HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

2008 年4月4日、ドイツ、フランクフルトから世界にその名を轟かすクラブ、Cocoon Clubに於いて、このたびCocoon Recordingsよりアルバム “Animals”のリリースが決まった北欧スウェーデンのアーティストMinilogueのリリースパーティーが行われた。ベルリンからGarktor.comチームが取材に潜入、彼等の旧友でもあるS.A.L.がライブ直前の彼らにインタビューを敢行した。

Interview & Translation : S.A.L. & SAYAKA-Yumi (GARAKTOR. COM MEDIEN)

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S.A.L. : OK、準備はいいかい?

MARCUS : OK ! 大丈夫だよ。

S.A.L. : 今日はいろいろ聞かないとね。変な癖とか。

MARCUS : ウソッ!鼻をほじる癖とかも言わなければいけないのか!(笑)

S.A.L. : ウソウソ。さあ、始めましょう。長年苦楽をともにしてきた友人でもある君たちが、なんと Cocoon Recordings からアルバム “Animals” をリリースするなんて、とてもびっくりだし、とてもうれしいよ。まずは、アルバムリリース、おめでとうございます。

SEBASTIAN (以下SEB) : ドウモアリガト。(日本語で)

MARCUS : お互いを長年知っている僕らがそれぞれ成長して、ここで今こうしてと共に時間を過ごせるのはとてもうれしいよ。

SAYAKA : S.A.L. とあなたがたが知り合ったのは2001年?

SEB : そう、2001年。 Stargate に呼んでもらって初めて日本でライブをした時以来だね。

S.A.L. : そうだね。さて、アルバム “Animals” を Cocoon Recordings からリリースする事になって、今の気持ちはどう?

MARCUS : とてもいい気分だよ。そう、、、

SEB : 完璧だ!音楽ショービジネスの歴史の中で今はとてもスペシャルな時なんだと感じているよ。 いろいろなアーティストや、いろいろなレーベル活動していて、それぞれがそれぞれの仕事の方向性を模索している。 それは一方でいい事でもあり、また一方ではマイナスの要素もあるよね。例えば、多くのレーベルはあまり予算が無く、多くのアーティストたちは、自分で自分のマネージメント等すべてをやらなければならない。 その一方で、良い点としては、個人的に活動できるから、アーティスト自身が、自分をプロデュースするのに、音楽以外の別の方法たとえばヴィジュアルなどでも創造性を発揮できる点があると思う。 僕と MARCU Sは、幸いな事に、音楽にフォーカスできる立場にある。世界中のどのレーベルも、Cocoon ほど僕らに注目していなかった。それに僕らが、これをやりたい、こういう風にしたいとリクエストを出しても、一度もコストダウンを要求しなかったんだ。

SAYAKA : 制作側に対して、協力的な体制ってことね。

S.A.L. : アーティストにとってとてもいい状況だね。

SEB : そう。普通レーベルはだいたい、これをやりたい、とリクエストを出しても渋る事が多いけど、Cocoon は“OK、クールじゃないか、それで行こう!”と Goを出してくれるんだ。だから今回のアルバムはディープで実験的な物にする事ができた。僕たちは Cocoon がこんなに注目してくれるなんて考えていなかったんだ。なぜなら、僕たちの活動はアンダーグラウンドだったからね。

SAYAKA : どういう経緯で Cocoon からアルバムリリースが決まったの?

