90年代の中頃、Ceybil Jeffriesをヴォーカリストとしてフィーチャーしたシングル"It's Gonna Be All Right"や、リミックスを手がけたH2Oの"Nobody Business"などが世界的なヒットを記録し、一躍シーンの中心へと躍り出たハウス系のプロデューサー・チームDeep Zone。この名前を聞いてピンと来た人は、それなりに年季の入ったハウスミュージック・ファンであると言えるだろう。そのDeep ZoneをMike Delgadoと共に結成し、中心的役割を担っていたMatthias Heilbronnが、Francois Kがプロデュースするコンピレーション・シリーズ"deep & sexy 3"のコンパイラーとして抜擢され、その発売を祝う形でのリリース・パーティーが、8月の下旬に代官山のクラブAIRにて開催された。
Deep Zoneの活動停止以降も、リミキサーやDJとして精力的な活動を続けてきたMatthias。今回の来日では、"Get Another Plan"の大ヒットでも知られるAbstract Truthのヴォーカリスト、Monique BinghamのライブPAを交えてのパフォーマンスが披露され、ニューヨークの息吹を伝える、まさに"deep"で"sexy"な空間を演出してくれた。
HigherFrequencyとのインタビューが行われたのは、そのAIRにおけるパーティーの翌日。実際に日本のクラウドを前にプレイした印象や、今のニューヨーク・シーンの状況などについて、Matthias、Moniqueの二人から話を聞いた。
> Interview & Translation : Eri Nishikami _ Photo : Mark Oxley (HigherFrequency) _ Introduction : H.Nakamura (HigherFrequency)
HRFQ : 昨日はいかがでしたか?
Monique Bingham : ほんとに最高で、特にクラウドは最高だったわ!!
Matthias Heilbronn : 最高だったよ! Airは大きさもちょうどいいし、サウンドシステムも最高だし、みんなかなり盛り上がってたね。 入った瞬間からもうみんな盛り上がりまくっていたよ!
HRFQ : 今までインタビューしたDJは、みんな日本のクラウドが最高だって言うんですが、NYではどうなんですか?
Matthias : もちろんNYでも最高のクラウドが集まるパーティーはあるけど、正直NYではあまりプレイする機会がないんだ。 ほとんど毎週末ツアーでヨーロッパとかアジアとか、海外に行っているからね。
Monique : わたしも実はNYであまりライブをやった事はないんだけど、ここ(Air)の雰囲気に一番近いのはやっぱりShelterかしら。
HRFQ : 日本は何回目ですか?
Monique : わたしは今回が2回目。
Matthias : 僕は5回目かな。
HRFQ : 日本はどうですか?
Monique : 最高だわ!
HRFQ : それはよかったです!! ところでAirのサウンドシステムについてはどう思いましたか?
Monique : すばらしいわ。 そこら中スピーカーだらけって感じだったし!
Matthias : ほんと、確実に最高のレベルだと思うよ。
HRFQ : 昨日はすごくたくさんボーカルトラックをかけていましたよね? DJするときに歌詞で曲をつないだりってことはありますか?それとも曲の雰囲気でつないでるんですか?
Matthias : 両方だよ。 例えば、パーティーについての歌のあとにラブソングはかけたりはしない。いつだって何らかのストーリー性を持たせるようにはしているね。
HRFQ : 自分でエディットした曲はかけましたか?
Matthias : 自分でプロデュースした曲は何曲かかけたよ。
HRFQ : いままでプレーしてきた中でクラウドの反応という点ではどこが一番だったと思いますか?
Monique : 私は、そんなにあちこちでライブをしてきたわけではないけど、AirとShelterは絶対はずせないと思う。
Matthias : そうだね。 日本は僕の中ではトップスリーに入るね。 勿論、東京ほど盛り上がっているところは他の日本の都市ではないけど、札幌のプレシャスホールはすごかったよ。 でも、正直、福岡でプレイした時はちょっときつかったかな。 今のNYでは、良いハウスのパーティーって言うのが殆どないんだ。 キチンとしたサウンドシステムとフロアをもっているクラブの殆どは、テクノとかトランスとかのパーティーしかやっていないからね。 でも、その辺りのサウンドは、個人的にあんまり好きじゃないからな…。
HRFQ : NYのハウスシーンってもっとビッグだと思ってたんですが。
Monique : すっかり変わっちゃったからね。
Matthias : うん。 ラジオでハウスなんて絶対流れてこないし。 やっぱりテレビとかラジオの影響って大きいんだよね。 それに、今の若い子たちが聞いてるのは、もっとハードなものばかりだからね。 今、本当のソウルフルなハウスミュージックを体験できる場所はシェルターくらいしかないんじゃないかな。 NYのガラージで行われてきたことが、今の世代に受け継がれてくっていうのが一番大切なことだと思うんだけど、今はそういう場所がまったくないからね。
HRFQ : ブッシュ大統領とブルームバーグ市長は更にクラブシーンを取り締まろうとしてるって聞きましたが。
Matthias : 最近特にそうなんだ。 彼らは、キャバレーライセンスなんていうばかげた条例を作っちゃってさ。例えば、バーとかクラブを持っていても、そのキャバレーライセンスを持ってないと踊っちゃいけないんだ!(笑)
HRFQ : ほんとですか〜!!
