’94年、アーティストとしてのキャリアをスタートさせ、’01年に青山 Club Loop にてサンデーアフタヌーン・パーティー O-range を開始。当時一般的ではなかった "日曜午後のクラブパーティー" という概念を日本国内に定着させ、サンデーアフタヌーン文化のオリジネイターとしてその名を轟かせた DJ Luu は、さらに’05年、’07年と Body & SOUL のプロデューサー John Davis を招聘し、世界と日本のコラボーレーションを実現させることに成功する。そして’06年、WOMBにて CSH4 を開始。そのオリジナリティ溢れる内容から回を増すごとに動員を伸ばし、日本最大級のサンデーアフタヌーン・パーティーとして大きな話題を呼んでいる。また同年、自身主宰のレーベル aE production を設立。さらに’08年には新レーベル 2E2L Recordings を設立し、わずか1年で約60タイトルをリリースするなどその勢いは留まる所を知らない。
そんな彼が今回、UNITにて自身のレーベル名を冠したパーティー「2E2L」を開催するにあたり、貴重なインタビューを入手したのでお届けしたい。長年シーンの前線を走り続けているアーティストとしての確固たる信念が伺える内容となっている。
Interview : HITOMI Productions
Introduction : Midori Hayakawa (HigherFrequency)
-- DJ Luu と言えば、サンデーアフタヌーンパーティーを連想される方も多いと思いますが、現在のDJ活動と改めてご自身の紹介をお願いします。
DJ Luu : ありがとうございます。レジデントさせて頂いているパーティーは、サンデーアフタヌーンの CSH4 @ WOMB、O-range @ LOOP の他に、週末夜のNUE! !@ WOMB、2E2L×702 presents TOKYO @ WAREHOUSE702、LIVEN @ module、JET BLACK @ LOOP などです。ウマいものを食べ、ウマい酒を飲むことが何より好きです。たまに神宮球場で呑むビールも大好きです(笑)。最近 WOMB や UNIT の階段がツラくなってきたので体力作りに励もうかと思っています(笑)
-- では、これまでの音楽遍歴についてお聞かせください。
DJ Luu : まず幼少期、物心つくか付かない頃、耳に入ってきたのはクラシック音楽でした。母がバイオリン弾きで父がオペラLPのコレクターだったので。母のバイオリンで踊ってたりしてました。知識としてクラシックについてはほぼ無知ですが、かなりの曲は聴いたことがあると思います。10代の頃は興味がなかったのですが、不思議と年を経るごとに興味が出てきましたね。年末には「第九」を聴きにいったり、たまにですがオペラを観に行ったりもします。あと20年位したらクラシックばっかり聴いてるかも(笑)。
小学生の頃は、5歳年上の兄の影響で、洋楽を聴きはじめました。所謂ビルボートのチャート上位の曲を聴くくらいですが。兄と共通の話題を持ちたくて、兄から貰うカセットテープをウォークマンで必死で聴きあさってました。その一方で、YMO、渡辺美里さん、浜田省吾さんの曲とかも聴いてました。あとおにゃん子クラブとかも(笑)。高校時代はHIP HOPを聴いて、10代最後くらいに周囲の友人の勧めでソウルミュージック〜4つ打ちに出会いました。
-- 次に制作面について伺います。昨年、ご自身主宰のレーベルを立ち上げられた訳ですが、この<2E2L Recordings>というレーベル名の由来、コンセプトは何でしょうか?
DJ Luu : 「too early to be late(早すぎず、遅すぎず)」を意味しています。ルーツミュージックをリスペクトしながら、最先端/次代のサウンドを追求、提供していくという哲学を込めました。ただ単純なダンスミュージック・レーベルにとどまることなく、ここから新たなムーヴメントを生み出し、ひとつの時代の指針となるような活動、さらにはダンス・ミュージックをマクロな媒体と捉えて、各人のライフスタイルにあったサウンド、そしてコミュニケーション・ツールとしても通用する新たなサウンドの普及を目指しています。
-- なるほど。では設立された理由や経緯を教えてください。
DJ Luu : 二つありまして... 一つは、とにかく多くの制作者に対して容易に楽曲を披露できるような場を作りたかった。もう一つは、日本の首都「東京」ではなく、広大な世界に於けるローカル都市「トウキョウ」を、文化&情報発信基地として改めて世界へプレゼンテーションしていく活動に貢献したかった、ということです。
-- 興味深いですね。もう少し詳しく教えてもらえますか?