SEB : 僕らは以前からコネクションがあったんだ。 Cocoon は毎年アルファベットを順番に A、B、C…とタイトルを付けたコンピレーションシリーズをリリースしているんだけど、昨年度用に Sven が僕らにトラックを提供してほしいと言ってくれたんだ。僕らは彼らに2曲に送って12インチでリリースするのに良いと提案した。でも彼らはあくまでコンピレーションに使いたい、と言ってきた。そこで僕らは、コンピレーションに使うならば NO と断ったんだ。Sven は、とてもびっくりしていた。今まで誰も、Cocoon からのリリースを断るアーティストなんていなかっただろうからね(笑)。僕らはアルバムの制作を続け、ファイナルヴァージョンが出来上がった時に、四つのレーベルにデモを送った。どのレーベルが、テクノの DJ 以外の耳にも届くか、という事を考えた。だってこのアルバムはただのテクノミュージックのアルバムでは無いからね。最終的に候補に挙がったのが、Get Physical、 Wagon Repair、 !K7、そして Cocoon Recordings だった。 すべてのレーベルがとても興味をもってくれたから、僕らにとっていい状況だった。僕らはどのレーベルが最も僕らにふさわしいか選ぶ事ができたんだからね。僕らは Sven とCocoon の他のスタッフたちと打ち合わせをした。そしてなぜ僕らのアルバムをリリースしたいのか訪ねた。それが一番大事な質問だ。なぜならレーベルによっては、アルバムそのものにはたいして興味がなくて、音楽そのもの以外の部分、例えば売れ始めたアーティストの名前が宣伝になるとか、そういったことでアプローチしてくる場合もあるから。 Cocoon はこのアルバム自体を理解していたから、ここでリリースする事を決めたんだ。

S.A.L. : なるほど。では、今回のアルバム “Animals” のテーマはとコンセプトを教えて欲しい。

MARCUS : コンセプト!コンセプトはもちろんあるよ。コンセプトは大好きだ(笑) 最初に、一つの音楽の方向性にとらわれず制作していたから、ハウスとテクノの一枚とアンビエントとダブトラックのもう一枚の二枚組のアルバムにしようと考えた。

SEB : 僕らはそれを Madonna エフェクトと呼んでいるんだけど、例えば U2 にしても、さまざまなロックアーティストは人々に彼らのイメージを印象づけるために、一つの音楽性にフォーカスしてそれを追求する。 けれど、Madonna はそれとは反対のアプローチをする。つまり一つの音楽性にとらわれずに、いつも新しく違った事に挑戦していく。同じように Minilogue は一つの形をとらない。 実験的でダビーなアンビエントスタイルがあり、一方でダンスミュージックのスタイルもある。いつも二つの側面をもっている音楽。それが Minilogue のスタイルだと思ってほしい。ただのテクノ以上の音楽なんだ。

S.A.L. : 君たちの音楽的なバックグラウンドを話してほしいんだ。

SEB : 君は十分知ってるだろ?!

MARCUS : OK。僕が影響を受けたのはボディーミュージック、エレクトロニックミュージックだ。僕が子供の頃はなんの楽器も演奏はしていないけれど、音楽が大好きだったんだよ。いつもアンダーグラウンドでサブカルチャラルなダンスミュージックの影響が大きかったよ。

SEB : 僕は楽器の演奏の経験がある。ピアノやバイオリン、歌を歌ったりオーストラに参加したり。だけど、楽器=ツールを使ってクリエイティビティを発揮するためには、楽器 =ツールとシンクロナイズできなくてはいけなくて、音楽教育の基礎では、いつも創造的なことばかりではなくて、楽器の演奏の勉強は大変な忍耐を必要とする。ある日僕は別の誰かのためにではなく、自分自身の為に演奏したいと思い始めた。そしてMARCUSに出会ってこうしてエレクトロニックミュージックをプロデュースする事になったんだ。これは僕がやりたかった、自分にとっての音楽を演奏することでもあり、僕の魂はこれを続けていくように言っているように思う。彼に出会ってからいままで、いつも新しい方法に挑戦し続けている。トランス、ハウス、アンビエント、テクノなんでもかまわないけれど、たくさんの方法と経験を続けてきているよ。それで。。。

MARCUS : 彼の答えだけで本が一冊出来上がるよ!

S.A.L. : そのような音楽的なバックグラウンドが、そのまま今回のアルバムに反映されている、ってことだね。

SAYAKA : 二人は、いつどうやって出会ったの?

