HigherFrequency  DJインタビュー

ENGLISH INTERVIEW

まだDJ用ターンテーブルやDJミキサーといったものが無かったヒップホップ創成期の80年代に、映画 "Wild Style" を見たことをきっかけとしてDJ活動をスタートした DJ KRUSH。当初はストリートでのDJ活動を中心としていたが、自身のグループ KRUSH POSSE の解散をきっかけに90年代初頭にトラック製作をスタート。それらの楽曲が James Lavelle 主宰のレーベル Mo' Wax や 雑誌 "Straight No Chaser" 誌を通して注目され、まずはイギリス、そしてアメリカと国際的な評価と支持を得ることとなり、現在では全世界に確固とした支持層を確立。日本のDJとしてのパイオニア的存在でありながら、常に先を見据え続けるその姿勢は、ジャンルの枠を超えて大きなリスペクトを集めている。

今回のインタビューでは、世界の現場を見てきた DJ KRUSH にしか語れない、背景にある独特の世界観や、それを形作ってきたこれまでの軌跡、自身の音楽についての思想などを、鋭くリアルな言葉で語ってもらった。

Interview : dj kitchen
Introduction : Yuki Murai (HigherFrequency)


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-- 来年が本格的なソロ活動を開始して20周年ということですが、それだけ長く続ける事ができている要因は何だと思いますか?

DJ KRUSH : 音楽の懐の深さ。つかみきれない何か。つかまないで死んだ方が良い気も。アプローチの仕方を従来のフォーマットをブチ壊して新たな道を自分で開拓し、風当たりを恐れず自分のやり方で音を構築し産み落してきた。見えないワクを取り払う事は難しいけど、その先にある物に向かって行く志は大切な事だと今でも思ってる。自分にしかない個性を音に込めて吐き出した音世界が文化も言葉も違う国の人達の耳に届き感動させ共感できる事は素晴らしい事だ。そこには国境なんかは無い!

-- KRUSH さんの音楽に対する情熱はどこから来るのですか?また、過去にやめようと思った事はありましたか?

DJ KRUSH : 過去に KRUSH POSSE というグループでDJをしていたんだけど、そのグループが解散になってラッパーがいなくて一人になった時、何をしていいのかわからずやめようと思った時もあったんだ。でも、音楽が自分にとって一番正直に楽しく夢中になれた。中卒同然の低学歴悪タレ小僧が、勉強が苦手で音符が読めないこのハンパな男が作った音楽で、何処まで世界の人々にその音を届けて共感してもらえるか。勉学だけでは得られない何か大切な物をバカなりにも感じる事ぐらいは出来た。おそらくそれが大切なモノなのかもしれない。世界中の人達がオレの音を求めている以上、世界中飛び周り情熱をまき散らしに出向く覚悟です。

-- KRUSH さんの音は常に変化、進化しているように思えます。 変化すること、進化し続けることを自分ではどう捉えていますか?

DJ KRUSH : 年齢を重ねて、音楽を重ねて、人生を重ねて、変化、進化していく過程には酸いも甘いもいろんな事があるけど逃げ回る事はしたくないね。過去、現在、未来は、人間にとって生涯ずっと背負う課題だけど、その中には日々前進しようという願いが潜んでいるのではないかって思う。そこに向かう努力や苦しみは作品に反映される作品の一部である気がします。

-- 楽曲製作についてお聞きします。楽曲のインスピレーションはどこから、又どういうときに浮かんできますか?また楽曲製作の方法、手順などを教えていただけないでしょうか?

DJ KRUSH : まずは架空のショートストーリーを考えて、無音無声の状態のオリジナル映像を脳内のスクリーンに映し出す。そこからそれらに音を付けて行くイメージで作業を進める事が多いかな。色々なパターンがあるけど、とにかく想像力を最大限に生かして、持ち得る多彩な色彩を用いて、色や匂いのある作品に仕上げていく感じです。

-- トラック製作に使用している機材、ソフトウェアを教えてください。また最近導入した、もしくは注目している機材やソフトウェアなどありましたら教えてください。

DJ KRUSH : 制作のメインは Ableton Live8、現場は serato SCRATCH LIVE。

-- KRUSH さんの曲は、とてもオリジナリティがあり、聴いていると映像が浮かんできますが、制作時にそういったことは意識してるのでしょうか?

