HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

Mooncat


スペインやポルトガルで盛り上がりを見せるトライバル・ハウスとプログレッシブ・ハウスとの融合をいち早く表現し、妥協を許さないサウンド・セレクションと渋いアーティスト・チョイスで、東京のクラブ・シーンの中でも特に硬派な存在として異彩を放ってきた WOMB のレジデント・パーティー Session。そのレジデントDJ として活躍する Tommy Wada 氏をインタビュアーに迎え、ウエブ業界の"硬派"を自認する(?) HigherFrequency と"Session"がコラボレートしていく"硬派"なインタビュー・シリーズ、それが"Talk SESSION Series"である。

その3回目に登場するのは、7月16日の Session において来日公演を行った Anton Fielding と Chris Scott によるプロダクション・ユニット Mooncat。Lexicon Avenue のメンバーでもある二人は、Forensic、Plastica、Low Pressing などのレーベルから数々のトラックをリリースする中、昨年 WOMB でプレイした時にインスパイアされた感性をそのまま"WOMB"という曲名でリリースし、世界中でヒットに導いたことでも有名。また今年の5月にリリースされた最新作、Mooncat feat. Azeem "U Got Me"は、Azeem の幻想的な声をフュ−チャーしたフロアライクなトラックで、多くのダンスミュージック・ファンの心の奥底に眠るソウルを捉えた傑作として高く評価されたばかりだ。そんな彼らに Tommy Wada 氏が話を訊いてくれた。

> Interview : Tommy Wada (Session) _ Translation : Eri Nishijima _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency)

triangle

Tommy Wada (以下TW) : 前回東京に来てから一年以上経ちますね。今回はどうですか?

Chris : 良いねェ!

Anton : ホント、また来ることが出来て最高だね. 日本は最高だよ。WOMB も最高!

Chris : まさに今年のハイライトだな。

TW : そこまで言ってもらえてうれしいです!ところで、Echomen や Mooncat や Time Design と様々な名前で活動されていますよね。それぞれのプロダクションによってどのように使い分けていらっしゃるんですか?

Chris : 僕たちがスタジオで一緒にプロデュースする時の最大の利点は、これから作るものに対する先入観っていうのが全く無いってことなんだ。だから、作ってるうちにいつの間にか方向性が決まって、それから「これはやっぱり Echomen でしょ」とか「Mooncat かな」って感じで名義を決めることが多いね。

Anton : そうだね。大体分かると思うけど Echomen はエモーショナルな音に、Mooncat はトライバル系に使うことが多いかな。

Chris : はっきり言って、毎回どちらの名義にするか最初に決めることはなくて、Mooncat 風になったら Mooncat だし、Echomen 風に仕上がったら Echomen みたいなノリなんだよな。

TW : それぞれの名義の音のスタイルとかコンセプトってあるんですか?

Chris : さっきも Anton が言ってたように、Echomen のトラックはいろんなコード・チェンジがあったり、よりエモーショナルなものが中心になっているのに対して、Mooncat の方は、ダークなサウンドやボーカルがフィーチャーされたグルービーなハウス・サウンドがベースになっているんだ。だから、それぞれに対するアプローチはやはり違うよね。出来るだけ違いを出すようにしてるし、2つの違ったものが出来るのが面白いんだ。

Anton : そうそう。飽きないよね。

TW : 前回ここでプレイしたのがきっかけで Echomen 名義で"Womb"っていうトラックをプロデュースされましたよね? その辺りの経緯をもう少しくわしく教えてください。

Anton : そうそう。WOMB に来たことにちなんだシングルか何かを出したいなって話してたんだけど、丁度その時に見たカンフー系だかニンジャ系の映画に、使える日本語のサンプル・ネタがあったんだよね。

Chris : で、使えそうな感じだったからトラックを制作して、このクラブとここでの経験に捧げようっておもったんだ。しかも、実際に制作してみたら、まさに"Womb"っていうタイトルがぴったりでね。ここは、ほんとにインスパイアされる所だよ。

TW : "Womb 2"とか、今日のプレイからまた何か新しいトラックが生まれる可能性は?

Anton : ありえるね。で、ヴォーカルには Tommy Wada でしょ(笑)。

Chris : タイトルは"The Session"で。Mooncat フィーチャリング Tommy Wada の"The Session"(皮肉たっぷりに)

Anton : 月曜までに仮メロディーも用意しとくし。

Chris : アハハ!今晩酔っ払ったら作ることにするね。

Mooncat Interview

TW : 今日は Anton がDJで Chris がエフェクト担当だって聞いたんですが、面白いコラボレーションですよね?もう少し詳しく教えてもらえますか?

Anton : 最近のCDプレーヤーはほとんどサンプラーみたいに使うことが出来るし、CDとレコードだけで大体同じことが出来るようになったから、Chrisがラップトップとキーボードを使う必要があんまりなくなったんだ。

Chris : そうそう。そういうツールがCDに入ってるから、トラックにドロップしたらいいだけだし…

Anton : だよね。CDのテクノロジー自体がすごく進化してきた感じだから、キーボードもサンプラーがなくても大丈夫なんだよね。

TW : 他に使ってる機材について、もう少し聞かせてもらえますか?