Matthias : そう。 だから、もしキャバレーライセンスのないバーで誰かが踊ってるのを見つけたら、マネージャーがすぐ飛んできて、「すみません、 踊らないでください!」って注意するんだ! 罰金もあるんだよ。 音の大きさに関する条例かなんかも出来たらしいしね。
HRFQ : NYのシーンはこのままダメになってしまうと思いますか?それとも再起する方法を見つけてまた前のように盛り上がると思いますか?
Monique : もちろん、どんな事だって解決の道を見つける方法はあると思うけど、今のシチュエーションではどうしようもないわね。
Matthias : ジュリアーニは8年市長をやってたんだけど、ずっと早く違う人に代わってほしいと思ってたんだ。 なのに、何と同じようなタイプのブルームバーグが市長になっちゃうんだからな〜。 でも、多分また景気が悪くなったら前みたいにクラブシーンも復活するんじゃない?
HRFQ : NYのガラージでLarry LevanをみてNYに移ったって聞きましたが。
Matthias : そうそう。ガラージは86年にクローズしたんだけどそれから3年後の88年に移ったんだ。
HRFQ : やっぱりLarryの影響が大きかったんですか?
Matthias : そうだね。 DJとして彼から受けた影響は本当に大きいよ。 ガラージで経験した音楽は、今まで経験してきたものとは全く違ったものだったんだ。 その頃すでに僕もDJはやってたんだけど、Larry がガラージのクラウドを相手に音楽でやってたことっていうのは、今まで自分が全く経験したことのないものだった。 なんかこう、目が覚めたって言うか…。 とにかくあの頃は、次の土曜日がいつも待ち遠しくてたまらなかったし、それまでの一週間はずっと、その週のパーティーのこといついて語ってたものだよ! 入り口から中に進むにつれてどんどん暗くなっていって、ビートも大きくなっていく…今でも鮮明に覚えているね。
HRFQ : ずっとハウスをプレーしてたんですか?
Matthias : いや、僕が21年前にDJを始めた頃は、まだハウスはなかったからね。
HRFQ : Francois Kとはどうやって知り合ったんですか?
Matthias : NYへ出かけるようになった頃に知り合った友達が、Francoisのスタジオて働いていてね。で、僕がNYへ引っ越した時には、そいつはスタジオのマネージャーになっていて、それで彼らから「ここで働かないか」って言われたんだ。
HRFQ : DEEP & SEXY 3は、何かコンセプトの元にコンパイルしたんですか?それともいつものDJの調子で?
Matthias : もちろん色々と考えてやったよ。 ただコンセプト自体はFrancoisのものだからね。 だって、ディープ&セクシーでしょ!
HRFQ : 作品に対する反応はどうですか?
Matthias : もう3ヶ月くらいリリース・ツアーであちこち回ってるけど、ディストリビューターはかなりいい感じだっていってたよ。
HRFQ : 今後の予定は?
Monique : ついこの間レゲエのトラックを終わらせたところよ。
Matthias : そうそう、WAVEの曲なんだけどね。 他にも彼女には何曲か曲をあげたよ。 実は今一番やりたいのは彼女とアルバムを作ることなんだ。 彼女は一緒にプロジェクトをするには最高のパートナーだからね。でも、モニークは忙しいからなあ。
Monique : あら!あなただって!!
HRFQ : じゃあ最後に、これからDJを目指している人に何かメッセージを。
Matthias : ぼくが?!
Monique : 医大に行ったほうがお金になるわよ! この人の生活はクレイジーとしか言いようがないのよ。 どうやって生活してるのかこっちが知りたいくらい!
Matthias : そうだな。 常にあちこち旅行しないといけないっていうのは、エキサイティングではあるけど大変だからね。 一つだけ言えるのは、DJになりたいなら、ついでにプロダクションやエンジニアリング、エディットなんかもも勉強したほうが良いって事。 DJだけで食ってくって言うのは大変だからね!
End of the interview
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