは長い間お互いを非常にリスペクトし合っているんだ。あと、僕は彼のレーベルで仕事をしているけど、それが僕の存在理由であるということになるのは望まないね。僕らは共通する点がたくさんあるけど、同時に異なる点もある。彼は大多数にとってのひな形で、すごくナイスガイなのは間違いないよ。でも僕は自分自身の歴史を作っていきたいんだ。誰かの歴史の一部の登場人物になってしまうのではなくてね。

Q : Tiesto はあなたの楽曲を常にクラブでプレイし、サポートしていますよね。また、"OPUS" にも Tiesto の楽曲が収録されていますが、あなたにとって Tiesto とはどのような存在ですか?

Mr Sam : 彼の曲が僕のミックス・アルバムに入っているのは僕がその曲を大好きだからさ。Tiesto だからじゃなくてね。彼に頼んだんだ。素晴らしい曲だから僕のアルバムに独占的に入れさせてくれないか、って。彼の曲が僕のビジョンとぴったり合っていたから、採用したんだ。

Q : あなたは’90年半ばからずっとダンスミュージック・シーンで活躍されていますね。その中で「トランス」とカテゴライズされる音楽は、ここ10年間で様々なジャンルの音楽を取り込みながら劇的に変化し、進化してきました。「トランス」のこの10年間のことをあなたはどう評価していますか?また、今後10年間はどうなっていくと思いますか?

Mr Sam : もう僕も若くないからね(笑)。僕は正直なところ自分を「トランス・アーティスト」だとは思っていないんだ。今までも、今現在ももっと色々なスタイルをやっているからね。音楽はますますボーダーレスに発展していくと思うよ。これは僕がこれまでずっとやってきたことなんだ。新しい音楽スタイルを見つけ、様々なところから受けた影響をひとつにまとめミックスし、それがどんな音になるかやってみるんだ。そのためにできることは全てやっているよ。音楽で実験するのが好きなんだ。次の10年はマッシブになる・・・今よりね。たくさんのフレッシュな才能が僕にアドバイスや助けを求めてくれて、僕もそれにいつも応えている。近い将来がとても楽しみだよ。そして間違いなく自分もその未来の一部になるんだからね・・・!

End of the interview




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