MARCUS : 僕は90年代の終わりに、テクノパーティーをオーガナイズしていたんだ。

SEB : そこへ、変な踊り方で僕が登場したんだよ。こんな風に。こういうの知ってる?(笑)(膝を高くあげて変な踊りをしてみせる)

S.A.L. : それはおかしいな(笑)ところで、音楽を作るときは、どういった感覚を重視して、表現しようとしているのかな?

SEB : 毎日、違った感情が起こるけど、それをそのまま正直に、ダイレクトに表現しようとしているよ。基本的には、ちょっとトリッピーでサイケデリック、そしてディープな音作りを目指している。ジャズミュージシャンや、ロックバンドとのセッションでも、Minilogue のアンビエントを作るときも、だいたいいつもトリッピーでディープな音作りを意識している。 Minilogue のお気に入りは、ダークで奇妙で狂ってて醜くてウァ?って感じ、というのは嘘だけど(笑)

S.A.L. : Minilogue が君たちの他のプロジェクトと違う点は?

MARCUS : 一つの音楽スタイルにとらわれず、もっと幅広い音楽性を意識している点かな。

SAYAKA : フリースタイルって感じ?

MARCUS : そう。完全にフリースタイルだ。

S.A.L. : Sonkite はどう?

MARCUS : Sonkite はもっとトランスだ。ディープでトリッピーなトランスミュージックというところかな。今年の末には Sonkite 名義のアルバムの予定もしているよ。

SEB : 他に2つのプロジェクトをやっている。一つは IMPS。オーストラリアのジャズミュージシャンとやっているフリースタイルミュージックだ。 もう一つはスウェーデンでやっているジャムクラウトロックバンド。ギターベースドラムの構成で MARCUS がドラムマシンとサンプリング。僕はムーグとバイオリンを担当している。今のところプロジェクト名は決定していないけど、NOW というバンドとやっているから、Minow にしようかな。コンピューターで毎回ジャムセッションを録音していて、一回のセッションが一時間。録りためた30時間のインプロヴィゼーション音楽を編集するつもりだよ。

S.A.L. : 他にもまだあるのかな?

SEB : 実はもう一つ、まだ始まったばかりだけれど、シンフォニーオーケストラとのプロジェクトがあるよ。僕にとってはとても興味深いよ。僕は以前はオーケストラで演奏していたからね。一度離れて、実験的なことをたくさん経験して、一回りしてまたオーケストラに参加できるのはとても嬉しいことだよ。それは少し先の話になりそうだけどね。

S.A.L. : Minilogue は今までいろいろとスタイルを変化させてきているけれど、君たち自身や君たちの周りにはどういった変化があったのかな?

MARCUS : もちろん人のパーソナリティーは変化するし、これが好きだとか嫌いだとか、スタイルを追求したり構築したりもする。以前はもっと Minilogue がこうあるべきだとか、こういうイメージでいようとかを考えていた。今はすべてを表現できるし、やりたいことができている。これをやらなくてはということから解放されてフリーでいられている。

SEB : 僕ら自身のパーソナリティーが成長したことも理由だよ。30+という、いい年になった。その世代ごとに違ったエネルギーがあるから例えばティーンエイジャーの頃はパンクバンドで演奏したし、その後はテクノやトランスだった。大人になるにしたがって多くの人たちが、人生について考えたり、岐路に立たされたりする。自然とパーソナリティーも成長していくからどんな事が好きなのか、何を信じるかなども変わるだろう。アーティストであれば、さらに深く音楽やアートのことをリサーチして進化させるだろう。

S.A.L. : そういえばこの間、実家で昔の君の写真を見つけて、君が長いドレッドだった事を思い出したよ。今は紳士の様に見えるけど、まさにそのような変化だよね!

SEB : その通り!(笑)

S.A.L. : ライブでの機材セットアップを教えてくれないかい?

MARCUS : おお、たくさんあるよ。君が知っている以前のものとはだいぶ変わったよ。今はAllen & Heathのミキサー「3D」 を各一台、コンピューターを各一台。たくさんのループをベースに、ドラムマシン、シンセサイザー 「SH-101」 を使ってインプロヴァイズしている。

S.A.L. : スタジオセットアップはどうなっている?