DJ Luu : 才能は持っているのに、リリースしたくてもできない人はたくさんいます。商業音楽としての壁や、単純に時代が合わなかったとか、もしかしたらパーソナルなお金の問題や生活環境、家庭環境の問題なんかもあるでしょうし、そもそも方法が判らないという人も多いでしょう。僕も昔はその一人でしたし。特に最近では、テクノロジーの進歩により制作環境のハードルは下がり、楽曲制作がとても身近になっていますよね。と同時に前述したような様々な事情により忸怩たる想いを抱えているアーティストは増えているわけです。そんな人のために、作品披露の窓口であったり、今後のステップとして踏み台にもなれるようなレーベルを作りたかったということです。
-- トウキョウのプレゼンテーションということについては?
DJ Luu : 多くの世界的アーティストが語っているように、「トウキョウ」は、今、様々な分野で世界的に注目され、その名前だけで一枚も二枚も乗っかるような「イマキテル」ローカル都市です。端的に言えば、なかなか作る事が出来ない「ブランド」がこの街に出来つつあります。これは多くの人の才能や努力、そして時代と国民性によって形成されてきた必然でもあると思いますが、まだまだ、そのポテンシャルに気付いていない人が、内側である国内にこそ多くいると思います。我々表現者にとってこの契機を生かさない手はないですし、その結果を享受すべく努力する事は、自分たちのためにもなります。微力ながら、この点に貢献する事は義務のようにも感じていましたので、哲学として掲げています。
-- Beatport をはじめとするデジタル・リリースがメインになっていると聞いていますが、<2E2L Recordings>のリリース&セールス状況はいかがですか?
DJ Luu : 実動としては、昨年6月からスタートしたので約1年足らずですが、現在までに50タイトルをリリースしてきました。そのうち11タイトルが、Beatport をはじめ各DLサイトでチャートインしています。来月からは毎週2タイトルのペースでリリースを予定しています。アーティストは今後デビューされる方を含め15組の方々に参加してもらっています。今後はレーベル・コンピとしてシーズンごとにCDパッケージでもリリースしていく予定です。
-- 近年の日本のクラブシーンないし音楽シーンについて感じられることがあれば教えてください。
DJ Luu : デジタル化の便利さと寂しさでしょうか。みなさん同じようにおっしゃると思いますが。便利さについては述べるまでもないですが寂しさについてちょっと述べますと...
以前はレコード一枚買うにもイロイロありましたよね。レコード屋でバイヤーさんのレビューを頼りに買ってみたり。ジャケ買いして失敗しまくったり。試聴させてもらいたいがために店員さんと仲良くなりたかったり。お店によって値段も違うから、3時間くらい渋谷・宇田川町を練り歩いて50円安く手に入れたり。そんなことって今はもうないですよね。パソコンの前で、ランキング上位からチェックしてばかりだと、必然的に音楽との出会いはかなり狭まりますよね。
ジャケ買いしてその時は失敗したと思っても、1年後くらいにふと聴いた時に急に良く感じたり。そんな曲は宝なんですよね。そういう出来事一つ一つが、音楽に、一曲ごとに思い入れを与えていくと思うんです。便利がゆえ、音楽が「道具」になってきてるカンジは少し寂しい気もします。
-- 世界のクラブミュージックについてどう感じていますか?特に音(曲)の移り変わりなどはどうでしょう?
DJ Luu : 危惧されるのは、誰かの評価や薦めで、音(曲)が世に広まっていかなくなること。ランキングという数字評価が絶対評価であったりして。恐らく作り手も流行をいままで以上に意識するでしょうし、資本力がないと才能があっても知ってもらう機会すらない状況もあるのでは。。衝撃的な楽曲や突出した才能の出現が起こりにくい環境になってきているのかもしれないですね。ま、ダンスミュージックはテクノロジーの進歩と共にあると思っているので、その中に身を置いて、どうなっていくか冷静に見極めていくことが大切だと思っています。
-- アナログ/CDリリースからデジタル・リリースが拡大していくことのデメリットをあげるとしたら何でしょうか?