Chris : 僕はマックのラップトップにシーケンサーは Logic という組み合わせ。昔はこれにヴァーチャル・サンプラーをインストールしておいて、ヴォーカル・ネタとかをキーボードにアサインしてトリガー演奏していたんだ。あと、データ・コントローラーを使ってエコー・フィードバックとかを変化させたりもしてた。でも、今ではそれらの音を全てCDに落とした上で、ちょっとしたエフェクトをかけたりしながらプレイしているだけかな。

TW : Ableton Live とか Traktor などを使ったシステムのコラボレーションについてはどう思いますか?

Chris : Ableton はスタジオで使ってるんだけど、ループのタイミング合わせにもいいし、違うテンポのものにあわせたりするのにもいい。シーン全体がこういったテクノロジーを新しいことに使えるなら、何の抵抗もないよね。例えばトラックの一部をつなぎ合わせて新しいトラックを作るとか、Sasha が今やってるようなことも、実際プレイを聞いたわけではないけど良いらしいし。ただ、こういった新技術に対しての抵抗はないけど、僕自身はCDプレイヤーだけを使ったプレイにはまってるんだ。ずっとそうやってきたっていうのもあるし、自分のエフェクトで何が出来るかも分かってるからね。確かにCDを焼くのに時間がかかるんだけど、ちゃんとシンクロさせれば結構クリエイティブなことも出来るし。だから今日は Ableton とか Final Scratch とかは使わないよ。

TW : 音楽制作に関してそれぞれの役割ってありますか?

Chris : ん〜、僕はスタジオでは技術担当だけど、Anton なしで Echomen のトラックは絶対作れない。でも基本的にはスタジオでのヴァイブ次第で役割が決まるって感じかな。二人で顔見合わせてひそかに"ヤバイな!"とか言い合ってるのを他の人が見たら、きっとかなり不思議だと思うし、あまりにも長いこと一緒にやってるから、何も言わなくてもすぐお互い分かっちゃうんだよね。始めに何も決めることもないし、壁にぶち当たることもほとんどない。ただ流れに任せてトラックを作るって感じかな。

TW : 今後の予定は?

Anton : いっぱいあるよ。まず、Octagon Records って新しいレーベルを始めるでしょ。あと Mooncat のニューシングルで'Feel it' featuring Nazeem がリリースされることになっている。他には、Carrie Stayle っていう女性をフィーチャーしたボーカル・トラックもあるんだけど、彼女はホントに良いボーカリスト。あとは、Stereo とか Forensic からリリースしたりしてる Headz ってグループのトラックもあるかな。

Chris : あれは超感動モノだよ!リリースが待ち遠しいな。

Anton: Julian Polker のリミックスと、あと他にも女性ヴォーカルものもあったっけ。 とにかく色々…。 

Mooncat Interview

TW : Forensic Records にも関わっていますよね? ここからのリリースは何かありますか?

Chris : Forensic からはかなり色々あるねえ。Scott [Bradford] と Mark [Armstrong] とBarry Gilby の3人のコラボの Hydroponix のリリースがあって、その他にも Scott と僕とで作ったトラックもある。まだ、いつリリースするかは決まってないんだけどね。あと、僕自身は Barry と一緒に彼の Choo Choo レーベルのプロジェクトが進行中。とにかく色んなことがクロスオーバーしちゃってるから、もっと自分自身のことに集中しなきゃって思うよ。

Anton : あと、Echomen 名義で Sander Kleinenberg の'Little Mountain'レーベルから'Rain'ってトラックが出るかな。これはスポークン・ワードのトラックなんだけどね。

TW : プログレッシブシーンでのトレンドは、よりエレクトロでファンキーな方に向かっている気がしますが…。

Chris : 僕はいいと思ってるんだけど、どう思う?(Antonに)

Anton : っていうか、エレクトロだかなんだかってジャンルを一晩中プレーしつづけるって言うのはムリでしょ。そういうのも織り交ぜてプレイするっていうのはアリだけど、トライバルも必要だし、プログレッシブやテクノとか、色々ミックスっていうのが必要だと思うけどな。

Chris : ん〜、とにかくソウルがあれば…。 ソウルのないものは絶対ノーだね。

TW : プログレッシブ系のプロデューサーの中にはプログレッシブっていう単語自体ジャンルを表す単語じゃなくて、常に新しい、カッティングエッジなものを求める精神だと言ってスタイルを変えてしまった人もいますがどう思いますか?

Chris : セオリー自体はそう。確かにその通りだとおもうけど、僕自身は自分がいいと思えるものならなんでも…。カッティング・エッジでもなんでも良いけど、ダンサブルじゃない、つまらないものだったらそれはね…。音楽というものは、決して自分の為だけに作ったりプレイしてるんじゃないんだから、そこで利己的になるのはどうかと思うな。

Anton: っていうか、エレクトロのコードは僕にとってはハウスなんだよね。エレクトロはコンビネーションの連続でしょ。NY vs LA ビーチって感じさ。

TW : では最後に Session ファンにメッセージをお願いします。

Chris : どうも! 僕が Echomen と Session の Chris です!皆愛してるよ!!

Anton : 僕の番?世界中で大好きなクラブの一つ東京 Womb の Session に来てます! Echomen と Mooncat の Anton です! 

TW : ありがとう!

Chris : こちらこそ!!じゃあやりますか〜!!!

End of the interview



関連記事


関連リンク