SEB : 僕らのスタジオは、クリエイターのための遊び場の様にしてあるよ。 シンセサイザー、ピアノ、100個以上のギターペダル、オルガン、バイオリン、トランペット、マラカス、ドラム、、、全てが用意されていて、訪れたミュージシャンたちのインスピレーションが湧くように、クリエイティブな環境を作ってある。

S.A.L. : 昔と同じ場所?あの地下の?

二人 : そうだよ。

SEB : あのとても狭いスタジオに、そこら中楽器だらけで、前よりも狭くなって大変だよ(笑)

S.A.L. : サンプリングもするのかな?例えば自分でドラムをたたいて録音したり。

SEB : マイクを使ってすぐに録音できるようにしているよ。

S.A.L. : より演奏にフォーカスを当てているんだね。

SEB : ジャムバンドとのセッションから習って、プログラミングよりもライブテイクをたくさん使うようになっている。サンプラーをプログラミングする必要はなく、サンプリングしたものと演奏することだってできるんだよ。

SAYAKA : だから、あなたたちの音楽を聞く時に、「ライブ感」を感じるんだね。

SEB : それこそ僕らがやりたいことなんだ。君がそれを感じてくれることが嬉しいよ。それが僕らの目的だからね!全てのスタジオセットをライブに持ち込む事はできないけれど、なるべくライブセットでもスタジオと同じように表現できるように、スタジオの要素を折り込むように音質を作り込んでいるんだ。

S.A.L. : いつも世界を飛び回っているけれど、いつ音楽を作っているのかい?旅の間も制作はするの?

MARCUS : それはめったにないよ。

SEB : でもそれはこれから挑戦できたらいいね。

MARCUS : 旅先で人に出会ったり、音楽や音に囲まれて、たくさんのインスピレーションを受けるから、マイクロフォンを持ってレコーディングして持ち帰った音を楽曲制作に使いたいと思っている。

SAYAKA : どんな音をサンプリングするの?例えば日本の電車の中の音とか印象的よね。

SEB : 全ての物をだよ。動物の声とか、あれこれだよ。

SAYAKA : あなたたちの音楽を聞くと、音が深くて、広くて、立体的に聞こえるように感じるの。

MARCUS : たくさんの時間を使って、面白みのあるサウンドスケープを作り出す事に力を入れているんだ。ポップバンドではほんの少しの楽器しか使わないけれど、エレクトロニックミュージックはもっと自由だからとても面白い。機械的な物で有機的にも音を作り出すことができる。

S.A.L. : 君たちのアーティストイメージ写真についてだけれど、なぜ顔を隠して、代わりにおかしな動物たちを登場させるの?覆面アーティストってことかな?

SEB : それは僕らが見るに耐えない、醜い年寄りだからさ。それは冗談だけど(笑) 動物たちは Minilogue の一つのコンセプトだから、将来的にもっといろいろな動物を見せたいと思っている。

MARCUS : 音楽はそれ自身で音楽を語る事ができるだろう?だから僕らの顔のイメージは必要ないんだ。みんなに音楽自体にフォーカスをして欲しいんだ。いい音楽に作り手のイメージは必要ないと思っている。

S.A.L. : 最後に、もうすぐ日本に来る予定だけれど、日本のみんなにメッセージを。

SEB : ここはドイツだから大きな声では言えないけれど、日本は僕らにとって特別プレイするのが楽しい場所だよ。 Stargate に呼ばれていた一番最初の頃から今まで変わらず日本が大好きだよ。

SEB & MARCUS : 「You are the best!」

End of the interview

S.A.L. (GARAKTOR. COM MEDIEN)
SAYAKA-Yumi (GARAKTOR. COM MEDIEN)
ベルリンをベースに活動するDJプロジェクト S.A.L.×SayakaStar の活動記録は以下リンクを Check。
http://www.myspace.com/getsal
http://www.myspace.com/sayakastar

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