DJ KRUSH : オレの音を聴いて映像が浮かんだりするのは、まんまとこっちの作戦にハマってるね。音を脳内に侵入させ作戦を実行させるプログラムを仕込んでます。(笑) ただ、侵入した音が見せる映像は侵入された人の人生の背景など色々な経験、体験、想像力、などなどの違いによって見える物はきっと違うはずだよ。

-- KRUSH さんの楽曲はドープでダークなイメージですが、一音一音聞くと音の配置やサンプルの使い方などにすごくファンキーさを感じます。サンプルの使い方や音を選ぶ基準などありましたら教えてください。

DJ KRUSH : なるべくヘンテコリンなサンプルをチョップをする、もしくは原型に近い形で制作するなど曲によって色々。上下左右、前後、隙間、死角、空気感、色彩、グルーブ、匂い、などなどを色々な角度から眺め制作していってます。

-- DJをするときはあらかじめ選曲し、ある程度構想を決めて臨んでいるのですか?それともその場で作っていく感じですか?又、最近のセットで使っている機材など教えていただけますか?

DJ KRUSH : その時々によってですが、基本的にはどちらもの要素を含んだ感じです。 機材はタンテ、ミキサー、ラップトップで Serato SCRATCH LIVE です。

-- DJプレイにPCを導入されてますが、今後、PCオンリーのライブなどをされる予定はありますか?

DJ KRUSH : やはりアナログレコードで育ったDJなので、アナログ感覚で操れるハードやソフトが中心になってくる。タンテ、ミキサー以外でのライブは今のところ考えた事もないな。

-- 海外での公演が多い KRUSH さんですが、海外と日本のオーディエンスの違いなどありましたら教えてください。また海外ツアーなどでの面白い話や、いまでこそ話せる話などありましたらお願いいたします。

DJ KRUSH : 個性が無くて誰かさんのコピー的な物は当然の如く海外では通用しない。その辺の感覚は、お茶を濁しがちな日本人とは違ってハッキリしていると思う。誰かの情報を待ち右へならえして安心感を得る多くの日本人とは違う感じがします。物を測るしっかりした自己の物差しを持っている人が多いのかも…。薄っぺらいペラペラな物は運良くば母国では通用するかもしれないけど世界となると話が違う。その程度のものは世界中にゴロゴロ転がっているし世界の耳の肥えた人達の心には絶対届かない。小さな地球だけど、世界にはトンでもなくドデカイすばらしい才能&人間が人種を超え山ほどいるよ。その中で自分自身の世界観を感じさせて、認めてもらう事はどういう事なのか。どうすれば良いのか。まずはその答えが何なのか自分自身で考え感じ悩み苦しみ導きだそうとする意志があるかないか。一度、自分自身を頭のテッペンから足の先まで見落とさずスキャンしてみる事が大事だと思う。

-- これまでに行った事がない場所で、今後プレイしてみたい国はありますか?

DJ KRUSH : これまでに45以上の国を回ったけど、まだまだ行っていない所もたくさんある。ズバリ国名は出てこないけど、呼ばれればどこにでも行く努力は惜しまないつもりです。

-- 最近注目しているアーティスト、シーンなどありましたら教えてください。

DJ KRUSH : 今は外部からの情報を意識的に遮断してます。

-- 音楽はインターネットによってとても変化していますが、現在の状況をどう思いますか?

DJ KRUSH : アナログ時代に生まれて、アナログレコードとカセットテープで音楽を楽しんでいた時の新鮮かつドキドキ感が懐かしくて、もう懐古オヤジ状態です。音楽の売り方の形態がかなりの変化をしてきたことに複雑な気持ちです。表面的な良い悪いを考える事も必要だけど、我々プロは理想だけでは通用しないのも事実。音楽制作以外に考えなくては成らない事が増えた気がする。便利なんだけど実はそうでもないのかも…。

-- オフの日はどう過ごされているのですか?音楽以外のことで、ご趣味などありましたら教えてください。

DJ KRUSH : 時間があれば、海に出向いて冷えたビールを飲みながらのんびりと釣りなんかを…。

-- 今回の "2000"では単独ロングセットとなりますが、そこで挑戦したいことや、パーティーへの意気込みなどがありましたら教えてください。

DJ KRUSH : やはり KRUSH 色の濃い音を中心に攻めたいと思ってます。存分に楽しんでください!

End of the interview




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