UKのハウス・レーベルDefectedからリリースされたトラック、"Tropical Soundclash"、"Elle"が大ヒットとなり、昨年秋には同レーベルの人気コンピレーション・シリーズ "In The House"に参加しコンパイルを手がけるなど、Dimitri From Paris、Bob Sinclarと同様に、フレンチ・ハウス・シーンから飛び出し、世界的に活躍するDJ/プロデューサーとして、その人気を不動のものにしたDJ Gregory。元々、Bob Sinclarの Yellow Productionsからリリースされた"Africanism"にトラックを提供したことで人気に火がつき、長いキャリアを持つ彼の来日は、実は長い間望まれていながらもなかなか実現していなかった。
2月10日、西麻布SPACE LAB YELLOWにおいて、そんなDJ Gregoryの待望の初来日公演が行われることとなり、Yellowでのギグを二日後に控えた午後、HigherFrequencyは彼とのインタビューを行うことに成功。赤いスウェットをクールに着こなすフランスの伊達男は、グリーン・ティーを美味しそうにすすりながら、情熱的に語ってくれた。
> Interview : Matt Cotterill _ Translation & Introduction : Kei Tajima _ Photo : Mark Oxley
HigherFrequency (HRFQ) : 今日はお忙しい中ありがとうございます!
DJ Gregory : いいんだよ。ギグは明後日だしね。
HRFQ : 今回はYellowでプレイされますが、今までにYellowについて耳にしたことはありましたか?
Gregory : そうだね。実は、僕の親友は東京に住んでるんだ。名前はAlex (from Tokyo)って言うんだけど、知ってるかな?彼はShibuya FMで番組を持っていると思うんだけど、昔彼がパリで学生をしていたときに、彼と僕とDJ Deepとで、月曜から土曜までラジオ・ショーをやってたんだ。だから、7年前に僕が東京に遊びに来た時も、実はYellowに行ったんだよ。AlexやヨーロッパのDJから、Yellowは東京に欠かせないクラブだって聞いてたからね。
HRFQ : いいクラブですよね!ところで、昨年 Defectedからリリースされた"In The House"についてお伺いしたいんですが、今回このミックスには、「こういった音楽を世に広めたい」というあなたの思いが込められているということなんですが…
Gregory : 全くその通りだよ!
HRFQ : 制作するにあたって、何かコンセプトはあったのですか?
Gregory : 特になかったね。ただ、ディスク1はポストAfricanism(*) 時代の終止符という意味合いが強いかな。このプロジェクトに参加したおかげで僕も少し有名になったから、Africanismっぽい感じのフレーバーを加えたかったんだ。今でもDJセットにはこういうテイストを入れることもあるけど、前よりは少なくなったかな。今はその他にもいろいろと表現したい音がたくさんあるし、音楽が進化するにつれて興味のある新しい音もたくさん出てきたからね。ディスクの2枚目には、自分が長い間プレイしているような、ハウス・クラッシックスを中心にコンパイルしたんだ。
* DJ Gregoryが世界的に知名度上げることとなったプロジェクト名
HRFQ : あなたはジャマイカン音楽やカリビアン音楽に大きく影響されたと語っていましたが、これらの音楽があなたの音楽性にどのように影響したのか、どんな風に表れているのかを教えてもらえますか?
Gregory : まず第一に、僕のつくる音楽はとてもシンプルで、生っぽくて、かつダーティーで低音がヘビーな感じなんだけど、それはダブやレゲエをよく聴いていて、影響されているからだと思う。クラブでもこういう音楽をプレイして、カリビアンな雰囲気を演出したいと思うんだけどね。僕がプレイするのはだいたいパリかヨーロッパのクラブだから、いつもそうはいかないけど。とにかく僕はダブやレゲエ特有のスローでホットな感じが好きなんだ。
HRFQ : あなた自身のトラック、"Tropical Soundclash"や"Damelo"などが、どのように生まれたか教えてもらえますか?
Gregory :すごくシンプルだよ。"Africanism Volume 1"を制作した時は、僕は丁度2年間過ごしたニューヨークから帰ってきたばかりで、働く場所がなかったんだ。スタジオを見つけたのはいいけど、工事に8ヶ月もかかると言われてしまって…。だからBobのスタジオでしばらく仕事をさせてもらうことになったんだ。当時Bobはアルバム"Champs Elysees"を制作しているところで、僕はそのプログラミングをやることになってね。"Africanism Volume 1"に収録された"Block Party"や"Tourment D'Amour"も、ちょうどその時期にPCでつくったトラックなんだ。ある日Bobがその2曲を聴いて、「これ、リリースしようよ。いいトラックをつくるね」って感じでリリースすることになったのがきっかけさ。
で、しばらくしてスタジオが完成して、それから僕自身のレーベル"Faya Combo"を立ち上げることになるんだけど、それから今のマネージャーと一緒に仕事をするようになったんだ。彼はすごく押しが強いタイプで、いつも「アレをやれとかコレをやれ」とか急かしてくるから、どうしても急いで仕事をしなきゃいけなくてね。でも、なるべく同じテイストのサウンドにちょっとヒネリを加える感じにしたかったから、B面に"Damelo"を入れることにしたってわけ。実は、"Tropical Soundclash"は二日で完成した曲なんだよ。
HRFQ : 随分早いですね!
