HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW


自然に囲まれたドイツの都市 ヴェスターヴァルド出身のミニマル〜クリック系トラック・メイカー Dominik Eulberg が、10月27日に新木場 ageHa@studio coast で行われた Clash に出演するため、2回目となる来日を果たした。

‘04年にドイツの Groove 誌で “The best of new comer in 2004" に選ばれ一躍脚光を浴びてからというもの、プロデュース、リミックス作品が立て続けにヒットし、休みなく世界中をDJ して回るなど、多忙な毎日を送る Dominik。そんな名実共にエレクトロニック・ミュージックの明日を担うアーティストである彼に HigherFrequency がインタビューを決行。気になるバッグ・グラウンドや、盟友 Gabriel Ananda との友情について語ってもらった。

> Interview by Nick Lawrence (HigherFrequency) _ Translation & Introduction by Kei Tajima (HigherFrequency)

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HigherFrequency (HRFQ) : あなたがエレクトロニック・ミュージックに没頭するきっかけとなったのは Sven Vath のラジオ・ショーだったそうですね。そして今、あなたの楽曲である ‘Bionik’ が Cocoon からリリースされますが、いかがでしょうか?かなりエキサイトなさっているのでは?

Dominik Eulberg : もちろんさ。 Sven は常に僕のヒーローだし、音楽的にも影響を受けたしね。ヴェスターヴァルド みたいな自然に囲まれた場所ではクラブなんか無かったから、 Sven のラジオで初めてエレクトロニック・ミュージックに出会ったんだ。彼のラジオ・ショーでプレイされたレコードはすべて買ってたよ。だから、初めて ‘Geht's Noch?’ のリミックスのオファーを Sven から受けた時も、友達が悪ふざけで電話してきてるんだって思ったくらいだったんだ。

HRFQ : 来年には Cocoon からアルバムがリリースされるそうですね

Dominik Eulberg : 本当は今年の10月にリリースされる予定だったんだけど、ツアーで忙しかったり、彼女と時間を過ごしたり、バード・ウォッチングをしたりで完成出来なかったんだ。だから来年のリリースになったのさ。1月に一ヶ月まるごと休みを取ってスタジオに入る予定だから、そこで全部完成させられると思うけどね。

HRFQ : では、古い楽曲は収録されないんですね?

Dominik Eulberg : そうだよ。まだ2〜3曲しか完成してなくて、残りは全部これから作るんだ。

HRFQ : 頭の中では完成しているんでしょうか?

Dominik Eulberg : いいや、頭の中で音楽は作らないんだ。スタジオに座ってはじめて作り始めるのさ。

HRFQ : でも、常に音楽のことは考えられていますよね?それともスタジオに入る時だけでしょうか?

Dominik Eulberg : 今でも常に音楽のことは考えてるけど、昔ほどじゃないね。たまに夜眠れない時に音楽のことを考えて、頭の中で音楽を作っちゃう時があるんだけど、楽曲を作ってる時は常にアイデアが溢れてきて、「ここはこうした方がいいかな…」なんて考えてしまって、眠れないことがよくあるんだ。だから楽曲が完成するとすごく嬉しいよ。家とスタジオを別にしているのもそれが理由なんだ。家の中にスタジオがあると、頭の切り替えをするのが難しいからね。

HRFQ : 今年、 Gabriel Ananda との共作を Traum からリリースされましたね。また、他の楽曲でもお互いにリミックスをし合ったりされていますが、彼とはどのようにして出会ったんですか?友達同士なんでしょうか?

Dominik Eulberg : Gabriel は友達だよ。彼とは4〜5年の付き合いなんだ。Traum の Riley Reinhold を通してケルンであったんだけど、彼みたいに何でも話せる友達を持つのは素晴らしいよ。テクニカルな問題でも、プライベートな問題でも常に相談に乗ってもらってるんだ。親友と呼べる友達の一人さ。

HRFQ : 最近あなたのお気に入りのトラックを二人でリミックスなさったとか?