DJ Luu : 音楽を「どういった場面やどういった目的で聴くのか」ということが忘れられていくことでしょうか。過去、音楽は、聴く環境によって記録媒体を選んで来た訳で、ミックスバランスの取り方や録音(マスタリング)も、それに合わせて行われてきたわけです。現在、デジタル化により、「モノ」ではなく「データ」になった音楽は、iPodをはじめ非常に沢山のモバイルツールで聴くことが可能になり、より一層、時間と場所を選びません。つまり、「録音」は、多元的である本来の必要性を失いました。これは結果として、「どういった場面やどういった目的で聴くのか」という、音楽の楽しみ方の一つを損ないつつある、とも言えるでしょう。
-- 昨年、DJ Luu名義で1stアルバムもリリースされましたが、制作をするようになってからDJのスタイル、内容も変わりましたか?
DJ Luu : 特に自分の中で変わったという意識はありません。もともと妄想癖があるというか...(笑)、常に頭の中に様々なイメージがあって、その表現手段として「音」がある感じなので。アタマの中にある仮想世界を表現するのが、DJか楽曲か、くらいの感じです。
-- その後リリースされた "Lemon Heart and the Tokyo Syndrome" は、Beatport でも12位にチャートインされましたよね。例えば、曲作りで大切にしていることはありますか?
DJ Luu : 大まかに言うと「伝えること」でしょうか。これは音楽のみならず絵画でも彫刻でも、芸術といわれる分野の「創作物」すべてに必要なことではないかと思います。そもそも、これらは「伝えたいことがあって、何を媒体にするのか」という違いにすぎないと考えています。
つまり、目的は「伝達」で、手段が「何」かということです。人間が進化していく過程で、コミュニケーションの手段として行き着いた道具が「言葉」だとするなら、音楽や絵画は、それ以前に発見した「手段」であり、またそれ以後に、あえて抽象化し昇華させた手段なのだと思います。例えるならば、「動物の鳴き声」や、「モノをたたいて」仲間の気をひくなどの行為は「音」を使ったコミュニケーションです。その後に「絵画」とも解釈できる象形文字などの「描画」を経て言葉が生まれたわけです。ただ、言葉が発明された後も、「描画」は「絵画」として、「音」は「音楽」として、娯楽もしくは商業になりました。常に、音楽ひいては「音」の存在理由は大切に感じていたい、と思っています。
-- 来たる 5/22、代官山UNIT にてレーベル名<2E2L>を掲げた初のイベントが開催されますが、特別な内容、セットなどは予定されてますか?
DJ Luu : それはご来場されてのお楽しみということで(笑)
-- 海外ゲストとして遂に初来日する Spencer Parker との共演も楽しみですね。イベントへの意気込みを一言お願いします!
DJ Luu : DJをする時、いつも気をつけているのは、一言でいうと「思いやり」です。エンターテイメントとしてもサービスとしても。何をするにも、全てを解決出来る最高の位置にある価値観だと思ってます。この日、日本で初めてプレイする Spencer にとっても、ご来場されるお客さんにとっても、楽しく気持ちのイイ空間にしたいと思っています。ぜひ、いい夜をお過ごしください!
End of the interview
2E2L
2009年5月22日 (Fri) @ UNIT _ 23:30〜
Door : Y4,000 _ W/F : Y3,500 _ ADV : Y3,000
【UNIT】 -2E2L 09 S/S COLLECTION-
GUEST DJ : Spencer Parker (Rekids, Buzzin' Fly, Liebe*Detail / Berlin)
RESIDENT DJ : DJ Luu (2E2L Recordings, CSH4, LIVEN)
DJ : DJ Vivid (2E2L Recordings, TURNED ON), DJ Punchi (2E2L Recordings, CRYSTAL HOUSE)
VJ+LASER : Urban Soul Relax (2E2L Recordings, CSH4)
VJ : VJ Takuma (VISIONCLIP)
DANCER / PERFORMER : Toy Boy Hirosumi feat. Gogo Yoshihiro, Drug Queen (Hossy, Lii'Grand-Bitch), Black Milk (2E2L Recordings), 舞妓101☆GO, 華音
【SALOON】
DJ : Hideo (fancyHIM)
, Inagee (VASCO DA GAMA, Ever Glow),
Alph Zen (Basara-Za, 2E2L Recordings),
Nii (SAKURA GARDEN),
Jo-g (WISDOM, SAKURA GARDEN)
FOOD : TOKYOmetabo
*Special Extended Hours*
DJ : Zizo (Fab Beats)
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インタビュー : Spencer Parker (2008/11/02)
関連リンク
DJ Luu Website
2E2L Website
UNIT Official Site
HITOMI Productions