Gregory : そうだね、初めからアイデアがあったからね。
HRFQ : あなたのトラックには、生っぽいサウンドがたくさん入っていますね。スタジオ・セット・アップについて話してもらえますか?どういった機材でああいった音を出すのですか?
Gregory : 僕の曲のつくり方は、他の音楽クリエイターがやってることの全く正反対なんだ(笑)。というのも、僕が使っているのはほとんどがアナログ機材なんだよ。古いシンセサイザーや、古すぎて動かないものもいっぱい持ってるよ!(笑) 中にはピッチが合わないものもあるくらいさ。
HRFQ : 手動で動かさなくちゃならないものもあるんですか?
Gregory : まったくそんな感じだよ!でも、こういうアナログな機材がダーティーな音を出すんだ。リズム的な部分ではPCをつかってるけどね。トラックのつくり方としては、サンプルやシンセ、ミュージシャンの演奏した音といったサウンドを出来るだけたくさんPCにとり込んで、最後になるべく余分なエフェクトを加えないようにしながら、それらの音をまとめてストーリーを完成させていくんだ。その意味で"Tropical Soundclash"や"BlockParty"の制作は、わずかな要素しか使っていなかったから、とてもシンプルだったね。でも、自分のスタジオを持つようになると、出来ることの可能性も広がるし、結果として長い時間をスタジオで過ごすようになるんだ。まぁ、最後は自分の耳に入ってくると音と、そこから湧き上がるエモーションが大切なんだけどね。例えば、"Elle"なんて、シンプルにするために長い時間をかけて制作したんだ。
HRFQ : "Elle"はいろいろなヴァージョンのあるトラックですよね。
Gregory : そうだね。僕自身がリリースしてないヴァージョンまであるんだ。でもオリジナルはいつもいたってシンプルだよ。でも完成までに3年以上もかかったんだ!なんせ"Africanism"をリリースした時から取り掛かっていたトラックなんだから。
HRFQ : 最近手がけられているプロジェクトはありますか?
Gregory : 今年の9月にリリースを予定している"Faya Combo"のコンピレーションの準備をしてるよ。出来るだけ多くのトラックを集めようとしてるんだ。音楽は常に進化してるから、今度のコンピレーションにも新しいテイストを加えたいと思っているよ。まぁ、新しいテイストといっても"ロック"ではないけど…僕なりの新しいテイストをね!
HRFQ : あなたはフレンチ・ハウス・シーンのパイオニアですが…
Gregory : パイオニアではないよ。僕はフレンチ・ハウス・ブームの第2世代の中の一人なんだ。第1世代には、Laurent GarnierやSt. GermainのLudovic Navarre、それにDJ Deepといったアーティストがいて、僕はAlex(from Tokyo)たちとそれに続いた第2世代。その後登場したのが、Bob SinclarやDimitri(From Paris)といった第3世代だね。
HRFQ : 最近のフレンチ・ハウス・シーンについてどのような意見を持っていらっしゃいますか?
Gregory : そうだね…ある意味、僕はシーンのアウトサイダーなんだよ。面白いのは、もう楽曲作りを始めて10年になるけど、いつまでたっても"ニュー・カマー"って呼ばれること。それってすごいクールだと思うんだよ!'97年に初めてトラックをリリースした時も僕は"ニュー・カマー"で、その後いろいろリリースしても"ニュー・カマー"、"Africanism"の時も"ニュー・カマー"、Faya Comboを始めた時も"ニュー・カマー"…(笑)。でも、どうしてか理由は分かるんだ。それは、僕はメジャーと関わって仕事をしてこなかったからさ。でも、あえてそうしなかったから、こうしてアンダーグラウンドでいられるし、フランス国内より海外のほうで有名でいられるんだろうね。もちろんフランスでも10年以上ラジオ・ショーをやっていたから、多少は名前を知られてはいるけど、テレビに出ているBob Sinclarほどではないよ。僕はテレビとかに興味はないけどね。ただ、僕はいつも音楽制作に情熱を傾けてきたつもりだよ。きっと力を入れすぎるから、音楽が主体になってしまって"ヒット"に繋がらないのかもしれないけどね。
HRFQ : あなたのレーベルFaya Comboのコンセプトについてですが、ジャマイカのパトワ語で"Fire"を意味する"Faya"と、組み合わせを意味する"Combo"という名前からも分かるように、"文化的な影響の寄せ集め" といった意味合いがあるのでしょうか?
Gregory : まったくその通りだよ!
HRFQ : 木曜日のショーはどんな感じになるのでしょうか?
Gregory : 実際、日本のクラウドがどんなショーを期待してるのかまったく分からないんだ。もしかしたら"Africanism"みたいな感じを期待してるのかな…僕はKenny Dope や彼の周りと繋がっているからね…僕のプレイを聴いて驚かないかな。だって僕はアメリカ人とは違うからね!僕は人のスタイルをコピーすることはしないし、自分のスタイルのあるDJだから。だから、ものすごく喜んでくれる人もいるだろし、もちろんすごくがっかりする人もいるだろうね!先入観をもってプレイをみに来る人は絶対いるだろうし。ただ、一つ伝えておきたいことは、今回は初めてのプレイだから、もしかしたらすごいいいプレイが出来るかもしれないし、全然良くないかもしれない。ただ、所詮これはパーティーなんだ。だから僕はただレコードを回すのみさ!
End of the interview
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