屋内最大級のテクノフェスティバル「Wire」への3年連続出演、さらに昨年夏の WOMB での Len Faki とのバック・トゥ・バックセットも記憶に新しい Joris Voorn が、自身の Mix CD としては4年ぶりとなる "Balance 014" を引っさげ、”Balance” リリースツアーと銘打って東京は WOMB、大阪は Triangle と二都市を巡る抜かりなきスケジュールにて日本へと帰還する。そんな彼に HigherFrequency が来日直前メールインタビューを決行。彼の音楽的背景、脅威の収録曲100曲を超える "Balance 014" 制作の背景、そして日本語でつけけられたサブタイトル 'Mizuiro' 'Midori' の秘密などに迫った。
Interview : Midori Hayakawa (HigherFrequency) _ Translation : Yuki Murai (HigherFrequency) _ Introduction : Yuki Murai (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : 経歴を見る限りでは誰もが憧れるようなキャリアをお持ちですが、実際にはこれまでどのような道を歩まれてきたのでしょうか?
Joris Voorn : 僕は'96年にすごくチープなターンテーブルでDJをやりはじめた。小さなクラブで2〜3年レジデントを持って、そこでDJの腕を磨いていたね。その頃、自分自身で音楽も作ってみようと決めて、 Roland の MC-303 を買ってあちこちでプレイしたりもしていた。その後、機材をもう少し買い足して曲を何曲か作ったんだけど、それが僕が初めてレコードを出した Keynote Record に採用されたんだ。 それから Technasia と知り合って、日本ではびっくりな程ヒットしたファースト・アルバムと 'Incident' をリリースして、それ以来世界のあちこちでプレイしているよ。あとは皆が知っての通りだね。
HRFQ : 'Incident'、'The Colour Of Love' (UR Mix) など、誰もが一度は耳にしたことのある超アンセム・トラックをお持ちですが、実際作った時、何かピンとくるものはあったのですか?それとも全く予想外の出来事でした?
Joris Voorn : 'Incident' を作った時は、これは何だか特別だとは気付いてたんだけど、まさかあんなビッグ・ヒットになるなんて思わなかったな。あのレコードには本当に助けられたね。 誰だって曲を作ってる時には、他の人がこの曲をどう思うかなんて絶対に分からない。だから、曲作りの時点では自分自身のクリエイティビティと判断に頼るしかなくって、うまくいけば他の人も気に入ってくれるかもしれない…結局そういうものなのかなと思うよ。
HRFQ : どのような経緯で今回 Balance からリリースすることになったのでしょうか?またどのようなお気持ちですか?
Joris Voorn : 去年のことだけど、以前に DJ Mix CD をリリースしてからもう3年も経ってるし、新しいのをを作ろうかと考えてたんだ。そうしたら、Balance の人たちから Mix CD の次回作をやらないかとメールが来てね。一緒に仕事をするにはいい人達のように思えたし、それに面白いアイデアに対してもオープンそうだったから、やることに決めたんだ。彼らは'08年の年末にはCDをリリースしたがってるようだったんだけど、僕もその頃すごく忙しかったし、その上自分の Mix についてすごく厳しい目で見ようとしていたものだから、'09年頭にずれてしまったんだ。でも結果はそのおかげでより良いものになったと思うよ。
HRFQ : "Balance 014" のタイトルに「Mizuiro」「Midori」とありますが、何故日本語なのでしょうか?またそのタイトルの由来やアルバムのコンセプトについて教えてもらえますか?(ちなみにあなた自身のレーベルの名前も Green ですね…)
Joris Voorn : ハハ…。そう、'Midori' は僕のレーベルの 'Green' のことだよ。CDは2枚組だけどスタイルもペースも違うから、それぞれのCDに違う名前をつけたかったんだ。'Midori' はダウンテンポ寄りで、いろんなスタイルのエレクトロニック・ミュージックが取り入れられてる。これはまさに「音楽」そのものについての Mix だから、それには緑色が合うかなと思ってね。あとは、もっとアップテンポでグルーヴィーな音に合う日本語の色の名前を探したんだけど、それが 'Mizuiro'、水色だよ。水色の色あいや、'Mizuiro' という言葉の響きが、音楽の鳴りかたにしっくりくるように感じたんだ。 僕自身、日本とはいつも特別な関わりがあって、僕の彼女も日本人とのハーフだし、日本の人たちは世界の他のどこの場所の人たちよりも本当に音楽に入れこんでると思うし…だからいつも、僕が君達の国を好きだっていうことを何かしらで主張しようとしてるんだ。
HRFQ : 100 曲を超えるトラックを分解し再構築した内容となっていますが、このような試みをするにあたった経緯を教えて下さい。またどのようなテクニックを、プロセスを経て完成したのですか?
