良質なリリースで知られるミニマル系レーベル Festplatten を運営していることでも知られる Andi Teichmann と Hannes Teichmann からなる兄弟ユニット Teichman Brothers が、全国5ヶ所を回るジャパン・ツアーを行うため来日を果たした。
関東ではVJ、デザイナー、ディレクターなど多方面で活躍するアーティスト宇川直宏がスタートした渋谷の MixroOffice と、歴史ある国際都市、横浜を舞台に国内外の実力派アーティストを招聘して行われる総合アート・イベント Yokohama Electronic Art Driveでプレイすることが予定されている彼らに HigherFrequency がインタビューを決行。世界規模で名を広めつつある兄弟ユニットの素顔に迫った。
> Interview by Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction by Kei Tajima (HigherFrequency)
HigherFrequency (HRFQ) : 今回のジャパン・ツアーについてお話してもらえますか?
Hannes Teichmann : かなりクールなツアーでね。日本全国を回るんだ。東京からスタートして、次に札幌、大阪、それから沖縄に行って、最後に横浜でプレイする。南から北まで横断ってわけさ。
HRFQ : 横浜ではライヴ・ギグを予定されていますよね。今夜のMixroOffice では DJ をされますが、DJ とライヴ・ギグの違いと言えば何だと思われますか?
Andi Teichmann : まず第一に、ライヴでは自分たちの楽曲をプレイするよね。ライヴではアナログ機材しか使わないから、もう少し…
Hannes : ラフな感じかもしれないね。
Andi : ラップトップを使わなくなってから、ライヴのスタイルや音楽も変わったんだ。
Hannes : ライヴは楽しいよ。もっと凝縮された感じがするしね。1時間半しかプレイしないからエネルギーがそこに集中するのさ。逆にDJ をする時は長い時間回すのが好きでね。気分を盛り上げながら、3〜4時間回すんだ。
HRFQ : コンピューターはお嫌いなんですか?
Hannes : 自分たちとお客さんの間をPCのスクリーンで挟みたくないんだ。
Andi : もちろんスタジオや日常生活ではコンピューターを使うよ。でも、スクリーンを間に入れたくないって理由からライヴでは使わないことに決めたんだ。コンピューターよりお客さんの顔が見えるほうがいいしね。
HRFQ : 兄弟で一緒に仕事をするのはどんな気持ちですか?
Andi : 他のユニットと違うのは、自分の兄弟と、兄弟関係とはまた違う他の関係を持つということだけさ。喧嘩の時なんかは、むしろ兄弟の方がましだよね。
Hannes : 最近は別々の活動もしているからすごくいい感じだし、そういうことも時には大事だと思うんだ。それに、ホテルの部屋を別々に取ることも重要。でも、一緒に働くのは難しくないし、何の問題もないよ。喧嘩をしないから今までも一緒に活動して来れたし、今もしている。もちろん普通の兄弟と同じように喧嘩をすることもあるよ。でもユニットとしてのチームワークがすごく良いんだ。僕は3つ年下だから、もちろん Andy の方が知っていることは多いけど、いいチームワークが保てていると思うよ。それに、喧嘩をしても喧嘩別れをすることはないってお互いに確信してるんだ。それが普通のユニットとは違うところだね。お互いのために一緒にいることを知っているんだ。
HRFQ : ‘00に Kompakt から初の楽曲をリリースされましたが、その経緯をお話してただけますか?
Andi : 当時の Kompakt と今の Kompakt ではかなり変わっちゃったからねぇ…
Hannes : ‘00年当時は、僕らのようなアーティストにとって、Kompakt から作品をリリースすることには重要な意味があったんだ。今は K2 といったレーベルが当時の
Kompakt のような存在なのかな?今の Kompakt はまるでポップ・レーベルだからね。
とにかく、あのリリースについては面白い話があってね。当時僕らは Festplatten の流通会社を探していて、レーベルの音楽性を伝えるためにKompakt に CD を送ったんだ。そうしたら、「レーベルを流通するかは分からないけど、このCDが気に入ったよ!」って言ってきてね。だから流通の契約はせずに、レコードの契約だけをしたんだけど、そのレコードを発売した後にKompaktが「君らのレコードは素晴らしいから、レーベルも流通したい!」って言い始めてね。他の流通会社から僕らの曲を全部買い取ったのさ。それでレコードの契約も、流通の契約もすることになったというわけ。
HRFQ : インディー・レーベルを運営するのは大変ですか?
Andi : そうだね。かなり大変だよ!ただ続けることだね。お金を稼ぐことを考えちゃダメさ。
Hannes : レーベルでお金儲けをするという考えを捨てて、割り切ってやれば辛くないはずだよ。お金を稼ぎたいならインディー・レーベルは辞めたほうがいいだろうね。
HRFQ : インディー・レーベル同士が助け合うコミュニティーのようなものは存在するのでしょうか?
Andi : ドイツのインディー・レーベルのネットワークは密だと思うよ。ドイツにはレーベルがたくさんあるし、最近ではドイツに移ってくるレーベルも多いんだ。はじめはフランス人やスペイン人が移ってきて、今はアメリカやイギリスのレーベルも移動してくるようになったよ。以前はいろいろな国に点在していたものだけどね。
Hannes : 特にベルリンでは、みんなベルリンに住んで、ベルリンで働いて、ベルリンで遊び歩いてるからレーベル同士の繋がりが強いんだ。時々、予想もしなかった人々が一緒に仕事をすることだってあるんだ。例えば
Matt Johnが Minus からリリースするなんて考えもしなかったからね。それだって、同じバーで飲んでいたことがきっかけになったんだ。彼のプレイしていた
Bar25は、よくRichie が遊びに来る場所なんだ。
HRFQ : MIDI サウンドの音源で構成されたコンピレーションを3.5インチのフロッピー・ディスクでリリースされたことがありますね。あなた方にとってテクノロジーはどれ程重要なものなのでしょうか?
Hannes : このプロジェクトには多くのアイデアと愛情が含まれてるんだ。作品に参加したアーティスト全員も、このプロジェクトにたくさんの愛情を注いでくれた。ただ、セールスには結びつかなかったんだ。レコードを売ろうとしてるレコード・ショップにフロッピー・ディスクを持っていっても、門前払いされるだけ。このアイデアの意味なんて考えようともしないのさ。アイデアに賛同してくれたショップもいくつかあったけど、他のショップはレコードを売ることにしか興味が無いんだ。
Andi : これには「テクノロジーはそんなに重要なものじゃない」って意味が込められていたんだ。アーティストが音楽を作るときに使うような一般的な MIDI音源を売って、リスナーに音楽を作るチャンスを与えたかったのさ。
Hannes : 僕たちがこのアイデアを思いついた時、テクノ・シーンで多くのアーティストが同じサンプルばかりを使っていたんだ。だからテクノロジーより、音楽やメロディーにフォーカスしてみたかったのさ。
End of the interview
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