Dominik Eulberg : そうだよ。Cold の ‘Strobelight Network’ なんだけど、近々リリースされる予定なんだ。ドイツに Exacta.udio っていうレーベルがあって、何でも好きな曲を選べてね。彼らが「Dominik、どの曲をリミックスしたい?」って聞くから、大好きな ‘Strobelight Network’を選んで、ライセンスを取ってもらったんだ。だけど、それは2年も前のことでね。あまりにもリスペクトする楽曲だから、手を加えるのが怖かったんだ。だから自分が今ならリミックス出来るって思える時を待たなくちゃならなかった。それで、Gabriel に事情を話したんだ。あの曲は Gabriel も大好きだったからね。それで一緒にやろうってことになったのさ。今はほとんど完成していて、あともう一回スタジオに入れば出来上がる感じなんだ。でも実はここまで作るのにも2〜3日しかかかってないんだよ。

HRFQ : そうして、一番好きな楽曲をリミックスされたわけですが、その他に目指しているゴールや、やってみたいことはありますか?

Dominik Eulberg : 不思議なことに、僕の音楽人生にはゴールがないんだ。自分が東京に来てDJすることになるなんて夢にも思っていなかったしね。常に自分のしたいことや自分にとって良いこと、面白いことをしてきただけなんだ。僕は、自分の欲求を満たしているだけ。自分でさえ時々驚いてしまうけど、なるべく考えすぎないように、良いことをし続けているだけなんだ。

HRFQ : 以前のインタビューでは、ずっと音楽を作り続ける予定はないと話されていましたが、今でも同じように考えられていますか?

Dominik Eulberg : 自分がアーティストになるなんて思っていなかったからね。大学に行って、それなりにいい生徒で、大学で勉強を教えてもいたんだ。そうしたら急に音楽が有名になってしまったのさ。だからそこで考えたのは、音楽の道を進むべきか、このまま勉強を続けるかってことだった。その二つを両立させるのは不可能だったからね。こうして今は音楽を作っているわけだけど、自然の中で勉強することや仕事をすることも、僕にとってものすごくやりがいがあって、将来の大きな目標として考えていることなんだ。もちろん音楽は一生作り続けたいけど、今よりは少なくなると思う。いつ一線から退くかはまだ分からないけどね。

HRFQ : Rocco Branco について聞かせてください。Rocco Branco 名義を使う際と、Dominik Eulberg としてリリースする際の違いは何ですか?

Dominik Eulberg : Rocco Branco は Platzhirsch Schallplatten からリリースする時に使う名義で、普段の音よりもっとラフでドライだったから違う名義にしたんだ。僕自身もたまにこういう音楽を作りたくなるのと、Platzhirsch Schallplatten のオーナーで、僕の友達の Tobias Beckerが、誰にも僕だって分からないような名義でリリースしたがったんだ。レコードは、アーティストの名前ではなく、その音の良さで買うべきだからね。でも最近では僕だってばれちゃってるけどね。

HRFQ : ‘94年に楽曲制作をスタートされて、初めてレコードをリリースしたのは ’03年でしたね。なぜ9年もの時間がかかってしまったのでしょうか?

Dominik Eulberg : テクニックを覚えて、それに慣れて、手順を覚えるには時間がかかるって知ることが必要だと思うんだ。音楽は有名なプロデューサーや DJ になるために作るべきじゃない。有名なプロデューサーになれば、大金や綺麗な女、いい車が手に入るなんて考えてる人は、今すぐ諦めたほうがいいよ。
音楽が大好きで、心から音楽を作りたいと思える人、音作りに対する情熱がある人だけが音を作るべきなんだ。素晴らしいプロデューサーや素晴らしいミュージシャン、素晴らしいDJ になる人は、生まれた時からそうなると決まっているのさ。実際に音楽作りに夢中になってコンピューターや機械の前で何時間も過ごしている人に、「僕はプロデューサーになるべきかな?」なんて改めて考える必要はないのさ。僕は、初めてのレコードをリリースするまでに時間がかかって良かったと思ってるよ。苦労したし、タフになったしね。

HRFQ : では、その9年間には意味があったというわけですね。

Dominik Eulberg : そうさ。まるで良いワインのようにね。

HRFQ : それよりも早くリリースしていたら、あなたの音楽性は今とは違うものになっていたと思われますか?

Dominik Eulberg : う〜ん…いい質問だね。良いか悪いかは分からないけど、今とは違うものになっていると思うよ。もっと多くの時間を音楽に費やして、今よりもっと多くの知識を身に付けてたかも知れないね。でも、それが果たしていいことなのかは分からないよ。時には、多くを知らない方がいいこともあるんだ。ただ自分の気持ちに従うのさ。

HRFQ : タイトなスケジュールの中、お時間有難うございました。

Dominik Eulberg : 問題ないよ。ありがとう。

End of the interview


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