Joris Voorn : こんな多くの曲を2枚のCDに入れようなんてそもそも計画してたわけじゃなくて、やってみた結果がこうだったんだ。大量のサンプルと曲のほんの小さな断片を使って、音楽を作ってみたんだ。自分のスタジオで Ableton Live を使って Mix したけど、本当に大変な作業だったよ! 時には8つのサンプルやトラックを同時にプレイすることもあったけど、それがひとつに聞こえるように頑張ったね。
HRFQ : 2月から5月終わりまで Balance ツアーを控えていますが、意気込みをお聞かせ下さい。
Joris Voorn : きっとものすごくエキサイティングになるよ。世界のあちこちの色んな国に行くことになるしね。今回の日本でのギグはツアーの序盤のほうで、オーストラリア、香港、シンガポールの後なんだ。 それにしても変な気分なのが、みんながこのプロジェクトにものすごくエキサイトしてる事なんだ。まだほんの一部の人しかCDは聞いてないはずなのにな。いざCDが出たときにみんなががっかりしなきゃいいんだけど(笑)。
HRFQ : 過去に Wire をはじめ何度となく来日していますが、日本に対する印象はどのようにお持ちですか?
Joris Voorn : 僕は日本に来るのがすごく好きなんだけど、いろいろと理由があるんだ。特別な場所だっていうのはみんなにも納得してもらえると思うけど…僕の最初のギグは'05年の Wire で、すごく盛り上がったし、それ以来毎年日本に来てる。それに日本食が大好きだから、日本に来るたびに食べれるだけ食べてるんだよ!
HRFQ : 今回 WOMB でのギグが予定されていますが、過去にも何度と出演していますよね?WOMB へはどのような印象をお持ちですか?
Joris Voorn : WOMB では過去に何度もプレイしてるから、今ではホームのように感じるよ。本当に音楽が大好きな、クレイジーなクラウドがいる素晴らしいヴェニューだし、上の階のバーで飲んでみんなと話をするのも好きだし、それで下に戻ってクレイジーなパーティーに参加するんだ。僕は世界のベスト・クラブのひとつだと思うよ。
HRFQ : ロングDJセットを披露してくれるそうですが、どのような感じを予定していますか?"Balance 014" との関連性あるプレイとなるのでしょうか?
Joris Voorn : このツアーでのDJプレイ用に特別に作った Balance のエディットとか、ループやサンプルを使う予定だよ。CDよりももっとフロア向きになっているね。それ以外にもスタジオで色々と用意してるけど、クラブのステージで起こることはクラウドにも拠るからね。もしみんながもっとディープな音がいいなら僕はそうするし、もしもっとエネルギッシュなグルーヴに浸りたいようだったら、そちら側に切り替えるな。
HRFQ : 今回のブースのセットアップについて教えていただけますか?
Joris Voorn : 最近は Traktor Pro と Midi コントローラー2台を使ってるから、レコードやCDでプレイするよりも随分色んなことができるようになったよ。たくさんのループやトラックを重ねて、クレイジーな方法でエフェクトやフィルターをかけることができるんだ。きっとエキサイティングだと思うよ!
HRFQ : ツアーを終えたらまず一番に何をしたいと考えていますか?プライベートな時間は何をして過ごしていますか?
Joris Voorn : 僕は本当にワーカホリックだから、長い休みはとらないんだ。それに Balance ツアーが終わってもツアーが続くし、あまり休みはないな…。でも、夏はヨーロッパで過ごせればいいなと思ってるよ。僕の街、アムステルダムで楽しく過ごして、日が照る中でリラックスして、街の生活を楽しみたいと思うね。
HRFQ : 現在もオランダに住んでいるようですが、あなたにとってどのようなところですか?またスタジオを持っていると聞いたのですが、どのような環境なのでしょう?
Joris Voorn : 今はアムステルダムに住んでるんだ。去年、彼女と一緒に引っ越してきたんだけど、すごくいいところだよ!自宅にスタジオを作って、そこで毎日仕事してる。家にスタジオがあると、毎日早い時間から遅くまで仕事ができていいんだよね。
HRFQ : 今後世界のクラブミュージック・シーンはどう変化していくと思いますか?
Joris Voorn : 良い音楽を聴きたいと思う人たちがどんどん現れてくれることを願うよ。新しい世代は、今の人たちよりももっと音楽が好きであってほしいんだ。音楽がどんな風になっていくかすごくワクワクしてるし、予測するのは難しいことだけど、一人のアーティストとして自分もその一部を担っているわけだし、音楽がいい方向に向かっていけるようにベストを尽くすつもりだよ。
HRFQ : 今後あなたの音楽はどのようなコンセプトのもと、どのような変化を遂げていくのでしょうか?
Joris Voorn : クラブのダンスフロア向けもそうだし、家で聴くような音にしてもそうだけど、とにかく素晴らしい音楽を作り続けていきたい。次に作るアーティスト・アルバムについてはちょっとプランがあって、今まで僕が作ってきたものとは違うものにしようと思っているんだ。自分にとっても面白いものを作ること、新しいアイデアを自分の音楽に取り入れて、自身の持ってるスタイルを改良していくことが、アーティストにとっては大事なことだからね。 まだあまりアルバムの方向性については言えないけれど、最近はよく楽器の音をレコーディングして色々試してるよ。それとはまた別に、近々ダンスフロア向けの曲も何曲かリリースする予定があるから、皆注目しててくれよ!
HRFQ : 最後に日本のファンに向けて何かメッセージをお願いします。
Joris Voorn : やあみんな、日本にまた来れてすごくワクワクしてるよ。みんなで遊びに来て、僕達みんなにとって素晴らしい瞬間を作ろう! ハイ、アリガト!!
End of the interview
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